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「雪田さん・・・狭いところですが、座って下さい。今、簡単な酒の肴を作りますから・・・焼酎でいいですか? 焼酎しか置いてないものでね・・・」

「何でもいいですよ・・・気にしないで下さい・・・」

台所で包丁の音がする。何かを切っているのだろう。

すぐに包丁の音は止まり、焼酎のコップと漬物を出してくれた。

「何ヶ月ぶりになるかもしれませんよ・・・私の家にお客が来ることは・・・ハハハ・・・楽しい・・・それで、雪田さんは、どうして新開刑事と仲がいいのですか?少し羨ましいですな・・・まぁ、乾杯しましょうや・・・」と、コップを持ち上げた。

「仲がいいというよりも、新開刑事の管轄エリアに僕の店があって、暇つぶしに来るのです。最初は、強盗事件の聞き込みで来たのです。それからの付合いになりますね。昔、僕も探偵会社にいたものですから何となく気が合ったのです。それ以来・・・腐れ縁的な変な付合いとなりました・・・」

「そうでしたか・・・最初は、少し偏屈な人だと思いましたが、付き合ってみると温かみのある人だと思いました。私の娘の時も・・・本気で心配してくれて、東京からここまで来てくれたのです・・・本当に優しい人です。一緒に働くことができるのなら私は新開さんの署に配属になりたいと思ったことも何度もありました・・・」と、目には光るものがあった。

スッポンの今野という呼び名とは程遠いという顔つきで焼酎を一気に飲み干した。

「娘さん? あの・・・あそこの仏壇の?・・・」と、尋ねると。

「えぇ・・・娘です。生きていたなら十二才になります。一人娘でした・・・」

「差し支えなければ・・・何があったのでしょうか?」と、重い雰囲気となっていた。

「聞いてくれますか? 今から、八年前になります。幼稚園までの通学路で事件は起こったのです。朝の8時でした。女房に連れられて歩いていたところに、信号無視をした車が突っ込んできたのです。娘の信号は青でした。それは、目撃者の証言で確認されています。そして、娘は轢かれてしまったのです。幸いなことに女房はかすり傷だったのですが、娘は、頭を強く打っていて即死状態だったのです・・・」

「・・・犯人は・・・捕まったのでしょう?」

「・・・いえ・・・逃走しました。若い男と女が乗っていたということは分かっていますが、ナンバーも偽造されていたものと分かりました。大型の黒色の外国の車ということまでは・・・所轄の警察は必死で捜査しているのですが、今もって犯人に結びつく情報はありません。私も非番の時は捜査していますが・・・車の塗料の一部が道に落ちていたのですが、新車の時の塗料と違っていて探すことが難しいのです。色を塗り変えた車だと思います・・・なかなか見つけることはできません・・・残念ですが・・・さらに、急ブレーキもかけていないのでタイヤ痕が残っていなかったのです・・・」

「そうでしたか・・・それは大変でしたね。しかし、娘さんのことを思うと、何としても犯人を捕まえたいと思いますね。何か、他に証拠のようなものはないのですか?」

「えぇ・・・何も・・・ただ、ひとつ不思議なことがあります。娘の命日は、11月の十八日なのですが、その日になると娘が死んだ場所には花が置いてあるのです。最初は、近所の人が置いてくれていると思ってて感謝していたのです。しかし、何年も続くので、私なりに調べてみたのですが、近所の人にはいないということなのです。交差点のそばの人に尋ねたら、命日になる日の深夜に車の止まる音がして誰かが花を置いているというのです。人の気配はするのだけど、暗くてはっきりとは分からないというのです。それで、三年前から命日の前日に張り込んでみたのですが、私の存在を見たかもしれませんが、命日の数日前や数日後に花が置かれるようになったのです。何とも不思議なことです。もしかしたなら・・・犯人ではないかと思っていますが・・・私を避けるように花が置かれているのです。どこの誰なのか?」

「不思議ですね・・・僕も思うに・・・犯人ではないかと?罪ほろぼしとして花を置いていると・・・」

「そうだと思っています。しかし、その後、所轄の刑事も見張っていたのですが、私たちの裏をかいたように花が置かれるのです。本当に不思議です・・・しかし、本当の犯人なら、そんな危険なことをすることはないのではないかと思うようになりました。何故なのかと?・・・」

「それで、毎年、花は置かれていると?・・・」

「昨年は、花はありませんでした。しかし、私の署に花が届くようになったのです。死んだ現場に置かれていた花よりは、かなり小さくなり、定形外の郵便として届いたのです。差出の消印は、日光中央郵便局になっていましたが、どこかのポストに投函されたものだろうということです。本局や特定局では扱っていないということでした・・・」

「今年は・・・明後日ですね・・・また、郵便なのでしょうか?」

「それは分かりません・・・が、おそらく届くのではないかと・・・一応、明日の夜には張り込むことにしています。それと、日光市内の全てのポストにも刑事や事務方の警官が張り込むことになっています。皆、私の無念を晴らそうとしてくれているのです。時効までには何とかしたいと・・・娘と女房が不憫でなりません・・・」と、スッポン今野の目から大粒の涙が流れ落ちた。

「奥さん? ここにはいらっしゃらないのですか?・・・」

「はい、娘の事故死で精神的におかしくなったのです。それで、塩原の精神病院に入っています。少しずつですがよくなっているのですが、まだ、精神的に不安定なのです。医者からは退院しても問題はないというのですが、本人が私に会いたがらないのです。多分、自分が娘を殺したような気持ちになっていて会いたくないのかもしれません。私としては、すぐにでも家に戻ってほしいのですが・・・」

「・・・何となく分かるような・・・気がします・・・」

「雪田さん・・・すいませんね。私的なことで・・・さぁ・・・もう一杯・・・いきましょう・・・」

と、今野さんは言うのだが、こんな話を聞かされてから、では、飲みましょうという気持ちにはなれなかった。

僕は、再び娘さんの写真を見た。

笑顔の可愛い女の子だ。僕は心の中で手を合わせていた。

そして、昔のことが蘇ってきた。

僕の母親も同じように轢き逃げにあって死んだのだ。

僕が、小学五年の時の夕方のことであった。

僕が学校から帰ると、大勢の人が家に集まっていた。その中には警官の服を着た人もいた。

僕は、子供ながらに何か大変なことがあっということを感じていた。

ほどなくして、父がかけつけた・・・そして、僕を連れて病院へ向かったのだ。

遺体安置所には、父だけが入った。

僕には見せられないという母の姿だと聞いた。

母は、夜の食事の買出しのために、自転車に乗りスーパーへ向かっていた時の事故であった。

その時の、かすかな記憶が蘇ってきたのだ。

幸いなことにトラックを運転していた犯人は自首して逮捕された。

僕のその時の記憶は少ない。少ないというよりも思い出したくないのかもしれない。

父が肩を落とし、母の棺にすがる後姿だけを鮮明に記憶している。

母の葬儀の記憶はない。僕にとっての母は生きているのだと信じていたかったのだと思う。

轢き逃げという悪質な犯罪を何としても防ぐという気持ちは強かった。

それで、警官になろうと思っていたのも事実であったが、警官の採用試験に落ちてしまった。

それから僕の人生は大きく変わったように思えてならない。

もし、警官になっていたなら、間違いなく交通警官になっていたと思う。

十一年間の母の思い出だけが心の中に閉まってある。

とても優しかった母の記憶が・・・・








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「そうですな・・・もう一度見てもらえますか?うちの刑事が見たのですが、車の知識がないので見落としているかもしれませんな・・・じゃあ、映像がある部屋へ行ってみましょう・・・」

僕は、何ということを口にしてしまったのだろうか・・・後悔しても遅い・・・

映像の保管されている別室で、各インターとサービスエリアの映像を見ることになった。

時間は十時過ぎになっている。もう、こうなったなら仕方ない。付き合うしかないと・・・

一応、店のことが心配なので新藤の携帯へ電話した。

「新藤君・・・今日中に帰られないよ。容疑ははれたけど、事件のことで協力することになってしまった。明日には帰られると思うけど、もし、駄目なら、明日の落合さんの故障車の引取りをしてくれないか?朝の十時に自宅で待っているということだから・・・セーフティーローダーで行ってくれないか?」

「社長・・・また、事件に首を突っ込みましたね・・・僕ひとりで大丈夫ですから、協力して下さいよ。あっ、そうそう、新開刑事から電話がありました。社長の携帯へ電話したそうですが、留守電だったそうで店に連絡がありました。明日、横浜の手の件で分かったことがあるので、夕方に来るということでした。手の件と言えば分かるということです。電池はなくなっていませんか? 手とは何ですか?」

