ふんわりシフォン -42ページ目

桜咲く

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まだまだ先かなと思っていたけれど、咲きはじめた桜が綺麗です。



花のころころとした連なりが可愛いなぁ



学校のそばにある桜は立派すぎて枝が上のほうにあるので、雲のように低く垂れ下がった川辺の桜が好きです。

スピカ 4

…ううん。胃が消化不良を起こしそう。せっかくの銀ダラの余韻が、村岡さんにかけられた一言で消し飛んでしまった。

わたしは村岡さんから受けた言葉に少なからず傷ついていた。


冷血…



確かに感情を表すのは苦手かもしれない。でも傷つかない訳じゃない。

覚束ない足取りで売り場に戻ると、里沙ちゃんに昼食交代を告げる。



「大丈夫~亜依?なんかここ、シワ寄ってる」

つんつんと眉間を指した里沙ちゃんはつるつるの色白で、ぱっちりした目の美人だ。今日も完璧に巻いた髪が、バービー人形のように可愛いらしい。
担当売場が近いので、仲良くしているが、もし持ち場が違ったなら、話すのにも緊張してしまいそうな美人オーラを出している。



「また村岡さんに絡まれた」

「もうっ亜依ったら人が良すぎ!また高木くんを庇ったんでしょ。高木くんも亜依に甘えすぎなんだから」

ぷりぷりと華奢な腕を組んでいても可愛いらしさは損なわれない。かえって生き生きとした表情で目をひく。

「まあわかるよね、高木くんが村岡さんを苦手なの」

「はっきりしない高木がワルイ!」

どーんとワゴンを叩くとタグやサイズチップが飛び散った。

一瞬、我にかえった里沙ちゃんは周りを見回し、しぶしぶ飛び散った物を拾い集めはじめた。

「もう。集めとくから、お昼行ったら?」

里沙ちゃんの手からサイズチップを奪いながら、わたしも屈む。

「うう…ごめんね亜依。でも高木くんにはガツンと言ってやらなくちゃ」

「どうせ言うなら村岡さんにしてよ」

「確かに!でも聞く耳ないよ?」


そこでわたし達は顔を見合わせて笑った。

「も~早くお昼行っておいで?」


集めたサイズチップをワゴンに乗せると、「じゃごめ~~ん」と里沙ちゃんが小走りでバックヤードに消えていった。

里沙ちゃんは子供服担当なので、サイズチップも10センチ間隔で小刻みになる。
引き出しを開けて仕切りごとにチップを分けていく。


分けながら高木くんのお弁当の行方をあれこれ考えていた。

緑の指 4

繁殖用の蛍を取り置いて、あとは放流することにした。


最後に自由に飛ぶ蛍が見たかったからだ。短い一生のほんの僅かな恋の時間を、狭い籠に閉じ込めて終わらせるのは忍びない。


すいっと光りながら蛍が飛ぶ。淡淡とした小さな光は、ぽつりぽつりでしかなく、寂しさを掻き立てる。

片膝を立てて腰を下ろして、蛍を仰ぎ見る。



隠している臆病な気持ちを教授に看破されて、苦笑いしか浮かばない。


知ることも触れることも、人目を避けるようになっていた。それでも一生のこととして生物を選択したのだ。

覚悟が足りないと言われても仕方ない。



放心してぼうっとしていたら、生き物の気配を感じた。慎重に歩く軽い足音はタヌキだろうか。人なつっこいようで懐かないタヌキの丸い顔が見たくなった。

下草を掻き分けると、薄闇にほっそりとした華奢な姿があった。

どきんと心臓が大きく跳ねる。声をかけるより先に悲鳴があがる。


「きゃああぁ」

振り向いた顔は、見間違いではなくいつも探している彼女だった。

「高瀬さんか…驚いた」

どうしてこんな所に一人でいるのか、そのほうが気になったけれど用水路に用があったのだろう。
心配の言葉を口にしたなら、彼女の気に障るのではないかと口をつぐんだ。


「ご…ごめんなさい。野犬かなにかだと思って」

怖いなら一人で来てはいけませんよ。胸のなかで言葉をかける。どうも自分の身の安全を軽く考えているようだ。

「野犬というよりタヌキかと思った。いるんだよ、ここ」

胸で握っていた両手の力が抜けていく。緊張がほぐれたようなので、ちょっとしたいたずら心がわいた。


「タヌキは夜行性だし、雑食だからね。美人なタヌキだったよ」