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前と違って、ラフな格好をしている。しかし、時計や指輪は高級なものであった。

時計は、ブレゲだし、指輪はブルガリだと思う・・・さらに、シャツは、エルメスのカシミアだ。

ズボンは、何か高級なものだと分かるが、どこのブランドかは知らない。

どちらにしても、上から下まで、数百万円というところだと思った。

金のない僕にとっては高値の花である。憧れでブランドの本を見ていたので、それが高級なものだと分かった。

「今度は何ですか? 今日は、休みなのでゆっくりしたいのですが?」

「ほんの少しだけです・・・南紀夫さんを知っていますよね?」

「南・・・紀夫・・・友人ですが・・・それが何か?」

「いえ、以前に安永恵理子さんと、一千万円を運んだということですよね?」

「一千万円・・・あぁ、あれですか・・・えぇ、一人では危険なので南にお願いしたのです。ただ、それだけですが・・・そんなことはよくあることです。すぐに金が欲しいという人も多くてね。振込みよりも現金をすぐに欲しいという人です。だからお持ちしただけですよ。それが何か?」

「いえ、それはいいのですが、南さんという人とは、どういう関係ですか?」

「変なことを聞きますね・・・南は、僕の友人ですよ。ただの友人です」

「ただの友人に、一千万円もの大金を運ぶことを手伝ってもらうのも?・・・普通じゃ・・・」

「ハハハ・・・大金? たかだか一千万円ですよ。しかし、何かあったなら困りますから南に頼んだのです。丁度、他の社員も忙しい時間帯でしたからね・・・そんなに不思議なことではありませんよ・・・大金といえば大金かもしれませんが、私たちの業界じゃ・・・普通なんですがね・・・ハハハ」

「そういうものですか? それで、南さんの居場所は知っていますか?」

「勿論、知っていますよ・・・今は、関西のほうへ行ってもらっています。大きな取引になるかもしれないという会社がありましてね、そこの調査に行ってもらっていますが、それが・・・何か?」

「調査?・・・」

「南は、私の外部調査員ですよ・・・もう、何年もやってもらっています。こちらも貸し付けるわけですから、調査するのは当たり前でしょう。個人や企業の調査機関は、いくつかありますが、それだけでは分からないこともあるのです。それで、実地調査をしているのです。この業界じゃあたり前ですよ・・・」

「そうですか・・・で、南さんは関西にいるということですが、ちなみにどちらでしょうか?」

「関西一円ということです。何社もありますからね・・・明後日には戻ってくると思いますよ・・・さっき連絡がありましたから・・・それが何か? 南に何かあるのですか?もういいでしょう・・・少し眠りたいのですが・・・何かの事件の捜査ですか・・・だったら、その事件のことを教えて下さい。まるで、私が犯人のような尋問じゃないですか?」

「いえ・・・ちょっと事件が・・・それで、南さんの携帯番号を教えてもらえませんかね?それと、野上さんの番号も?・・・」

「事件? 私には関係ないですよ・・・番号は・・・いいですよ。しかし、仕事中は電話に出ないことが多いから、何度もかけないと無理ですよ。それだけは言っておきますが・・・」

と、番号をメモした。

「お休みのところ・・・・」と、僕たちは部屋を出た。

受け答えといい、怪しいという雰囲気とは程遠い感じであった。

「南の電話番号から、南の素性が分かる。電話番号さえあれば何でも分かるよ・・・」

と、新開刑事は、少し微笑んだ。

そして、署に戻りその電話番号を職権で調べた。

ほどなくして南紀夫の住所は分かった。

宇都宮市大田中町五―四三一 大田マンション 二○五号

南 紀夫 33才

上記の住所から本籍を照合した。

本籍地 京都府京都市伏見区原石町一番通り三―十

南も野上と同じ京都の出身であった。年も同じである。

さらに、殺害された中川昭義も京都の出身である。

「今ちゃん、足首のことはお前に任せるよ。どうしても京都に行きたくなった。京都に何かあると思う。三人が京都の出身ということも気になる。京都に何かがあるとは思わないか?」

「・・・京都ですか? 偶然としては出来すぎのように思います・・・では、こちらは、安永と南の宇都宮での行動を徹底的に調査してみます。では、これから日光に戻ります・・・」

と、最終電車で日光へ戻った。

「新開さん、京都に何かこの事件の発端があるような気がしてきましたよ。野上は元暴走族・・・もしかしたなら、南もそうじゃないかと? さらに、中川も・・・そんな気がしますが・・・」

「あぁ、そうかもしれないな。しかし、三人が昔仲間としても、今回の事件とのつながりは何なんだ。中川は殺されている・・・何かの仲間割れということも推測できるが、そうなると、足首と手は一体何なのだ。もう一人、誰かを殺したということか?」

「いえ・・・そうなら、中川の殺害方法と死体の捨て方が、あまりにも乱雑すぎます。足首と手は、身元を分からなくするためだと思いますが、中川は、あまりにも無造作に捨てられています。同じ、犯人ということは考えにくいと思いますよ・・・仮に、中川の死体がこんなに簡単に発見されるということは、その線から警察が調べたなら、すぐにつながるということは子供でも分かりますよ。中川が殺害された時の野上のアリバイを調べる必要があると思います。それと、関西へ行っている南のアリバイも・・・」

「雪ちゃん・・・その通りだよ。野上のアリバイは、署の刑事が調べている。すぐに分かると思う。しかし、野上のような奴は、簡単には尻尾を出すことはないだろう・・・完全なアリバイを用意していると思うが?・・・」

「僕もそう思います。仮に野上が主犯だとしても、必ず、アリバイは用意しているでしょう。あの男なら・・・」

「あぁ、冷静な奴だよ。警察の質問にも動じることもなく答えていた。普通の奴なら、少しは緊張しているのが普通だ。その緊張感が何もない・・・かなり、場数を踏んできた奴だと思う。これは、簡単にはいかないような事件かもしれない。雲の中から暗闇へ入ったようだよ・・・雪ちゃん・・・京都へ行ってくるよ・・・必ず何かがある?」

「京都ですか? しばらく行っていませんね・・・確か、もうすぐ、※空也踊躍念仏ですよ・・・一度、見たいと思っていたのですが・・・東山の六波羅蜜寺で行われるのです・・・」

空也踊躍念仏祭(くうやゆやくねんぶつ)  かくれ念仏とも言われ、今年の罪を消滅させ、新年が良い年であるように祈る行事。

「雪ちゃんは、詳しいな・・・その名前を聞いたことがあるぞ・・・もう、そういう時期か・・・全ての罪が・・・犯罪がなくなるように祈ってくるか? そして、犯人を検挙するためにもな・・・」

「えぇ・・・僕も連れて行って下さい。京都にも知り合いがいますから、ちょっと顔でも出してみたいと思っています・・・」

ということで、京都へ行くことになった。

また、僕の悪い探偵癖が出てきたのかもしれない。

店は、新藤にまかせて、二~三日行ってくることになった。

僕たちが、京都へ行く日のことであった。

日光南署においても安永恵理子への任意聴取が再度行われることになった。

安永恵理子は、任意ということでも素直に従ったということであった。

「担当の今野と言います。今日は、ご足労です。少し伺いたいことがありますので答えていただけますか?」

「私の知っていることなら・・・」

「まず、最初に、南紀夫さんとのことについて聞きます。付き合いは長いのですか?」

「いえ、野上さんから紹介されました。二年ぐらい前だと思います。野上さんの友人ということで紹介してもらいました。それからの付き合いですが・・・調査員ということでした。色々な人の調査をしていると聞いています」

「何の調査員ということですか?」

「金融関係だと・・・詳しいことは知りません・・・色々な金融関係の借りる人の調査だと・・・」

「そうですか。それで、あの日、つまり、一千万円を運んだ日のことですが、どうして南さんに依頼したのですか?」

「野上さん・・・社長が、依頼したと思います。私ひとりだと危険だということでした。日光の郊外にある倉田製作所という工場へ運転資金を持っていったのです。それで・・・南さんが同行してくれました。その倉田製作所の社長さんも南さんが調査したということを聞いています。それで、南さんが・・・」

「なるほど、でも、おかしいですね。日光市内では、ベンツの中に安永さんの姿は、Nシステムに写っていましたが、中禅寺湖のNシステムには写っていませんでした。ということは、倉田製作所へ行った後に、あなたはベンツを降りたということですか? それにしても、倉田製作所と中禅寺湖とは反対の方角です?」

「はい、倉田製作所へお金を届けてから、私は、所用で降りました。その後は、南さんが運転して帰ったと思いますが、どこかに寄るようなことを言っていたのを記憶しています。何かの調査をするということでした・・・」

「どこでベンツを降りたのですか?」








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安永恵理子という女も、野上幸則から、この件で連絡があったのであろうか? 

今野刑事の質問には淡々と答えていたという。

僕は、何かあると直感した。警察の動き・・・つまり、このような細工をしたなら必ず警察はやって来る。

しかし、そこでシロということになったのなら、何の問題もない。

僕は、この事件の奥深さを感じていた。

全て、予定の行動ではなかったのか? 警察の行動を見透かしているのだと思った。

野上への調査は引き続き行われ、次は、中川昭義のことについて尋ねることになったのだが、このナンバープレートの大きなミスで捜査本部は、一から立て直すということになった。

本庁の玉井警視も、捜査員全員に渇を入れ始めた。

「とんでもないミスをしてくれたものだ。子供でも騙せるようなことを、何故、気づかない? 今野刑事・・・あんたの署の汚点だ。この件は、俺の責任じゃない。その担当した刑事には処分が下ることになる。それと、上司・・・署長以下だが・・・何らかの処分になる。覚悟しておいてくれ。それにしても、こんな単純なミスを誰も分からなかったのか? 話にならない・・・田舎警察が・・・」

今野刑事は、何も弁解することはできないで玉井警視に何度も頭を下げていた。

玉井警視は、どうしようもない刑事たちだと言う態度を隠そうともせずに本庁へ戻った。

「・・・今ちゃん・・・仕方ないな・・・俺たちも見過ごしていたんだからな・・・」

と、新開刑事がスッポンの今野を慰めた。

捜査本部は、もう一度この事件を見直すということになった。

何か見落としているところがあるかもしれない?

新開刑事は、事件の経緯をホワイトボードに書きなぐっていた。

日光でオイル缶に入った足首が発見。横浜の電気炉会社で、溶けない手が発見。

足首を運んできたと思われるベンツを運転していた男は? その横に乗っていた女は、安永恵理子。

安永恵理子の会社の社長の野上幸則は、京都の鴨川で死体で発見された中川昭義のアパートの保証人。

安永恵理子の乗っていたベンツは、野上が買い与えたもの・・・

安永と野上は恋人関係・・・・・・ただ、それだけのことであった。

何かがつながっているとは思えないが、新開刑事のいう雲の中なのであろうか?

この事件が、どこでどうつながるのか、または、全く別々の事件になるのであろうか?