「電池?・・・えっ、ないようだよ。急に日光に向かったから充電していないよ・・・それと、手・・・あぁ、横浜の解体車を溶かす電気炉の工場で、手だけの死体・・・が発見されたんだよ。その件だな・・・こっちは、足首だから何かの関係あるかもしれない」

「そうですか、明日のことは気にしないで下さい。いつものように何とかなりますから・・・」

「そうか、頼むな・・・」

新藤という社員は、僕の気ままな探偵ごっこをよく知っている。だから、何も言わないでくれるのだ。

映像の巻き戻しが終わったということだ。

僕は、モニターの画面を見た。

昨日の深夜から、早朝の八時までの映像であった。

日光の近くのインターの全てを見ることにした。

深夜ということもあって、車の数は少ない。普通の車は少なくて大型のトラックが多い。

僕は、慎重に見た。何台かのベンツが写っていたが、全て違う車であった。

映像を見始めてから二時間が経過しようとしていた。

最後に残るのは、日光に一番近いインターだけとなった。

しかし、残念なことに、そのベンツの姿はなかったのである。

「やはり、ないですか?」と、今野刑事がため息をついた。

「えぇ・・・見当たりませんね。下の道を走ったという気がします。残念ですが・・・Nシステムの結果は明日でしたか?」と、僕が尋ねた。

「明日の昼ごろになると思います。それで見つからなかったなら・・・最悪です。東京のベンツを一台ずつ調べていくしかないと・・・」と、やるせない顔をした。

「そうですね。車の線からは時間がかかるかもしれませんが、例の足首の入っていたエンジンオイルの缶からの捜査はどうなっているのですか?」

「明日、製造した江戸川区のメーカーに刑事を向かわせます。その会社に連絡してありますから、そっちの線からのほうが早いかもしれません。残念ですが、高速ではないようですね?まさか、車が空を飛ぶことはないし・・・透明な車はありえないし・・・」

「透明?・・・今野さん・・・それですよ・・・それ・・・透明の反対・・・」

「透明の反対? 一体何ですか?全く分かりませんが・・・」

「今野さんの、透明という言葉で・・・思い当たりましたよ。僕の推理が当たっていたなら、簡単なトリックかもしれませんよ。もう一度映像を見てみましょう・・・」

今野刑事は納得がいかない顔である。

僕は、もしかしたなら・・・という思いで映像を見直した。

もうすぐ午前零時になろうとしていた。

僕は無我夢中で映像をくいいるように見た。

「今野さん・・・これですよ・・・これだ・・・あった・・・間違いない」

「えっ・・・ベンツは写っていないが?・・・ただのトラックじゃないですか?」

「トラックですよ。それも、キャリアカーです。この車の後ろに積載されている車を見て下さい。黒いボディカバーをかけていますが、間違いなくベンツの形です。これですよ・・・間違いないと思います。ベンツをキャリアカーに載せて運んだのです。ほら、運転席に男二人と女がいます・・・暗くて男と女としか分かりませんが・・・このキャリアカーですよ・・・映像の場所は、日光道の今市インターです。ここで降りて、そして、ベンツをキャリアカーから降ろして中禅寺湖へ向かった・・・そういうことだと思います・・・この運転席を拡大してみると顔がはっきりと分かると思います。早速、拡大してみて下さい・・・」

「雪田さん・・・やりましたね。すごいですよ・・・早速、拡大してみます。しかし、残念ですね。ナンバープレートが泥で汚れています。これは難しい・・・」

「えぇ・・・おそらく、わざと泥をつけて汚したのでしょう。それと、このキャリアカーはどこかで待機していたと思いますから、日光の町の中の聞き込みをお願いします。中禅寺湖までキャリアカーで行くということは人目につきやすいですから、必ず、どこかで待機していたと思います。また、帰りも、同じように積載して高速を走ったと思いますから、東京近辺のインターの映像も調査して下さい。どこかのインターで降りているはずですよ・・・それにしても手の込んだことをするな。何故なんだ?」

「確かに・・・・では、鑑識で拡大してもらいます・・・ひとつ大きな展開になるといいのですが・・・」

と、今野刑事は鑑識の部屋へ向かった。

しかし、まだ、疑問が残る。

男二人と女が一人・・・何故、三人で移動していたのだろうか?

足首を捨てるだけなら、二人だけでいいではないか?

それと、女は日光の町の中ではベンツに乗っていた。しかし、中善寺湖では乗っていなかった。

何故だ? 今市インターを降りて、男と女はベンツに乗り換えた。

間違いなく、もう一人の男はキャリアカーに乗って、そのベンツが戻ってくるのを待っていたはずだ。

そして、ベンツは中禅寺湖へ向かった・・・しかし、途中で女は消えていた。

何故? こういう行動をしたのだろうか?

どんなに考えても、答えは見つからない・・・

「雪田さん・・・写真の拡大ができましたが、皆、サングラスをしています。これでは無理ですよ。女の顔は別の写真で判明しましたが、他の男は無理です。しかし、不自然ですよ。ベンツの中では女はサングラスをどうして外していたのでしょうか?たまたま、外していた時にNシステムに写ったのでしょうか?」

「なんとも言えません・・・しかし、残念です。一歩進んだことには違いはないですが・・・ベンツの女とキャリアカーに乗っている女は、どうみても同一人物ですね。男のほうは黒くて大きなサングラスですから顔の輪郭も分かりません。後は、キャリアカーがどこで待機していたかということさえ分かれば、目撃者もいるかもしれません。ベンツを降ろしたり積んだりしているのですから・・・」

「少し進展ですよ・・・いゃー、雪田さんの力ですよ・・・さすがです・・・明日からの捜査に重要な証拠になります。それと、こんな時間になりましたが、東京へ帰られますか?」

「えっ・・・もう、一時ですか? いゃー、困ったな。これから帰るのも疲れますから、どこかに旅館はありませんか? でも、こんな時間じゃ・・・ないですよね?・・・」

「警察署内でよければ・・・狭い仮眠室はありますが・・・よかったら?」

「えっ・・・!!! 仮眠室? 狭い・・・」と、嫌な顔をしたら・・・その気持ちを察したのだろうか?

「私の家に来ませんか? 仮眠室よりはましだと思います。布団もありますよ・・・ここから車で十分の警察の寮ですが・・・」

「でも・・・ご家族に迷惑でしょう?」

「・・・いえ、独り者です・・・・」と、少し照れたような顔をした。

「・・・僕もそうです・・・」と、僕が、笑いながら言うと。

「独り者同士で・・・少し飲みますか?」と、今野刑事は言った。

ということで、今野刑事の寮に泊まることになったのだ。

またしても、スッポンの今野であった。

一日中、今野刑事と一緒にいて、彼の強引なやり方の裏にも優しさがあると思った。

そうでなければ、新開刑事との合同捜査はできなかったと思う。二人の鬼刑事も人の子だ。

日光南警察を出たのは、午前1時半になっていた。

今野刑事の寮のドアを開けると男の一人部屋ということが瞬時に分かる。

しかし、雑然としているのであるが、小物などは整理整頓されていた。

確かに、色気もない部屋である。

ふと、小さな仏壇が目に入った。そこには、幼稚園ぐらいの女の子の写真が置いてある。

僕は、その写真を見て、今野刑事の娘だと直感した。

何かの理由で亡くなったのだろうか?








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まぁ、結婚することは百%ないと思っていたが、この見合いが事件に関係するとは?・・・

そんなことを考えていると、今野刑事が戻ってきたのだ。そして、とんでもないことを提案した。

「雪田さん・・・署としてのお願いがあります。雪田さんだからこそお願いしたいのです。署長も同じ考えです・・・聞いてもらえますかね?・・・」と、真剣な顔つきであった。

僕は嫌な予感がしていた。新開刑事の言うスッポンの今野という言葉の響きが・・・

「えっ・・・何でしょうか?」

「これから捜査会議が始まりますが、できたなら出席して欲しいのです。雪田さんの意見も聞きたいということになりました。田舎警察ですから外車のことなどは知らない刑事ばかりです。そこで、お願いしたいのです。どうでしょうか? いや、そんなに遅くはならないと思いますが・・・」

「・・・僕が・・・会議に?・・・」と、嫌な顔をすると、食事や風呂も用意しているという。

何で、僕が警察の風呂に入らないといけないのか・・・僕は、勇気を出して尋ねた。

「明日は朝から用事があります。今夜中に戻っていないと困るのです。ですから・・・」

「それは分かっています。分かっていてお願いしているのです。雪田さんなら何かヒントになる意見があると思っています。是非、協力をお願いします。それと、新開刑事にも電話したら、雪田さんの意見を聞いたほうがいいとのことでした。ですから・・・」

何なんだ?・・・新開刑事にも電話したというのだ。

そして、僕が捜査会議に出ることを推薦しているというのだ・・・!

