〇発表までの経緯

『週刊少年ジャンプ』2018年33号に掲載された短編読切漫画は大好評につき、この読切の続編となる短期集中連載(全4回)がジャンプ本誌で展開されることが決まった。そして、『週刊少年ジャンプ』2020年38号 - 41号(Season1)にて本作が掲載された。

 

 

〇タイトル

#1  Witches Blow A New Pipe

第1巻 p72~129

 

 

〇分析

★タイトル

和訳すると、「魔女たちが新しい笛を吹く」という意味。魔女たちとはニニーと新橋のこと。ニニーと新橋が笛吹き隊(パイパーズ)に属していることを踏まえたタイトル。

アニメ版では「Witches Blow a New Pipe」という表記になっている。

 

★見開きカラー(p72~73)

『週刊少年ジャンプ』2020年38号 - 41号(Season1)では、どの号にも久保直筆のカラーイラストが挿入されていた。

オスシちゃんには外出用防護襟(がいしゅつようディフェンスカラー)が着けられている。バルゴはCANINE(犬や犬歯という意味)と書かれた服を着ている。久保は同じデザインのフードを発売しているので、バルゴが好きな方は是非、購入を。(販売サイトの魚拓

 

★p74

ジャンプ作品は、ジャンプ本誌に掲載される際、「最初のページは半面で、終わりのページは見開き」という構成になっているが、単行本収録に当たって、そのページ構成のまま各回を繋げてしまうと、1ページ分(半面分)空きが出てしまう。その空きを埋めるためのページに、久保はラフイラストを挿入したり、このようなページを入れたりしている。このように単行本の編集の作業はスムーズにいかない場合が少なくない(或るサイト或るツイート)。

 

★p75

ニニーの「おとぎ話なんてクソでしょ」という独白で始まっている。

主人公(新橋とニニー)のソロと独白という構成は#0.8のp11と同じ。

よく見ると黒い服の下に「BURN THE WITCH」と書かれたシャツが隠されている。

 

★p76

「女の子が魔法をかけられてお姫様になったりキレイな服とか着せてもらったりイケメンを選ぶフリして選ばれたり」「しかも魔法は途中で解ける」「ダサくない?」「なのにみんなはお姫様にあこがれるとか言うし」「本気で言ってる?」「魔法 途中で解けるんだけど?」「約束破ったからしょうがない?」「時間を過ぎたからしょうがない?」「しょうがなくない」「あんたたちみんなバカばっかり」と独白は続く。

ニニーが表ロンドンを歩いているとパパラッチの連中がニニーに絡んでくる。

パパラッチの連中は「TJと別れたってホント?メンバー脱退についてどう思う?メイシーと仲悪かったよね?」とニニーに詰問する。

ニニーはアイドルグループ「CECILE DIE TWICE」のリーダーなのだが、メイシーはそのアイドルグループの元メンバー。

実は3~4コマ目で、パパラッチとぶつかっている女性こそが他ならぬメイシーなのだが、パパラッチの連中のなかでメイシーとすれ違っていることに気づいている者は皆無である。このことは、メイシーの本来の姿がアイドル活動中の彼女の姿と大きく乖離していることを意味している。

 

★p77

ニニーの独白は「誰も魔法が解ける本当の理由なんかわかってない」という一文で途切れる。

「魔法が解ける本当の理由」が何なのかは#4で述べられる。

ニニーは「・・・ウルサイなあ」と言い残し、スマホから強烈なフラッシュを発してパパラッチの連中を混乱させ、その隙に逃げ出した。

ニニーは#0.8のp16で新橋が表ロンドンから裏ロンドンへ移動するのに使ったコインをスマホにかざし、裏ロンドンへ旅立っていった。

 

★p78

p75~77の独白はシーズン1の最終話#4に繋がっていく内容となっている。

パパラッチの連中はニニーが一瞬の隙に姿を消したことに驚く。

 

★p79

ニニーは「バカしか魔法にかからないなら、あたしは魔法をかける側がいい」と独白し、「ニニー・スパンコール出勤します」と告げる。

黒い服のチャックが外れたことで「BURN THE WITCH」と書かれたシャツがあらわとなった。

 