「今ちゃん・・・雪ちゃん・・・安永恵理子のベンツを調べる必要があるな?」

「えぇ、新開さん。運転していたベンツは確認しています。雪田さんが言っていたように、フロントグリルの中に改造したホーンもありました。写真に写っていたベンツと同一なのは間違いはありません。それと、そのベンツのタイヤを調べてみたのですが、さっき、日光南署から連絡がありました。足首が入っていたオイル缶のそばの車のタイヤ痕とは違うのです。安永の乗っていたベンツのタイヤほうが小さいのです。安永のベンツのタイヤはノーマル・・・つまり、新車の時についていたものです。となると、違う車でしょうか?」

「今野さん・・いえ・・・そうとは限りません。タイヤは交換することができますから・・・それと、安永のベンツのタイヤは新品でしたか? もしかしたなら、新車で買ってすぐに高性能なタイヤに交換する人も多いので・・・?」と、僕は尋ねた。

「いえ・・・1万キロは走っているような純正のタイヤです。私もこの目で確認しましたから間違いはありません。確かに、タイヤを交換していたなら・・・いくらタイヤ痕があったとしても意味ないですね・・・それと、そのベンツのタイヤに付着していた土も調べてみましたが、オイル缶の発見されたあたりの土質とは違っていました。だから、この車ではないかもしれません?・・・」

「そこまで調べていたのですね・・・だったら、ベンツを運転していた男の所在は聞いていないのですか?その男を調べたほうが早い・・・新開刑事の言うとおりだと・・・」

「そこなのです・・・その男のことは安永恵理子に聞いてみたのですが、野上の知り合いの男で、南紀夫といいますが、何でも数日前から関西のほうへ行っているというのです。安永が言うには、単なる知り合いということです。その日は、野上の命令で、日光の知り合いへお金を届けるということだったということです。一千万円という大金なので、南が付き添っていったということでした。宇都宮に戻ってきたなら任意で調べようかと・・・」

「野上の知り合い?・・・南という男は野上の何なんだ?」と、新開刑事が驚いた。

「昔からの仲間だということですが・・・詳しいことは分かりません・・・安永に聞いても、野上の仕事を手伝っている男ということしか知らないというのです。時折、チェリーファイナンスに顔を出しているというのです。チェリーファイナンスの社員に聞いても誰も詳しいことは知らないと・・・」

「何だよ・・・今ちゃん・・・早く言ってくれよ。野上の知り合いなら野上に聞けば分かることだろう?そんな報告は聞いてないぞ。どうなっているんだよ・・・」

「・・・話していませんでしたか? うちの若いものに話すように言っていたんですが・・・忘れたのかな・・・申し訳ないです・・・新開さん・・・」

やれやれ、日光南署の刑事は、こんな大事なことを忘れていたかと思うと何とも情けない。

ナンバープレートの件といい、この件といい・・・田舎警察は・・・と僕は思った。

こんなことで合同捜査ができるのであろうか?

最初から、最悪のコンビネーションではないか?

それにしても、南紀夫・・・誰なのだろう? 安永恵理子は、本当にその南という男の素性を知らないのだろうか? 

新開刑事が「とにかく野上に尋ねるしかないな。大きなサングラスをしていたのは南ということになる。しかし、変だな・・・そんな大金を運ぶなら、南という男ではなくて社員でもいいはずだろう?何で南なんだ? で、今ちゃん・・・その、1000万円を届けた相手も調べはついているのだろうな?」

「はい、それも報告していませんでした。小さな町工場です。その運転資金ということです。ウラはとってありますから間違いありませんよ・・・」

「ウラ?・・・当たり前だ・・・今ちゃん・・・これからは合同捜査なんだから、何でも事前に話しておいてくれないと困る・・・若い奴らにはしっかりと話しておいてくれよ・・・」

「・・・私のミスです。もう二度とこんなことのないようにします・・・」と、テレビのニュースで聞いたような言葉であった。

合同捜査というものは難しいと新開刑事に聞いたことがあった。

手柄を独り占めにする感覚の刑事がいることも確かなことだと思う。

どうせなら、自分の署だけで解決したいと思うのも分かるが、そんなことで犯人を逃がしたとなると何のための警察なのだ。

メンツのために、得られた情報を共有しない組織なのだろうか?

まだ、このような縄張り意識が蔓延しているのかもしれないと思った。

「あぁ、これからは頼むな・・・それで、今ちゃんは、これからどうする?」

「はい・・・とにかく南紀夫という男の素性と当日の行動を調べてみます。安永恵理子の身辺調査も続行します。二人とも、宇都宮だということですから、私の管轄です・・・」

「管轄・・・というような感覚が捜査を妨害するんだ。合同捜査というものは管轄は関係ない。そういう考えが犯人には有利になるんだ。何年刑事をやっているんだよ。今は、多摩西部署も日光南署も関係ないぞ。しっかりと頭に叩き込んでおいてくれよ・・・」と、新開刑事は、完全に怒っていた。

「・・・肝に銘じて・・・がんばります」と、今野刑事は、うなだれていた。

続いて今野刑事が「・・・それで、野上をもう一度あたりましょう?野上の家へ行きましょう。南のことを聞かないと帰られないです。一緒に行ってもらえますか?」と、新開刑事に聞いた。

「・・・マンションの管理人に聞いてみてからだ・・・自宅の電話も何も分からない・・・不在かもしれない・・・」と、新開刑事は、マンションの管理人室へ電話をかけた。

管理人の話だと、駐車場にBМWがあるということで、在宅しているのではないかということだ。

僕たちは、野上のマンションへ向かった。

確かに、その車はあった。それと、鑑識も連れて行ったのだ、足首の発見された近辺のタイヤ痕と照合するために・・・

新開刑事が、インターホンを押した。

「はい・・・」と、野上の声。

「多摩西部署の新開です・・・また、ちょっとお話を・・・」

というと、今度は部屋に来てくれという。

オートロックが開いて中に入った。さすがにこのあたりでは高級といわれているマンションである。

エントランスの床は、全て大理石で埋め尽くされていた。

野上の部屋の前についた・・・

ドアホンを押すと、中から野上の顔が現れた。








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しかし、この写真だけでは野上だということを確認することはできない。

ベンツに乗っている男は、大きな黒いサングラスをしているので、顔の特徴で判断するとこはできない。

「新開さん、どういうことでしょうか? この女は間違いなくベンツの女です。似ているというよりも本人ですよ。安永恵理子・・・偽造ナンバーのベンツ・・・どちらにしても・・・」

「雪ちゃん・・・どちらにしても、話を聞くしかないな。岩ちゃん・・・この女は、どこに住んでいるんだ?その姉さんの・・・三浦真紀という女から聞いていないか?」

「えぇ、宇都宮ということは聞いていますが、その妹は何かの事件に関係しているのですか? もしかしたら、例の足首の?・・・運んだらしい車・・・ということですか?」

「確定はできないが、その可能性が大きいということだよ。宇都宮か?・・・で、住所は知らないのか?」

「はい、宇都宮としか・・・でも、三浦真紀さんに聞いてみたら分かると思います。それと、電話番号も分かるはずですよ。たまに、連絡していると言っていましたから・・・早速、電話して聞いてみましょうか?」

「いや・・・名前が分かっているし、宇都宮ということで、栃木県警に照会してみる。うかつに、電話して聞いてみても、親族なら余計なことを話してしまうかもしれないし、その三浦真紀という女もグルかもしれない。今は、余計なことをしないほうが安全だな・・・それと、その携帯の写真を俺の携帯に移してくれないか? どうも、俺は携帯の使い方がわからん・・・頼むよ・・・」と、新開刑事。

「・・・三浦さんがグル? そんなことはないですよ。そんなことは・・・写真を移す? 僕も分かりません・・・雪ちゃん、詳しいだろう頼むよ・・・」

「・・・新藤君・・・頼むよ・・・」僕も、携帯から携帯への写真移動のやり方は知らなかった。

新藤は、車の知識は当たり前であるが、携帯の使い方についても、素晴らしいものを持っていたのだ。

それからの展開は、予想以上に速かった。

新開刑事が、栃木県警に照会すると、安永恵理子の所在が分かったのである。

栃木県宇都宮市新町二―二―八 マンションドエル 一〇〇〇八号室

安永恵理子 30才

株式会社 チェリーファイナンス勤務

さらに、そのチェリーファイナンスという金融会社は、かなりの違法な高利で貸し付けているという噂の会社であり、過去にも、そこから融資を受けた会社の経営者が自殺したということも分かった。

栃木県警としても、つねにマークしていた会社であり、その実態も把握しようと動いていたことも分かった。

社員数は五人。その代表が、野上幸則なのだ。

これで、間違いなく、野上幸則と安永恵理子の線はつながった。

安永恵理子の調査については、例の殺人事件の関係もあり、日光南署が担当することになった。

今野平太郎刑事・・・スッポンの今野刑事が、安永恵理子の身辺調査をすることになった。

その日の夜。今野刑事から連絡があった。

「雪田さん、何ともおかしな展開ですね。登場人物が線でつながっている。野上、安永、それと、行方不明の中川・・・とにかく、こちらは、ベンツの線から調べていきますよ。もしかして、ベンツを運転していた男が野上だとしたなら、全ての点と線がつながります。さっきも、新開さんと話したのですが、この二人を調べてみたなら必ず何かが出てくると思います。明日、そのチェリーファイナンスに行くことにしました。しかし、あの岩崎弁護士が、こんなことのヒントになるとは・・・」

「えぇ、岩崎弁護士がいなかったなら・・・見合いをしていなかったなら・・・ということです。たまには、何かの役にたつこともありますよ・・・ハハハ・・・」

「これで、足首の件も関係したとなると解決は早いのですが・・・野上のほうは、新開さんに任せてあります。こっちは、安永を追及していきます。偽造ナンバーの車に乗っていたということで、逮捕することもできますからね。しかし、足首と手の人物は不明ですが・・・では・・・」

一方、京都中央署での、中川昭義の死体の犯人捜査で、思わぬ展開となっていた。

中川昭義の所在が分かった。京都中央署の刑事が、中川のアパートへ来たのだ。

住民票の移動を調べていて、多摩市の住所を突き止めたのだ。

そして、大家さんに会ったことで、多摩西部署が捜索しているということが分かったのだ。

京都中央署の刑事たちは、新開刑事に会った。

「京都中央の桑原といいます。やっとですよ・・・たどり着きました・・・」と、中川のことを話した。

「そうでしたか・・・こちらも捜していたのですが、被疑者ということには出来なかったので、全国の警察へ捜査連絡をしていませんでした。私のミスです。しかし、殺害されていたとは・・・畳の中に血痕があったので、もしかしたら思っていたのですが・・・京都でしたか。それで、捜査はどうなっていますか?」

「芳しくありません。目撃者がいないのと、殺害したもの・・・おそらく、何か鈍器のようなものですが、見つからないのです。まる二日、川の中も捜索しましたが・・・」

「そうでしたか。こちらも、中川の知り合いや友人をあたろうと思っていたのですが、誰もいないのです。唯一、アパートの保証人になっている、野上という男に聞こうとしていたのです。働いていた木村自動車解体からも何も出てきません。聞くなら野上しかないと思っています。それと、野上には、死体遺棄の疑いがあるのです。いえ、まだ、確認はとれていませんが、ご存知かと思いますが、日光の足首、横浜の手・・・の殺人死体遺棄事件の件です。どうやら、それに野上が関係しているのではないかと?」

「あぁ、あの事件ですね。覚えています。何やら不思議な事件ということで、京都でも話題になりました。ということは、その野上という男と中川が関係しているということにもなるかもしれませんね?」

「否定はできないと思います。野上を任意でひっぱってくることになっています。それが、これからなのです。何かの糸口になるといいのですがね・・・」と、新開刑事は言った。

