王子の飛鳥山公園のふもと。
さくら新道歓楽街が大火事にあった時に、唯一生き残った店がある。
”スナックまち子”
暗がりの中で看板がポツリと光っている。
時たま共にスナック探索をしているマオちゃんと、なんだか良さそうね と、こちらにお邪魔したのは去年の秋。
60年近く続いた店が、年内で閉店するというので行ってきた。
ドアを開けると、遠方から来たらしい常連のおじさま達と、センターパートボブの黒髮のママが迎えてくれた。
黒地に赤いバラの花が散りばめられたカーディガンを羽織っている。
「この服は自分で作ったのよ」と微笑む様子は、まるで少女のように可憐で、可愛らしい。
元々、銀座でナンバー1だったのも、よ〜く分かる。
「私、歌は苦手だから」とカウンターの中にあるイスに座り、じっとみんなのカラオケを聴いている、まち子ママ。
お手製の山菜とレンコンの煮物や、酢の物、ポテトサラダを出してくれた。
どれも温かな味わいで、モリっと器いっぱいに盛られている。
「またお客さんに食べてもらいたいから、どこか小さな場所を借りて ”おふくろ まち子”をやりたいの。ボケ防止にね」と。
「生きてるって素晴らしいわよね。空気と酸素があって、作った料理を美味しいと食べてもらえて、娘たちも昔は、水商売なんかする母親はいやだと言っていたけど、今はさすがお母さん、だって。良い子たちなの」
この話を、何回も何回もしていたなぁ。
「人と人の繋がりは面白いわね。こんな優しいお客さん達に囲まれて。幸せなの。ねぇ、ウーロンハイ1杯いい?500円だから。うちの店はズルいことはしないの。安心して」
おぉ、甘え上手だー。
今回はマオちゃんの友人のトーマスさんも一緒だったのだけど、「トモさん(まちがえてる)、風の又三郎みたい。いい男ね」と、やたら気に入っている様子だった。
「あなた達みたいなお友達が出来たら嬉しいわ。ごはんを食べに来てね」と、自宅の電話番号まで教えてもらった。
これは、モデルのようだと褒められていたマオちゃん、松本伊代ちゃんの若い頃に似ていると言われ続けた私のおかげではなく、きっと、風の又三郎トーマス君のおかげ。


