「働く時間削るしかない」「年間収入は変わらない」最低賃金50円増加も岸田首相に総ツッコミ「年収の壁を解決しろ!」

 
「50円」で物価高にあえぐ国民を救済できるのかーー。

 7月24日、厚生労働省の審議会は、2024年度の最低賃金を、全国平均で時給1054円とすることでとりまとめた。“50円アップ” は過去最高額で、10月から適用される。
 
 2023年の改定では、43円の大幅引き上げで初めて大台の「1000円超え」を果たしており、現在の全国平均は1004円。林芳正官房長官は、記者会見で「最低賃金の力強い目安のとりまとめを歓迎したい」と語っている。

「最低賃金は、雇用形態にかかわらず、すべての労働者に適用される時給の下限額のことで、毎年改定されています。コロナ禍に入った2020年の引き上げ額はわずか1円でしたが、物価高騰が続いており、消費者に負担がかかっていることから大幅値上げが決定しました。

 政府は、人件費の上昇にともない、中小企業に対して価格転嫁するよう求めつつ、労働生産性の向上を支援していくとしたうえで、2030年代半ばまでに、全国平均賃金が1500円となることを目指しています」(経済担当記者)

 賃上げ報道に、世間では喜びの声が聞こえてくると思いきや……X上では多くのツッコミが見られた。

《年収の壁が上がらない限り最低賃金が上がっても所得制限してる人は単純に働く時間が少なくなって、会社は労働力不足になる所が増えて、雇用側は更に生産性求められて…》

《私も年収の壁があるから10月からの働き方に悩んでいる…》

《最低賃金を上げるのであれば、年収の壁の金額も同時に上げて頂かないと 年間収入は変わりませんよね》

「家族の扶養に入っている場合、従業員が101人以上いる企業で、年収106万以上の収入があると、扶養から外れ社会保険に加入しなければいけません。また、企業規模にかかわらず130万円以上の年収になると同様です。

 いわゆる『年収の壁』と言われるもので、最低賃金がアップする10月からは、対象者が広がり、従業員51人以上の企業で働く場合は106万以上の収入で扶養から外されてしまいます。

 パートで働く主婦などは、時給と時間を計算して、扶養内ギリギリで働いている人も多く、賃上げをしたところで “年収の壁” が改定されなければ、ほとんど年収は変わらない結果になります。

 今回、ツッコミを入れているのは、いわゆるパートの主婦が多いのではないでしょうか。人手不足にあえぐ日本企業において、彼女たちは非常に貴重な “労働力” です。

 しかし、年収の壁を超えないように時間を抑えて働く人も多いはずで、このままだと企業側はますます人材不足に苦しむでしょう」(前出・経済担当記者)

 岸田首相が “年収の壁” 問題の解決に力を入れない限り、まだまだ苦しい暮らしが続きそうだ。
 
 

賃上げ・労働時間短縮へ

全労連大会始まる

100万人組合員の力発揮を

 
 全労連の第32回定期大会が25日、東京都内で始まりました。大幅賃上げ・底上げの実現や労働条件の最低規制の強化、「公共の再生」、憲法をいかす政治への転換を求める運動を進め、「100万人組合員の力の発揮」をめざす方針を討論します。27日までの3日間。
 
労働時間短縮は労働運動の原点 田村委員長があいさつ
 
 あいさつした小畑雅子議長は、能登半島地震の被災者本位の支援の継続を訴えました。

 27年ぶり5ケタとなった今春闘の賃上げはストライキを構えた、たたかう労働組合のバージョンアップ、労組の力で勝ち取った到達だと強調。ここに確信を持ち、物価高騰を乗り越え、生活できる賃金への大幅引き上げ・底上げを実現する運動をさらに大きくしようと呼びかけました。

 政府・財界が「構造的な賃上げ」といいながら、めざしているのは「三位一体の労働市場改革」など雇用流動化や、分断と競争強化の押し付けだと批判。また、労働時間や働き方に関わる基準をなし崩しにする労働基準法解体の動きを告発し、大幅賃上げ・底上げと一体に労働時間短縮を実現するたたかいの前進を訴えました。