京都中央署の桑原刑事は、中川のアパートを見聞してから京都へ戻った。

これからは、京都中央署との合同捜査になるかもしれない。

これから、野上幸則の自宅へ向かうことになった。

新開刑事以下、四名だ。

事前に、野上の自宅近辺に張り込んでいた刑事からの報告で、今日は、一歩も外へ出ていないという。

大きな高級マンションである。地下には駐車場があり、そこにも刑事が張り込んだ。

マンションの管理人の話によると、出かける時間も帰ってくる時間も不規則だという。

野上の車も、確認されていた。その駐車場には、BMWの750iLという高級車が止まっていた。

そのBМWのナンバー照会でも、野上の車だと確認できた。

ベンツではない。しかし、ここにベンツがなくとも、どこかに置いてあることは容易に想像できる。

新開刑事は、オートロックのインターホンを鳴らした。

「はい、なんでしょうか?」

「多摩西部署の新開といいますが、野上幸則さんにお話を聞きたいことがあります。ちょっと宜しいですか?」

「警察の方? 何でしょうか? これから出かけるところなのですが、下でお待ち願えますか?」

「えぇ、玄関のところで待っています。では、下で・・・」

特に、あわてることもない淡々とした受け答えである。

少しすると野上が玄関に現れた。野上は、刑事だと分かると一礼した。

「私に何の用事でしょうか?警察の方に尋ねられる覚えはありませんが・・・もしかして、うちの社員のことでしょうか? 以前、警察沙汰を起こして店を辞めた男がいますが、そのことでしょうか?」

と、淡々としている。さすがに、経営者ということで、身なりはきっちりとしていた。

高級なスーツと靴だと誰の目にも分かる。

「いぇ、野上さんの会社のことです。ちょっと時間を下さい・・・宇都宮のチェリーファイナンスのことですが・・・」と、新開刑事も静かに尋ねた。

「チェリーの? チェリーなら栃木の警察ではないのですか? 何故でしょう?」

少しだけ目の奥がするどくなっていたようだ。

「安永恵理子さんについてです。あなたの会社の社員ですね?」

「安永・・・あぁ、うちの社員ですが、それが何か?」

「実は、安永恵理子さんが、偽造されたナンバーの車に乗っていたところが写っていたのです。それで、ちょっとお話しをと思いましてね・・・日光市内ですが・・・」

「偽造ナンバー? 日光? さて、何のことでしょうか? 私とどういう関係ですか。私は記憶がありませんが・・・そういうことなら、安永に聞いて下さい。 時間がないので・・・」

「もう少しですよ・・・野上さんと一緒に乗っていたのではないですか?黒のベンツですが・・・」

「黒のベンツ・・・あぁ、安永のベンツでしょうか? 彼女もベンツに乗っていますよ。でも、偽造ナンバーとは・・・確か・・・何でもナンバープレートをいたずらされたので、代わりのナンバーを申請していると聞いたことはあります。そのナンバーじゃないのですか? 偽造・・・偽造なんかする必要はないと思いますよ・・・調べたなら分かると思いますが・・・」

「いたずら・・・そうではないです。完全な偽造ナンバーです・・・」

「彼女は偽造するなんて人ではないですよ・・・私が保証しますよ。何かの間違いではないですか?その偽造したナンバーというものを見せて下さい・・・警察もいい加減だから、ミスすることもあるのではないですか・・・」と、かなり強気な態度だ。

新開刑事は、その偽造ナンバーの写真を取り出した。

それを、野上はゆっくりと見た。

「刑事さん・・・よく、見て下さいよ・・・ナンバーの一番右の数字が欠けていますよね。確かに、一見すると数字の1に見えますが・・・上のほうを見て下さい。うっすらと見えませんか? これは7です・・・彼女の誕生日の数字なんですよ・・・ほら、417じゃないですか。7のところが誰かにいたずらされて変形していたのです。その連絡は聞いていますよ。私が買ってやった車なので間違いはありませんよ・・・」

「・・・7・・・?」新開刑事は、くいいるように写真を見た。

確かに、ナンバープレートの右端は変形している。誰かが故意に曲げたという感じがした。

そして、かなり汚れているということも分かった。

だから、数字の判別を人の目でしたということだったのだ。

スピード違反のような赤外線の撮影ではないので、ナンバーも乗車している人も確実に写っているということはない。

それが、ミスをした盲点だったのだ。

女の顔が写っていたというのは、助手席で前をしっかりと見ていたから画像として確認できたのだ。

新開刑事は、野上に少し待っていて下さいと合図して、多摩西部署に電話をした。

そして、ナンバープレートの照合をしたのだ。すぐに、折り返し電話が鳴った。

「何? 間違いないのか? 間違いないのだな・・・」と、携帯のボタンを強く押した。

「野上さん・・・間違いないようです。安永さんの車だと確認できました。新しいナンバーも申請されていますね・・・間違いありません」

「刑事さん・・・だから、言ったではないですか? もう、いいですか? 仕事がありますから・・・」

「えぇ、また、何かあったなら・・・・」

と、刑事たちは、野上の後ろ姿を見送ることになった。

何ということだ。日光南署の誰かが大きなミスをしたことになる。

その後、そのナンバープレートの写真を精密に拡大してみたところ、確かに、汚れていてナンバー自体が曲げられていることも確認できた。刑事が思い込みでナンバー照会したのだということも発覚した。

さらに、今野刑事もチェリーファイナンスの安永恵理子に会い、そのベンツも確認したが、何の問題もなく新しいナンバープレートに変更されていたということだ。

さらに、所轄の警察へ被害届けも出されていたのだ。







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中川には、京都の鞍馬という町に母親がいたのだ。

テレビのニュースで体の特徴・・・中川には背中の右に大きな火傷の痕があり、それをニュースで言っていたのだ。そして、中川へ電話したというのだが、連絡がつかないということで、もしかしたならという気持ちで警察へ連絡したのだ。

中川昭義の死体は、母親によって確認された。

しかし、多摩西部署への連絡はなかった。当然のことであるが、単なる参考人という扱いであり、全国指名手配という形をとっていなかったのだ。

今日は、多摩西部署において、日光南署との合同捜査会議が始まろうとしていた。

「皆さん、これからの捜査方針について言います。それと、今日は本庁から、玉井警視も来られています。まず、玉井警視の意見から伺うことにします・・・」と、新開刑事が口火をきった。

「ええー、玉井です。捜査方針としては、日光の足首、横浜の手・・・それが同一人物だということです。横浜の管轄なのですが、手が入っていた解体車が、こちらの署の管轄ということで、ここに捜査本部を設置しました。まず、その手と足首の人物特定に全力をあげてもらいたい。とにかく、両警察とも情報を共有して独善的な行動をすることのないように願いたい。新しい動きがあったなら、必ず、私に報告することを忘れないでもらいたい。以上・・・」

僕は、後ろの席にいたのだが、ただ、事実関係を話しただけである。

なんという警視なのだ。全力をあげるということは至極当たり前だし、もっと何か言うことがないのだろうか? これでは、この玉井という警視は役に立たないと思った。

若き、キャリア坊ちゃん・・・年のころなら、20代後半であろうか?

つまり、僕の心の中は、その警視を軽視するということだと思うと思わずに失笑した。

続いて、新開刑事からの報告があった。

これまでの経緯について話した後に、両警察の情報をすり合わせることになったのだが、特に新しい展開はなかった。

刑事たちは、部屋を出て捜査に向かった。

「新開さん、お久しぶりです。また、一緒に捜査できますね・・・」と、スッポンの今野刑事が言った。

「あぁ・・・宜しく頼むよ。簡単な事件じゃないようだ。本腰を入れないといけないな」

「私もそう思います。当初は、簡単に解決できるのではないかと思っていましたが、どうやら・・・」

「ん・・・犯人よりも、死体の人物だよ・・・全く、分からない・・・それが一番の問題だよ。それと、例の木村自動車解体の中川昭義の所在も不明なままだ。せめて、中川の所在が分かれば、突破口になると思う。何としても中川を捜さないといけないな。例の畳の間の血痕も中川のものだと確認できた。生きているのか死んでいるのかも不明だがな・・・死体の人物特定は、若い奴らにまかせておいて、俺は、中川を調べるよ。今野は、例のベンツの女を捜してもらいたい」

「はい、これから戻って、その女を必ず捜してみせますよ・・・それと、雪田さんにお願いがあるのですが、現在、そのベンツを調査しているのですが、ベンツの画像を分析してみたところ、フロントグリルの中に何か加工していることが分かりました。ちょっと写真を見てもらえますか?」

と、ベンツの拡大写真を見せた。

「これですか? これは・・・いったい何でしょうか? ちょっと待って下さいよ・・・ん・・・あっ、これは、かなり昔に流行ったホーンですよ。つまりクラクションです。こんな新しいベンツに、このホーンは不自然です。おそらく、そのホーンの音が好きなのかもしれません。しかし、珍しいものです。今は、こんなホーンを鳴らしている人はいないと思いますよ。確か、二十年以上前のものだと思います」

「ホーン? ということは、クラクションの音が違うということですか?」

「そうです。音が全く違うと思います。推測ですが、このタイプのホーンは、普通のベンツよりも高音だと思います。かなり、特徴のある音ですから、聞いたならすぐに分かると思いますが・・・」

「なるほど・・・その線からも調査してみます。そんなに珍しいホーンを付けている車は少ないということですよね?」

「はい、ベンツでは、ほとんどないかと思いますよ?昔の暴走族が好んで付けていましたから・・・」

「暴走族?・・・ということは、昔・・・暴走族だったとか?」

「えぇ・・・可能性はありますね・・・」

今野刑事は、暴走族からの線も捜査してみることにした。

その後、何の進展もないままに日にちだけが過ぎていった。

捜査は完全に壁に突き当たっていた。

そんなある日、岩崎弁護士が店にやってきた。

「雪ちゃん・・・元気かい?」

「元気だよ。それはそうと、見合いはどうだったんだよ?」

「うん・・・綺麗な人だったよ。とても・・・」

「それはいいよ。付き合うことにしたのかを聞いているんだよ・・・」

「・・・付き合う・・・そんな話はないよ。その後、向こうからの連絡はないし・・・俺も連絡していないし・・・」

「普通はさぁ・・・付き合うとか、断るとかあるんじゃないかい?何もないの?」

「何もないよ・・・それっておかしいのかい?」

「・・・何のために見合いしたんだよ。付き合って、そして・・・結婚するということじゃないのかい?おかしいよ・・・それなら、ただの食事会のようなものだろう?」

「食事はしたよ・・・それでいいんじゃない・・・多分、お互いに結婚するという気持ちがないのかもな?」

「しかし、なぁ・・・何らかの返事があってもいいと思うけど・・・その女も変な人だよ」

「変?・・・三浦さんは変な人じゃないよ。綺麗で親思い、妹思いの人だよ。会ってもないのにいい加減なことを言うと、俺は憤慨だな・・・本当に綺麗な人だよ。何で離婚したのかは分からないけどな。妹さんが大変なことになっていると言って本当に心配しているんだよ。血がつながっていない妹を、あんなに心配するなんて、本当に優しい人なんだよ・・・」

「どういうこと?」

「よし、じゃあ話してやるよ・・・」と、妹の安永恵理子と野上幸則との関係を話した。

「そんなことってよくある話だよ。男に惚れた女が、男に尽くして・・・そして、十年が過ぎた・・・小説でもよくあるしな・・・だから、どうしようとしているんだい?」

「俺は、その野上という男を調べてみることにしたんだよ。立川に住んでいるということは分かったし、まぁ、すぐに素性は分かる。そしたら、三浦さんに報告することになっている。そういうことだよ・・・」

「何だか変な見合いだったんだな。見合いというよりも悩み相談だよ・・・ハハハ・・・岩ちゃんらしいな・・・岩崎弁護士の悩み相談・・・今回は綺麗な女性だから・・・無料で・・・さらに、無料で、相手の素行を調査しますということか? ハハハ・・・まるで、探偵だな・・・」

