17日は島根県中山間地域研究センターに行ってきました。

市街地から数十分車で走った山の上に立派なこの施設が建っていました。

 

2023年10月、島根県中山間地域研究センターでオスのシカによる事故でセンター職員男性が死亡しました。残念なことです。

 

10月はシカさんたちの繁殖の季節で、オスジカは繁殖のためにそうでない時期とは違う行動をしたり、興奮しやすかったりします。

 

シカが人間を激しく攻撃するのはほぼないため、シカの飼育方法やシカの状態、シカへの接し方など気になり、実際にセンターに行って話を聞くことにしました。

 

このセンターで飼育されているオスジカは、実験のために飼育されています。

 

オスジカは幼い頃に罠で捕獲された個体だそうです。捕獲した時の状況は昔のことなのでわからないということでした(記録は残っているはずですが)。

 

オスジカは子どもの頃から、たった一頭で限りある空間で過ごしています。

 

実験動物なので、センター職員たちがオスジカに対して愛情を与えることもなく(ペットなどではないのでと言うことでした)、オスジカとはほぼ接触しない飼育方法をしているそうです。

 

食事は夕方の一回のみで、食事内容はウシの配合飼料だけだそうです。ドングリなど季節の食べ物はまったく与えていないということです。

 

夏場は、飼育所に生える草を食べることができるかもしれませんが、冬場草は生えません。そして、なぜか冬の間狭い面積に収容されています。冬に狭い場所に移動させる理由を聞いても答えてもらえませんでした。

 

走ることも出来ないほどの狭い空間です↓矢印の先にオスジカさんがいます。

 

オスジカは未去勢です。その理由は実験のためです。いろいろな木による角研ぎの実験が行なわれているそうです。

 

実際に施設とオスジカを見て、わたしはひどくショックを受けました。動物の5つの自由に沿った飼育方法ではなく、シカに多大なストレスを与えていると思いました。

 

春・夏・秋にオスジカさんがいるエリア↓

 

一日のほとんどの時間を食べ物探しに費やすシカたちにとって、シカのニーズを満たすものがほぼ何もない空間にたったひとりでオスジカは10年間もいるのです。

 

10年ですよ。どれほどつらいことかと思います。社会的動物であるシカを一頭で狭い空間に閉じ込めるのは、シカにとって苦痛ある生活と想像するのはたやすいでしょう。

 

しかし、多くの人たちはそのことに気がついていない現状があります。

 

ただ生きていればいい、という感覚での飼育方法がいたるところで行なわれているように思います。

 

そこに個々の存在の居場所はなく、動く物のような扱いはこのセンターに限ったことではありませんよね。

 

事故が起きた時、センター職員がシカの生活する空間内の草を草刈り機を使用して行なっていたそうです。

 

この話を聞いてそれはよくないと思いました。

 

担当職員に「それはシカに刺激を与え、シカを興奮させますね」と言うと、職員は「草刈り機には慣れている」と言いました。

 

職員のこの言葉の背景には、感覚的存在である動物という認識の欠如の問題があると思います。このことも、この職員に限ったことではなく、動物と関わっている多くの人たちの問題であると思います。

 

慣れている、慣れていないという問題ではなく、最初からどの動物にたいしても可能な限り刺激を与えない、ストレスを与えないことが大事です。

 

去勢済みである我が家の保護シカのすぐるちゃん(オス6歳)であっても、日常的にあまり見ない道具には敏感に反応し、音がでる機械であればさらに反応して興奮します。

 

そこで、わたしたちはシカたちの刺激になる物の扱いには非常に注意し、シカたちと相談*しながら道具を使用しています。

 

*シカたちの精神状態(落ち着いているかそうでないかなど)・反応具合から、道具の使用や作業内容を決めています。シカたちが少しでも怖がったり反応したりすると道具は撤去し、作業は中断します。

 

「慣れているから大丈夫」ではなく、動物たちへの配慮ある行動が事故防止に役立ちます。

 

すなわち、感覚的動物は毎日心の状態の変化があるため、精神状態の把握が大事ということです。

 

ニーズが満たされていない場所での生活は、毎日ストレスが蓄積し、慢性的ストレス状態に陥ります。

 

例えば、今まで草刈り機を使用した作業に反応しなかったとしても、違う日はそうではない可能性もあります。

 

オスジカの発情期には特に、シカへの配慮ある人間の行動が大事だと思います。

 

オスジカのいる場所へ行くと、オスジカは顔を斜めに上げて鼻を上げ「プシュー」と勢いよく口から息を吐き出していました。

 

人間が来たのがわかると、その近くに寄ってくるオスジカさんの姿になんとも言えない気持ちになりました。

 

このオスジカの動作は、(ストレスによる)興奮からなのか、テストスレロンの影響なのかわかりませんが、すぐるちゃんの場合は、この動作をする時は、テストステロンの影響と興奮両方関係しているように見えました。

 

事故防止対策として県は記者会見で、シカを移動させるときは「追い立てる」と言っていました。しかし、その行為は事故に繋がるため、センターへ「追い立てるのではなく食べ物で誘導を行なって下さい」と要望しました。

 

すると、担当職員は「追い立てることはしないで、食べ物で誘導します」とのことで、その点はよかったです。

 

このセンターで収容されているオスジカさんは、死亡するまで実験台として使われるそうです。

 

生き地獄とはこのようなことを言うのだろう……と正直思いました。

 

社会的な動物の隔離とニーズが満たされない環境での暮らしは、本人しかわからない非常につらい苦しみがあります。

 

動物たちを感覚ある存在として認識することの重要性を多くの方に理解してほしいなと思いました。

 

わたしからは、5つの自由に沿った飼育方法の要望とシカにストレスを与えないお願いをして帰宅しました。

 

事故を起こさないためにも、個々の動物たちの尊厳を守るためにも、生体を使用した実験ではない方法で研究を行なってほしいなと思います。シカの角研ぎであれば、山の樹木観察なのでも十分データは集まるのではと思いましたが、どうでしょうか。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

お知らせ

 

3月3日(日)、奈良県で参議院議員串田さんと動物に関する勉強会を開催します。

 

動物に関心ある方もそうでない方もご参加くださるとうれしいです。

 

参加費は無料

 

動物たちの苦しみ、悲しみ、孤独に寄り添える人が増えるといいなと思います。

 

にほんブログ村のクリックをお願いします。

  ↓ ↓ ↓

にほんブログ村 環境ブログ 自然保護・生態系へ
にほんブログ村