京阪山科駅と地下鉄山科駅 | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

大津線と地下鉄東西線の関係をさらに複雑にしているのが、京阪山科と地下鉄山科の位置関係です。

京津線と東西線は御陵で分岐しますが、京津線が地上に上がって京阪山科に達するのに対し、東西線は地下のまま北の山側を大きく回りこみ、JRおよび京阪山科の真下に直交する形で山科に達します。つまり、京津線にとっての東西線は、協調を図るべき直通相手であると同時に、御陵―山科間においては競合相手でもあるわけです。

ただし、「競合」といっても、現状では東西線の圧勝です。『都市交通年報』によれば、1998年度の地下鉄山科の1日あたりの乗降人員は32,417人で、そのうち71%の23,022人(定期客12,540人・定期外客10,482人)が御陵(京都都心)方面へ向かっています。

『駅別乗降者数総覧’12』によれば、2009年度の地下鉄山科の1日あたり乗降人員は40,312人まで伸びているので、京都都心方面へ向かう利用客の数はさらに増えていると思われます(実数は不明)。

一方、京阪山科から御陵方面へ向かう1日あたりの利用客は、1998年度が2,470人(定期客1,010人・定期外客1,460人)、2009年度に至っては1,385人(定期客488人・定期外客897人)に過ぎません。

その原因は、御多分に漏れず「運賃合算」にあります。(京津線の運転本数が東西線の約半分で、その分だけ利便性に劣る、という点も見落とせませんが、これはむしろ、現状の輸送需要の差に対応した「結果」というべきでしょう。)

例えば、地下鉄山科―三条京阪間の普通運賃260円に対して、京阪山科―三条京阪間の普通運賃は、京阪170円(京阪山科―御陵間)と東西線260円(御陵―三条京阪間)の合計額から70円を割り引いた360円です。この運賃差が、両者のシェアの差に直結していることは疑いないでしょう。

また、前項で述べたように、東西線は2001年5月と2006年1月の二度にわたって運賃値上げを実施していますが、その際には特に京阪と東西線の定期運賃の乗継割引が縮小される傾向が見られました。これは京阪時代との運賃格差を縮める政策を段階的に緩和した結果ですが、それによって運賃合算の割高感に拍車がかかることになりました。

京阪山科が1998年度から2009年度にかけてさらにシェアを低下させているのは、これが原因と思われます。定期客の落ち込みが定期外客より激しいことも、そのことを示唆しています。

東西線開通直後は「ゼロになるだろうと予測された京阪山科から三条方面への利用者が、実際には微々たる数だが残った」とのことですが(鶴通孝「琵琶湖の風を京都の街へ」『鉄道ジャーナル』1998年3月号収録)、現在京阪山科に残っている御陵方面への利用客(1日1,385人)は、ほとんどが京阪山科―御陵の1駅間のみの利用客であると判断してよいと思われます。この1駅間のみを利用する場合に限っては、京阪のほうが運賃面で有利だからです。

「1駅間」の利用客数自体は、1998年度と2009年度でほとんど変わっていないと考えられます。であるならば、京阪山科から京都都心方面への利用客数は、1998年度時点においても1,085人(定期客522人・定期外客563人)程度に過ぎなかったことになります。まさに「微々たる数」といわざるを得ません。

しかし、運賃面の問題を別にすれば、本来は京阪山科のほうが地下鉄山科よりも便利です。京阪山科はJRの山科とバスターミナルに挟まれた地上の駅前広場の真ん中にあり、地下深くに設けられた地下鉄山科に比べてはるかに立地条件が優れているからです。JRやバスとの乗り換え、徒歩でのアクセスのいずれも京阪山科が有利です。

山科駅前広場


写真
は、JR山科駅の改札口から、ドーム状の屋根に覆われた駅前広場を見たところです。すぐ右手が京阪山科駅の北改札口で、左手が地下鉄山科駅に通じる地下道の1番出入口です。

JRの山科の改札口から京阪山科への移動は、距離も高低差もほとんどなく、実質30秒程度で済みます。 一方、JRの山科から東西線の山科への乗り換えは上下移動を伴い、2~3分程度は余計にかかります。その時間的・経済的損失は無視できないものがあります。

『平成22年版 大都市交通センサス』によれば、地下鉄山科と京都都心側各駅間の定期客の68%がJRとの乗り換え客です。この調査は定期客のみを対象としたものですが、「京都市外縁部のサブターミナル」という山科駅の性格からすれば、定期外客の動向も大きくは違わないでしょう。JRとの乗り換えの利便性向上は、とりわけ重要だといえます。

山科から京都都心方面へ向かう乗客が、地下鉄山科でなく京阪山科から乗ってくれれば、京阪山科―御陵間の運賃が京阪に入ることになり、大津線の収入増に直結します。 それだけでなく、乗客にも多くの便益を与えることになりますから、「運賃合算」の問題は是非とも改善されるべきです。

一方で、「改善」がもたらす「東西線側への影響」を無視することはできないのですが、それについては第2章でまとめて考察します。


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