「茶化すなよ・・・俺は、何としても協力したいと思っているんだから・・・しかし、その野上という男は、女タラシだと思うよ・・・弁護士の特権で立川市役所で住所を調べてみようと思っている。色々と事業を展開しているということだから、さぞかしお金には不自由していないと思うよ。彼女も妹に紹介された時にも、高級なベンツでやって来たらしいし・・・身につけているものも全てはブランド品らしい・・・まぁ、俺には縁はないけどな・・・何となく気になるんだよ・・・だから・・・」

「岩ちゃんの好きにしたらいいと思うよ。それで、野上とかいう男だけど、下の名前は何と言うんだい?」

「下の名前? 何かあるのかい? 幸則というらしいよ。幸せの幸と、規則の則だけど・・・」

「どこかで聞いたか・・・見たような名前だけど・・・野上・・・野上・・・」

「どこにでもある名前だよ・・・そんな名前は・・・」

「野上・・・もしかしたら?」と、僕は、新開刑事に電話をかけた。そして確認をしてみた。

野上幸則・・・間違いなかった。

新開刑事も、これから僕のところに来るというので、岩崎弁護士を留めておくように言った。

中川昭義のアパートの賃貸契約の保証人になっている男と同じ名前だ。

それと、立川市というところも同じだ。

立川市に、野上幸則という男が複数いるとは考えにくい・・・

「何なんだよ・・・雪ちゃん? 野上がどうかしたのかい?」

「いや、今回の事件の参考人がいるんだけど、その男のアパートの保証人と同じ名前なんだよ。それと、その参考人・・・中川という奴だけど、数日前から行方不明なんだよ。別人かもしれないけど、その野上という男を調べてみる価値はあると思ってね・・・」

「へぇー・・・そうなんだ? しかし、そんな偶然はないと思うけどね・・・別人じゃないの?」

「どっちにしても、調べてみるよ。これから新開刑事も来るから、岩ちゃんもいて欲しい・・・その野上という男のことを話してほしいんだ・・・」

「会ったことはないけど、三浦さんから聞いたことを話すのなら・・・いいよ・・・」

五十分ほどして新開刑事が顔を出した。

「おぅっ・・・岩ちゃん。見合いしたそうだな? もう年なんだから、結婚してもいいと思うが、で、感触は? いい女なのかい?」

「新開さん・・・何もないですよ・・・いい女だけど、付き合う?・・・まぁ、先は分かりませんが・・・いい女には違いない・・・」

「そうか・・・岩ちゃんも、雪ちゃんも・・・賞味期限は過ぎているからなぁ・・・チャンスがある時につかんでおかないと、腐ってしまうぞ・・・ハハハ・・・」

「賞味期限? 確かに・・・ネ」と、僕は言った。

「それはいいが、野上幸則という男を警察の犯罪者履歴で検索してみたが、立川署管轄では見つからなかった・・・ただ、過去に、二十年ぐらい前のことだが・・・京都で検挙されている男と同一だと分かったよ。暴走行為で捕まっていた。詳しいことは照会してみないと分からないが・・・暴走行為ということだ」

「暴走族?・・・京都・・・ということは本籍が京都なの? 中川昭義と同じだよ・・・」

「あぁ、それは一致する。野上の元の本籍も京都だ。今の本籍は、十八年前から立川になっている。もし、その男だとしたなら、岩ちゃんの見合い相手の妹の男だということになるかもしれない。確証はないがな?京都府警に照会しているから、何らかの返答があると思う。せめて・・・指紋か写真でもあったなら・・・」

「・・・新開さん、写真なら持っていますよ。携帯の中に取り込んでいます・・・」

と、岩崎弁護士は言った。

「写真? あるのかい? なんで早く言わないんだよ・・・」と、僕は、岩ちゃんの顔をみた。

「いゃー、そんなに大事なことだとは知らないよ・・・急に言われても困るよ・・・ほらっ、これだけど・・・」

と、野上と安永恵理子の写っている画像を見せた。

それを見た瞬間に、僕と新開刑事は言葉を失っていた。

「雪ちゃん?・・・」と、新開刑事・・・「まさか?・・・」と、僕が叫んだ。

その写真に写っていた人物は、日光のNシステムに写っていた女なのだ。

ということは、Nシステムの女、つまり、ベンツに乗っていた女は、三浦真紀の妹の安永恵理子ということになる。どういうことなんだ・・・さらに、横に乗っているサングラスの男は、野上幸則だということだろうか?







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「なるほど・・・しかし、十年も付き合っていて、宇都宮に転勤させられているということは何かありそうですね? 普通の男なら、自分の女は近くに置いておきたいものでしょう。それが男だと思いますが?」

「えぇ、私もそう思います。嫌いになったのなら捨てるような男だと思います。しかし、捨てないし、妹も付き合っている・・・どうも納得がいかないのです・・・」

「・・・でも、世の中には影の存在でいいと思う女もいると思いますよ。妹さんは、そういう性格じゃないのですか? それと、その男は結婚していなのですか?」

「結婚していないと聞いていますが、付き合っている女は沢山いるような感じがします。そんな男です」

「そんな男かどうかは別として・・・妹さんの気持ち次第ですが・・・妹さんは別れたくないということですよね? 金を無心されているとか、何か危ないことをやらされているとかはなさそうですか?」

「いぇ、そこまでは分かりません・・・ただ、一度だけ妹からの電話で泣いていたことがありました。理由を聞いても、ただ、泣くだけなのです。私の声が聞きたかったということでした。それぐらいですが・・・ちょっと思い出しました・・・その時のことなのですが、妹が言った言葉があります。もう、戻れない・・・」

「もう戻れない? それだけですか?」

「確か・・・それだけ言って電話は切れました。それだけです・・・」

「何か意味深な言葉ですね。もう・・・戻れない・・・何かがあったのかもしれないですね?

それは、いつごろのことですか?」

「はい、妹が出ていった8年前のことです。それからも何度か電話で話したことがありますが、そのような言葉は一度も聞いていません・・・その時の一回だけでした」

「家出したので、そういう気持ちになったのではないですか? 一時の気の迷いみたいな・・」

「・・・そうかもしれません・・・でも、今、思い出してみると何かきにかかるのですが?」

「いや・・・若い女性にありがちなことだと思いますよ。そんなに心配はないと・・・それで、その野上とかいう男については、色々と会社を経営しているということしか分からないのですか?」

「特に調べるということはしていません。過去に妹にも話してみたことがあるのですが、疑うことは何もない・・・とても、いい人だと・・・幸せに暮らしているから邪魔しないでと・・・」

「ん・・・まぁ、そういうことなら、そうじゃないですかね? 何かあったなら連絡があると思いますよ。ただ、十年という年月は長すぎると思いますが・・・まぁ、よくあることですよ。十年は長い・・しかし、当人にとっては短いということをね・・・ハハハ・・・心配なさそうですね・・・」

と、岩崎弁護士は、特に問題はないのではないかと思って話していた。

なんとも気楽な人である。自分から相談しなさいと言っていたのであるが、何か問題があるようなことではないと思っていたのだ。

「それならいいのですが? 思い過ごしなら・・・」と、三浦真紀は、部屋から外の街明かりを見た。

「もし、何かあったなら力になりますよ。民事的なことなら任せて下さい。岩崎雄一が解決します。特に、三浦さんのことなら・・・それと、ちょっといいですか? 一応、野上という男の素性を調べておきますよ。特に何かがあるとは思えないけど・・・一応・・・・写真はありませんかね?」

「写真? 妹から貰った写真で、二人が一緒に写っているものならあります。本当は、野上のところだけ切り離したいと思っていたのですが・・・何となく残してあります。妹から貰った写真はそれしかないので・・・ここに・・・」

と、バッグを開いた。

そこには、二人が仲良く写っている姿があった。どうやら、お台場で撮ったようである。

「携帯で撮ります・・・どうやったなら? うん・・・携帯で撮れますよね? 」

と、何やらやっているのだが・・・無理だ。

岩崎弁護士は、携帯でメールをすることはできるのだが、写真を撮ったことがなかったのだ。

三浦真紀は、携帯での写真の撮り方を丁寧に教えてくれた。

「すいませんね。意外と簡単だなぁ・・・これは面白い!!! 有難う・・・」

「・・・いえ・・・それで、何か分かったなら連絡してもらえますか? 私の携帯番号は、00-00000000

と、メモに書いた。

「いいですよ・・・野上という男は、私の住んでいるところと近いし、時間のある時に調べてみます。多分、心配はないと思いますよ・・・あっ、もうこんな時間です。叔母さんが戻ってきますよ・・・」

と、ドアが開いて、叔母さんが部屋に入ってきた。

二人の顔を見渡して「どう? 話は楽しかった?」と・・・

二人は、同時に顔を見合わせて・・・「はい・・・」と、答えた。

見合いということであったが、何故か無料弁護士相談会の雰囲気になっていた。

一方、僕と新開刑事は、横浜の横浜電炉という会社で報告を受けていた。

手が発見された車・・・つまり、解体車は、何と、木村自動車解体が持ち込んだものだと分かった。

直接ではなくて、八王子市にある解体車のシュレッダー業者、八王工業を経由して横浜へ持ち込まれたという。

つまり、木村自動車解体で車を解体し、ボディガラだけを八王子のシュレッダー会社に持ち込み、そこで、シュレッダーにかけた。しかし、そのシュレッダーでも運よく手は裁断されないままに・・・そして、小さくなったボディを圧縮して横浜にある横浜電炉に運搬されたということになる。

そうすると、死体の手を入れたのは、木村自動車解体か、八王工業、横浜電炉しかない。

しかし、八王子工業から運搬された時点では、圧縮された鉄であるから、その中に何か・・・手を入れることは困難だ。

僕が考えるに、木村自動車解体から八王工業までの間しか、手を入れることはできないのだ。

万が一を考えて、木村自動車解体へ解体依頼をした相手も特定できた。

依頼主は大手のディーラーであった。普通の解体屋であるならば、解体車の依頼を受けた時には、その車の中を徹底的に調べる。調べるというのは、木材やタイヤのようなものが隠されていないかということだ。

木材やタイヤを隠して解体車を持ち込まれると、後で余分な処理費用がかかってしまうのだ。

だから、解体屋は徹底的に調べるのだ。

ディーラーへの調査によると、その車は、新車を買った人から下取りとして出たものであった。

年式からいうと、中古車としても販売することができないということで解体車になったという。

確かに、十七年も経過したオンボロ車であった。

ディーラーで、手を入れたという線は消えた。

やはり、木村自動車解体から八王工業までの間で入れられたというのが自然だと思った。

「新開さん?また、木村社長のところですよ・・・中川の所在も判明していないし・・・いったい?・・・」

「あぁ・・・雪ちゃん・・・何か複雑な展開だな。明日は、日光南署の今野も来るし忙しくなる。雪ちゃんも、合同捜査会議に出るかい? また、俺が主任刑事となる。しかしなぁ・・・本庁から若手のキャリア坊ちゃんが来るらしい。坊ちゃんは疲れるが、一応上司だからなぁ・・・雪ちゃんのことは誰でも認めているが、そのキャリア坊ちゃんは何というか?・・・・素人探偵が・・・というかもな? ハハハ・・・」