★p80~81

見開きのタイトルコール。

「BLEACH」でも作中のオブジェクトにタイトルがあって、そのタイトルを読者に見せた後にこの回のタイトルを提示するという手法が多用されている。(例、BLEACH49巻p54

 

★p82

蕾鹿竜(バッドバック)を追いかける新橋。

「指の先(さき)

声の(きっさき)

リベンジャー・ジョーの鉄の鍵(かぎ)」

と脚韻が印象的な詠唱を行っている。

 

★p83

新橋の攻撃を受け、魔力を発動する蕾鹿竜。

新橋が「蕾鹿竜の角の蕾」の開花を嫌がっている理由はp93で説明される。

 

★p84

蕾鹿竜の後ろに別のドラゴンが出現。新橋はマジック#31「ブルー・スパーク」を発動し、そのドラゴンに攻撃する。

BLEACHの設定と照らし合わせるなら、破道の三十三番『蒼火墜』と共通点が多い。

 

★p85

攻撃が的中し、そのドラゴンは暴れ出す。

 

★p86

そのドラゴンはパニック状態に陥り、地面を揺らし始める。地面が揺れている反動で蕾鹿竜が上空へ飛ばされる。

新橋は蕾鹿竜を抱きかかえ保護するが、新橋自身も飛ばされる。

それを見たニニーはマジック#44「フラッシュ・バンパー」を発動し、新橋と蕾鹿竜を助ける。

 

★p87

ニニーは「危ない!蕾鹿竜じゃん!A級収穫!」「あたしが間に合わなかったらどうする気だったのよ!」と叫ぶ。

新橋は「…めちゃくちゃ遅刻してきた人に言われる筋合いないですよ」と返す。

 

★p88

ニニーは自分が新橋より先輩であることを強調する。

ニニーの肩書が白枠で表示されている。

 

★p89

新橋の肩書が黒枠で表示されている。

p88とp89はコマの構成が同じ。

 

★p90

#0.8のp21のリフレイン。

 

★p91

#0.8のp22では壊れていたままだった正門が、このページを見ると直っていると分かる。

 

★p92

ニニーの台詞を参考にすると、笛吹き隊のなかで新橋とニニーはコンビ(二人組)で仕事を行う仕組みとなっているようだ。

ニニーは表ロンドンでのアイドル活動で稼いでいるそうだが、表ロンドンでの収入を裏ロンドンの通貨に両替するのはプライドが許さないとのこと。

3コマ目のポンド(£)に似た文字は裏ロンドンにおける通貨の記号である。

 

★p93

作中において新橋とニニーはスマホを多用しているが、新橋とニニーの会話を遠くで眺めている笛吹き隊の魔女/魔法使いも二人の光景をスマホで撮っている。

 

★p94

シーズン1#1#4)を読む限りでは、現在のオスシちゃんがダークドラゴンであるようには見えない。

3コマ目の「私”達”」という発言は「バルゴの管理(保護)は新橋とニニーの二人が担当していること」を強調している。

 

★p95

現在のオスシちゃんはドラゴン犬と説明されている。4コマ目でTEAとCOFFEEの間に挟まれている文字は大文字のBに似ているが、アニメ版では&になっている。

 

★p96

#0.8で戦術隊に異動したはずの主任は笛吹き隊に復帰したのだという。

戦術隊で大した活躍を見せなかったことが復帰の主な理由となった様子。

ニニーは「ドラゴン憑きの管理なんてつまるところ本社がワケわかんないモンを押しつけたいだけじゃない」「それを仕事しながら24時間面倒見るほどの給料も実績ポイントも貰ってないから!」と言い、バルゴの管理という仕事に意欲を持てていない。

ニニーが主任のことを「元主任」と呼んでいるが、それは「つい最近までは『元主任』だったこと」を皮肉った表現に過ぎず、笛吹き隊に復帰したことで主任という立場に戻っている。

 

★p97

しかし、主任は関係各所に許可を取り、追加給金と特別実績が二人に出るよう手配したと明かす。主任の左手には札束が、右手にはp92の3コマ目で出てきた通貨記号が描かれている。p248の「5ポイントと5ポンド」という台詞文から考えると、特別実績の単位はポイントで、追加給付の単位はポンドである。