新開刑事もスッポンではないか?

人ごとだと思って簡単に言うんじゃない・・・と、心の中では、かなり憤慨していた。

一民間人を利用するというのは・・・確かに、一民間人として協力するということは義務なのかもしれない。

さっき帰った岩崎弁護士をうらやましく思った。

「雪田さん・・・お願いしますよ・・・協力を・・・是非・・・」と、今度は泣き落としだ・・・

「分かりましたよ・・・協力しますよ・・・でも、午後九時までですよ。それから帰っても、東京に着くのは深夜になります。それで勘弁して下さい・・・」

「有難う。会議は、七時からですから・・・それまでは食事の用意もしますし、風呂でも入ってゆっくりとして下さい・・・留置人の風呂ですが・・・で、カツ丼でいいですか?・・・」

「えっ、カツ丼?・・・はぁ・・・いいですよ」

あぁぁ・・・留置されている容疑者の入る風呂へ、容疑者の入る間にということらしい・・・

まあ、なかなか体験することもできないことではあるが・・・

そして、僕は警察へ拉致されてしまったようだ?・・・スッポンの今野刑事に・・・!!!

捜査会議は始まった。署長以下のおえらいさんが数人並んでいる。他の刑事は十人が出席していた。

捜査担当主任刑事は、今野刑事だ。

そして、足首が発見された状況を詳しく説明した。

さらに、Nシステムに写っていた不審な外車のことを僕に説明して欲しいという。

話が違うじゃないか? 何かの参考意見ということで僕は出席したのに・・・

仕方なく、不審なベンツについてのことを、もう一度説明した。

捜査会議といっても、何かのんびりしている。僕にとっては何かくだらない話が永遠と続いた。

こんなことで犯人を捕まえることができるのであろうか?

田舎警察は・・・こうなのか?

そして、時間だけが過ぎていった。

もう、八時半になろうとした時に、一本の電話が会議室に入った。

その電話は・・・新開刑事からであった。

横浜の手だけの死体についての情報だ。

今野刑事が電話に対応している。何度も頷いて電話は切れた。

「皆さん・・・今、多摩西部署の新開警部補からの報告です。横浜の手だけの死体の鑑定連絡です。男だということです・・・さすがに・・・都会の警察は早いです。こっちは明日か明後日にならないと結果は出ない?・・・とにかく、同一人物という線もあるので、場合によっては合同捜査ということになります。明日から頑張っていきましょう・・・」

何だ・・・これで終わりなのか? 明日から頑張る・・・そんなことでいいのか?

ということで捜査会議は終わった。

果たして僕が、この会議に必要だったのだろうかと?・・・・

「今野さん、僕は帰らせてもらいますが、いいですよね?」

「長い間すいませんでした。とても参考になりました。車の知識は何もない田舎警察ですから助かりましたよ。これで明日から本格的な捜査ができます。今のところは、足首のDNA鑑定が頼りなのと不審なベンツだけです。それにしても、東京ではベンツが沢山走っていると聞いています。こんな田舎ではめったに見ることはありません。ベンツがいたとしたら大体がその筋の者が乗っていますからね・・・ハハハ」

「そうですか・・・では、僕は・・・」と、席を立とうとした。

「雪田さん、もうひとついいですか?会議中にそのベンツのことを調べていました。もうすぐ分かると思いますから、もう少しいいですか?・・・」

「えっ・・・ベンツの何を調べていたのですか?」

「東京から来たのであれば、東北高速を使っていたと思われます。それで、栃木県内のインターに設置されているビデオの映像を調査していたのです。必ず、どこかのインターで降りたことは間違いないと思います。それで調査していたのです。後、三十分ぐらいいいですよね?」

と、また、僕に留まるように言う。

もう、九時過ぎになっている。僕としては早く帰りたいのだが・・・

この今野刑事の話し方は、人の気持ちを揺さぶるような感覚にしてしまう。

やはり、スッポンの今野という意味がひしひしと感じられた。

「まぁ・・・ここまでいたのですから・・・もう少しいてもいいですよ・・・」

と、本心とは裏腹な言葉を出してしまった。

「それは有難い・・・もう少しですから・・・また、何かアドバイスしてもらうと助かります。いゃー、新開さんは強力な人を知り合いに持っていて羨ましい限りですな・・・雪田さん・・・」

「そんなことはないですよ。ただ、中古車屋ですから車の知識はあります。ただ、それだけですが・・・」

「いやいや、そんな謙遜ですよ。今は車を使った犯罪が多発しているのに、どこの警察も車の知識が遅れているのです。もっと、勉強しないといけないですな・・・いゃ・・・助かる・・・」

と、言って、ゆっくりとタバコに火をつけた。

それから今野刑事との雑談が続いた。

突然、刑事部屋のドアが開いて、若い刑事が飛び込んできた。

「今野さん・・・映像の分析結果が出ました・・・」

「・・・で、どうなんだ?何か写っていたのか・・・どうなんだ・・・」

「例のベンツらしき車は写っていません。栃木県内の全てのインターやサービスエリアも調べてみましたが、どこにも写っていないのです。もしかしたら、高速以外の道を走ってきたのではないでしょうか?」

「何? 写っていない・・・高速を使っていないということか?それならば、一般道のNシステムを調べてくれ。日光の町では写っていたから、どこかで必ず写っているはずだろう?東京から栃木県に入る道の全てのNシステムを調べてみろ・・・」と、落ち着かない態度になった。

「今野さん、写っていないようですね?一般道を走って日光に来たのでしょうか?しかし、一般道なら、時間もかかるし・・・そんな無駄なことをするでしょうか?僕が犯人なら絶対にしないと思います。もう一度、映像を調べてみたほうがいいと思います。僕も協力しますから・・・」

と、また、口をすべらせてしまった。

余計なことを言ったことで、ますます帰る時間が遅くなる。僕の悪い性格だろうか?








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「今野さん、新開さんとは何の事件で知り合いになったのですか?」僕は尋ねた。

「あぁ・・・十年ぐらい前になるかな・・・覚えているかもしれないが、東京の浅草で殺人があって・・・旅館の女将が殺された事件だが・・・犯人が栃木の奴で、塩原に逃亡したんだな。それで、新開刑事が警視庁の担当として、私のいた塩原温泉警察へ来たんだ。そこで一緒に犯人を捕まえた・・・ということだよ。冬山の捜索で寒くてな・・・それで、よく憶えているんだ。それにしても、雪田さんや岩崎弁護士は、警察にとっては必要な人だと新開さんが言っていた。今後も宜しく頼むよ・・・」

「そうだったんですか・・・でも、宜しくと言われても・・・もう、東京に戻ります・・・早く事件が解決するといいですね・・・さて、岩ちゃん・・・行くぞ・・・」と、岩崎弁護士を見ると。

やけに静かだと思ったら、ソファーで熟睡していた。

本当にどこでも眠る特技があると思った。

半年前のマニラからの帰りにも、飛行機の中で一回も起きないで成田まで着いた。

こんな人でも弁護士として本当に素質があるのだろうか?