 「対話と学びあい」を運動の文化にし、強く大きな全労連をつくることやジェンダー平等への実践を訴え。金権腐敗の自民党政治に怒りの声が充満していると述べ、来たる総選挙で岸田政権を退陣に追い込み、憲法をいかした社会が実現できる政治に転換させようと呼びかけました。

 来賓あいさつした日本共産党の田村智子委員長は、ともに大幅賃上げを勝ち取る決意を表明。最低賃金改定目安50円の引き上げは1ケタ違うとして、中小企業への直接助成こそ賃上げ促進だと述べました。全労連が労働時間短縮を掲げていることに注目していると述べ、「労働時間の短縮は労働運動の原点だ。大いに連帯したい」と強調。新しい政治を求める連帯を広げ、共闘の力で自民党政治を終わらせようと呼びかけました。
 
 

全労連大会 田村委員長のあいさつ

 日本共産党の田村智子委員長の、全労連定期大会での来賓あいさつは次の通りです。

 

 皆さん、こんにちは。田村智子です。日本共産党を代表し、全労連第32回定期大会に、心からの連帯のあいさつを送るものです。


 物価高騰によって暮らしの危機が深刻となるもとで、「いますぐ物価以上の賃上げを」と全労連の皆さんは、攻勢的なたたかいを繰り広げておられます。熱いエールを送り、ともに大幅賃上げをかちとる、その決意を表明いたします。

 今年の春闘では、「闘う労働組合のバージョンアップを」と奮闘され、26年ぶりとなる8000円台の賃上げ、組合員1人あたりでは27年ぶりに1万円台の賃上げを勝ち取ったとお聞きしました。心から敬意を表するとともに、「賃上げは闘ってこそ実現できる」、このことを確信にしたいと思います。

 職場での闘いとともに、政治の責任での賃上げを闘いとらなければなりません。「中央最賃審議会が最賃50円引き上げ決定、全国平均1054円」と報道されています。過去最大とはいえ、上げ幅が1ケタ違うのではないでしょうか。全国一律1500円には遠く及ばない。いつ実現するのか。審議会の場で経営者側は「経営が苦しい中小企業への配慮」を求めたといいますが、最賃を抑え込むことではなく、中小企業の賃上げへの直接助成、これがもっとも効果的な配慮であり、賃上げ促進だと、改めて強調したいと思います。

 例えばトヨタ自動車は、今年3月期決算で5兆円の純利益、このうち2兆円を配当に回すといいます。史上最高益の更新を続けるトヨタに、アベノミクス以降、440億円の賃上げ減税、一方で、赤字でも賃上げで人手を確保しようという中小企業には何の支援もありません。大企業の収益をひたすら応援し、やがて賃金に回るというトリクルダウンの経済政策は、完全に行き詰まっているのではないでしょうか。

 大企業がため込む巨額の利益を、大幅賃上げや下請け単価の引き上げなどで、経済に還流させる政治の責任が問われています。ボトムアップの経済政策へと、大転換するときを迎えています。その柱となる「全国一律最賃1500円以上へ」――全労連の皆さんと連帯し、私たちも全力でとりくむ決意です。


 全労連の皆さんが、健康で文化的な生活を保障する賃金とともに、労働時間の短縮を掲げていることに、私たちも大変注目しています。

 7月13日の日本共産党創立102周年記念講演では、小畑雅子議長から心のこもった激励のメッセージをいただきました。小畑議長は、このなかで、労働基準法の大改悪の動きを鋭く告発されました。労基法が定める最低基準からの「逸脱」を合法化する、このような検討が、政府・財界によって進められているのは、世界史にも逆行する暴挙です。

 「1日8時間、週40時間」が国際的な労働基準とされたのは100年以上も前です。日本では、いまだ長時間労働が蔓延(まんえん)し、「過労死」の根絶さえできていません。それなのに「労使自治」の名で最低基準を崩すなど、断じて許すことはできません。

 すでに日本では、副業のすすめ、スキマ時間のスポットバイトなど、8時間労働制の外で「もっと働け」という動きが強まっています。また低年金を放置して、老後も働けと迫られています。これらは、労基法大改悪の動きとともに、労働者から「自分の時間」「自由な時間」を奪う、強欲な資本主義のあらわれではないでしょうか。

