リハビリはキツかった。
「痛みが出たらやめて下さい」
「無理しないで下さい」
は?
って思わない?
どっちみち伸ばしても曲げても痛いけど、できるようにしなきゃ意味ないだろ?
少しづつなのも理解しなきゃいけないことだけどいつも同じとこで痛いんだからそれを越えないとどーしよーもないよな?
リハビリも専門の人がやってるから任せる人もいるだろうけど。
コレ必要か?って動きを疑問に思いながらやる身にもなってくれ。
けど、そう思うのもオレが焦ってるからだってことも分かってる。
すぐには無理だと言われたオレの体。
早く退院してウチからリハビリに通うってことになるまでにはあと何日?あと何回リハビリをやれば叶う?
今度の土曜日には子供達の運動会。
退院なんて絶対無理なのも分かる。
外泊許可を取って見に行ってもまた病院に逆戻り。
ウチにも帰れない。
社長の見舞いにも行けない。
そんなのんびり地道に過ごしてる場合じゃないんだけどな。
だいたいオレが悪くて入院してるわけじゃねーし!
あーイライラするな。
月曜日、ストレートに退院させてくれって言うかな。
ウチに勝手に帰っちまうか。
そんなモヤモヤしてるときコンコンって初めて少年からオレの病室に来てくれた。
「一昨日から会ってなかったから来てみました」
毎回、一服に誘ってたもんな。
仕事もJの会社に決まったし。
けどそれっきりになっちゃったんだ。
「オレがいない間も来たのか?」
「はい。」
「そうだったのか。ごめんな、来てくれたのに。オレを育ててくれた社長が意識不明でな、病院に行ったりしてたんだ」
少年はオレが買った服を今日も着てた。
何日も同じ服。
やっぱ誰も来てないんだな。
「下、行こうぜ」
喫煙所で2人でパン食いながらオレのリハビリの意味があるのかって話をした。
少年は
「リハビリって特殊なことやってるんですか?」
「覚えれば自分でもできそうなことなんだよ、特別な機械とか使ってるワケじゃねーし」
「それだと納得できないですよね。」
「だろ?オレを入院させといて何か得するのか?この病院は!」
「今日、新しい人が入院してきましたよ、オバサン。」
「毎日、誰かしら運ばれて来るもんな救急車で」
「横の人は退院しちゃうし。出入り激しいのに入院長いって何かイヤですよね」
「オレ、今日で1ヶ月。入院してから」
「え!!オレなんて毎日、病院から脱出すること考えてますよ(笑)」
「脱出してみろ?医者にこんこんと説教されるから(笑)」
「やってみたんですか?」
「昨日な。社長の病院に行きたくて頼んでもダメで、行き先言って出てきちゃったらウチに連絡された。」
「怒られましたか?奥さんに」
「怒られなかった。事が事なだけに。でも病院に戻って医者にジワジワ責められて、怒鳴られた方がマシだったよ(笑)」
「ですよね。ブツブツ言われるのヤですよね。それで社長さん大丈夫なんですか?」
「意識が戻っても元の生活には戻れねーんだって。オレのこと分かんなくなっちまうかもって話だ。嫁もJも昨日は交代でつきっきりでいてくれた。」
「Jさんも?」
「オレもJも若い頃、社長に兄弟みたいだなって言われてて、よく飲みにも行ったしな。」
「Jさんとはいつ知り合ったんですか?」
「中学の時。長い付き合いだよ。」
「なんかいーですね。付き合い長い友達いるって。」
何か、その先のこと聞いていいのか分からなくなったから聞かなかった。
誰も来ないってあるか?
22歳の少年だぞ?
オレは気になってたまらなかった。