大学を出て、十年もかかって司法試験に合格した。それまでは、日々、アルバイトをしていたが、合格したとなると、大きな弁護士事務所にコネで入り、そして、一年で辞め、自分で事務所を開いた。

僕とは高校までの付合いであったが、僕の店から空き巣に現金を盗まれ、その犯人の弁護士として僕と再会したのだ。それからの付合いになる。

金になる民事の事件しかやらないが、僕と同じように殺人事件にも興味があり口を出すことも多い。

そして、大の車好きなのはいいのだが、年甲斐もなくスポーツカーを運転することが唯一の趣味でもあった。

「岩ちゃん・・・起きてよ・・・帰るよ・・・」と、何度か体を揺すって言うと。

「ん・・・あぁ・・・もうそんな時間か? しっかり寝たようだ・・・ 」

「そんな時間はないだろう・・・明日は仕事があるんだろう・・・帰るよ・・・」

「これからなら八時には着くかい? 」

「着くよ・・・用事でもあるのかい?」

「明日、実は・・・見合いなんだよ・・・それで準備が・・・八時に仲人さんが来て、明日の予定について話し合うことになっている・・・」

「見合い?・・・嘘だろう・・・岩ちゃんも結婚したいのかい?」

「そうじゃないんだよ・・・叔母さんの知り合いからの紹介なんだ。断れなくて・・・仕方なく・・・」

「ハハハ・・・何才の人?」

「バツイチで36才らしい・・・写真も見てないから・・・適当に会って・・・断るよ・・・」

「ハハハ・・・断るというよりも・・・断られるぞ・・・そんなもんさ・・・さっ、帰ろう・・・」

と、席を立とうとした時であった。

この事件の担当刑事たちが一斉にざわめいていた。

僕は今野刑事に尋ねた「何か?・・・ 何かあったのですか?」

「雪田さん・・・例の外車を運転していた男の顔が日光の町の中のNシステムに写っていたのです。サングラスはしていません・・・偽造ナンバーも一致しましたから同一の車だと思います。時間的には、朝の六時です。その後、中禅寺湖に向かったと思われます。しかし、中禅寺湖のそばのNシステムには女は写っていません。どこかで降りたのかもしれません・・・」

「で、運転している男の顔は?・・・」

「サングラスはしていませんが、横を向いているので・・・横顔しか・・・しかし、女の顔ははっきりと写っています。とにかく見てみますか?」

と、僕と岩崎弁護士は見せてもらった。

「男は・・・30才ぐらいですね・・・女は・・・同じ年ぐらい・・・」と、僕が言うと。

「うん・・・いい女だな・・・ОLというよりも、水商売のママのような・・・」と、岩崎弁護士。

「そうですね・・・かなり綺麗な顔をしていますね。しかし、男の顔は横顔ですから、何とも・・・残念です。車種はベンツのセダンですが、日本にこの形のベンツは何千台もありますよね?雪田さん・・・」

と、今野刑事が言った。

「そうですね・・・待てよ?・・・このベンツは・・・今野さん、そんなに多くはないと思います。確かに、普通の人が見たならベンツということですが、室内の中の色使いがディーラーものではなくて、並行して輸入したものに間違いありません。この室内の木目の色は正規ディーラーものではありませんよ。ディーラー物の木目の色は、濃い茶系です。しかし、この車の室内の木目は薄い茶系です。並行車に間違いはありません・・・」と、僕が言うと。

「さすが中古車屋さんですね・・・すると、並行して入ってきたこの型式のベンツで東京のナンバーを探せばいいということになりますか?しかし、どのくらいの台数か?・・・」

「はい、確かに、かなりの台数になると思いますが、ディーラーの車を除外することになりますから、大分少なくなることは間違いありません。それと、フロントグリルの形状を見ても、一九九九年から二○○四年までです。さらに、車体の色も・・・ダイヤモンドブラックという色です。この色は一見黒色に見えますが、黒に少しだけ光る塗料を使っているのです。そこまで絞り込むと台数はかなり減ると思いますが・・・」

「さすがだぁ・・・雪田さん・・・そこまで分かるのですか?・・・警察ならかなり時間がかかると思います。特に、ここのような田舎警察だとね・・・よし、署長に話してみよう・・・あっ、それと、もう少しいてもらえませんか?協力をお願いします・・・では・・・」

と、言って刑事部屋を出ていった。

「雪ちゃん・・・俺はどうなる・・・帰られないのかい?」と、岩崎弁護士が不安な顔をした。

「岩ちゃんは帰ったらいいよ・・・今夜、見合いの打ち合わせがあるんだろう?別に、いいよ・・・僕は乗りかかった船だからね・・・今日中に帰ったならいいけど・・・」

「なんだよ・・・雪ちゃんの車と2台で競争しながら帰れると思っていたのに・・・」

「何が競争だよ・・・岩ちゃんは、免許の点数がないし・・・運転は決して上手いとは?・・・な・・・」

「それはそうだけど・・・たまには雪ちゃんに勝ちたいと思ってね・・・仕方ないか・・・じゃあ・・・一人で帰るとするか・・・スッポンの今野さんに捕まったな・・・」と、小声で言った。

確かに、今野刑事のペースになっている。僕の車の知識が災いをもたらした?かもしれない。

余計なことを言ったばかりに・・・

岩崎弁護士は、一人で東京へ戻った。そして、明日は見合いの日だ。








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「なんだよ・・・岩ちゃん・・・俺まで巻き込まないでくれよ。何で日光まで来ないといけないんだよ。岩ちゃんの車が壊れなかったなら、こんなことにはなっていない・・・」と、僕は怒り心頭だ。

「すまん、すまん・・・しかしな、ここの刑事が勝手に疑っただけなんだよ。しっかりと調べたなら、こんなことにはなっていない。確かに、俺も悪いかもしれないが・・・今野さん・・・あなたがちゃんとしたいたなら・・・こんなことになっていないんだ・・・」と、岩崎弁護士は今野刑事を睨んだ。

と、丁度、多摩西部署の新開刑事から電話が入った。

電話対応している別の刑事が、僕のことを呼んだ。

「遅いよ・・・新開さん・・・何とか無罪放免になったけど・・・本当に・・・」

「すまん・・・遅れた・・・しかしな、俺が電話したからと言って釈放されることはないぞ。一応、雪ちゃんや岩ちゃんの警察に対する貢献を調べてから電話しようと思っていたら、課長が、他の管轄の事件に口を出すなと言うから遅くなった。何とか理由をつけて課長の許可をとって電話したんだよ。それにしてもよかったな・・・で、こっちも変な事件があったんだよ。日光では足首なんだろう?こっちでは、左手なんだ。手だけの死体が発見されたんだ。繋がるかもしれないな?」

「・・・左手・・・だけ? 人の?・・・」

「あぁ・・・人の手だ。横浜の車のガラを溶かす会社で発見されたんだ。何でも、シュレッダーをかけてから、溶かそうとしている時に、溶かす装置の不具合で一旦停止したらしい。そこで、溶かしているガラを取り出すことになったらしい。それで発見されたというんだ・・・」

ガラ・・・自動車を解体した場合に、エンジン等を取り外した残りのボディだけになった状態。

解体車をシュレッダーにかけて細かくして、その後、電気炉で溶かす。  

「横浜? なんで・・・管轄外じゃないの・・・・」

「そこなんだよ・・・その自動車のガラを持ち込んだ解体業者が多摩地区のうちの管轄なんだ。それで、調査することになった。シュレッダーでも完全に粉砕はできないから、その手が残ったらしい。今、横浜海浜警察署と合同で捜査することになった。他の死体の一部でも発見されたならいいが・・・」

「手って・・・指紋は?」

「熱で溶けかかっているし・・・指紋の採取は難しい・・・それと、手の中にメモのようなものがあったらしい。しかし、熱で溶けかかっていて判読するのは無理じゃないかと言うんだ。今、DNA鑑定しているから男なのか女なのかは分かると思う。解体車の中に入れて処分しようとしたと思うが・・・」

「こっちは、左の足首ですよ・・・ちょっと待って下さい・・・」

と、僕は、今野刑事に尋ねた。

「今野さん、足首というのは男ですか女ですか?」

「えっ・・・どういうことですか? 部外者には答えられません・・・警察だけの秘密です・・・」

僕は、これじゃあ長引くと思い。新開刑事に受話器を渡した。

「多摩西部署の新開警部補です・・・ちょっと話をしてもらいたいのです・・・」

「新開・・・新開さん・・・もしかして・・・今野ですが・・・」と、何やら知り合いのような態度だ。

「おぅ・・・今ちゃんか? 日光にいるのか? 久しぶりだな・・・元気かい?」

「新開さん・・・いゃ・・・ご無沙汰しています。あの節はお世話になりました。私もあの事件の後に移動になりまして日光南署にいます。懐かしいですね・・・雪田さんとは知り合いなのですか?」

「そうか・・・雪ちゃんとは、言わばパートナーみたいなものだ。この前の車の爆発の連続殺人事件でも協力してもらった。そこにいる岩崎弁護士も俺達の仲間なんだよ・・・」

「えっ・・・そうなんですか?あの四人が車の爆発で殺された事件・・・そうだったんですか?新開さんが解決したということは聞いていました。ここにいるお二人も関係していたのですか?」

