週刊ヤングジャンプで好評連載中の中国春秋戦国時代の壮大な歴史絵巻を描いた人気歴史アクションシリーズ第4弾にして最終章。

馬陽の戦い1日目を終え、敵将馮忌を討ち取りその勝利にわく飛信隊の面々。
その中で、暗闇の中から大きな矛を持った大男が彼らに静かに近づいて来ていた。

隊のひとりがそれに気づき男を制しようとするがその時男は巨大な矛を振り回し瞬く間に彼らを殺していく。
自らを武神というその男はその強烈な殺気と武力で宴に酔っていた飛信隊を混乱の坩堝へと落としていった。

騒ぎをききつけた信たちは殺された隊の仲間たちの姿を見ると、男に飛びかかるのだが男は軽々と信を吹き飛ばしてしまう。
圧倒的な武の力に剣術の使い手の羌カイも歯が立たない。
そして信は羌カイと同時攻撃を仕掛けるのだが男は信に強烈な一撃を加え、信を瀕死の重傷に追い込む。
羌カイの秘術である壬生の舞も通じないその男はなんと趙軍の総大将である龐煖であった。

そしてさらに追い討ちをかけるように趙軍の将、万極が夜襲を仕掛け、狙われた飛信隊は壊滅の危機に瀕してしまう。

何とか信を逃がそうとする隊の仲間たちはそれぞれが散り散りに逃げることで趙軍を撹乱させ、尾兄弟に助けられた信は尾到の背中に乗せられ必死に万極の追撃を逃れようとしていた。

しかし追っ手は近づきつつあり、尾平は自ら囮となって趙軍を引き付け、尾到に信を託す。
その尾到も彼らの追撃を受けて深手を負っていた。
急な崖を上り降りし、気絶していた信が目覚めたのは趙の追っ手も来ない山外れにある草むらの中であった。

傷つき動けないなか尾到は信と出会った頃からの思い出話を始める。
楽しかった思い出に二人とも懐かしみ笑いながらもいつしかまた寝入ってしまった二人。
しかし再び信が目覚めたときには尾到は負った深手がもとで眠るように息を引き取っていた。

翌朝、趙軍の追撃を何とかふりきった隊の生き残りたちはそれぞれに森のなかで落ち合うのだが、そこに尾到の遺体を担いだ信も帰ってくる。
悲しみにくれるなか、兄の尾平は飛信隊を助けるために重要な任務を見事に果たしたのだと笑っておくるように信たちを励まし、数少ないながらも壊滅を逃れた飛信隊はようやく王騎の待つ本陣に合流する。

寡兵となった飛信隊は王騎の本陣に組み込まれ、いよいよ趙軍への追撃戦が幕を開ける。

山間部の地を活かして守りを固める趙軍に攻めあぐねる王騎軍。
そのしびれを切らせた軍の先頭を率いる蒙武は相対する軍の中に総大将の龐煖の姿を見つけ、王騎の命を無視して敵陣深くまで切り込んでいく。
敗走する龐煖を討ち取ったかにみえたがそれは偽者であり、蒙武らは山の合間に仕組まれた趙軍の罠によって挟み撃ちにされてしまう。

遠目から蒙武の危機を悟った王騎は全軍を率いて進軍し、あえて蒙武らを攻め立てる趙軍の背後をついて蒙武を助けださんとするのだった。
その中で王騎は明らかに趙軍の中にこれまでにない異質な存在を感じ取っていた。

その頃秦の都咸陽の政のもとに山の民の女王、楊端和が訪ねてくる。
彼女は山の民を率いて北の匈奴を攻めようとしていたがそこで恐るべき光景を目にし、急ぎ政に進言に来たのであった。

彼女が見たものは十数万にも及ぶ匈奴兵の死体の山で、それを築いたのはなんと趙軍だったという。
その情報は一切、秦国には知らされていなかった。
そしてその匈奴を倒した軍が今回の馬陽の戦いに参戦しようとしていることを伝える。
青ざめる政と昌文君。
その強力な兵を率いているのが新しい趙の三大天となった李牧という男であった。

その頃壊滅寸前だった蒙武達の前に王騎の本陣が到着。王騎は一気に形勢を力業で変えようと副将の謄を筆頭に動揺する趙軍を叩きにでていく。
その勢いで切り開かれた道を王騎は悠然と進み、軍の中に待つ総大将龐煖のもとへとたどり着く。
王騎は李牧の援軍が来る前に一騎打ちにて龐煖を撃ち取らんとしていたのだった。


