2024 年度演習 商法設問集2月

 

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本件において、X1およびX2のYに対する損害賠償請求が認められるかどうかは、Yの行為が会社法429条1項の要件を満たすかどうかによって判断されます。

1. 会社法429条1項の要件

会社法429条1項は、株式会社の取締役等が、その職務を行うについて悪意または重大な過失があったときは、当該取締役等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負うと定めています。

2. X1の請求について

(1) Yの行為の評価

Yは、添加物使用の偽装、消費期限切れ食材の使用、外部機関や保健所の指摘を無視する等の行為を行っており、これらは会社の経営者として著しく不適切な行為であると考えられます。

これらの行為は、会社の信用を失墜させ、事業の継続を困難にする可能性が高いことを認識しながら行われたものであり、悪意または重大な過失があったと評価される可能性があります。

(2) X1の損害との因果関係

X1は、甲社に事業資金を融通していましたが、甲社の破産により、3000万円の回収不能損害を被っています。

Yの不適切な行為がなければ、甲社が破産に至らなかった可能性も否定できず、Yの行為とX1の損害との間に相当因果関係があると考えられます。

(3) 結論

以上の点を考慮すると、X1のYに対する損害賠償請求は、認められる可能性が高いと考えられます。

3. X2の請求について

(1) Yの行為の評価

X2は、甲社の株主であり、Yの不適切な行為により、株価が急落し、株式が無価値になったとして損害賠償を求めています。

Yの行為は、会社の信用を失墜させ、株価を急落させる可能性が高いことを認識しながら行われたものであり、悪意または重大な過失があったと評価される可能性があります。

(2) X2の損害との因果関係

Yの不適切な行為がなければ、甲社の株価が急落し、株式が無価値にならなかった可能性も否定できず、Yの行為とX2の損害との間に相当因果関係があると考えられます。

(3) 結論

以上の点を考慮すると、X2のYに対する損害賠償請求も、認められる可能性が高いと考えられます。

4. まとめ

X1およびX2のYに対する損害賠償請求は、いずれも認められる可能性が高いと考えられます。

ただし、裁判所の判断は、具体的な事実関係によって異なる可能性があります。