「あぁ・・・雪ちゃんがいなかったなら解決できなかったよ・・・中古車屋だけど探偵もやっている。俺も協力してもらっているが、力強い男だよ・・・だから、取調べを受けることを聞いて電話したんだ。あの二人は人を殺すような奴らじゃないし、警察に協力してくれている。この前の連続殺人事件でも、警視総監から感謝状をもらっているんだよ・・・」

「えっ・・・それは・・・大変失礼しました・・・何にも知らないもので・・・本当に失礼しました。まるで犯人扱いをしていました。そんな方とは知らないで・・・・」と、僕たちを見た。

「あぁ・・・何かあったなら協力してもらうといいな・・・おっと、それで、足首が見つかったらしいな・・・こっちでは、手が見つかった・・・同一人物なのかは分からないが、もしかしたなら・・・・」

「手ですか?不思議ですね。今、DNA鑑定しています。明後日には、はっきりとしたことが分かると思います。今の段階では、男なのか女なのかも分かりません。ただ、死後、二日ぐらい?だと言うことです。大きさから言うと、二十六センチですから・・・多分、男ではないかと・・・」

「そうか・・・関係があるかもしれないな? とにかく、こっちもDNA鑑定しているから、すぐに何か分かると思う・・・同一人物なら、合同捜査になるかねしれないな・・・」

「えぇ・・・楽しみです。また、新開さんと一緒に捜査ができると思うと光栄です・・・」

どうやら、この二人は過去に同じ事件を担当していたのだろうと思う。

そして、一度、僕に電話を渡して・・・

「新開さん・・・夜には戻りますから、詳しいことを教えて下さよ・・・また、車に関係しているじゃないですか? また、楽しくなってきましたね・・・」

「・・・雪ちゃん・・・あんたは刑事じゃないよ・・・・ハハハ・・・まぁ、いいか・・・何かの役に立つかもしれないし・・・車に関係しているから、雪ちゃんにも相談することもあるかもしれない・・・後でな・・・そうだ、今野には気をつけろよ・・・スッポンの今野と言ってな、一度くらいついたら離さない男だよ。足首事件に首を突っ込むと大変なことになるから・・・」

「何で?・・・」

「あいつは、誰にでも協力させるというやり方なんだ。警察だけでいいのに、その関係を知っているとなるとしつこいぞ・・・ハハハ・・・まぁ、そんなことはないと思うが・・・ハハハ・・・じゃあな・・・」

と、電話は切れた。

スッポンの今野・・・確かに・・・顔がスッポンに似ていないこともないと思うと苦笑してしまった。

そして、このスッポンと言われている今野平太郎刑事に僕は噛み付かれることになる。








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「雪田さんですか? こちらは、日光南警察の池田というものです。あなたの知り合いの岩崎雄一とかいう弁護士を知っていますか?」

「えぇ・・・岩崎雄一なら友人ですが・・・何か?」と、僕は、何のことだろうと尋ねた。

「実は、殺人の容疑がかかっています。あなたのアリバイも必要になるかもしれません。こちらに来てもらいたい・・・そうでなければ、あなたの地元の警察で、あなたを保護してもらうことになりますが?」

「何だって? 殺人容疑・・・岩ちゃんが・・・冗談でしょ? そして、何で僕が関係しているのですか?」

「詳しいことは話せません・・・とにかく来てもらいたい・・・いいですか?」

僕は、何が何だか分からないままに、店を新藤に任せて日光へ向かうことになった。

その途中で、多摩西部署の新開刑事に電話を入れた。

「新開さん・・・岩ちゃんが、何やら変なことに巻き込まれているようです。そして、僕も関係していると・・・とにかく行ってきますが、何か情報を入れることはできませんか?」と、今までのいきさつを話した。

「岩ちゃんが・・・殺人容疑? 雪ちゃんもか? どうなっているんだよ・・・とにかく調べてみる?」

と、新開刑事も調べて連絡をくれるということになった。

僕が日光南警察へ着いたのは、午後の3時になっていた。

「雪田さんだね? こちらの部屋に来てもらいたい?」と、刑事が僕の腕をひっぱる。

「何があったのですか? 岩崎弁護士は?・・・」

「まぁ・・・ここに座りなさい・・・話は、それからだ・・・」と、まるで犯人扱いのようだ。

一方、岩崎弁護士の取調べは、膠着状態のままである。

何も証拠もでてこないし、アリバイもはっきりとしないので、ただ、取調室の中で時間が過ぎていた。

僕は、昨日からの僕の行動について尋問されていた。

岩崎弁護士の取調べで、意外な展開となっていた。

足首の発見された場所に残っていたタイヤ痕と、岩崎弁護士の乗っていたフェアレディZのタイヤ痕が一致しなかったのだ。発見場所のタイヤ痕は、さらに大型の車の車種であろうということが分かった。

フェアレディZには入らないタイヤのサイズだということも分かった。

つまり、排気量も五千㏄以上の外車ではないかということである。

イタリア製の高級タイヤだということである。

何でも、一本二十万円以上する高級品だということを聞かされた。

「だから言っただろう・・・俺じゃないと・・・もう、釈放してくれるな?」

と、岩崎弁護士は強気な態度になった。

「タイヤ痕が違ったからと言っても・・・シロになった訳じゃない。あんたのアリバイがない・・・」

「どうしようもない田舎警察だ・・・アリバイを証明するなんて無理だと言っているだろう・・・山の中に一人でいたのに・・・狸や狐に証明してもらえと言うのか?バカなことを・・・狸や狐じゃないなら、林の中の木や葉っぱにでも聞いてくれ・・・それよりも、Nシステムは調べているのか?」

と、岩崎弁護士は、まくしたてた。

「まぁ・・・そんなにカリカリしなくても・・・もうすぐ、Nシステムの画像が見られるからな・・・あんたの車が写っているだろうし・・・あぁ、それと、あんたの友人の雪田という中古車屋の奴もここに着いたと連絡があったな・・・別室で調べているが・・・」

「雪ちゃんも来ているのか・・・何故だ? 関係ないだろう・・・」

「いや・・・中古車屋なら、エンジンオイルを使うだろう・・・関係ないことはないな・・・あんたら二人の仕業ではないかと睨んでいる。これで、この事件も解決だな・・・証拠が出てきたなら何にも言えなくなる。吠えるのは今のうちだ・・・ハハハ」と、勝ち誇ったような態度であった。

僕の取調べも、かなり強引であった。

最初から犯人としてみていたのだろうか?

そして、中禅寺湖の近くの道路に設置されている、Nシステムの画像が判明したのだ。

確かに、岩崎弁護士の車も写っていたが、足首の発見された場所ではなく、岩崎弁護士が主張していた、別の場所であった。

岩崎弁護士の、眠そうな顔も秒単位でしっかりと写っていた。

丁度、あくびをしている間抜けな顔であった。

そして、足首の発見された近くのNシステムに写っていた車両の中に不審な大型の外車があった。

その車は大型の高級なベンツであった。

運転手は、黒のサングラスをしていて顔は分からない。

さらに、その車の東京のナンバープレートは偽造されたものだと判明したのだ。

これで、日光南警察署は、蜂の巣をつついたように騒がしくなっていた。

「岩崎さん・・・いや・・・岩崎弁護士さん・・・あんた・・・いや・・・あなたのことは関係ないことが分かりました・・・ご協力感謝します。あなたのアリバイは立証されました。あなたは中禅寺湖には行っていませんでした。Nシステムが・・・証明しました・・・」と、今野刑事は平身低頭だ。

「・・・だから・・・何度も・・・・もういいだろう・・・帰してくれるな?」

「はい、雪田さんの容疑もなくなりました。本当にご苦労さまでした・・・」

「・・・・・で、雪ちゃんはどこに?・・・」と、尋ねると・・・

「刑事部屋にいると思いますが・・・行ってみますか?」と、今野刑事は優しい言葉になっていた。

田舎刑事にありがちな態度である。

とにかく、少しでも怪しいと見たならば、とことん追求して、シロであったなら簡単に謝る。

手柄を立てたいと思う気持ちの表れなのかもしれない。

単純な刑事が、この世界には多くいることは知っているが、その典型的な刑事であった。

決して悪い人ではないのだが、人を見たなら疑うという職業病なのであろう。

岩崎弁護士は、僕のいる刑事部屋のドアをゆっくりと開けた。








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「車が壊れてね・・・今、修理したところなんだよ・・・」と、山井社長が答えた。