「キャリア坊ちゃん? それはいい言葉ですよ・・・まぁ、何とかなるでしょう・・・明日、出席させてもらいます・・・」

「車については雪ちゃんがプロだから、意見を聞きたいんだよ・・・今回も車がらみだしな・・・」

「しかし、何で手と足首・・・一緒じゃないんだ? それに他の部分がない・・・そこが不思議なんですよ・・・中川も不明だし・・・点と線が全くつながらない・・・簡単な殺人事件だと思っていたのに・・・」

「あせるなよ・・・必ず、つながるよ。必ず・・・」

そのころ、京都では中川昭義の他殺死体が発見されていた。

京都の鴨川のほとりの水辺に浮いていたのだ。身分を証明するものは何もなかった。

京都中央警察の刑事の、マスコミ関係への話である。

犬の散歩をしていた人が発見しました。

顔を下に向けて浮いていたということです。年齢は、20才から30才だと思いました。

何も身分を証明するものがなかったので、指紋照合をしてみたのですが、一切犯歴はありません。

自殺と他殺の両面での捜査ということになったのですが、身元が不明なので捜査は時間がかかると思います。

司法解剖の結果、何か鈍器のようなもので頭部を数回殴られた痕があり、他殺だと断定されました。

死後、二日ほど経過しているということです。

それ以外の体には目立った傷はありません。ですから川上から流れてきたということもないと思います。

川上から流れてきたのであれば、必ず、体には無数の傷がついています。

さらに、昨夜の水量は少なかったので、流されるということはなかったと断定しました。

水辺に浮いていたので、近辺には争ったような痕は残っていません。

刑事が、近辺の聞き込みをしていますが、殺害された人物を見たという人はいません。

また、この水辺で言い争いをしていたという目撃情報もありません。

おそらく、どこかで殺害されて、ここに捨てられたと見るのが妥当ではないかと思っています。

以上が、京都中央署の見解であった。

この男が中川だと分かるまでの時間はかからなかった。







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この見合いは、お互いの両親などは出席していない。

見合いというよりも、お互いを紹介するというシンプルなものであった。

叔母さんの知り合いの女性の娘だということだ。

三浦真紀・・・とても綺麗な女だ。こんな女が何故・・・離婚したのだろうか?

岩崎弁護士は信じられないと感じていた。

「三浦さん・・・ちなみにお仕事は何ですか?」

「普通のOLです。小さな商社で働いています。中国などからの小物の輸入です・・・」

「ほぅ・・・中国から? 忙しいのでしょうね・・・今は、何と言っても中国を中心に世界は回っていますからねぇ。中国・・・で、どんな小物なんですか?」

「・・・小物全般ですが・・・特に、これといったものはないです。その時の価格に見合うものです」

「小物全般・・・そうですよね。小物は星の数ほどありますからね。で、どんな小物が多いのですかね?」

「ん?・・・だから色々とあります。アクセサリーやお守りなど・・・ですが・・・」

「お守り? それは面白い。日本人が中国のお守りを持つ・・・グローバルな時代ですよね・・・」

全く、話がかみあっていない。叔母さんが「ちょっと別件があるから、二人だけで話していてね・・・この部屋は二時間貸しきってあるから・・・後で戻るわ・・・」

と、二人きりにして部屋を出た。

「あのぅ・・・?」と、三浦真紀が聞いた。

「何ですか?」

「岩崎さんは、今までにお見合いをしたことがありますか? 私は初めてなんですが・・・」

「ないです・・・今日が初ですよ。46才まで一回もないです。何度か話はあったのですが・・・」

「付き合っていた女性がいて、そして見合いを断ったということですか?」

「・・・付き合っていた? 女性と付き合ったのは・・・えっと・・・かなり昔ですよ。それからは仕事が彼女みたいなものです。弁護士の世界は女っ気がないですよ。色々な女と会いますが、それは仕事の依頼の女です。仕事を離れたなら女っ気はないです・・・この業界には独身が多いですよ。三浦さんは、離婚してから何年ですかね?」と、余計なことを尋ねた。

「えっ・・・離婚?・・・してから・・・三年になりますが・・・」

「こんな素敵な人を三年も一人にしておくなんて世の中の男は見る目がないですよね・・・で、離婚原因は何ですか?」

まるで、岩崎弁護士は尋問しているようになっていた。

「離婚原因? 言わないといけませんか? ちょっと・・・それは・・・」

「ハハハ・・・いや、どうでもいいことですよね・・・それで、外にでも出ませんか? ここのホテルの庭園は一度歩いてみたいと思っていたのです。夏には蛍が飛ぶそうですよ。本物ではなくて機械じかけの蛍ですがね・・・ハハハ・・・本物がいいですよね。蛍の偽者はつまらないと思いますよね?」

「・・・えぇ・・・」と、三浦真紀は、どうでもいいという顔をしていた。

岩崎弁護士は、三浦真紀を連れて庭園に向かった。

夕暮れの庭園は、ロマンチックな風情をかもしだしていた。

大きな池と二人分の小道・・・秋も終わりに近づいているということで木々の葉も少し枯れていた。

女と歩いたことが少ない岩崎弁護士は、自分の速いペースで歩いている。

その後を、かなり遅れながら三浦真紀は必死でついていっていた。

「三浦さんの家族は?」と、急に立ち止まって尋ねた。

「家族ですか? 両親と妹がいますが・・・」

「妹さん? 三浦さんも素敵な女性ですから、さぞかし、妹さんも・・・綺麗な人なんでしょうかね?」

「綺麗・・・妹ですか? そうですね。私とは全く反対の性格です。行動的で好奇心が強いです。今は、宇都宮にいますが、以前は赤坂にいました。姉思いのいい妹です」

「そうですか・・・で、何才なのですか?」

「妹ですか?・・・30才になりますが、それが何か?・・・」

どうでもいいことである。岩崎弁護士は、何を話していいのかと思案していただけであり、たまたま、妹の話になったので、そこに突っ込んで話していたのだ。しかし、その姉と見合いしているのだから、妹のことなどは、どうでもいいことであった。

岩崎弁護士は、職業病であろうか?・・・何故か尋問するという雰囲気になってしまう。

さらに、三浦真紀に尋ねた。こうなったなら誰も止められないかもしれない。

「そうですか・・・いい妹さんなのですね。で、両親は何をしているのですか?」

「父は、足立区の職員です。母は専業主婦ですが・・・」

「妹さんは?」

「・・・今は・・・ある会社で事務をしていますが・・・」

「宇都宮の?」

「そうです。金融系の会社だと聞いています・・・」

「ん・・・聞いている? 聞いているということは、はっきりとしたことは知らないのですか?」

「・・・知りません。最近会ってないですから・・・妹も大人ですから・・・そこまでは・・・」

「でも、姉思いのいい妹さんでしょう? 心配しないのですか? 僕に妹がいたなら心配ですけどね?」

「・・・・・・心配しています・・・ちょっと事情があって、家を出ているから・・・」

「家を出ている? 何かあったのですか?」

「いえ、こちらの事情ですから、岩崎さんには関係ありません。私の家の問題です・・・」

「それはそうですが、何かの力になれるかもしれませんよ。一応、弁護士という職業ですから・・・話してみて下さいよ。個人情報は死守しますよ・・・僕なら何の問題もないですから・・・」

と、見合いに関係のないことを強引に聞き出そうとしていた。

このあたりが、岩崎弁護士らしいと言えばそれまでのことではあるが・・・

「でも・・・初めてお会いした方には・・・ちょっと・・・」

「いやいや、誰かに相談したなら、すっきりとする場合が多い。弁護士はそういうために存在しているのですから、何の遠慮もなく話してみて下さい。力になりますよ・・・何の問題もないです・・・」

まるで、弁護士の無料相談会という形になっていた。

三浦真紀は、しばらく考え込んでいたが・・・

「・・・それじゃあ・・・聞いてくれますか? そんなに大きな問題じゃないと思いますが・・・」

「いや、大きくなくても大きくなっていくこともあります。それは、仕事柄よくあることです。風邪をひいたなら早めに治療しないと大きな病気になってしまうのと同じことです・・・是非・・・」

「実は、男ができて家出したのです。十年前のことでした。右も左も知らない妹でしたから、初めての男に狂ったとしか・・・それで、両親や私の止めるのも聞かずに家を出て、その男と同棲したのです。その男というのが、赤坂で飲食店のオーナーということでした。確か、三軒の店を持っているというのです。そのうちの一軒は宇都宮にあります。さらに、その男は、金融関係の怪しい会社も経営しているのです。その宇都宮の金融会社で働いているということです・・・私としては別れさせたいと思っていますが、妹は話を聞く耳をもっていません。その男に引きずられているだけだと思っています。過去に、その男が別の女と親しそうに赤坂の街を歩いているのを見たことがあるのです。妹を宇都宮に転勤させて、自分は東京で色々な女と付き合っているとしか思えません・・・」

「ほぅ・・・大変なことじゃないですか? で、その男には会ったことがあるのですか?」

「はい、一度目は、妹が私に会わせてくれました。二度目は、さっきお話したように赤坂で・・・」

「何才の男ですか?」

「30才だと聞いていますが?・・・」

「妹さんが、何らかの理由で離れられなくなっているのですか? それとも純粋に愛情があると?」

「それは分かりません。そのことを妹に尋ねると・・・興奮して話にならないのです。もう、十年になります。結婚するという話もありませんし、ただ、弄ばれているのではないかと心配なのです。そして、八年前から宇都宮の金融会社の事務として働かせているのです。妹によると、月に二回ぐらい会いに来るということですが、そんな人に愛情があるとは思えません。弄ばれて・・・いつかは、捨てられると思うのです。とても心配で・・・」と、悲しい顔になった。

こんな話をする見合いはない・・・ と、普通の人なら思うところであるが、岩崎弁護士は、何とも思っていない。ただ、この三浦真紀という女を助けたいという思いだけであったのだ。

「それは心配ですね。それで、その男というのは・・・名前は? 住所は?」

「野上幸則といいます。立川市らしいということです。それ以外は何も知りません・・・」

「野上・・・幸則・・・立川市・・・ですか? 僕の家と近いな・・・一度会ってみましょうか? いえ、名前が分かれば住所を捜すことができます。まぁ、弁護士の特権というものですがね・・・おっと、忘れていました。妹さんの名前は何でしょうか? 三浦・・・何ですか?」

「妹ですか?」

「はい・・・妹さんです」

「安永恵理子です・・・」

「三浦じゃないのですか?」

「・・・はい・・・今の母親の連れ子なのです。私の本当の母親は15年前に死にました。その後、父が今の母と再婚したのです。その時に、恵理子は別れた父親のところにいたのです。十年前にその父親が事故で死ぬと、今の母のところに引き取られたのですが、名前は変えないままになっていたのです。そのころ、私は結婚していましたから、妹といっても他人としか考えようがなかったのです。しかし、数回会っていると何故かしら仲良くなっていったのです。私も本当の妹ができたように思っていました。しかし、妹は家を出ていってしまったということです・・・」

「・・・そういうことでしたか。それで、妹さんは、ずっと家を出たままになっていると・・・」

「はい、実の母との関係もよくありませんでしたから、それも家出した原因かもしれません。父は、本当に可愛がっていたと思いますが、母は、妹には辛くあたっていました。妹に聞いたところによると、離婚する時に、母は、何らかの理由で妹を引き取らないことにしたということです。それが、長い間の確執になっていたと思います・・・」

