週刊ヤングジャンプで絶賛連載中の歴史アクション作品の続編。

中国戦国時代。列強のひとつ『秦』はのちの始皇帝となる叡政が王族出身で暴政を強いていた弟成嬌との内乱を制し、ようやくその王政をひとつにまとめあげた。
そんな矢先のこと、政は王宮内で『朱凶』と呼ばれる手練れの暗殺者二人に襲われる。
すんでのところで駆けつけた信と河了貂によって助けられたが、暗殺者が王宮深くまで侵入したのは秦内に裏切り者がいるということは明らかであった。

さらに同時期に物見の報告により隣国の『魏』が十万ほどの軍を率いて秦への侵攻を始める。
敵国の魏の大将は魏国最強の軍団『魏火龍七士』の中で最強とうたわれる呉慶。
天下の大将軍を目指す信は、将軍への第一歩として本物の戦争を体感し手柄を立てるため、自ら一兵卒として魏の討伐軍に志願する。

虚をつかれた秦は急遽歩兵部隊を立ち上げることとなり、信もその募集に参加。
そこで信は村の幼馴染みである尾平と尾到兄弟と再会する。
再会の喜びもつかの間、係の号令にともない参加者は軍の最小単位の5人組である『伍』を作るように命じられる。

身体のでかい沛浪らが次々と結成していくなかで、腕っぷしは強くてもまだ少年の信を伍に誘うものなど誰もおらず、結果あぶれ者同士として信は尾平、尾到と少年のような体躯の小柄な羌カイ、そして頼りなさげな風貌の澤圭を伍のリーダーとした最弱の伍に所属することとなる。

強大な魏の軍勢は広大な蛇甘平原の両丘をすでに占拠しており、遅れて陣取った秦軍はかなり不利な戦況となっていた。
討伐軍を率いる猛将、ヒョウ公は不利な戦況を覆す要となる丘を奪還するため、丘を守る魏軍の副将宮元への突撃を命令する。

しかしただでさえ後手の状況な上に、にわかに組まれた伍での無謀な突撃に統率など取れるはずもなく不利な状況。そんな中で千人将縛虎申の無茶な突撃命令に呼応した信は一番先に敵陣へと飛び込み、前線の司令官の首を討ち取る活躍をみせると勢いづいた秦の歩兵部隊は敵の前線部隊を撤退に追い込む。

だが、直後に現れた魏の装甲戦車が秦の歩兵部隊を蹂躙し、歩兵部隊は僅かな兵を残してほぼ壊滅状態にまで追い込まれてしまう。
信や沛浪など僅かに生き残った数十人の歩兵は援軍を待つのだが、指揮を務めるヒョウ公はただ戦況を見守るのみであった。

援軍は来ないと知った信たち。魏軍は止めとばかり装甲戦車を駆ってこようとする。
するとこれまで沈黙を保っていた羌カイは戦車を倒す方法として死体を積み上げて防護壁にし、戦車を崩す方法を提案。その策は的中し、敵の戦車の一部を破壊した信たちは戦場から離脱を図る。
歩兵団壊滅の知らせが次々と届くなかで孤軍奮闘している信たちの部隊の活躍に総指揮のヒョウ公は興味を抱き、注視するよう伝令をする

その夜。魏軍の残党狩りに囲まれた信は自らが囮となって沛浪や尾平たちを逃がそうとする。
そんな信と共に残ったのはあの羌カイであった。逃げるよりも残党狩りをここで殲滅させることを選び、数十人を相手に信をも上回る体術で次々と敵を仕止めていく。
だが呼吸が乱れ、危機に陥った羌カイを信が助けると二人は崖を飛び降りて難を逃れるのだった。

崖の中腹の洞穴で目が覚めた信は傷の手当てをした羌カイの顔を覆う布の下の素顔をみて、初めて羌カイが女であることを知る。
火の灯りを囲むなかで信は女である羌カイがなぜ戦場にきたのか問う。
すると彼女は自分の戦う目的を信に語り始める。

