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「岩崎さんですよね?雪田さんから聞いています。大変でしたね。とにかく、車を見てみましょう。直さないと帰られないですよね?・・・」

「お世話になります。東京を出てからは調子がよかったのですが、急にエンジンが止まってしまったのです。少しは車の整備の知識はありますが、こんなことは初めてです。完全にギブアップです。ご迷惑をかけますが・・・何とかお願いします」と、岩崎弁護士は丁重に話した。

「まぁ、どうなるかは分かりませんが?雪田社長からも言われていますから・・・とにかく、事務所で待っていて下さい。寒かったでしょうから、何か温かいものでも・・・」

と、山井社長は、壊れた車を見てみることになった。

もし、どうしようもないなら東京までレッカー車で運ぶしかない。

岩崎弁護士にとっては、とんでもない休日になっていた。

丁度、そのころ日光南警察署では、死体遺棄事件が発生していたのだ。


それも、左の足首しかない死体・・・


中禅寺湖のそばの林の中から足首だけの死体が缶の中から発見されたのだ。

山にハイキングに来たグループが、不審な缶があるのを見つけて、そして缶の蓋を開けたところ、足首が入っていたという。

足首は何か鋭利な刃物のようなもので切断されていたようだ。

付近を徹底的に捜査したのであるが、残りの遺体の?部分は発見されなかった。

日光南警察署では、死体遺棄事件ということで捜査本部が設置されたのだ。

足首の入っていた缶からの指紋は一切検出されていない。

さらに、その缶というものは、エンジンオイルの入っている市販のものであった。

一般の人が購入する四リットル缶ではなく、業者の使う十八リットルの丸い缶であった。

犯人が指紋をふき取ったのであろうか?

その、足首が発見された場所は、岩崎弁護士の車が壊れて立ち往生していた場所とは目と鼻の先であった。

「山井さん・・・警察の車のサイレンがすごいですね?何かあったのでしょうか?」

と、岩崎弁護士が尋ねた。

「そうですね・・・何でしょうか?それよりも、故障の原因が分かりましたよ・・・点火コイルの不具合です。点火の火花はでていますが、普通よりも弱いので、テスターでチェックしてみたら、エンジンを点火するだけの電圧がないのです。それで、点火コイルをよく見たら・・・横に少し亀裂がありました。そこから、電圧がリークしていたと思います。珍しいことですが、たまにありますよ。それで、点火コイルを交換したいのですが、新品は明後日でないと入りません。それで、近くの自動車解体屋で調達したいと思います・・・中古品でいいですよね?」と、山井社長が聞いた。

「そうですか。点火の火花はでていたのですが・・・コイルですか?そんなことは初めてです。でも、よかった・・・中古品でも何でもいいので何とか動くようにして下さい・・・」

と、岩崎弁護士はお願いして、山井社長は近くの解体屋へ向かった。

「雪ちゃん・・・点火コイルだったよ・・・」と、僕に電話があった。

「珍しい故障だよ・・・でも、よかったな・・・それと、今、テレビのニュースでやっていたけど、岩ちゃんのいる近くで、足首だけの死体が見つかったらしいよ・・・」

「えっ、足首?何なの?」

「中禅寺湖のそばの林の中からでたらしいよ・・・知らないの?」

「そう言えば・・・パトカーのサイレンが煩かったよ・・・多分、それかもしれない・・・足首だけ・・・嫌な事件だな・・・それよりも、何とか東京に帰られるよ。最悪な休日だよ・・・もう、昼だし、これから車が直ったとしても仕方ないから東京に戻るよ・・・」と、残念だという雰囲気が伝わってきた。

「どっちにしてもよかったな・・・気をつけて帰ってよ。山井社長には後で電話しておくから・・・ちゃんと修理代金は払ってよ。そんなにかからないと思うから・・・頼むよ・・・」

「あぁ、足りなくてもカードもあるし・・・よかったよ・・・」

と、岩崎弁護士からの電話は切れた。

この後、とんでもないことに岩崎弁護士は巻き込まれることになる。

一方、時を同じくして横浜の自動車のスクラップを引き受けている、鉄を溶かす電気炉の工場でも不思議な事件が起きていた。


一方、日光では・・・


「岩崎さん・・・直りましたよ・・・これでエンジンはかかります。意外と簡単なトラブルなのですが、素人の方なら難しいと思いますね。それと、さっき、通ったところに警察車両がいっぱいいました。何でも、死体遺棄事件らしいのです。丁度、顔見知りの刑事がいたので尋ねたのですが、足首だけらしいですよ。こんな田舎ではめったにない事件です。世の中は物騒になったものです。ここ数年は、事件らしい事件もなかったのですがね・・・」

「えぇ・・・さっき雪田君に電話して、テレビのニュースでやっていたそうです。やはり、この近所でしたか?足首だけというのは、バラバラ殺人かもしれませんね。最近は、殺人事件も日常茶飯事ですから、特に驚くことはないのですが・・・」

「そうですよね・・・都会よりも田舎のほうが恐ろしい事件が多いような気がします。弁護士さんなら、そんな事件は当たり前なんでしょうね?」

「そんなことはないですよ・・・僕は、どちらかというと民事専門です。刑事事件は金になりませんよ。時間だけかかって金にならない・・・特に殺人事件の弁護は・・・」

「そういうものですかね・・・私たちには分からないことですが・・・で、部品代と修理代で、一万円になりますが・・・支払いは?」

「えっ、レッカー代金は?」

「雪田さんの知り合いということで、レッカー代はいいですよ・・・」

「すいませんね・・・現金で支払います・・・本当に助かりました・・・」

と、岩崎弁護士は恐縮していた。

突然、日光南警察の刑事が、山井モータースにやってきたのだ。

「山井の社長いるかい?」と、まさに田舎刑事という風情の男であった。

「なんだ・・・今野さんか。で、例の事件かい?・・・」と、山井社長は尋ねた。

「あぁ・・・さっき、別の刑事から聞いたと思うが、死体遺棄事件だよ。死体遺棄だが、殺人事件だと思う。それで、昨夜から今朝にかけて不審な車を見ていないかい?タイヤのサイズからしてスポーツ系の車だと思う。鑑識の調査で、足首のあった場所にタイヤ痕が残っていた。新しいタイヤ痕だから間違いないと思う。幅の広いタイヤで、スポーツ系の車が履いているタイヤだということなんだよ・・・」

と、刑事が説明した。

「昨夜から・・・今朝かい?・・・昨夜は早く寝たからな・・・スポーツ系の車?うーん・・・見てないというよりも、外に出ていないしなぁ・・・」


「そうかい・・・それと、詳しく言うと、足首の入っていた缶があるんだが、車屋なんかが使う、エンジンオイルの缶なんだよ。それも、十八リットルの大きいものだ。さらに、調べて分かったのだけど、そのエンジンオイルの缶は、東京の一部の地域でしか販売されていないということなんだよ。何でも、新製品ということで、整備工場や中古車屋なんかにテスト販売したことまで分かっている。だから、東京ナンバーの車ではないかと・・・」

「さすがに警察は早いなぁ・・・東京ナンバーの車・・・ここいらは、観光地だから昼間は東京ナンバーの車は多いけど、夜から朝にかけては見たことがないな・・・道路の上に設置されているNシステムは調べたのかい?」

「あぁ、今分析しているよ・・・もうすぐ分かると思うけど・・・Nシステムの設置されていない道路もあるからなぁ・・・で、こちらの人は?初めて見る人だが・・・」

と、岩崎弁護士を見た。