ホテルの庭園は完全に夕暮れとなっていた。11月の肌寒い風が吹いていた。

「そうでしたか・・・少し寒くなってきましたね? 部屋に戻りましょうか?」と、岩崎が言った。

三浦真紀は、軽く頷く。そして、二人は部屋に戻った。

叔母さんが戻ってくるまでには、後、三十分はある。食事をしながらの話になった。

部屋の中で引き続き岩崎は尋ねた。この見合いという場面は完全に忘れていたのだ。

「いゃー、すっかり寒くなりましたね。もうすぐ師走ですよ。今年も終わりですね・・・で、妹さんは、その野上という男と女の関係になったのですね?」

「男と女・・・何か怪しい言葉ですよね? 弁護士さんは、そういう言葉を使うのかしら?・・・何かおかしい・・・フフフ・・・妹の勤めた飲食店のオーナーでした。そこで・・・だと聞いています」

と、初めて笑った。










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「手が入っていた電気炉の工場の解体車が特定された。何台かの車を調査したら、一台の車から同じDNAが検出された。これで、どこの解体屋が持ち込んだ車のガラか判明する。解体屋さえ特定できたなら話は早い・・・雲の中にいるようだなぁ・・・何とかなる・・・」

続いて僕が「新開さん・・・横浜に行くのですか?そのガラを見に・・・」

「あぁ、雪ちゃんも来るかい? というよりも行きたいような顔をしているよ・・・なっ?・・・」

「もちろん・・・」と、僕は新開刑事に同行することになった。

一方、日光南署の池田刑事は、今回の捜査の報告で、今日中に日光に戻ることになった。

明日は、日光南署のスッポン刑事の今野さんが多摩西部署に来ることも決まっていた。

二つの警察署の合同捜査体制になるという。

今回も、新開警部補が主任刑事として陣頭指揮にあたることが決定していた。

ただ、広域捜査ということで本庁の担当警視も捜査指揮を取ることも決定していた。

指揮官が・・・二人・・・僕は、新開刑事の性格からして、何かトラブルが起こる予感がしていた。

僕と新開刑事は、横浜の鉄を電気炉で溶かす工場へと向かった。

一方、日光の今野刑事の娘さんがひき逃げにあった事件で新しい展開となっていた。

命日に白い百合の花を置いていく人物は、思わぬところから女性であると判明したのだ。

今年の命日の日の前日の夜に白い百合の花を置くところをタクシーの運転手に見られていたのだ。

管轄の刑事の地道な捜査によるものであった。

タクシー運転手の証言によると・・・

「確か・・・深夜だったと思います。仕事が終わり会社に戻ろうとしていた時です。普通なら、国道を通るのですが、その日は、国道の道路工事で渋滞していたし、裏道を通ったほうが早いと思ったのです。丁度、その交差点にさしかかると・・・この交差点は、深夜になると両方向とも信号が黄色の点滅になるのです。速度を落としてゆっくりと周りを見て、通り過ぎようとしたのですが、交差点の端に人影が見えたのです。私はてっきり歩行者だと思い急ブレーキをかけました。その音に驚いたのでしょうか?その人影は、裏道のほうへ小走りに向かったのです。私の車のヘッドライトに照らされるようになりました。ジーンズのような青い色のズボンでしたが、あれは間違いなく女です。そして、その女がいた場所には白い花が置いてあったのです。こんな時間に変な女だと思いましたが、よくある交通事故で花を置いていく人だと思い、気にもしませんでした。いぇ・・・私は、以前、宇都宮のタクシー会社にいたのですが、先月から日光のタクシー会社で働くことになったので、この交差点で過去にひき逃げがあったことは知りません。それで刑事さんに聞かれて・・・思い出したのです・・・車を流しているとよくある光景なのですが、その女は私のタクシーを見て驚いたようでしたから・・・特に印象深かったのです」

ということであった。

さらに、所轄の刑事が尋ねた。

「その女は裏道に入ったということだが、車の発車する音はしなかったかい?」

「十一月の寒い日でしたから、窓は全ておろしていたので・・音までは・・・」

「その女の顔は見なかったのかい?」

「はい・・・横顔は見ました。若そうな女でしたよ。銀色の毛皮というんでしょうか?何か高級そうなものでした。このあたりでは誰も着ていないような高級なものです。いえね・・昔、婦人服の販売をしていたものですから何となく高級なものは分かるのです。このへんじゃ・・・着ないでしょう。東京の金持ちなら・・・いると思いますよ・・・ロングの銀色のコートです。おそらく、シルバーフォックスという種類の毛皮かもしれませんがね・・・」

「そうですか・・・また、何か尋ねることがあるかもしれません?ご苦労さんでした・・・」

以上が、タクシー運転手の証言であった。

このことは、今野刑事にも報告された。

例の花を置く人物は、女だということが判明したが、タクシー運転手の証言の似顔絵だと横顔しか無理であった。その横顔を見る限りだと、30才ぐらいではないかということであった。

その横顔の似顔絵を持って、近所の聞き込みをしたのであるが、何も得られるものはなかった。

ましてや、銀色の高級な毛皮のコートも見たことがないという。

その女が今野刑事の娘をひき殺したのであろうか?

今野刑事にとっては一歩かもしれないが、それだけでは何も進展することはなかった。

さらに、銀色のコートを着た女を捜すということで、近隣のNシステムの画像を調べてみたのであるが、銀色のコートを着て車を運転している女は発見できなかった。

あのような長いコートを着て車を運転するということには無理がある。

運転するとなると必ずコートは脱ぐのだろう。

しかし、その時間帯に近隣のNシステムに写っていた女または男が運転する車は、七百台にも及ぶが、所轄は、一台ずつ探していくという。気の遠くなるような作業となるだろう。

その夜、今野刑事は、例の足首の入っていたオイル缶の件と中川昭義の件で池田刑事から報告を受けていた。

「今野さん・・・何だか変な展開になってきました。オイル缶は違いなく解体屋が買っていました。それと、そこの従業員が行方不明になっているのです・・・」と、これまでのいきさつを説明した。

「池田君・・・ご苦労だったな。しかし、おかしな展開だよ。新開刑事は何と言っているんだ?」

「・・・えぇ、手を積んできた解体屋が分かったということです。明日、そのことも報告があると思いますが、今のところは・・・雲の中にいるようだと言っていました。雲の中ただと・・・」

「雲の中だと言ったのかい? そうか、そうならば、解決の糸をつかんだと思っていいぞ。新開さんの口癖なんだよ。雲の中か・・・それはいい・・・」

「えっ、雲の中ですよ・・・どっちが上か下か・・・右も左も分からない・・・ですよ?」

「うん・・・雲の中はいいんだよ・・・暗闇とは言ってなかったろう?」

「はい、雲の中です・・・暗闇? 何ですか?・・・」

「あぁ、雲の中・・・どこかに切れ目があるということだよ。暗闇なら、どこまで行っても暗闇だということだ。新開刑事の言う、雲の中というのは、何かヒントをつかんだということだと思うよ・・・」

確かに、新開刑事の口癖である。雲の中というのは何かの光が見えていたのかもしれない。

また、一方の岩崎弁護士は、その日の夕方からお見合いになっていた。

相手の女性は、バツイチで36才。都内のホテルのレストランの個室で行われていた。

「はじめまして、三浦真紀といいます。今日は宜しくお願いします・・・」

岩崎弁護士は、見合いに全く興味はなかったのであるが、この女性を見て気が変わったようだ。

女性の素性を察していたのであるが、岩崎弁護士の予想とは大きく違っていた。

違っていたというのは、どうせ36才・・・・バツイチ・・・イコール・・・不細工という結論。

しかし、この女性は、全くその逆の女性であった。

どうみても、36才には見えないし、スタイルも抜群。目鼻だちも、まるで女優さんのようであった。

「・・・は・・はい・・・岩崎雄一です!・・・」と、仲人の叔母さんを見た。

「岩崎さんは弁護士さんだと伺っています。社会に貢献している素晴らしいお仕事だと思います。人を助けることは素晴らしいと思います・・・」

「えっ、えっ、そうですかねぇ・・・いゃあぁぁぁ・・・とても嬉しいです。三浦さんのような素敵な女性に言われたなら最高ですよ・・・ハハハ・・・いゃあぁぁ・・・こんなに嬉しいことはないです・・・ねぇ、叔母さん?・・・」と、叔母さんの顔を見ると、叔母さんは、いい加減にしなさいという顔をしている。しかし、調子に乗った岩崎弁護士は話を続けた。

「弁護士でも、色々といましてね。僕は、どっちかというと民事事件・・・傷害や殺人事件はやっていないのです。相続や離婚・・・そういうことをやっています。世の中には、とんでもない相続や離婚がありましてね、何億円という相続なんかは・・・人の欲望が丸裸になりますよ。離婚も同じです、女は、何とかして大金を男・・・旦那から取ろうとする。最初は、愛し合った仲なんですがねぇ・・・縁の切れ目は、金の始まりというんですか?ハハハ・・・男としては、縁の切れ目は、全ての切れ目・・・ということしか考えていませんよ・・・ハハハ・・・まぁ、それが世の中ですよ・・・そうは思いませんか?」

「・・・」三浦真紀は何も言えない・・・叔母さんが、岩崎弁護士を睨んだ。

「・・・えっ、結婚する前から離婚の話は・・・ハハハ・・・おかしいですよね?・・・」

「・・・・・・・いえ、楽しい方ですね!!!・・・で、民事事件は大変ですか?」

「いゃあ・・・裁判になることもありますが、大半は和解・・・和解って分かりますよね? つまり、話し合いです。金持ちならいいんですけど、ほとんどの人はお金がありませんから、和解にしたほうがいいのです。裁判なら時間もお金もかかる・・・だから、僕は、裁判をしないようにしているのです。そっちのほうが話が早いのですよ・・・ハハハ・・・最近は裁判所には行っていませんが・・・ハハハ」

叔母さんは、岩崎弁護士の調子にのった態度に完全に憤慨していた。









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二章  意外な展開 

木村自動車解体から車で数分の距離にある小さな2階建ての古いアパートであった。

僕たちは、そのアパートの前に立った。中川の乗っている車はホンダのアコードセダンだと聞いていたのであるが。その車はアパートの駐車場にあった。そして、外出していないという確信を持った。

中川の部屋は一階の真ん中の部屋であった。新開刑事と池田刑事がドアをノックする。

僕は緊張していた。何かよくないことが起こるのではないかという予感が・・・!

