社長の病院に着いたら嫁が待っててくれて、「目が動いてるの。」
もしかして!と思って期待したんだけど医者が言うには筋肉運動の一種で?自分の意思で動かしてるワケじゃないって言われた。
親戚?兄弟?いっぱい人がいる中、社長に合わせてもらった。
昨日と変わらず肌の色もキレイで閉じてる瞼の中でたまに目が動く。
社長、来たぞ。分かるか?
今日は外出許可ちゃんと取ってきたよ。
病院ヤダよな、オレも入院してみてつくづく思ったよ。
そんなことを話した。
初めて握った社長の手、分厚くて温かい。
このまま握り返してくれねーかなってずっと願った。
点滴とか機械の線が多くなったように思えた。
社長の奥さんに呼ばれて話をした。
初めて会った社長のお兄さんも一緒に。
意識が戻ったとしても今までの生活に戻れる可能性はほとんどないと言われた。
今いる周りの人のことも分からなくなるかもしれないって。
これから先のことは長い時間がかかると医者から言われたそうだ。
社長のお兄さん。
真面目そうで社長とは正反対な印象だったけど、声がそっくりだった。
入院中に来てくれてること、オレが最後に社長が育てた奴だってこと。
社長から聞いたオレのことを話してくれた。
社長が意識を取り戻してからと言ってどうなるか分からない。
今、急変するかもしれない。
けど、目を覚ましても社長にも家族にも辛い現実が待ってるってことだけは分かった。
奥さんと話し合って、とにかくオレが入院中だってことを凄く気にしていて。
早くリハビリをして退院できるようにオレには優先すべきことがあるだろうと、病院からじゃなくてウチから社長に会いにきなさいってこと。
オレは毎日でも来たいって言ったんだけど社長がそれを望むか?って言われた時、望まないだろうなと思ったんだ。
でも奥さんは毎日電話してくれると言ってくれた。
奥さんも心細いから報告できる相手がいるだけでも心強くなるからって。
また社長に会って明日は来ないからってことを話した。
オレは自分のケガ早く治るように頑張るから、社長も頑張っててくれよって。
ちょうどJも来て。
オレの顔見て社長に
「社長、こんなシケた面してんじゃ、社長もイヤになっちまうよな!」
笑って話しかけた。
オレと昨日まで言葉も掛けられずにいたJが、オレのことをいつもの口調で話す。
「コイツ(嫁)に言われたんだよ。どーせここにいるなら無理してでも元気にしてろって。そんな暗いんじゃ社長には届かないってさ」
オレも頑張って
「いつまで寝ててもいーけど、オレは社長に聞いてもらいたい大事な悩みがあるんだよ、次来たときに話すからそれまで頑張っててくれよな!」
Jが
「なんだよ、大事な悩みって?」
ジーッとJを見たら
「オレ?」
「そう!」
社長の奥さんも何?悩みって?
「次、来たときに聞いてくれよ。オレはこの悩みだけは本当に参ってるんだよ」
奥さんもJを見てナゼか
「何だか楽しそうな話みたいね」
ん?やっぱJを見てて嫁を好きなのが分かったのかな?
Jはずーっと
「オレのことで悩んでんの?何で?何のことで?そんなの今、言ってくれよ!気になるだろ!」
そんなオレらの話を嫁が笑って
「いつもの2人の会話、変わらずくだらないでしょ(笑)40過ぎたのにあんまり成長はしてないのよ」って社長に話してた。
社長といた時のようにオレらは、オレ達らしくいるべきだとJとも話した。
少し気が楽になった。
もうすぐリハビリの時間。
誰にも心配かけず社長のところに行けるように気合い入れて頑張ってきます!!