「故障ですか?大変ですね・・・で、このあたりの方ではないようですが?」

と、岩崎弁護士に尋ねた。

「はい・・・東京から来ました。途中で車が壊れて・・・山井さんにお世話になったのです。何とか修理してもらったので、これから帰るとこなのです・・・」

「東京?・・・車は何ですか?」と、岩崎弁護士の顔をじっくりと見た。

「車・・・フェアレディZですが・・・それが何か?」と、岩崎弁護士は何か嫌な予感を感じた。

「フェアレディ・・・ちょっと見せてもらおうか?どこにある・・・」

と、岩崎弁護士を疑いの目で見た。

何やら変な雲行きになりそうだ。

「工場の中にありますが・・・この人は弁・・護・・・」と、山井社長がいいかけたのだが、その今野という刑事は、聞く耳をもたずに工場へ走った・・・・

「山井の社長・・・東京の人も・・・来てくれないか?」と、大きな声で叫んでいる。

今野刑事は「この車か?あんた何で日光に来た?」と、岩崎弁護士に尋ねるというよりも尋問に近い。

「えっ・・・休日なので日光へドライブしようと・・・それで壊れた・・・何ですか?まるで、私を疑っているとしか・・・私は関係ないですよ・・・」

「関係あるかないかは、俺が決める・・・で、いつ、日光に来た?」

「今朝ですが・・・渋滞が嫌いなので早く出たのですが・・・関係ないですよ・・・私は・・・」

と、岩崎弁護士は、少し強く言った。その強く言った言葉に刑事は敏感に反応したのだ。

「いいから黙って俺の質問に答えていたらいい・・・で、どこで壊れたのか?」

「中禅寺湖の近くの獣道のようなところ・・・山井さんのところの社員の方にレッカーしてもらいました。関係ない・・・失礼じゃないか?何故、私が尋問を受けないといけないのか?私は・・・弁護・・・」

「何・・・弁護士を呼ぶというのか?ますます怪しい・・・とにかく、車は調査させてもらう。それと、署まで同行してもらう・・・いいな・・・」と、岩崎弁護士に話す余裕すら与えない。

そういうと、山井社長の止めるのも聞かずに、岩崎弁護士を車に押し込み連れ去った。

別の刑事が、フェアレディZを運転していった。

岩崎弁護士は、被疑者ということで連行されたのであった。

車の中で何度も弁護士ということを話したというのであるが、全く聞く耳をもたなかったのだ。

岩崎弁護士としては、警察の中で話したなら問題はないだろうと思うしかなかった。

が、彼の予想とは裏腹に、弁護士といえども、そうは簡単に信じてもらえることはなかったのだ。

日光南警察署の取調室にて、岩崎弁護士の取調べが始まった。

「弁護士なんだって? だったら弁護士のバッジを持っているだろうな?」

「今日は休暇だから持っていない。何度も言わせるな・・・弁護士だ・・・岩崎雄一・・・東京弁護士会所属・・・調べたならすぐに分かる・・・何度も言わせるなよ・・・」

「岩崎雄一・・・まぁ、それはいい・・・何故、あの場所にいたのだ?」

「殺人の容疑か?弁護士がそんなことをすることはない。当たり前じゃないか?」

「弁護士だからって殺人をしないという保証はない。最近は弁護士の事件も多いからな・・・で、何をしていた?足首を運んできて車が壊れてしまったのではないか?どうなんだ・・・」

「足首なんかは知らない・・・何で俺が人を殺さないといけないのだ?いい加減にしろよ・・・このままなら名誉毀損で訴えることもできるぞ・・・早く釈放しろ・・・」と、岩崎弁護士は真剣に訴えた。

「まぁ・・・そんなにあわてることはない・・・時間はたっぷりとあるしな・・・お前の車のタイヤ痕を調べている。多分一致すると思うが・・・早くしゃべったらどうだ?」

「あんたとは話しにならない。署長を呼んでくれ。そして、俺の素性を調べてみろ。俺は拘束されるようなことは何もしていないことが分かるはずだ・・・」

「まぁ・・・あわてるな・・・それで、日光に来たのはドライブだと聞いているが、何時に家を出た?」

「早朝の五時だ・・・渋滞が嫌だから早く出た。そんなことはどうでもいい。早く、署長を呼んでくれ・・・」

「岩崎とか言ったな・・・」と、続けて刑事が話そうとした時のことである。

ドアが開き、若い刑事が何やら今野刑事に囁いた・・・

「岩崎さん・・・あんたは本当に弁護士のようだな。調べてみたら分かった・・・」

「だから・・・何度も言ったじゃないか・・・それで釈放してくれるのだろうな?」

「いや、あんたが弁護士かどうかは関係ない。あんたには容疑がかかっている。少し、話を聞かせてもらうことにする。あんたのアリバイが立証されたならいいが、そうでなければ・・・」

「・・・そうでなければ・・・留置するということか?」

「さすがに弁護士さんだな・・・そういうことだ。朝からの行動を話してもらおうか?」

その今野という刑事は一歩もひかない。岩崎弁護士も完全に諦めたようだ。

「仕方ないなぁ・・・朝の五時に多摩市の自宅を出て、外環道へ入り、それから東北高速道に乗った。それで途中、一回サービスエリアで休憩して日光宇都宮道路を経由して日光へ着いたのは、朝の八時ぐらいだ。それから、中禅寺湖へ向かったが、その途中で車が壊れたということだ・・・」

「車が壊れた場所は、中禅寺湖のそばではなく、何で裏道の林の中なのだ。何でそんなところに入ったのだ・・・普通の人なら、そんなところへは行かない。地元の奴でも行かない・・・」

「だから・・・ちょっと冒険してみようと思って林の中に入っただけだ・・・特に理由はない・・・」

「ん・・・冒険? 四輪駆動でもないのに・・・おかしいな? 何か他に理由があったのではないか? 例えば、足首以外の・・・手とか頭を捨てようとしたのではないのか?」と、今野刑事は、大きな声で怒鳴った。

「バカを言うんじゃない。どうして俺がそんなことをする必要があるんだ。ふざけるな・・・」

「まぁ、どっちにしても、あんたの車の壊れた場所を捜索している。そこから何かが出てくると思うがね。山井モータースの社長が言うには、あんたの車が壊れた時に、東京の中古車屋の奴に連絡したらしいな。それで、山井を紹介してもらった・・・益々、怪しい・・・今回の足首の入っていたエンジンオイルの缶は、東京だけの限定販売だしな・・・その中古車屋と共犯じゃないのか? 今、中古車屋を調べているからはっきりとしたことは、すぐに分かる。こっちが、調べているうちに早くしゃべったほうがいいと思うがな・・・どうだ?・・・」と、完全に犯人扱いになっていた。

そんなやり取りを続けていた。

そして、僕の中古車店に、日光南警察から電話が入っていた。






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「岩崎さんですよね?雪田さんから聞いています。大変でしたね。とにかく、車を見てみましょう。直さないと帰られないですよね?・・・」

「お世話になります。東京を出てからは調子がよかったのですが、急にエンジンが止まってしまったのです。少しは車の整備の知識はありますが、こんなことは初めてです。完全にギブアップです。ご迷惑をかけますが・・・何とかお願いします」と、岩崎弁護士は丁重に話した。

「まぁ、どうなるかは分かりませんが?雪田社長からも言われていますから・・・とにかく、事務所で待っていて下さい。寒かったでしょうから、何か温かいものでも・・・」

と、山井社長は、壊れた車を見てみることになった。

もし、どうしようもないなら東京までレッカー車で運ぶしかない。

岩崎弁護士にとっては、とんでもない休日になっていた。

丁度、そのころ日光南警察署では、死体遺棄事件が発生していたのだ。


それも、左の足首しかない死体・・・


中禅寺湖のそばの林の中から足首だけの死体が缶の中から発見されたのだ。

山にハイキングに来たグループが、不審な缶があるのを見つけて、そして缶の蓋を開けたところ、足首が入っていたという。

足首は何か鋭利な刃物のようなもので切断されていたようだ。

付近を徹底的に捜査したのであるが、残りの遺体の?部分は発見されなかった。

日光南警察署では、死体遺棄事件ということで捜査本部が設置されたのだ。

足首の入っていた缶からの指紋は一切検出されていない。

さらに、その缶というものは、エンジンオイルの入っている市販のものであった。

一般の人が購入する四リットル缶ではなく、業者の使う十八リットルの丸い缶であった。

犯人が指紋をふき取ったのであろうか?