巨大な矛を撃ち合い、一進一退の攻防を繰り広げる王騎と龐煖。
龐煖がここでかつて屠った秦の六代将軍、キョウの名前を口にするとこれまで冷静を保っていた王騎の顔がみるみるうちに憤怒の表情となり怒りを露に龐煖へと襲いかかる。
ここ馬陽で討たれたキョウへの悲しみと龐煖への怒りは癒えてはいなかったのである

その頃、政は最後の六大将軍のひとりキョウについて昌文君から王騎の過去と共に知らされていた。

昌文君が若き頃、昭王の時代に彼は王騎と共に戦場にたっていたが、その時の王騎の軍にはひとりの可愛らしい少女が付き添っていた。
彼女の名前はキョウ。王騎の屋敷で召使いとして従事しているとのことだったが、その戦いの才能は天才的であった。

そんなある日の戦場にて、代理の総大将に任命された王騎は密かに昌文君をよびだす。
この頃にはキョウとも兄妹のように信頼しあう関係となっていた彼に王騎は静かにキョウについての秘密を語りだす。
彼女は実は昭王の隠された子供であり、お互いにそれは知らないのだということであった。

しかし戦いのあと昭王は戦場を労うため本陣を訪問。
そこで謁見した二人は瞬時にしてお互いが親子であることに気づいてしまうのだった。
真実を明かせば国内の動乱を招きかねないと悟ったキョウは王との親子関係を秘密にし、固く閉ざす。

そして戦場に明け暮れるキョウはやがて六大将軍のひとりにまで登り詰めるのだった。

そんなある日、昌文君はキョウに戦う理由を問う。
すると彼女は子供の頃王騎と交わした『100個の城を落とした際は王騎のお嫁さんにしてもらう』と語る。
所詮は子供の時の約束と王騎が覚えているはずもないと思っていたキョウであったが、馬陽攻略の際にキョウは軍の総大将に、そして王騎は副将に選ばれる。

その開戦前にキョウの本陣を訪ねた王騎は馬陽が100個目の城と告げ、彼女との約束を覚えていたことを明かす。
しかしその夜、キョウは龐煖と戦い命を落とす。
激情に駆られた王騎は龐煖を倒すもその怒りは未だに燻っており、今日までの戦いに繋がっていたのだった。

キョウへの想いを糧に怒りをぶつける王騎は龐煖をも圧倒する力をみせ、その決着をつけようとしていたが、その時新たに李牧の率いる趙の騎馬の大軍勢が駆けつけてくる。

援軍が来る前に決着をつけるはずであった王騎は自分の更に上をいく策略に敗北が目の前にあることを感じながらも笑い、諦めず軍に激を飛ばし自らが龐煖を足止めして力ずくで活路を見出だそうとする。

李牧は三大天の旗を掲げると狼狽する王騎軍に騎馬隊の第一陣をぶつけると同時に弓の名手の魏伽に命を下していた。

王騎と龐煖の激しい一騎討ちは王騎が圧倒し、龐煖へ決着の一撃が入ろうとしていた瞬間、暗躍していた魏伽の矢が王騎の刺さり、一瞬太刀筋の乱れた王騎はその隙をつかれ、龐煖の矛に胸を貫かれてしまう。
慌てて魏伽を討ち取る信であったが、致命傷をおった王騎に軍は戦意喪失しかけるが、王騎は力を振り絞って軍に激を飛ばし、復活させる。

追撃を始めようとする趙軍にたいして、復活した蒙武がこれを蹴散らすと信は王騎を担ぎ上げ、彼の馬を走らせてその活路を見出だそうと疾走する。
自分の死を感じながらも信に将軍としての景色をみせる王騎。
果たして信たちの戦いの行方は。
そして王騎が彼らに遺そうとするものとは…

累計売上1億部を突破した人気歴史アクション漫画の実写化シリーズ第4弾にして最終章。

壮大なスケールのアクションと豪華すぎる俳優の起用で原作以上の盛り上りをみせていた実写『キングダム』シリーズ。
その最終章として作られた本作は前作である『~運命の炎』からの直接の続編となっている。

