国立駅には、想い出が詰まっている。住んでいた家、小学校が近かったので、よく通っていた。古くからある、こぢんまりした品の良いお店がいっぱい。

鮮やかなイエロー、濃いピンク、なめらかな白い生クリーム、色とりどりの美しいケーキが並ぶお店には、小さな喫茶スペースがある。私は、ラズベリームースが好き。

「パパには内緒ね」と、おやつの時間に母と半分こして食べる、海老あんかけラーメンは絶品。ちょうど良い塩味。狭いカウンター席で肩を並べて、ハフハフ。

高校生の時にお付き合いしていた彼とは、秋にある”天下市”というお祭りで大ゲンカをした。理由は忘れたけど、歩行者天国で、りんご飴片手に私は泣いていた。

クリスマスが近くなると、大学通りの桜並木には、イルミネーションが点灯される。温かみのあるオレンジ色の灯りで、街はいっきに賑やかになる。

その日、私は習っていたダンス教室の帰りで、シューズやレッスン着をたっぷり詰めたリュックサックを背負って、キラめくクリスマスツリーの中を歩いていた。

とても寒い日で、鼻のあたまが凍ってしまいそうだったので、赤いチェックのマフラーを顔の半分すっぽりと隠れるように巻いて、急ぎ足で駅に向かっていた。

そこには、ツリーのふもとに布を敷いて、露店を開いているおじいさんがいた。”ピノキオ”のおじいさんのように細いふちのまぁるい眼鏡をかけていた。

ペンチ片手にコツコツ作っているものは、針金のブローチ。なにやら自分の名前を伝えると、ローマ字の筆記体で、その場でこしらえてくれるらしい。かわいい。

めったに衝動買いはしない方だったけど、これぞまさに一目惚れ。小学校4年生だった私にとって、800円は大金だった。あぁ、お母さんに見つかってしまったら何て言おう。マフラーにブローチをつけた。