 

★p98

ニニーは「あんた(新橋)はお金のため、あたしは実績のため、建前上は社会正義のため」と叫び、ニニーと新橋はバルゴの保護をしに出発する。ブルームバギーの乗った二人の後ろ姿を見ながら主任は「せめて建前のほう先に叫んでくんないかな・・・」と本音を漏らす。

 

★p99

ハネが生え、暴れているオスシちゃんにバルゴは振り回されている。

オスシちゃんは民家の家を破壊している。

 

★p100

新橋とニニーはオスシちゃんとバルゴを救出する。

 

★p101

新橋がオスシちゃんを落ち着かせると、オスシちゃんに生えていた黒いハネが縮んでいく。

 

★p102

壊された民家に住んでいた住人に新橋は「壊された窓の補修にはドラゴン保険が適用されます」と説明する。

その住人に新橋は「ドラゴンと接触されましたか?」と尋ねる。

ニニーが「ニーハ!検査!」と叫び、新橋が「はい」と答えているシーンは、ニニーと新橋の「先輩と後輩」としての関係性を表現している。

 

★p103

ドラゴン接触禁止法の説明がされている。

説明文によれば「ドラゴンと市民の双方を守るために1609年に定められた法律であり、違反者は禁固100年か死刑となる」とのこと。

その住人が1~3コマ目で赤面しているのは、恥ずかしいからというよりも寧ろ、「もしドラゴトキシン濃度が基準値以上だったら禁固100年か死刑になってしまう…怖いよぉ」と緊張していたから。

検査の結果、その住人はドラゴトキシン量が0.3mC/Stという正常値であると分かった。

資格を持たない市民がドラゴンと接触すると体内にドラゴトキシンと呼ばれる物質が蓄積され、その数値が一定を超えると「ドラゴン憑き」となってしまう。

 

★p104

オスシちゃんに触れてブチ込まれない(投獄されない)市民はドラゴン憑きであるバルゴだけなので、普段はオスシに外出用防護襟(がいしゅつようディフェンスカラー)を着用させているが、突如ハネが生え、その襟が外れてしまったのだと言う。

 

★p105~106

ドラゴン憑きはドラゴンと長期間接触した市民が罹る”病気”で、その最も重要な”症状”は「強力に”ドラゴンを呼び寄せる”体質となってしまうこと」である。

オスシちゃんがハネを生やすのは「バルゴがオスシちゃんの鳴き声をマネした時」「バルゴがくしゃみをした時」「バルゴが爆笑した時」「バルゴに危機が迫っている時」であり、バルゴの背後から巨大なドラゴンがやってきた。

因みに、爆笑という名詞は本来は「大勢の人が一斉に笑っている状態」を指すが、近年は「一人が大笑いする状態」を指すことが多い。

 

★p107

ドラゴンの襲撃からオスシちゃんとバルゴを守る二人。

 

★p108

新橋はバルゴを抱えたまま地面に着地する。

 

★p109~111

新橋はドラゴンに対しマジック#4「スタンボール」を発動した。新橋は主任にスマホで連絡し「ドラゴン1体鎮圧したので追加報酬お願いします」とおねだりしている。因みにこのドラゴンの名称はキティホーンである。「とりあえずスタン」のスタンはスタンボールのこと。

 

★p112~116

キティホーンは黒化(ライツアウト)しダークドラゴンと化した。ニニーは主任に道路の緊急竜鎖を要請し、その道路(ラザフォード通り)が封鎖されていった。

 

★p117

リバース・ロンドンBBCが裏ロンドンの住人にシェルターへ逃げるよう指示する。

 

★p118

新橋は主任に「竜鎖完了したのでそろそろ戦術隊に交代を―」と連絡していたが、その通話をニニーが勝手に切断する。

新橋は「何するんですか」と訊くが、ニニーは「手柄を戦術隊に渡す気?自分たちの強さを人事に見せつけるチャンスでしょ!」と言い、ダークドラゴンを駆除しに行く。

一方、新橋は「私達『笛吹き隊』の業務はドラゴンの放牧と収穫ですよ」「強さなんて必要ないんです」と語る。

 