 日本共産党は、いまマルクスの原点に立ち返って、資本主義のもとで搾取されているのは、「モノ」や「カネ」だけではない、「自由な時間」が奪われている、搾取をなくし「自由な時間」をとりもどすことによって、「人間の自由で全面的な発展」が得られる、これこそ、社会主義・共産主義の目的だ――こういう未来社会への展望を打ち出しています。

 大幅賃上げとともに、「1日7時間、週35時間労働」の実現をという、皆さんの要求は、自分の時間、家族や友人との時間、自由に使える時間を求める運動であり、若い世代の願いにこたえる力を持っていると思います。労働時間の短縮は、労働運動の原点です。私たちも大いに連帯したいと思います。


 最後に、市民と野党の共闘の再構築で、自民党政治を終わらせることを、あらためてよびかけます。2015年、安倍政権による安保法制の強行に対してわき起こった「野党は共闘」の市民の声、これに応えた市民と野党の共闘、その原点は「立憲主義を守れ」です。

 敵基地攻撃能力の保有、最新鋭の戦闘機を共同開発し第三国に輸出する、武器開発・輸出で経済成長をめざす――岸田政権は、歴代自民党政権が憲法9条にもとづく「平和国家のあり方」としてきたものを、ことごとく投げ捨てています。日米同盟強化といえば、何をやっても構わないと言わんばかりの暴走政治は、ついに、米兵による少女への性的暴行事件を隠蔽(いんぺい)するにいたりました。これほどのモラル崩壊、堕落した政治に対し、今こそ、立憲主義の旗を高く掲げた共闘が求められています。

 自民党は裏金事件で国民の信を失い、経済無策に陥っています。軍事費倍増が暮らしの予算を圧迫し、国民の要求との矛盾は深まるばかりです。暮らしと平和の要求を掲げて、新しい政治を求める連帯を大きく広げ、共闘の力で自民党政治を終わらせようではありませんか。

 第32回定期大会の成功を祈念し、私たち日本共産党も全力で奮闘する決意をのべてあいさつといたします。ともに頑張りましょう。ありがとうございました。

 

 

たった50円で?岸田政権が最低賃金引き上げに「好循環」とドヤ顔も現実ガン無視に庶民激怒

 
 
《国民の声を本当に聞いていないな》《ここ最近は視察ばかりしているが、何を見ているのか》ーー。ネット上では批判の声が目立つ。2024年度の最低賃金(時給・全国加重平均額)の引き上げ額の目安が過去最大の「50円」と決まったことについて、岸田政権が物価と賃金の好循環につながると受け止めている、などと報じられたためだ。

 岸田文雄首相(66)は25日、記者団に対し、連合(日本労働組合総連合会)の集計で春闘の平均賃上げ率が5.1%だったことに触れつつ、「最低賃金の力強い引き上げを歓迎したい」「労務費の(価格)転嫁、生産性向上のための自動化・省力化投資を支援していく」と強調した。

 「令和の所得倍増」を掲げる岸田政権が発足したのは2021年10月。当時の最低賃金は930円だった。その後、23年度に初めて1000円を超える1004円となり、今年度は1054円になる見通し。「物価高を上回る賃上げ」を目指す岸田首相にとっては政権発足から124円の時給引き上げは“成果”と映っているのだろう。

■自民党国会議員はウン千万円の裏金をため込み、サウナにスーツ…
 
 だが、物価や資源の高止まり状態は続いたまま。5月の毎月勤労統計調査(速報値)でも、物価変動を反映させた実質賃金は26カ月連続で減少している。「過去最大」の引き上げ幅とはいえ、「50円」程度では“焼け石に水”ではないのか。にもかかわらず、岸田政権が意気揚々と「好循環」とアピールしていることについては違和感が広がっているようだ。

 SNS上ではこんな声が出ている。

《好循環?たった50円ぽっちで?ありがたく思えと。マジでふざけているな》

《時給50円引き上げで8時間働いても400円増えるだけ。400円だよ。夏祭りのかき氷も変えないよ。これが所得倍増か》

《日本は本当にG7でいいのか?経済の先進国と言われる国の時給引き上げがわずか50円で好循環なのか。分からん》

 これが庶民の本音だろう。一方で、自民党国会議員はウン千万円の裏金をため込み、サウナにスーツ…だから許しがたい。