ふんわりシフォン -345ページ目

月が満ちるまで 風待ち 12

「あれ」

桟橋から歩いてくるちはやとハルくんは、手を繋いでいた。

「おせーよ、お前ら」

並んでベンチに座っていた渡辺くんから声がかかる。
からかっているけど、声は優しい。嬉しさを隠せないみたい。

「お待たせ。風花ちゃん」

「たいして待ってないからね。大丈夫」

「おい、俺にはなしかよ」

「ったり前。野郎に下げる頭はないんだよ」

ちはやを見ると目元と鼻が赤かった。

「よかったね」

泣いてしまうくらい感動したのかな。
ハルくんなら、ちはやを大切にしてくれそう。

「あのね、これは宮原が勝手に握ったままなの。ボートを降りる時から離さないんだから」

振り払えないんでしょう。
だったら、肯定だね。



好きだって



良かったと思える。
ちはやは、優しい。



意外かもしれないけど、優しくて世話やきなところがある。

教室で初めて会ったとき、「ひとりなん?」そう話しかけてきた声を覚えている。
自分の世界にこもるわたしにも出来た友達。

ちはやは、わたしをそのまま受け入れてくれた。

自分の見たテレビを話すけど、絶対見て、なんて言わない。
知っている楽しいことを話している。たまたまそれがテレビだった。そんな感じだった。

隣のおじさんが面白かった、弟がこうした、そんな話をしていた。



これからは他の話も加わるのかな。

すごく、すごく嬉しい

越えて


君と出会って

好きになるまで

時間はかからなかった



時間も場所も

思いは越えていく



君に届け

この思い

この感情

月が満ちるまで 風待ち 11

ボートが、こつりと桟橋にたどり着くと、ちはやちゃんはごしごしと目をぬぐった。

目のふちと、鼻があかい。

「行こうか」

手を出すと、そっと手のひらを重ねる。
ぎゅっと握りしめて、ボートから桟橋へ移る。




こんなに、素直なちはやちゃんは見たことがなかった。




抱きしめたら
また怒るだろうなぁ




小さい手だ。
柔らかくて白い。




この手を握って
この手の主をこれから幸せにしたい。


オレ自身も不安にならないように


何度でも言うよ




ちはやちゃんが好きだよ




ちはやちゃんがこの言葉を信じてくれるまで。


何度でも言うから。

だから信じてほしい。



好きだよ



めったに見れない萎れた姿も愛おしい。

「オレを頼ってね」

「ばかなこと言わないでよ」

「今度、泣きたくなったら言って。タオルにハンカチにティッシュ持って駆け付けるから」

「そんな大袈裟なのはヤダ」

ふふっと笑いがもれる。

「了解しました、姫。不詳宮原晴臣、この体で姫をお慰めいたします」

「なんだかヤらしい」

「いつでも、オレの胸はあいております!」

「そーきたかぁ……くさいからね、それ」

「いーよ。ちはやちゃんだけわかってれば」



いつでも
どこでも



思いが絆を作っていく。



思いで君と繋がっていく。