その、足首が発見された場所は、岩崎弁護士の車が壊れて立ち往生していた場所とは目と鼻の先であった。

「山井さん・・・警察の車のサイレンがすごいですね?何かあったのでしょうか?」

と、岩崎弁護士が尋ねた。

「そうですね・・・何でしょうか?それよりも、故障の原因が分かりましたよ・・・点火コイルの不具合です。点火の火花はでていますが、普通よりも弱いので、テスターでチェックしてみたら、エンジンを点火するだけの電圧がないのです。それで、点火コイルをよく見たら・・・横に少し亀裂がありました。そこから、電圧がリークしていたと思います。珍しいことですが、たまにありますよ。それで、点火コイルを交換したいのですが、新品は明後日でないと入りません。それで、近くの自動車解体屋で調達したいと思います・・・中古品でいいですよね?」と、山井社長が聞いた。

「そうですか。点火の火花はでていたのですが・・・コイルですか?そんなことは初めてです。でも、よかった・・・中古品でも何でもいいので何とか動くようにして下さい・・・」

と、岩崎弁護士はお願いして、山井社長は近くの解体屋へ向かった。

「雪ちゃん・・・点火コイルだったよ・・・」と、僕に電話があった。

「珍しい故障だよ・・・でも、よかったな・・・それと、今、テレビのニュースでやっていたけど、岩ちゃんのいる近くで、足首だけの死体が見つかったらしいよ・・・」

「えっ、足首?何なの?」

「中禅寺湖のそばの林の中からでたらしいよ・・・知らないの?」

「そう言えば・・・パトカーのサイレンが煩かったよ・・・多分、それかもしれない・・・足首だけ・・・嫌な事件だな・・・それよりも、何とか東京に帰られるよ。最悪な休日だよ・・・もう、昼だし、これから車が直ったとしても仕方ないから東京に戻るよ・・・」と、残念だという雰囲気が伝わってきた。

「どっちにしてもよかったな・・・気をつけて帰ってよ。山井社長には後で電話しておくから・・・ちゃんと修理代金は払ってよ。そんなにかからないと思うから・・・頼むよ・・・」

「あぁ、足りなくてもカードもあるし・・・よかったよ・・・」

と、岩崎弁護士からの電話は切れた。

この後、とんでもないことに岩崎弁護士は巻き込まれることになる。

一方、時を同じくして横浜の自動車のスクラップを引き受けている、鉄を溶かす電気炉の工場でも不思議な事件が起きていた。


一方、日光では・・・


「岩崎さん・・・直りましたよ・・・これでエンジンはかかります。意外と簡単なトラブルなのですが、素人の方なら難しいと思いますね。それと、さっき、通ったところに警察車両がいっぱいいました。何でも、死体遺棄事件らしいのです。丁度、顔見知りの刑事がいたので尋ねたのですが、足首だけらしいですよ。こんな田舎ではめったにない事件です。世の中は物騒になったものです。ここ数年は、事件らしい事件もなかったのですがね・・・」

「えぇ・・・さっき雪田君に電話して、テレビのニュースでやっていたそうです。やはり、この近所でしたか?足首だけというのは、バラバラ殺人かもしれませんね。最近は、殺人事件も日常茶飯事ですから、特に驚くことはないのですが・・・」

「そうですよね・・・都会よりも田舎のほうが恐ろしい事件が多いような気がします。弁護士さんなら、そんな事件は当たり前なんでしょうね?」

「そんなことはないですよ・・・僕は、どちらかというと民事専門です。刑事事件は金になりませんよ。時間だけかかって金にならない・・・特に殺人事件の弁護は・・・」

「そういうものですかね・・・私たちには分からないことですが・・・で、部品代と修理代で、一万円になりますが・・・支払いは?」

「えっ、レッカー代金は?」

「雪田さんの知り合いということで、レッカー代はいいですよ・・・」

「すいませんね・・・現金で支払います・・・本当に助かりました・・・」

と、岩崎弁護士は恐縮していた。

突然、日光南警察の刑事が、山井モータースにやってきたのだ。

「山井の社長いるかい?」と、まさに田舎刑事という風情の男であった。

「なんだ・・・今野さんか。で、例の事件かい?・・・」と、山井社長は尋ねた。

「あぁ・・・さっき、別の刑事から聞いたと思うが、死体遺棄事件だよ。死体遺棄だが、殺人事件だと思う。それで、昨夜から今朝にかけて不審な車を見ていないかい?タイヤのサイズからしてスポーツ系の車だと思う。鑑識の調査で、足首のあった場所にタイヤ痕が残っていた。新しいタイヤ痕だから間違いないと思う。幅の広いタイヤで、スポーツ系の車が履いているタイヤだということなんだよ・・・」

と、刑事が説明した。

「昨夜から・・・今朝かい?・・・昨夜は早く寝たからな・・・スポーツ系の車?うーん・・・見てないというよりも、外に出ていないしなぁ・・・」


「そうかい・・・それと、詳しく言うと、足首の入っていた缶があるんだが、車屋なんかが使う、エンジンオイルの缶なんだよ。それも、十八リットルの大きいものだ。さらに、調べて分かったのだけど、そのエンジンオイルの缶は、東京の一部の地域でしか販売されていないということなんだよ。何でも、新製品ということで、整備工場や中古車屋なんかにテスト販売したことまで分かっている。だから、東京ナンバーの車ではないかと・・・」

「さすがに警察は早いなぁ・・・東京ナンバーの車・・・ここいらは、観光地だから昼間は東京ナンバーの車は多いけど、夜から朝にかけては見たことがないな・・・道路の上に設置されているNシステムは調べたのかい?」

「あぁ、今分析しているよ・・・もうすぐ分かると思うけど・・・Nシステムの設置されていない道路もあるからなぁ・・・で、こちらの人は?初めて見る人だが・・・」

と、岩崎弁護士を見た。



















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■中古車屋探偵 雪田正三の殺人日記 2





溶けない死体  (日光 横浜 京都を結ぶ死体移動のトリック)





※あらすじ



日光の中禅寺湖のほとりで足首だけの死体が発見された。

横浜の精錬工場でも、溶けないで残っている左手だけが発見された。

その二つの人間の死体の一部は、同一人物と断定された。

過去の仲間からの脅迫。過去からの逃避・・・そのための殺人。

死体移動の綿密なトリック。完全なるアリバイ工作。

偶然と必然が複雑に絡み合う。

さらに、姉の妹を思う心。それがさらなる殺人となる。

日常の闇に潜む、人間の深層心理が悲しい。







登場人物



雪田正三 中古車店、プラスワンオートのオーナーでありながら、探偵を副業としている。

岩崎雄一弁護士 雪田の高校の同級生。のんきだが、雪田の良きアドバイザー。

新開徳治刑事 定年間じかの多摩西部署の警部補。独特の勘が鋭い。酒好きで、女に弱く涙もろい。

新藤翔 雪田の店の社員。車の構造についてのエキスパート。

今野平太郎 日光南警察署の刑事。新開刑事の知り合い。

木村竜彦 木村自動車解体の代表。雪田の友人。

野上幸則 南の中学から高校までの同級生。レストラン経営。事件の中心人物。

安永恵理子 野上の彼女。野上の店の店員であり、野上を信頼している。

南 紀夫 南と長年の付合いがある。事件の発端となる人物。

中川昭義 木村自動車解体の社員。野上の知り合い。殺害された。

久米泰典 小さなミニコミ誌の記者。殺人事件には興味がある。

 田中雅彦 野上の昔の仲間。行方不明になっている。



一章 死体発見

二章 意外な展開

三章 過去 

四章 糸がつながらない

五章 結末 





一章 死体発見





日本国内においては、年間の新車販売登録台数は、約五百五十万台である。

さらに、中古車の販売登録台数は、約三百万台である。



その中において、使用済み車・・・つまり・・・解体車は、年間に約四百万台が処理されている。

乗用車やトラック・バス等も含まれているが、大半は自動車解体業者の手によって処理されている。

解体適応車種であっても、一部の車は、諸外国・・・大半は発展途上国へ輸出されているのが現状である。

これだけの車が国内において流通しているのである。

国内の自動車解体業者の数も推計ではあるが3000社はあると言われている。



「雪ちゃん・・・助けてくれよ・・・車が壊れてしまったよ・・・何とかならないか?」

と、朝一番で、岩崎弁護士からの電話であった。

「故障?どこで・・・どうしたんだい?」

「日光だよ・・・休暇をとって日光までドライブしていたんだよ・・・そしたら、急にエンジンがかからなくなってしまった。何度セルを回しても、うんともすんとも駄目だよ。さっぱり原因が分からない。一応、点火系のチェックはしたけど・・・ガソリンもあるし。バッテリーもフル充電だし、困ったよ・・・日曜日で、整備工場もやっていないし、こんな田舎だと近くにはディーラーもないし・・・何とかならないか?」と、電話の向こうで情けない声を出している。