原作でも前半の最大の人気エピソードである『馬陽の戦い』と『王騎の死』をまさに忠実に描いた本作は『運命の炎』と併せての前後編というボリュームたっぷりのものとなっていた。
それだけ原作ファンの熱が高い箇所でもあるということである。

ストーリーの山場としては大きく二つになっていて、前半は武神龐煖に襲われ、壊滅寸前となった飛信隊のドラマ、後半は龐煖と因縁の対決を迎える王騎の戦いがメイン。

前半の最大の山場となるのが屈指のエピソードである尾到の殉死シーンで、深手をおった尾到が信との出会いを薄れゆく意識の中で信と語り合うシーンは後に信が大将軍を目指すことを決意する大事な場面で、静かながらも胸熱必至。

そして後半は大迫力のアクションを交えて描かれる王騎の強さと偉大さ、そして魂の継承が描かれている。
ここでの主役は明らかに信ではなく王騎であり、描き方からして主役の二部構成になっている感じである。

これまでシリーズではその存在感だけは大きく取り上げられていた王騎であったが、本作ではそのベールに包まれていた実力が発揮。

大きな矛を振り回す格闘アクションに挑んだ王騎役の大沢たかおはこの作品のために15キロの増量と筋トレに励み、まさに無双のオーラを漂わせる大迫力のアクションをみせている。
それは宿敵である龐煖を演じた吉川晃司についても同様で、元々水球選手出身である恵まれた肉体を更に肉体改造し、まさに原作と違わぬ畏怖と迫力をみせてくれている。

前作では顔見せ程度であった吉川晃司同様、今後の原作での最大の宿敵となる李牧役の小栗旬もその全貌をみせ、激情に駆られる王騎とは正反対の冷静沈着さと冷酷さでその存在感をまざまざと見せつけてくれる。

この前作からの二人に加え、今回目玉となった豪華俳優の起用が六大将軍のひとりキョウを演じた新木優子、そして昭王を演じた草刈正雄。
スレンダーな新木優子に戦神であるキョウができるのかという不安要素もあったが、実際には戦闘シーンはなく、王騎のドラマを盛り上げる役割であったため、かえってその可憐さが活かされた感じとなった。
龐煖に討ち取られる前の王騎とキョウの語り合いはより龐煖対王騎のドラマティックなシーンを盛り上げる要素となっている。

本作における最大の見処は圧巻ともいえる王騎、大沢たかおの役づくりと迫力だろう。
ここにおいては完全に主人公の信を食ってしまっており、龐煖から致命傷をおい、その最期を迎えるまでの自分の遺志を残し、それぞれに託して散る様は原作で展開を知っているにもかかわらず涙なしでは観れない感動的な名シーンとなっていた。

逆光のなかで大往生を迎える姿もまた悲しみと共に威厳さも感じ、この前後編はまさに彼のためにあったと言っても過言ではないだろう。

そして原作でも異彩を放っていた王騎の副将、謄も遂に活躍。
あの独特の戦いかたである剣を回すときの『ファルファルファル…』も見事に再現。
それと共に演じた要潤のカッコ良さも爆上りとなった。

人気のエピソードの詳細の再現なだけあってドラマ的にも盛り上がり、面白いのはもちろんのこと、それに増しての迫力のアクションと迫真の演技が壮大なシリーズのフィナーレに相応しい高評価と言わざるを得ない本作。
一応のシリーズは最後という触れ込みではあるが、本作の大ヒットをうけて既に新たな続編の製作も始まり、それに伴う原作の主要キャラの起用俳優も発表されるなどその話題性はまだまだ続きそうなシリーズ。

もはやこれに出演するかしないかが今後の俳優人生のステータスにまで影響してくるのではないかと思われるくらい邦画アクションの大作としても見過ごせないものとなっている。
新たなエピソードの実写化と誰がどんなキャラを演じるのかというサプライズ性に大きな期待を寄せつつ、今後主要キャラが倍増していくなかで、信がどのように活躍していくのか、本作の後半、サブキャラのような存在感となっていかないようにそのキャラクター同士のバランスも難しそうなところ。

エピソードは原作としても焦点をあてれそうなシーンが盛り沢山なので、キャラによるスピンオフなんかも期待されそうなシリーズといえるだろう


評価…★★★★
(何よりも大沢たかおの仕上がりの凄さ。後半は完全にもう王騎そのものでした)


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