喫茶店
仕事で月に2〜3回、東京メトロ丸ノ内線の新高円寺に行っている。その帰りは、JR高円寺駅まで歩くことが多い。古着屋さんも雑貨屋さんも魅力的で、飽きない。そんな道すがらにある、レトロな一軒家。喫茶『七つ森』。ドアを開けると温かな光。赤青黄色のステンドガラスのランプが並んでいる。おもわず、心も暖まる。ジャズ音楽が流れる中、40代半ばくらいの眼鏡をかけたショートカットの女性がメニューを持ってきてくれた。グレーのタートルネックに黒のチノパン、ベージュの腰かけエプロンをしている。シンプルなんだけど品があって、とってもお洒落。持ってきてくれたメニューは手書き。ゆるっとした文字に、クレヨンで描いたような愛らしいイラストもある。季節のメニューには一言メモも。「こころもからだもポカポカになるよ」 や 「カップをスプーンで混ぜる音を子どもが口まねしたのが名前の由来」などの言葉に癒される。コーヒーや紅茶の他に、香港のお茶 ”えんおうちゃ” や、数種の香辛料が入った”スパイシーアップルジュース”、”キャラメルパンプキン” など、ちょっと風変わりなドリンクも多い。和風オムライスにキーマカレー、シャーベットやゼリーの種類も豊富。お食事メニューもデザートメニューもどれも魅力的で、目移りしてしまう。迷った末に ”カスタードプリン”を注文。「ちょっと大きめ」と書いてあったのに惹かれて。運ばれたのは、薄い黄緑色のガラスの器にピカピカと輝くプリン。黄色と茶色の分配率、ドデンとそびえ立つ山のようなフォルム、美しいなぁ。背筋がピンと伸びるような感じ。お皿を左右に揺らすとプリンもプルプルと動いた。ゆっくりとスプーンですくい、口に運ぶ。弾力があり硬め。卵をたくさん使っているんだろうなという優しい甘さが口いっぱいに広がる。カラメルの苦さがちょうどいい。うん、美味しい。隣の席の女性が大きな声で「はあ〜」と溜め息をついた。私と同じくらいの年頃で、同じく一人。彼女は ”桃のババロア” をもう食べ終えていたから、美味しいの溜め息ではないはず。ちらりと顔を覗くととてもリラックスした表情。あぁ、溜め息じゃなくて深呼吸だっだのか。レジでお釣りを受け取るおじさま。5円玉に赤いリボンが結ばれていた。お店からの気遣い。かわいい。カウンターの中で、先ほどの店員女性とアルバイトらしき若い青年が、楽しそうにお喋りをしながら料理の仕込みをしている。なんだかお腹が空いてきたぞ。私は壁に貼ってあるメニューの中から ”ココナッツカレー” を頼むことにして、小さく手をあげながら「すみません」と声を掛けた。