「そんなこと言われても・・・見ないと何とも言えないよ。ディーラーを探してよ。近くにないと言っても、日本なんだから・・・」と、あきれた声で言うと。

「何だよ。冷たいなぁ、エンジンがかからないと凍えて死んでしまうよ。気温は零度に近いんだ。何とかしてよ・・・このあたりに知り合いはいないかい?」

「いないよ。日光なんかに知り合いはいない。中古車屋ならいるけど・・・で、日光のどこなんだい?」

「カーナビで見ると、中禅寺湖の裏あたりになるよ。寒いよ。誰もいないし、車も通っていない。故障してから一時間になるけど、通った車は一台もいないよ。ちょっと、冒険で裏道に入ってみたけど、そんなことをしなければよかった。何とかしてよ。雪ちゃんから買った車だよ、それぐらいしてくれてもいいだろう?・・・」

「とにかく、携帯電話の電池がなくならないようにしてよ。十一月でも遭難する人がいるからな。何とかしてみるけど・・・保険会社には電話したのかい?保険会社ならレッカーの手はずをしてくれるはずだよ」

「保険・・・お金がもったいないから、人身と対物しか加入していないんだよ。まさか、車が壊れるとは思っていないし、去年買った車だよ・・・そんなに早く壊れるなんて考えていないよ」

「何を言っているんだい。去年の車かもしれないけど、新車からだと八年たっているんだよ。どこかが壊れてもおかしくないだろう。何で保険代をケチるんだよ・・・本当に・・・ったく」

「そんなこと言われても・・・何とかしてよ。寒いよ。死にそうだ・・・」



岩崎弁護士は、一人でドライブするのが好きなのは知っていたが、日光の山奥の裏道で壊れるとは何という運のなさだろうと思った。

確かに、日光の十一月の朝は寒い。

交通渋滞をさけて早朝に出発したということであった。

僕は、朝から岩崎弁護士のトラブルの始末をすることになったのだ。

新藤君が「岩崎さんに何かありましたか?」と、尋ねた。

「車が故障したらしい。それも、日光の山奥で・・・寒くて死にそうだと騒いでいたよ。点火系のテストはしたらしいけどね。駄目らしい、セルも問題はないし・・・何だろう?」

「フェアレディZですよね?」

「そうだよ。そんなに簡単に壊れる車じゃないけど?・・・」

「・・・何とも?・・・見てみないと無理ですね・・・で、何とかなりそうなのですか?」

「・・・何ともならないから、知り合いの中古車屋に電話して助けてもらうことにするよ。日曜日だからいるとは思うけどね・・・」と、僕は電話してみた。

運のいいことに、そこの社長がいて、岩ちゃんの車を運んでくれるということになった。

早速、そのことを岩ちゃんに電話して連絡をするように伝えたのであった。

この件については、これで何もなく終わったのであるが、このことが大きな殺人事件へと発展していく。

中古車屋の一日は、平凡である。車を探している客に車を買ってもらうという至極単純な日々だ。

しかし、中古車屋の命は車の仕入れだ。

仕入れの商品・・・車がないと一銭にもならない。

国内の中古車の約六十%以上は、全国にある中古車オークション会場から仕入れられている。

かくいう僕の店も、そのほとんどがオークション仕入れなのであった。

その山井という男ともオークションで知り合ったのだ。

元々は、整備工場なのだが、昨今の不況のせいで、中古車の販売を三年前から始めたという。

オークション会場で、ふとしたことで知り合いになり、それからの付合いであった。

岩崎弁護士は、山井社長の社員のレッカー車で、壊れた車を引き取ることになり、2時間後には、山井モータースの整備工場へ着いたのだ。



































■勝汰章の著作刊行本

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「いや、この街で暮らしたいなら、新しい街長の下で頑張ってほしいと説得したが、女同士の話し合いは無理だった。美幸も女将を説得したが、聞く耳を持たなかった。それで、街を出るように言ったが、今までの裕福な生活を捨てることはできなかったようだ。俺は元の愛人として出来るだけのことはしてやるつもりだったが・・・」


「それで?」


「自殺したよ。幸福屋の店内で。惨めな生活をするぐらいなら死を選んだということだ。一度、街長になった女はそういうものだよ。自殺したことで美幸には十億円が入る。娘のことを思ってのこともあるとは思うが・・・今度は絶対にミスはしない。順子の母親・・・勝枝さんは、そんなバカなことはしないと思うが?」


「当たり前です。あの女は金と男と権力に執着したいたのです。私は、一生署長さんの命令の下に着いていきます。あんなバカな女にはなりません。生活できるだけのお金があればいいのです。順子と茂さんも議員ですし、安定した生活が約束されているのです。全ては署長さんのおかげです。これからは、他の町からの転入者を増やしていくことが署長さんへの恩返しです。裏切りは絶対にしません」


「勝枝・・・お前は信用できる女だ。この街が末永く続くことを考えてくれ。もし、俺に何かあったなら、茂君と順子で街を発展させてほしい」


「はい・・・」と、笑った顔は、どこか女将に似ていると思った。



新しい街長・・・それは順子の母親。



僕は、心に決めたことがある。



いずれ、この街の頂点に立つ。


その頂点に一番近いのは僕なのだ。


人が人の人生を左右している。人の死が人を幸せにする。


こんな素晴らしい街は世界中を探してもない。


僕も、叔父と叔母をこの街に住まわせて、短い老後は幸せで裕福に暮らしてほしいと思った。


順子の母親が街長になると僕は議長に就任した。


これからは、僕も街を支配する。


何があったとしても、この街のシステムは守る。


この街は、誰から見ても不思議で怪しいと思うだろう?


しかし、今のこの国を見渡してみるがいい。長生きしても何かいいことがあるのか?生まれてから将来は幸せに何なれるという保証があるのか?


長生きが目標なのか?否、短くても生きている間に裕福で安定した生活を送ることが一番ではないか?人生は六十年として考えたなら、こんなに素晴らしい街はない。


いつかは死ぬがその死に方は選べない。選べないのなら、この街に来なさい。

あなたの好きな死に方も選べる街へ・・・




それから数日が経過した。



「順子、署長は何の病気なんだい?」


「えっ、誰から聞いたの?」


「街の医者が教えてくれたよ。医者も僕の仲間だ」


「お母さんが言っていたわ。癌らしいの・・余命は三ケ月・・・」


「そうか・・・そろそろ、次の街作りの準備をしないといけないな?・・・」


「知っていたのね?」


「何故、黙っていたんだい?」


「・・・確定したなら言おうかと・・・」


「順子、お前には俺は必要がないということか?」


「そんなことはないわ。お母さんに口止めされていたから・・・でも、茂さんには話すことにしていたのよ。信じて・・・」


「一応信じるが?お母さん・・・街長も女だな・・・俺も気をつけないといけない」


「女?」


「女だよ。金と権力が好きな女になった」


「私は違う。茂さんが必要よ。一緒に暮らしたいのよ」


「街長は違う。もう署長の代わりの男がいるんだろう?署長はもう駄目だ」


「それも知っていたの?」


「あぁ・・・署長が僕たちを信用しているとは思えない?順子はどう思う?」

「年寄りは先に死ぬのよ。それがルール。だから・・・」


「俺たちは死なない。年をとっても死なないようにルールを変更する。それで安泰だ。お母さんたちには悪いが・・・」


「仕方ないわ。お母さんも女将と同じ道を歩くのね?」


「それでいいだろう?」


「いいわ・・・二人のために・・・」


「住民のために・・・」



その後、署長は病死。街長は不慮の事故死として処理された。



新しい署長はもちろん僕だ。順子は議長。街長は僕の叔母に決まった。



何事もなかったかのように街は平静だ。



「転入ですか?この街のルールを説明しますね・・・」と、いつもの住民登録係の明るい声が役場に響いていた。



終わり









次回からは「溶けない死体」を掲載します。








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