法学教室 2024 年度演習 行政法設問集-11

 

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Xが提起した国家賠償請求訴訟において、本件処分に関する国賠法上の違法と過失の存否について論じます。

1. 国賠法1条1項の要件

国賠法1条1項の要件は、以下の通りです。

  • 公務員の行為であること
  • 公務員の職務上の行為であること
  • 公務員の行為が違法であること
  • 公務員に故意または過失があること
  • 損害が発生したこと
  • 違法な公務員の行為と損害との間に相当因果関係があること

2. 本件における検討

  • 公務員の行為性・職務上の行為性:
    • 公安委員会が本件処分を行ったことは、公務員の行為にあたります。
    • また、銃刀法に基づく処分は公安委員会の職務であり、本件処分は職務上の行為にあたります。
  • 違法性:
    • 裁判所は、本件処分を違法であるとして取り消しており、その判決は確定しています。
    • したがって、本件処分は違法であったことが確定しています。
  • 過失:
    • 公安委員会は、本件発射行為が鳥獣保護管理法38条3項に違反すると判断しましたが、発射位置から建物の屋根の一部が見えたとしても、弾丸が付近の建物に当たったり、建物を損壊させたりする可能性が具体的に認められない状況においては、同条に違反すると判断することは困難です。
    • また、Xは、A市B職員及びC警察官の指示の下、ヒグマの駆除を行っており、その状況下で、Xの発射行為が著しく不適切であったと評価することも難しいと言えます。
    • これらの事情を考慮すると、公安委員会の本件処分は、法令の解釈・適用を誤ったものであり、過失があったと評価できます。
  • 損害の発生:
    • Xは、本件処分の違法により、ライフル銃の所持許可を取り消され、精神的苦痛等の損害を被っています。
  • 相当因果関係:
    • 本件処分が違法であったことと、Xが損害を被ったこととの間には、相当因果関係があります。

3. 公安委員会の反論と再反論

  • 公安委員会の反論:
    • 公安委員会は、本件発射行為が鳥獣保護管理法38条3項に違反する可能性があったため、銃刀法11条1項1号に基づき、裁量権の範囲内で処分を行ったと反論する可能性があります。
  • Xの再反論:
    • しかし、本件発射行為の状況や、Xが置かれていた状況を考慮すると、公安委員会の判断は、裁量権の範囲を逸脱・濫用したものであり、違法かつ過失があったと再反論できます。

4. 結論

以上の検討を踏まえると、本件処分は、国賠法1条1項の要件を満たす可能性が高く、Xの請求は認められる可能性が高いと考えられます。