ふんわりシフォン -47ページ目

好きな自然の音

好きな自然の音ブログネタ:好きな自然の音 参加中





珍しく書いてみます。

なぜってねリンクのアドレスを作るのに↑の文章がいるの。



好きな音は、ごくごく普通に、川のせせらぎです。

しかもなるべく 小さな川のほうが好み。農業用の用水路とかでもいいの。

川辺が整備されているより、地面のほうがいいですが、今時そのほうが難しいからね。

木苺とか、山吹が咲いていたらいいな。



ちょろちょろと流れているようでも、水量は勢いよくて賑やかな川が好き。

てんとう虫 4

瀬波さんに抱きしめられると、私の頭はちょうど胸の位置になる。そこから伝わる鼓動がとても早い。

白衣よりも強く香る芳香にくらくらしそうだった。

抱きしめられたのも、お付き合いの言葉を聞いて以来なので、慣れない私は自分の腕をどうしようか思いあぐねていた。胸に縋り付く?それとも思いきって…せっ背中に腕をまわしてみちゃう?

もじもじと動く私にはかまわず瀬波さんの手は髪をすいている。それでいて、もう片方の腕はがっしりと腰に回されていた。



「てんとう虫を知っていますか」


「はっはいい」

あからさまに声が裏返る。どうしようかと途中で止まった腕が不自然すぎる。

「緊張しなくていいです」

笑った息が髪にかかる。

「てんとう虫は越冬するんです。大概は木の幹の隙間や温かな場所に寄り集まって春を待つんです」

「卵で越冬する訳ではないのですね」

「カマキリなんかはそう。蝶はいろいろ。アゲハチョウは蛹だしね。だから初めて見つけた時はびっくりした。身を寄せあって家族みたいですよ。あんな小さな虫でも仲間がいて、みんなで集まって冬を越すんですよ」

目を閉じなくても、小さな瀬波さんが見つけた てんとう虫が見えるようだった。

「小さな虫の集まりが、気持ち悪いと嫌う人がいるのもわかります。でも僕は嫌いにならなかった。けなげで可愛らしいと思えたんです」

頭を寄せ合う、真っ赤な てんとう虫をきらきらした目で見つめる瀬波さんの姿は、きっと可愛いい。

ほっと息をついたら、瀬波さんの香りを吸い込んで安心する。

「今度見つけたら、私にも見せてくださいね」

「ええ。一緒に見ましょう」

頷いた瀬波さんの唇が髪に触れた。それは温かくて、幸せな感触だった。






「ところでなんで白衣を着たんですか」

「それは…瀬波さんがそばに居てくれないから…」

あなたをそばに感じていたくてとは言えない…

「それは誘っているんですか?」


瀬波さんの舌が耳をなぞる。


「そうじゃ…ありません」

甘噛みしながら、艶のある声を耳に流し込まれる。
なんでこんな声が出るの?声を聞くだけで体中がとろけてしまいそう。

「じゃあ教えておきます。好きな人が自分を待ち詫びて寂しい思いをしているなら、僕は満たしてあげたいと思います」

首を捻って見上げると、強い光があった。どきりと胸がなる。近くから見つめられすぎて恥ずかしい。崩れたお化粧も直していないのに。

またすぐに俯いた私に、瀬波さんはキスを落としていく。おでこや眉、鼻、頬、唇。瀬波さんの気持ちを知ってからするキスは、軽く触れるだけでなく、感情がこもっていた。

ひとつひとつ確かめるようなキス。だんだんと熱をもった唇と舌が冒険を始めると、情熱的に舌が絡められてくる。やっとの思いで息をつくと、洩れる声は自分のものではないかのように、色気をまとっている。



