脚を踏み出して
切り落とされて
誰だ、なんて
訊く事は出来ない

乾燥してしまった
愛情に近い鼓動は
確信に潰されて
ゆめを見ている

「懺悔は、今のうち」

ぐるぐる波打つ
身体の中身たちは
逃げ出したがって

僕に与えられた
僅かな優越さえ
奪ってしまうんだ

「賛美は、今のうち」

切り落とされた脚は
後生大事に
持ち歩いて

腐る時を待ったら
その時に

「命乞いは、今のうち」

棄ててゆけば良い
たちこめる香りと
めくるめく甘さのなかで
夜が明けることを
悟ってしまった

低体温の私でも
今日は熱を帯びている

あなたと飲んだレモンティ
目隠しされた私の体内に
酸素となって広がる

あなたと食べたブルーベリー
耳隠しされた私の体内で
血液となって交わる

全てあなた付きじゃないと
意味のないことがよく解るグラフ
素晴らしく不条理だ

煮え切らない空虚は
ひたすらにダークネス
この暗闇で
溺れてしまう前に
助けられるより
いまはただ溺れてしまおう
そうしたら
きっと浅瀬だと気づける

びしょ濡れのまま
立ち竦んで
或いは倒れ込んだりして
水たまりを作り出す

本能で完成する形は
無意識に脳内へと運ばれ
閃き箱の中で
すやすやと眠るのだ

あなたと繋ぐ手が欲しいから
君は朱い
僕も朱い

ぷつり、と
切れて仕舞った
無感情な糸くず

鈍器の感触
蘇り
君の頭髪
撫で付けた

君の朱と僕の朱
時限から何から何まで
統べて異なる夕焼け空

君の朱色は
暗闇に負う事無く
苛立つ程緩慢に
怯える程確実に
ゆっくりと、僕の
世界を染め上げる

真実
僕が統べて遮断した
故意なのか事故なのか
しかし事故と云うには
余りにも…

白い君の顔が
どんどん
歪んでいくよ

嗚呼
これはきっと罰
君の顔が歪むんだ


歪むんだ、君が

花街の電塔
まばゆい旋律を放つ
カクテルライトの
中心点

ひかりの配列を
踏みゆくごと
浮かび上がってゆく
ひとつのシャドウ

わたしは
哀れみの回転木馬を
回っていました

ここには
みえないピアノがあり
慈しみの鍵盤で
明星を奏でられるなら
電飾の梢のモザイクは
金貨に瞬き
この蒼白の夜は
星のかたちに
見えるでしょう

電球の瞳たちは
寄り添う
たくさんの光の束が
そっとグラスに
注がれるような
やさしい背後

わたしは夢幻の中で
泣いてしまいました

すると
電球のひとつは
するりとうねり
それは月になり
君の瞳になりました


わたしは、いまだ
夢を見ています


三毛猫は憩う
幻燈の夜

羨望にすました
猫の瞳に膨らむ
ブリキの月

悪戯な黒雲が
月光の尻尾を隠し
この乳白の森を
蒼い舌で塗らしてく

魔法が解けてくようだと
きみは云う

冷ややかな蒼が
冬の爪を砥ぎ
寒い寝床へと
手招く静謐

きみは葉陰で
まるくなってる仔猫

ねえ
こっちへおいでよ

ぼくの指は
月光を吸い込む

ほら
あたたかくむいた
栗みたいな月を
あげよう