元々羌カイたちの村は代々暗殺者の家系であった。その中で最強の腕を持つものは伝説の暗殺者『蚩尤』と名乗り、その力は百人の軍勢をも勝るといわれているとか。
各家から新たな『蚩尤』を決めるための壮絶な殺し合いである『祭』が開催されるなか、カイの姉羌象は彼女が狙われることがないように眠り薬で寝かせ、祭に参加できないよう仕向ける。

起きたカイは急いで向かうが祭はすでに終わっていた。そして遺体のなかには姉の首が転がっていたのである。
祭において最も強く警戒されていた羌家の姉妹は幽漣一族のレンの合図で集中攻撃を受け惨殺されたのだった。

羌カイはそこで卑劣な手で羌象を惨殺したレンを探していたのである。
そのレンが魏へ潜伏していると知った羌カイはその情報を得るためにこの戦場へとやってきたのだった。

羌カイは姉の仇をとったあとは自殺し姉のもとへ行くつもりであったが、それを聞いた信は一喝し批判する。そして姉がやりたかったことを思い出せばそんな目にはならないと説くのだった。

翌日。二人は切り立った丘の狭間にいた尾平たちと、ようやく合流をはたす。が、その間に秦軍の不利的な状況は悪化していた。
勝利を確信した魏軍の副将宮元は静観するヒョウ公への総攻撃を開始。
平地に位置する秦軍と丘から下りてきた宮元軍の間にたつ信たちは手薄になってきた敵本陣を狙って宮元を討つための奇襲を画策するが、予想以上に残っていた守備隊に苦戦する。

一方、信たち寡兵の軍団が本陣への突撃を開始した情報を得たヒョウ公は彼らが戦局を変える大きな火種となることを感じとり、全軍率いて進軍を開始。
そして待機している縛虎申ら騎馬部隊に宮元軍本陣への突撃を命令し。信たちの突撃を助けるよう伝える。

重厚な宮元の軍を壁らが抑えるなか、縛虎申率いる騎馬部隊は奮闘する信たちと合流、本陣へと目指す。しかし時間との勝負であるこの作戦に疲弊している歩兵たちでは騎馬のスピードについていけるはずもなかった。
尾平らは信に馬を駆って縛虎申についていくよう促し、行かせる。
そして残った彼らは羌カイがその殿を務めるのだった。

多勢に無勢のなかで満身創痍となっても戦う羌カイにはいつしか最初にはなかった仲間のために戦うという意識が芽生え、危機に陥りつつあった尾平らを身を持って救う。

宮元の本陣へと目指す信たちは本陣を守る兵を蹴散らしながら迫るが、弓矢隊の前に次々と倒れ、縛虎申も重傷を負う。
宮元自ら止めを指しに縛虎申を貫くが、それは縛虎申自体が誘い込んだ相討ち覚悟の罠で宮元は縛虎申に首を刺され討たれる。
間際の縛虎申は一人活躍をみせた信に『勇猛と無謀の違い』を告げ果てる。

宮元が討たれたことで丘を征服した秦軍であったが、総指揮の呉慶はすぐさま陣形を変えて迎撃の体制を整えていた。
そんな早い陣形の展開に絶望視する信たちの傍らにいつの間にかかつての大将軍である王騎たちの軍勢がやってきていた。

王騎自身は戦いに参加はせず見物に来ただけというのだが、彼の存在を察知した呉慶はすぐさま王騎の陣取る丘に向けて兵を構え出す。
その陣形の動きで薄くなった防御陣に気づいたヒョウ公は自ら先頭に立ち強行突破を仕掛けていく。

その目まぐるしい展開を見守るしかない信に、王騎は将軍の戦い方はこういうものだと教え、触発された信は、王騎より馬を駆って突撃するヒョウ公たちに合流する。
ヒョウ公たちを苦しめていた騎馬戦車を信の活躍によって壊滅させると、遂にヒョウ公は呉慶の本陣へとたどり着く。

全ての雌雄を決するための一騎討ちの誘いを仕掛けるヒョウ公に乗った呉慶は、彼との一騎討ちの末に討ち取られ、侵攻してきた魏はこれにより敗戦撤退を余儀なくされるのだった。