何度ノックしても返事はない。廊下に面している台所のすりガラスからは部屋の中の灯りは見えない。

不在なのかもしれない? しかし、具合が悪いということであれば在宅しているのが普通であろう。

新開刑事がドアのノブに手をかけた。そして、ゆっくりと回す・・・ドアはガチャという音をたてて開いた。僕の緊張はさらに高くなった。

二人の刑事は、中川・・・入るぞ・・・と声を出しながら部屋の中に入った。

僕も、その後に続いた。一DKの部屋であった。

誰もいない・・・しかし、ドアは開いている。

「どうも、留守のようですね?」と、池田刑事が言う。

「・・・池田君・・・変だな・・・妙に整頓されている。台所の食器の雑然さと、この六畳の部屋とは違いすぎる?」と、新開刑事が不思議そうに話した。

「確かに・・・台所は食器が散乱していますが、ここの部屋はあまりにも綺麗です・・・ひとつの部屋の中でこんなにも違いがあるということは?・・・」

「そうだな。おかしい・・・もっと詳しく見てみよう・・・何か変だ?」

二人の刑事は、手袋をはめて部屋の中を慎重に調べ始めた。

急に新開刑事が大きな声を出した。

「池田君! これは血痕じゃないか?拭き取った後があるが、血痕に違いない・・・」

「確かに、血痕のようですね。しかし、かなり少量です。普通にしたたり落ちたというよりも、落ちた血痕を拭いて広げたような感じがします。畳の隙間にも入ってしまっています。さらに、古い血痕ではないような気がしますが?」

「あぁ・・・最近のものに間違いないな。畳の血痕を拭いたのだろうが、拭いた時に少しだけ畳の隙間に入ったというところだ。嫌な予感がする。鑑識を呼んで調べてもらおう・・・」

と、新開刑事は多摩西部署に電話をした。

鑑識が来るまでの間、池田刑事は、アパートの大家さんのところに行った。

新開刑事は、さらに注意深く部屋の中の小物等を調べている。

そして「雪ちゃん・・・ちょっと手伝ってくれないか?」と、僕を見た。

「この箪笥を動かしたい・・・ちょっと頼むよ・・・」

と、二人で箪笥を動かした。

「雪ちゃん・・・普通は箪笥の裏には、埃があるのが普通じゃないかい?ここの箪笥の裏には何もないんだよ。おかしいと思わないか?」と、話したところで池田刑事が大家とともに戻ってきた。

「大家さんですか?中川さんは、ここに住んで何年になりますか?」

「えぇっと・・・確か、七年になるかと思いますが・・・何かあったのですか?」

「七年・・・それと、昨夜から今日にかけて中川さんを見ましたか?」

「見てないですね・・・何かあったのですか?事件なら困ります。そうでなくても入居者が少ないので・・・」

「いぇ・・・何があったということではありません。これから鑑識が来て部屋の中を捜索します。中川さんの入居した時の不動産賃貸契約書を持ってきてもらえますか?」

と言うと。

大家さんは、憮然として部屋を出ていった。

確かに、この古いアパートで殺人でもあったなら、当分は誰も入居しないだろうと思った。

「七年も暮らしているのに、箪笥の裏が綺麗すぎる。最近、この箪笥を動かしたということだよ。しかし、箪笥の裏には何もないということは・・・この箪笥のあった下・・・つまり、畳の下に何かがあるということだと思う。とにかく畳をははぐってみるしかないな?」

ということで、畳を持ち上げてみた。畳の載っている板をゆっくりとはずしてみる。

確かに、その板も誰かが手で持ち上げたように汚れが斑になっていた。

そして、板を全て取り除くと、床下の土が顔を出した。

「・・・ん・・・土が掘られている。何かあるぞ・・・」と、新開刑事が叫んだ。

確かに、土を掘った後が誰の目にも分かる。

丁度、多摩西部署の刑事と鑑識が数名やってきた。

新開刑事は、鑑識にこの土を掘り起こすように指示した。

皆、かたずをのんで見守る・・・何が出てくるのであろうか?

すると、鑑識の一人が声をあげた・・・

「新開さん・・・何もないですよ・・・ただ・・・」

「ただ・・・何だ?・・・」

「ただ・・・オイル缶のようなものが・・・でも、何も入っていません。ただの空き缶ですよ。缶の横に何か文字のようなものが・・・」と、缶を持ち上げた。

「オイル缶だな? キクチ・・・どこかで見たような・・・あっ、木村のところの足首が入っていた缶と同じメーカーだ。何でこんなところにあるんだ・・・なぁ、雪ちゃん・・・ 」

「確かに、同じメーカーのキクチですが、缶のデザインが違いますよ。あの足首の入っていた缶の蓋と缶の横のデザインが違います。間違いありませんよ。よく似ていますが、違うオイル缶です。しかし、こんなところに埋めていても、中に何も入っていないのに・・・それに中はととても綺麗に洗われています。不思議ですよね・・・」

「雪ちゃん・・・オイル缶を埋めたというよりも、中に何かを入れていたんじゃないか?何かを入れて隠しておいた・・・逆に考えたらいいと思うが?だから缶の中が綺麗だと・・・」

「そうですよね・・・空のオイル缶だけを埋めていても仕方ないですよ・・・何かを入れて・・・」

「あぁ、そう考えるのが普通じゃないか?鑑識さん、この缶を調べてくれないか?それと、ここの畳の間の血痕のようなものも徹底的に調べてほしい・・・」

すると、外で大家さんの声がした。

「これが、中川さんの契約書ですが・・・殺人ですか? 困りますよ・・・本当に・・・あーぁ・・・」

と、新開刑事に契約書を渡しながらため息をついた。

その契約書の内容は・・・・

中川昭義 二十八才 本籍地 京都府京都市左京区門前寺町四―二五―一

以前の住所 東京都多摩市南原町三―三―十八 コーポスワン 一○五号室

保証人 野上幸則 三十三才 住所 東京都立川市旭町二―五―一 アサヒマンション 八一三号室

となっていた。

木村社長のところにある履歴書では、中川昭義が木村自動車解体へ入社したのは3年前となっていた。

その前は、多摩市にある自動車整備工場のアルバイトとして働いている。

京都の工業高校を卒業して、東京にやってきたようだ。

依然として、中川の所在は不明なままであり、数人の刑事は、近所の聞き込みに回っていたが、近所との付合いは全くないようで、誰も中川のことは知らないという。

さらに、この古いアパートには、入居者が三人しかいなくて、中川の部屋の両隣は誰も入居していなかった。

木村自動車解体へも刑事が行き、中川の普段の行動について聞き込みをしたのであるが、社員の誰とも付き合いはなく、仕事が終わると、すぐに帰るということであった。

社員旅行にも何らかの理由をつけて行かないという。人付き合いが極めて薄い男であった。

中川昭義のアパートに着いてから、五時間が経過しようとしていたが中川は戻ってこない。

中川の携帯電話も電波の届かないというアナウンスを繰り返していた。

中川に何があったのであろうか?

そして、今回の殺人事件との関わりがあるのであろうか?

中川昭義の捜索は、引き続き行われることになった。

本籍地の所轄警察へも照合してみたのだが、現在は、その本籍地には別人が住んでいるということも判明した。

過去に警察に刑事事件で捕まったとか、何かの交通違反で検挙されたこともなかった。

唯一の中川の捜索は、木村自動車解体にあった履歴書の写真だけということだ。

それ以後、中川昭義の消息は不明のままとなっていた。

が、思わぬところで中川の所在・・・死体が発見されることになる。

鑑識が帰って、今日の捜索を終えて帰ろうとしていた時であった。

新開刑事の携帯が鳴った。

「新開だ・・・うん・・・そうか・・・分かった・・・すぐに行く・・・」

「何かありましたか?」と、池田刑事が尋ねた。






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「・・・ということは、そのオイル缶は、直接メーカーから購入したということに間違いはないのですか?誰かにもらったとかいうことはないですね?」と、日光南署の若い刑事が尋ねた。

「はい、江戸川にあるキクチというオイルのメーカーから直接買いました。キクチとは先代からの付合いでして、私の会社のエンジンオイルは全てここのものです。今回も新製品を発売するということで事前に連絡がありました。今までのオイルよりも安くて経済的でということでした。確かに、以前のオイルよりも安くてオイルの質もいいように思いました・・・」

「そうですか・・・確かに、キクチの販売担当の人と同じ話です。それに、木村さんのところに卸した缶は、メーカー独自の製造ナンバーと一致したのです。今回は、テスト品ということで全ての缶に一缶ずつ販売用の専用ナンバーが刻印されていたのです・・・」

「そうだったのですか?」

「で、その1缶は、どこにありますか?」

「確か・・・工場の中のオイル缶の置き場だと思いますが?・・・」

「では、そこに行ってみましょう・・・」と、言うことで皆で工場へ向かった。

解体業者としても大きな会社ではあるが、整備工場としても中堅クラスの規模であった。

木村社長は、エンジンオイル缶の置いてある物置のドアを開けた。

「この中が全てオイル関係の保管場所です。えっーと・・・確か・・・このあたりですが・・・」

と、中を探している。が、そのエンジンオイルは見当たらないようだ。

他にも20缶ぐらいのエンジンオイルやミッションオイルが整然と並んでいた。

「ないですね・・・おかしいなぁ・・・確か、十日前に届いたはずだけど?・・・一回だけ乗用車に使っただけですから残っているはずですが・・・」

刑事が「一回?ということは、まだ、十リットル以上はないとおかしいし捨てることはないでしょう。それよりもここに置いていたのは間違いないですか?」

「はい、作業が終わったなら、この中に保管するということにしています。ですから、他のところに置くということはないです・・・」

と、工場内を見渡して探そうとしていた。

「木村さん・・・多摩西部署の新開といいます。ここで作業している人は誰ですか?」と、新開刑事は、警察手帳を見せながら横から口を出した。

「うちの社員の、中川昭義と木場準です。今日は、中川は具合が悪いということで休みをとっていますが・・・木場はいます・・・今、車を洗車していると思います・・呼びましょうか?」

「木場さんですか?呼んで下さい・・・」と、新開刑事は言った。

ほどなくして木場という男が顔を出した。

「木場さん・・・キクチのエンジンオイルのことですが?ここにないのです、知りませんかね?・・・」

「キクチ?・・・あぁ・・あの新しいやつですか?ここにないですか?おかしいなぁ・・・中川がトヨタのマークⅡに使ったと思いますが・・・それ以来は使ってないので・・・」

「中川さんが使ったということですか?木場さんは使っていない?・・・」

「はい、中川です。客のマークⅡの車検でエンジンオイルを交換してほしいということでした。お金をかけたくないということだったので安いキクチのオイルを使ってみようということになったのです。それからは使っていないと思います・・・書類を調べたなら分かりますが?」

ということで、整備した車の書類を確認した。

やはり、トヨタのマークⅡに使っていたということが分かった。

ということは、マークⅡのエンジンオイルは、普通のエンジンオイルの交換であれば、数量的にみても五リットルぐらいですから、10L以上は残っていないとおかしいのだ。

全員で工場の中を探しても、オイル缶を見つけることはできなかった。

「木村社長、ご無沙汰しています・・・」と、僕が言うと。

「いゃー、雪田社長・・・殺人事件らしいですよ・・・私も疑われているのでしょうか?身に覚えはないですが・・・それと、どうしてここに?」

「新開刑事が知り合いなので、一緒に来たのです。木村社長も知り合いということで・・・」

「そうでしたか。しかし、おかしいなぁ・・・オイル缶がない・・・中川に聞いてみましょうか?家で寝ていると思いますが?」と、言った。

「お願いします・・・」と、日光南署の刑事は頷いた。

事務所に戻って電話をしてくるということで木村社長は外に出た。

「あのぅ・・・新開警部補ですよね?今野刑事から噂は聞いています。お目にかかれて嬉しいです。こんなところでお会いするとは・・・」と、若い刑事が言った。

「嬉しい?そんなことはないだろう。どうせ、ろくでもない噂だろう?」

「いぇ・・・今野刑事から聞いていますよ。警視庁管内では有名人だと、それも難事件をいくつも解決したと・・・耳が痛くなるほど聞かされています・・・私が日光南署に配属されて今野刑事の下についた時からですから・・・三年になります。何かあると、新開刑事なら、こうするとか・・・ああするとか・・・一度は、捜査を一緒にやってみろと・・・」

「ほぅ・・・聞いたかい?雪ちゃん・・・・俺も捨てたものじゃないか・・・ハハハ・・・」

「そうですよ・・・新開刑事は、有名人です・・・ハハハ・・・警視総監の命令でも無視する・・・ハハハ。一匹狼・・・いや・・・今野刑事と同じ・・・一匹のスッポン・・・でしょう?・・・」

と、僕が言うと。若い刑事は、笑いをこらえていた。

「スッポン?それは今野のことだ・・・俺は違う。スッポンじゃない。俺の顔がスッポンに見えるかい?今野は、どう見てもスッポンだが、俺は違う・・・スッポンなんて言うなよ・・・」

