ふんわりシフォン -352ページ目

月が満ちるまで 風待ち 3

軽井沢とくれば!自転車だろう!強引にレンタサイクルの店に連れて行かれる。
二人乗りもいいなぁなんて横目で見つつ、一台づつ借りる。

そこで、ハルと宮川はガイドブックを開いて、話しだした。

「どこいこっか~」

「メシ、重要だからね、ちはやちゃん」

「なに言ってんの!ここまで来たなら、お茶しなくちゃ」

ハルが指を挟んだページはさっさとめくられてしまう。

それでも、ふにゃんと笑っている。

「…案外、仲がいいのかもね」

取り残された二人が話すのは自然だ。

まったく、スバラシイぞハル!

「渡辺くん、どこか行きたい所なかった」

「全然。軽井沢なんて来たことないから、どこ行ってもいいよ」

心のなかで付け加える。君とならどこでもいいんだ、俺はね。



「じゃ、軽井沢銀座に行こう。あと湖ね」

ぱたんと、ガイドブックを閉じて宮川が宣言する。

これから自転車ツアー開始だ。


くちびるに
大好きで 大切な人の
名前をのせる

それだけで
体が震えてしまう

恥じらいと愛しさが
こみあげてくる

名前を呼んでもらうのが
好きだった

とても優しい声
愛おしいまなざし

月が満ちるまで 風待ち 2

彼女が歩いてくるのが、ひどくゆっくりと感じられた。

時間を引き伸ばしているように。

近くまで来て、これはヤバイ、見すぎだと気がついた。

用もなく凝視したらアブナイ奴だと思われる。



「橘さん、晴れてよかったね」

彼女はにこっと笑って

「やっぱり晴れると気持ちいいね」

そう言ってくれた。その言葉にほっとする。

俺、アブナイ奴じゃないみたいだ。

一緒にいる浦川がハルと話している。

「宮原達はどこ行くの」

「決めてない。ちはやちゃんドコかいいとこない」

「あたしに聞かないでよぉそーゆーのは男子が調べるものじゃない」

「だってさ、ちはやちゃんが好きな所にいくほうがいいでしょ」

ハルは人のいい笑顔をつくる。ふにゃんとした、ハルにしかできない笑顔だ。

「しょーがないなぁ、風花どうする」

「いいんじゃない、一緒に行こうよ」

ハルが俺に向かって親指を立ててみせる。

おおっ

俺も両方の親指を立てる。やってくれる、ハル。