魏との戦いに勝ち、宴が行われるなか、旅立とうとする羌カイを信は見送り、仲間だから戻ってこいという言葉に羌カイは少し笑みを浮かべながら魏へと向かう。

魏の侵略こそ退けたものの、秦内に残された禍根は晴れぬままであった。
絶大な権力をもつ呂不韋との対面、さらなる戦いへの布石。中華統一を目指す政、信、河了貂らが挑む次への一歩とは…

知られざる中国戦国時代の秦の統一までを壮大なスケールで描いた原作を豪華キャストで実写化した歴史アクション続編。

中国の歴史アクション作品といえばカンフー作品の本場、香港では清朝時代や辛亥革命時代のほか、漫画においては魏・呉・蜀の三国時代を含む前漢時代を描いたものが多い。
その中で週刊ヤングマガジンより連載されている歴史アクション漫画『キングダム』は中国の歴史上最も激しい争いがあった『春秋・戦国時代』を描いた珍しい作品集である。

世界史専攻だった筆者も一瞬通過でしかなかったところであるが、脚色があったにしてもなかなかに歴史好きにはたまらない登場人物であり、出来事である。

初めて中国を統一した秦の政は後に始皇帝と呼ばれる人物であるが、歴史の勉強上では万里の長城やら文書を焼き払うといった暴君イメージしかないが、若かりし頃の彼は非常に聡明でまさに神がかり的な人物であったらしい。
そして本作の主人公となるのがその政の最も信足る将軍であった信のちに飛信将軍と呼ばれる猛将である。

原作では文献でしかない史実書を壮大なスケールで描いていて、その世界観から実写化は不可能と呼ばれていた。
その前から原作漫画の実写化には否定的なイメージが先行していて、『キングダム』においてもそのイメージは払拭されていないまま第一弾が製作され公開されたのだが、結果としては近年原作実写化の作品においては邦画としては大ヒットを記録したのは記憶に新しい。

原作実写化においてやはり気になってくるのは登場人物を誰が演じるかというとこになる。
原作の思い入れが強いファンの多いものほどそのイメージから離れたときのアンチ的意見は相当なものである。
前作では主人公の信を山﨑賢人、政を吉沢亮という若手俳優にあて、活発的な野盗の少女河了貂を橋本環奈という人気俳優で固めたほか、特に原作のイメージ通りと評価の高かったのが王弟の成嬈役の本郷奏多であった。そして山の民の施王楊端和役の長澤まさみの好演もヒットの要因であった。

それ以外にも原作における印象的なキャラクターを絶妙な配役で起用したことが大きかっただろう。

かくして製作された続編であるが、今回原作における人気エピソードの信の初陣となる蛇甘平原編を中心に描いたもの。

アクションにおいては前作の集団戦をさらにスケールアップし、数千の軍勢がぶつかり合う大迫力の集合戦が展開。もちろん前作以上に信役の山﨑賢人の躍動感溢れる格闘アクションは健在であるが、どちらかというと戦争アクションでみられるスペクタクルアクションに重きをおいたものとなっている。
歩兵部隊同士の激しいぶつかり合いの迫力もさることながら、騎馬戦や騎馬戦車によると迫力なアクションがやはり際立って見える。
そのため個々のアクションに見処のあった前作とはまた違うものといっていいだろう。

そして本作の肝のひとつと呼べるのが人気キャラクターである女戦士『羌カイ』役。
ここに起用されたのがアクションもこなす清野菜名は個人的には大正解であったといえる。
原作での『巫女の舞』も結構忠実に描かれており、清野菜名のポテンシャルもあって個人アクションとしては合格点である。
イメージ的にも少年のような美少女という感じからして彼女の適用は的確だったと思える。

また意外ながら結構ハマっていたのは新キャラクターの将軍ヒョウの役の豊川悦二である。
メイクこそしてあるが、あの豪快さがだんだんとみていてハマっているのがさすが。
前作では少し違和感もあった王騎役の大沢たかおも出番が増えたことで原作に似てきた具合もあり、概ね配役としては個人的にはなるほどと納得したところである。

既に次なる続編が公開されているが、ここではさらに今後のキーキャラクターとなる人物がどんどんでてきており、いやがうえにも期待が高まるのは必至。
数少ない邦画原作実写化の成功例として頑張ってもらいたいものである。


評価…★★★★
(数少ない原作実写化の成功例。的確な配役が命綱か)









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