「確かに、今野さんはスッポンにそっくりですが、新開さんも似ていますよ・・・顔よりも性格が・・・ねぇ、池田さん・・・」と、日光南署の池田という若い刑事を見た。

「今野さんは・・・スッポンの性格ですが、新開警部補は・・・初めてお会いしたので、スッポンかどうかは分かりません。でも、今野さんは、よく言っていました。俺はスッポンの今野と呼ばれているが、新開警部補は、そのスッポンを食べる人だよ・・・どういう意味なんでしょうか?」

「スッポンを食べる?・・・池田さん、おそらく、スッポンのように食らいついたスッポンのような刑事を、うまく使いこなすことができるという意味じゃないですかね?僕はそう思いますよ。だって、僕も新開さんに色々と利用されていますから・・・そういう意味だと思いますよ?・・・」

「なるほど・・・そういう意味だったのですか?そういう意味なら理解できます。今野さんがスッポンで、そのスッポンを操る人・・・そういうことですよね?」

「正解・・・ねぇ・・・新開さん・・・」と、僕はニヤリと見た。

「・・・・スッポンを操る・・・俺は、蛇使いのようなものか?ハハハ・・・」と、大声で笑った。

その大きな口を見ていると、どうみてもスッポンの口に見えて仕方がなかった。

スッポン使いが新開さんで、踊るスッポンが今野さん・・・いいコンビだと思った。

「中川に連絡が取れません・・・自宅も携帯も電話がつながりません・・・何度もかけましたが・・・」

と、木村社長が走ってきた。

新開刑事が「中川さんという人は、どういう人ですか?過去にも休んで連絡が取れないことは?」

「いぇ、一度もありません。というよりも休んだことすらありません。こんなことは初めてです。何か関係しているのでしょうか?」と、不安そうな顔をした。

「出かけているのかもしれませんね?もう少し様子を見ましょうか?一応、中川さんの住所を教えて下さい。電話がつながらないようなら行くしかないと思います・・・」と、新開刑事は尋ねた。

そして、池田刑事も同じように頷いた。

それから、数十回も電話をかけたのであるが、中川という男とは連絡が取れないのだ。

僕たちは、とにかく中川の住むアパートへ向かった。





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「雪田さん・・・どうかしましたか?・・・」と、今野刑事が不思議そうに僕の顔を見た。

「いぇ・・・ちょっと・・・明日から忙しくなりますね・・・一歩前進したことと、明日のエンジンオイル缶の製造業者への捜査で、かなり絞り込めると思いますよ。意外と早い解決になるのではないでしょうか?」

「そうだといいですが・・・最近は、手の込んだ犯罪者が多い。ですから、どこに落とし穴があるかもしれません。私の署でも、二件の未解決事件があり、ひとつは年末に時効となります。昔に比べたなら未解決事件が多くなっているのです。本当に残念なことです・・・焼酎は?」

「えぇ・・・もう寝ようかと・・・明日は、昼までに東京へ戻ろうかと思っています。あまり飲むと・・・飲酒運転になってしまいますから・・・このへんで・・・」

「そうですか・・・私も朝一番で捜査に入ります・・・今日は、ありがとうございました・・・」

僕は、今野刑事の家で眠りについた。

翌朝、今野刑事は、僕にゆっくりしていて下さいと言い残して署に向かった。

鍵は、ドアポケットの中に入れておいてくれという。

僕は、九時過ぎに東京へ向かった。娘さんの遺影に手を合わせてから・・・

僕の中古車屋に着いたのは、昼前であった。

社員の新藤が「社長・・・後で新開刑事が来るということです。社長の携帯の電池は充電してありますか? 何度かけても留守電になっているので・・・心配していましたよ・・・」

「いゃ・・・ごめん・・・充電していなかった・・・忘れていたよ・・・」

僕は、携帯電話があまり好きではない。何か監視されているという気がしてならない。

しかし、携帯電話がないと仕事にならないということは十分知ってはいるのだが・・・

「これからは困りますから、気を浸けてください・・・新開刑事も心配していましたから・・・それと、何でも横浜の手の死体の出所が分かったということでした。夕方にはお見えになるということです・・・」

「わかった・・・」僕は何の用事だろうと思った。

手だけの死体と、僕が何か関係あるのだろうか?まさか、そんなことはないだろう・・・

そうでないとしたならば、車についての何かを聞きたいとうことしかない・・・

とすれば、今度の事件も車がらみの殺人事件なのかもしれない。

丁度、一時になりかけた時に、日光南署の今野刑事から電話があった。

「東京に着かれましたか?・・・実は、とんでもないことが分かりました。エンジンオイルのメーカーですが、このオイル缶の製造ナンバーは、多摩地区でしか販売していないということです。全てのオイル缶には製造ナンバーがあるのですが、販売テスト用のサンプル商品ということで徹底して記録していたというのです。多摩地区にある木村自動車解体という業者に販売したというのです。解体屋ですが、別の部門で整備工場もあるというのです。そこが買ったということです。雪田さんの店の近くではないですか?江戸川に行っている刑事を、木村自動車解体へ向かわせました・・・夕方には着くと思いますが?・・・」

「木村・・・自動車解体?・・・僕の知り合いですよ・・・僕の店の解体車も出したことがあります。日野市にあります。日野市の業者ですよね?」

「そうです。日野市というところの業者です。知り合いですか?そこですよ・・・雪田さんの知り合いとは偶然です・・・そらに、足首の断面から分かったことがあります。鋭利な刃物ということと、何か高熱で焼けたような痕があるのです。最初は、腐敗していたと思っていたのですが、鑑識によると熱にさらされていたということです。高熱で溶かそうとしたのか、最初に切断してから熱で溶かそうとしたのかは不明ですが・・・いずれにせよ、横浜の手と同一人物かもしれないと思います。DNA鑑定は夕方に判明するということです。さらに報告があります。私の娘のことなのですが・・・」

「例の花のことですか?」

「昨夜、交差点に置いてあったということなのです・・・巡回していたパトカーが見つけたのです。近所に聞いてみたのですが、目撃者はいません・・・また、花が、あったということです・・・」

「・・・昨日、聞くのを忘れていましたが・・・花屋からの線は?・・・」

「以前より調べていますが・・・地元の花屋ではないのです・・・だから、今のところは・・・何も・・・」

「そうでしたか。不思議ですね?いったい誰なのでしょうか?警察が見張っているということが分かっていながら、花を置く。リスクがあると思うのですが?・・・」

「はい、犯人だとしたなら大胆な行動だと思います。しかし、花はあった・・・何か挑戦的な行動だとも・・・」

「挑戦? 警察へ・・・それとも、今野さんへ?・・・」

「私は刑事ですから、人に恨みを持たれることはあると思います。しかし、何年もの間、同じように花を置いておく・・・それも、娘の命日に・・・それと、毎年毎年、同じ白い百合の花なのです」

「白い百合・・・何でしょうか?もしかしたなら・・・花言葉は?意味が・・・」

「以前、それも調べてみました。純潔とか愛とかいう意味あいしかありません。花言葉は違うかと?・・・」

「そうでしたか・・・何か意味があるのかと思って・・・違うようですね・・・」

「えぇ・・・それは別として、足首と手が同一なら広域捜査ということになります。場合によっては明日、そちらに行くことになるかと思います。署長の許可も出ています。新開刑事にも会えるかと?」

「新開さんなら、夕方に店に来るということです。何か僕に聞きたいことがあるというのです。新開さんが聞きたいということは、おそらく今度の事件も車がからんでいると思います。何やら不思議な事件に発展しそうな予感がしますね・・・今野さん?・・・」

「そうかもしれません・・・・何か新しいことがあったなら、また、連絡します。それでは・・・」

と、今野刑事からの電話は切れた。

おかしな展開というよりも、真実に近づいているのだと思った。

この事件は、簡単に解決されるだろうと思っていたのだ?

痴情か怨恨の線で殺され、死体をバラバラにして、一部は解体車に入れて、溶かそうとした・・・

さらに、他の死体は、別々の場所に捨てる・・・ということだろうか?

死体の身元さえ分かれば、この事件は簡単に解決だと思っていたのだ。

その日の夕方に新開刑事が約束の時間に店にやってきた。

「おぅっ・・・鑑定の結果が判明したぞ・・・日光の足首とも同一だ。バラバラ殺人事件だ。明日、日光南署との合同捜査本部を設置する。あーぁ・・・また、面倒な事件だよ・・・」

足首と手の死体は同一人物であり、年齢的には、二十才から四十才ぐらいの男性だということだ。

「新開さん、つながりましたね。明日、今野刑事がこちらに来るかもしれないと電話がありました。それと、エンジンオイル缶の購入先が分かったということです。日野市の木村自動車解体です。夕方に別の刑事が行くということですが?・・・」

「あぁ・・・聞いたよ。今野とも久しぶりに会うな。それで、雪ちゃんは、木村とは知り合いだろう?」

「えぇ、知り合いです。木村が買ったエンジンオイル缶から何かが分かるかもしれませんね?足首が入っていたということですから、何かの突破口になる・・・と思いますが・・・」

「そうだな。横浜の電気炉の工場の捜索は終わったが、特に何かあるということはなかったよ。ただ、自動車のガラを受け入れたということだけだ。しかし、運よくというか?電気炉が故障してくれてよかったよ。そうでなければ、手は完全に溶けていたはずだな。そうなると、日光の足首だけが発見されたということになる。そこで、大きな疑問があるんだよ・・・」

「・・・疑問・・・・もしかして・・・手も溶かすなら、足首も・・・ということですか?」

「そうだよ。手も足首も溶かすのが普通じゃないか?そんなに手のこんだことをするということは犯人としてもリスクがあると思う。それと、手の中にあったメモ用紙の分析をしているのだが、焼け焦げていてな、今、科捜研に依頼している。どこまで判読できるかは不明なんだ。文字が書いてあるのではないかと推測しているが・・・それと、手の指紋は全て溶けていて採取は不可能だ。どこの誰なのかは分からない」

「やっかいですね。手と足首・・・他の部分は、どうなったのでしょうか?小さな部分だけが発見されて大きな部分はまだ発見されていない・・・もしかしたら、他も溶かされているかもしれませんね?」

「そうなると迷宮の扉の中に入ったようになるよ。一応、全国の捜索願が出ている男は調べているが、手と足首だけだからなぁ・・・難しいよ・・・手にも足首にも何かの特徴らしきものもない。もしかしたなら、難事件になるかもしれないな・・・」

新開刑事は、ポケットからタバコを出して火をつけた。

僕の考えは浅はかだったのかもしれない。

エンジンオイルの缶だけがたよりになっていた。

「新開さん・・・木村自動車解体へ行ってみませんか?日光南署の刑事が着く時間だと思います」

「俺も行こうと思っていた・・・その・・・手が入った車を持ち込んだ解体業者も木村かもしれない。雪ちゃんの知り合いなら話は早いかもしれないな・・・」

「えっ・・・木村・・・それも?・・・」

「今のところは調査している状態だから表にはしていない。木村という確証はない。数社を絞り込んでいるが、その中の一社ということだ。だから、この件は内密にしておいてくれるかい?」

「はい・・・オイル缶についてだけ聞くということすね・・・」

と、いうことで木村自動車解体へ向かうことになった。

僕たちが着くと、日光南署の刑事は簡単な調べを始めようとしていた。

殺人事件の捜査だということを告げたようだ。

僕たちは、その刑事たちに身分を証明した。

僕の顔を見つけると木村社長は軽く会釈した。






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