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「・・・ということは、そのオイル缶は、直接メーカーから購入したということに間違いはないのですか?誰かにもらったとかいうことはないですね?」と、日光南署の若い刑事が尋ねた。
「はい、江戸川にあるキクチというオイルのメーカーから直接買いました。キクチとは先代からの付合いでして、私の会社のエンジンオイルは全てここのものです。今回も新製品を発売するということで事前に連絡がありました。今までのオイルよりも安くて経済的でということでした。確かに、以前のオイルよりも安くてオイルの質もいいように思いました・・・」
「そうですか・・・確かに、キクチの販売担当の人と同じ話です。それに、木村さんのところに卸した缶は、メーカー独自の製造ナンバーと一致したのです。今回は、テスト品ということで全ての缶に一缶ずつ販売用の専用ナンバーが刻印されていたのです・・・」
「そうだったのですか?」
「で、その1缶は、どこにありますか?」
「確か・・・工場の中のオイル缶の置き場だと思いますが?・・・」
「では、そこに行ってみましょう・・・」と、言うことで皆で工場へ向かった。
解体業者としても大きな会社ではあるが、整備工場としても中堅クラスの規模であった。
木村社長は、エンジンオイル缶の置いてある物置のドアを開けた。
「この中が全てオイル関係の保管場所です。えっーと・・・確か・・・このあたりですが・・・」
と、中を探している。が、そのエンジンオイルは見当たらないようだ。
他にも20缶ぐらいのエンジンオイルやミッションオイルが整然と並んでいた。
「ないですね・・・おかしいなぁ・・・確か、十日前に届いたはずだけど?・・・一回だけ乗用車に使っただけですから残っているはずですが・・・」
刑事が「一回?ということは、まだ、十リットル以上はないとおかしいし捨てることはないでしょう。それよりもここに置いていたのは間違いないですか?」
「はい、作業が終わったなら、この中に保管するということにしています。ですから、他のところに置くということはないです・・・」
と、工場内を見渡して探そうとしていた。
「木村さん・・・多摩西部署の新開といいます。ここで作業している人は誰ですか?」と、新開刑事は、警察手帳を見せながら横から口を出した。
「うちの社員の、中川昭義と木場準です。今日は、中川は具合が悪いということで休みをとっていますが・・・木場はいます・・・今、車を洗車していると思います・・呼びましょうか?」
「木場さんですか?呼んで下さい・・・」と、新開刑事は言った。
ほどなくして木場という男が顔を出した。
「木場さん・・・キクチのエンジンオイルのことですが?ここにないのです、知りませんかね?・・・」
「キクチ?・・・あぁ・・あの新しいやつですか?ここにないですか?おかしいなぁ・・・中川がトヨタのマークⅡに使ったと思いますが・・・それ以来は使ってないので・・・」
「中川さんが使ったということですか?木場さんは使っていない?・・・」
「はい、中川です。客のマークⅡの車検でエンジンオイルを交換してほしいということでした。お金をかけたくないということだったので安いキクチのオイルを使ってみようということになったのです。それからは使っていないと思います・・・書類を調べたなら分かりますが?」
ということで、整備した車の書類を確認した。
やはり、トヨタのマークⅡに使っていたということが分かった。
ということは、マークⅡのエンジンオイルは、普通のエンジンオイルの交換であれば、数量的にみても五リットルぐらいですから、10L以上は残っていないとおかしいのだ。
全員で工場の中を探しても、オイル缶を見つけることはできなかった。
「木村社長、ご無沙汰しています・・・」と、僕が言うと。
「いゃー、雪田社長・・・殺人事件らしいですよ・・・私も疑われているのでしょうか?身に覚えはないですが・・・それと、どうしてここに?」
「新開刑事が知り合いなので、一緒に来たのです。木村社長も知り合いということで・・・」
「そうでしたか。しかし、おかしいなぁ・・・オイル缶がない・・・中川に聞いてみましょうか?家で寝ていると思いますが?」と、言った。
「お願いします・・・」と、日光南署の刑事は頷いた。
事務所に戻って電話をしてくるということで木村社長は外に出た。
「あのぅ・・・新開警部補ですよね?今野刑事から噂は聞いています。お目にかかれて嬉しいです。こんなところでお会いするとは・・・」と、若い刑事が言った。
「嬉しい?そんなことはないだろう。どうせ、ろくでもない噂だろう?」
「いぇ・・・今野刑事から聞いていますよ。警視庁管内では有名人だと、それも難事件をいくつも解決したと・・・耳が痛くなるほど聞かされています・・・私が日光南署に配属されて今野刑事の下についた時からですから・・・三年になります。何かあると、新開刑事なら、こうするとか・・・ああするとか・・・一度は、捜査を一緒にやってみろと・・・」
「ほぅ・・・聞いたかい?雪ちゃん・・・・俺も捨てたものじゃないか・・・ハハハ・・・」
「そうですよ・・・新開刑事は、有名人です・・・ハハハ・・・警視総監の命令でも無視する・・・ハハハ。一匹狼・・・いや・・・今野刑事と同じ・・・一匹のスッポン・・・でしょう?・・・」
と、僕が言うと。若い刑事は、笑いをこらえていた。
「スッポン?それは今野のことだ・・・俺は違う。スッポンじゃない。俺の顔がスッポンに見えるかい?今野は、どう見てもスッポンだが、俺は違う・・・スッポンなんて言うなよ・・・」
「確かに、今野さんはスッポンにそっくりですが、新開さんも似ていますよ・・・顔よりも性格が・・・ねぇ、池田さん・・・」と、日光南署の池田という若い刑事を見た。
「今野さんは・・・スッポンの性格ですが、新開警部補は・・・初めてお会いしたので、スッポンかどうかは分かりません。でも、今野さんは、よく言っていました。俺はスッポンの今野と呼ばれているが、新開警部補は、そのスッポンを食べる人だよ・・・どういう意味なんでしょうか?」
「スッポンを食べる?・・・池田さん、おそらく、スッポンのように食らいついたスッポンのような刑事を、うまく使いこなすことができるという意味じゃないですかね?僕はそう思いますよ。だって、僕も新開さんに色々と利用されていますから・・・そういう意味だと思いますよ?・・・」
「なるほど・・・そういう意味だったのですか?そういう意味なら理解できます。今野さんがスッポンで、そのスッポンを操る人・・・そういうことですよね?」
「正解・・・ねぇ・・・新開さん・・・」と、僕はニヤリと見た。
「・・・・スッポンを操る・・・俺は、蛇使いのようなものか?ハハハ・・・」と、大声で笑った。
その大きな口を見ていると、どうみてもスッポンの口に見えて仕方がなかった。
スッポン使いが新開さんで、踊るスッポンが今野さん・・・いいコンビだと思った。
「中川に連絡が取れません・・・自宅も携帯も電話がつながりません・・・何度もかけましたが・・・」
と、木村社長が走ってきた。
新開刑事が「中川さんという人は、どういう人ですか?過去にも休んで連絡が取れないことは?」
「いぇ、一度もありません。というよりも休んだことすらありません。こんなことは初めてです。何か関係しているのでしょうか?」と、不安そうな顔をした。
「出かけているのかもしれませんね?もう少し様子を見ましょうか?一応、中川さんの住所を教えて下さい。電話がつながらないようなら行くしかないと思います・・・」と、新開刑事は尋ねた。
そして、池田刑事も同じように頷いた。
それから、数十回も電話をかけたのであるが、中川という男とは連絡が取れないのだ。
僕たちは、とにかく中川の住むアパートへ向かった。
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