感動と感謝と悲しさと悔しさと (「サンソン」 4/24ソワレ) | Suzunari の花たちへ

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稲垣吾郎さん、新しい地図、SMAPが大好きです。

文字通り一期一会。
観られた幸運に感謝し、重厚なお芝居に感動しました。

吾郎はまた新境地を開いたのではないでしょうか。

ルイ16世、マリー・アントワネット、ロベルピエールなどが「処刑された」事は知っていましたが、彼らを「処刑した」のがどんな人だったのか、今まで想像したことはありませんでした。
その「処刑人」サンソンの目から見たフランス革命の物語が「サンソン ルイ16世の首を刎ねた男」です。

その処刑人サンソンを吾郎が重厚に演じています。国王から任命された家が世襲で行っている仕事にもかかわらず人々から蔑まれる不条理、同じ死刑でも貴族は苦痛の少ない斬首なのに平民は長く苦しむ絞首や車裂きの刑などの差別。死刑制度を通じてサンソンは社会の矛盾を感じます。そしてその矛盾はやがて、敬愛するルイ16世を自ら処刑しなければならないという形でサンソンに立ちはだかるのです・・・。

ルイ16世を何とか助けようとしたサンソンですが結局助けられず、「法の定めに従って犯罪者を処刑する」事に誇りを持って死刑執行人の職を全うしました。

その孤高の生涯を吾郎が悲しく気高く演じていて、「No.9 -不滅の旋律-」に続いて吾郎の代表作になると感じました。

「No.9」と同様、このお芝居も民衆のシーンが多いのですが、「No.9」では民衆のエネルギーをポジティブに描いていたのに対し、「サンソン」ではどちらかというとネガティブに、狂気をはらんだ怖いものとして描いています。せっかく王制を倒したのに、民衆が選挙でナポレオンを皇帝に選んでしまったり・・・。でもフランスの民主主義はこのように色々な方向に行きすぎては戻ることを繰り返し、多くの犠牲を払いながら形作られてきたのですね。

元々は死刑の苦痛を少なくするため人道的な目的で作られたギロチンが、いつの間にか効率的な処刑機械としてフル稼働し多くの人の命を奪ったという皮肉な結果。
例えば原発の問題とも通じるのではないかと私は思いました。

 

 


サンソン吾郎のアクションシーンとかルイ16世を演じる中村橋之助さんの威厳ある雰囲気とか、色々語りたかったのですが、帰宅すると悲しいお知らせが待っていました。

 

 

28日以降の公演を中止・・・。稽古を重ねやっと幕が開いたのに、関係者の皆さんの悲しさ悔しさはいかばかりでしょう。


今出来るのは、大阪・久留米・横浜の公演が無事行われる事を祈る事だけです。