★p119

ニニーは戦術隊に入りたいと思っているが、新橋は戦術隊に入ろうとは思っていない。

 

★p120

「ドラゴンが人間に接触し続けると、徐々にその人間の持つ負の感情を吸収し、ダークドラゴンと化してしまう。通常のドラゴンは空腹時を除いて人間を襲うことはほぼ無いが、ダークドラゴンは人間に対して強い興味を持ち、能動的に襲撃し殺害する」と解説されている。

 

★p121

解説文が「そのためダークドラゴン出現時の対処法は駆除のみであるとされている」と続く。

 

★p122~123

新橋も加勢し、マジック#75を発動する。

 

★p124

バルゴは魔女二人(ニニーと新橋)の戦闘シーンをあっけに取られながら見ているだけである。

 

★p125

WB最高意志決定機関トップ・オブ・ホーンズの会議が開かれている。

会議では、バルゴのあっけに取られている顔が画面に表示されている。

 

 

★p126

トップ・オブ・ホーンズの長官が顔を向け合っている。

 

ブルーノ・バングナイフ
「魔陣隊(インクス)長官」

着色スプレーを使ったストリート・アートのようなデザイン。

外見は若い男で、ロンドンの平和を守る使命感が強いようにも見える。

ドラゴンを強力に引き寄せる体質となったバルゴのせいで、96年ぶりにリバース・ロンドン内にダークドラゴンが侵入してしまったことに激怒している。


ロイ・B・ディッパ―
「呪歌隊(アンセムズ)長官」

楽譜のようなデザイン。

外見は褐色肌で壮年の男性。
 

キュントナイア・ミリーヴ
「聖務隊(セイクリッズ)長官」

外見は若い女性。

中世の装飾文字のようなデザイン。


トロンボーン・タッキネン
「笛吹き隊(パイパーズ)長官」

Tが金管楽器のようなデザインとなっている。

外見は白雪姫に出てきそうな老年の小人。

ニニーと新橋の上司である主任の更に上司に当たる人物と考えられる。

 

 

★p127
サリバン・スクワイア
「戦術隊(サーベルズ)長官」

外見は黒髪セミロングの物静かな女性。

人名のフォントが直線的なデザイン。


サカ・リン
「開発隊(パッチワークス)長官」

会議を欠席している。第1巻の次回予告によると、坂輪という日本人(少なくとも日系人)であるらしい。

人名のフォントがパッチワークのようなデザイン。

 

ハリー・シェイク
「経理隊(ビリオネアズ)の長官」

外見は髪をショートにしてサングラスをかけている。会議中にチューインガムを膨らませていたせいでブルーノ・バングナイフにキレられる。

人名のフォントはHとSが多数の小さな玉で表記されたデザイン。

 

 

★p128

バングナイフは「このバルゴって野郎を野放しにしとくのは間違ってるッて話だ!どう思うよ!ウルフィーのオッさん!」と話す。

 

ウルフギャング・スラッシュハウト
「人事神罰隊(ギャロウズ)長官」

トップ・オブ・ホーンズでのまとめ役か。白いひげを生やした目の細い老人。

アニメ版では、人名のフォントがフラクトゥール(亀甲文字)となっている。

 

バルゴのフルネームがBalgo Ywain Parksだと分かる。また、ドラゴン憑きは英語ではDRAGONCLADというようだ。

 

 

★p129

ウルフギャングは「……我が隊でも彼がドラゴン憑きとなってから この一月 幾度となく議題に上がっていた話だ」「我が隊の無策が招いた事態」「看過する訳にはいくまい」「”ドラゴン憑き”のバルゴ・パークスの討伐手続きを開始する」と宣言する。

会議の画面には新橋たちの姿がリアルタイムで映っている。

3コマ目でバルゴが赤面しているのは新橋のパンツが視界に映ってしまったからか。

 

 

★総評

本回は、#0.8の対比となっている。特に、#0.8の序盤をセルフ・カヴァーしている箇所が多かった。

オスシちゃんから出現した覆面竜は#0.8でダークドラゴンと化したように見受けられるのだが、p121の記述と違って何故か駆除されていない。