首筋にかじりつくようにキスした瀬波さんは、くくっと笑った。

瀬波さんのペースに振り回されていた私も、息がつけて少し余裕ができた。



「知っていますか?てんとう虫は肉食なんですよ。アブラムシを捕食します」

「それは瀬波さんと、一緒です。見かけに似合わず肉食な所が」

言ってから、私は肉なのかアブラムシなのか分からなくなった。

「どちらにしろ美味しくいただくことに変わりはありません」


笑った瀬波さんは優しくて、くらくらするほど色気があった。





きっと

春になったら、寄り添って冬を越した てんとう虫も太陽に向かって羽を広げるだろう。

瀬波さんの心にいた てんとう虫も、冬を越して太陽へと飛んでいくはず。

心の重荷をなくしたら、きっと高く高く飛べるはずたから。


おわり

てんとう虫 3

キスしちゃいそう。

なんて思っていた私の心臓は、はち切れそうに活動して、体中の温度を上げていく。

ゆっくり唇をなぞる指を感じながら、お預けをくらっているのに、瀬波さんは何か考えを巡らせているようで、唇を触る指に熱はない。

むっとした私は、瀬波さんの指をくわえた。

一瞬、歯が触れて瀬波さんが目を見開いて私を見た。


「おねだりはまだダメです。あなたは本当に仕方のない人なんですね…」

「ち…違います。私のいけなかったことは謝りました。でも瀬波さんは、うやむやにしたくないと言いました。お話はなんですか…あの、何か言いづらいこと、ですか」

瀬波さんは、ふっと笑った。息を吐くように自然に。


「ええ。とても言いづらくて、今まで口にすることが出来ませんでした」

私の噛んだ親指を唇から離して、手の平で顔の輪郭を包みこむ。大きな温かい手。瀬波さんは、大きな犬みたいな目をしている。



「僕の専攻を知っていますか」


「生物学、ですよね。主に昆虫」


「そうです。昆虫といってもイロイロある。なぜ、僕があなたをこの部屋に招かないのか不思議に思いませんでしたか。見たいと言ってもはぐらかして」

「…散らかっているからだと…そう聞いていました」

「そんなことはありません」

きちりと整えられたデスクまわりや、引き出しのぴたりと閉まった収納棚を見れば、乱雑さなど微塵もない。自分のデスクだけでなく、この部屋を使う人全てのデスクまわりにさえ気を配っているのがわかる。




デスクを回り込んだ瀬波さんは、収納棚から白い箱を取り出した。

「例えば…これはどうでしょう」


見えるように胸の前に箱が差し出される。手に取ってみると、いくつもの蝶の標本がピンで留められていた。

「わー凄いですね」

鮮やかなブルーの羽や、艶やかな黒い羽。なんて自然は綺麗な色を蝶に与えたんだろう」

「大丈夫なほう、ですか」

掠れるくらいに、ほっと息をつく。

「でもこれは、良いほうですから。研究の対象とするものの中には、人には理解できない虫だっています」

笑おうとして失敗したように、薄い笑みをはいた。

「僕が研究しようと選んだ道を、あなたに拒否されたくなかったんです」



虫が苦手な人なら、そう沢山いる。男の人でだって毛虫がダメ、ムカデがダメとかある。

ああ…

瀬波さんの言葉が心に落ちてきて、波紋をひろげていく。パソコン画面をスクロールしていくように、記憶のなかから情景が流れていく。

『毛虫キモイ』

『ガって触ると変な粉つくじゃんヤバい』



瀬波さんの子供時代は知らないけれど、何か傷つくことはあったのだろう。

それこそトラウマと言えるものが。




「僕は昆虫を研究していますね。研究していたら、どうしても虫に触ることになります。あなたは僕が虫を触った手でふれたら………きっと嫌がるのではないかと思いました」

どうしてだろうとは思っていた。瀬波さんは、モテるのに彼女がいたことはなかった。

今までお付き合いした人のなかには、虫が嫌いな人がいたのだろう。



「あまり私に触れないのは、私が嫌がると思って?」

「ええ嫌いになりましたか」

瀬波さんの手は、私の頬を撫でて感触を確かめている。

「言っていることと、していることが違います」

瀬波さんの手に自分の手を重ねて、唇まで導く。親指から一本づつキスしていき最後に手の甲へとキスをした。

「怖い虫や、気持ち悪い虫もいます。でも…私は瀬波さんが好きだというものを否定するつもりはありません。虫のことを話してくれる瀬波さんは、とってもいい表情をしているんですよ。ちょっと惚れなおしちゃうくらい」



言ってから、てへへと照れ笑いがでた。

目を見開いて、それから瀬波さんはくしゃっと顔を歪めた。表情の変化を確認するより早く、力強く抱きしめられた。

耳の後ろに瀬波さんの息がかかる。



「どうして あなたに惹かれたのか解りました。どうしてあなたでなくては いけないのかも」