ふんわりシフォン -274ページ目

せせらぎ

流れていく

さらさら 水音をたてて

流れていくさきはどこになる


先はまだ 見えなくて

明るい川辺をなでるように

せせらぎが笑うように

あたたかな日差しに

草花が芽吹きだすまで

ゆるやかに

たゆまずに

流れて

そっと瞳を閉じて

せせらぎにおどる

音に香りに

めぐりくる季節を待っている

月が満ちるまで ナツのハナ 16

淡く夕闇がやってくる。ほの白い空にうっすら刷毛ではくように闇が深くなる。
駅から桜土手に人が流れていく。それぞれ連れだって歩きながら、話しながら。

ゆるい熱さ。
アスファルトはまだ熱をもっていて、放出している。夏は炎天下を避けて、夕方から歩くのもいい。

風が吹いても熱風で、じっとりと汗がうくよりは、ずっとよかった。

ハルくんはちはやと手をつないでいる。それだけで、嬉しいみたいでふにゃんとしている。

浴衣に慣れない下駄で、足さばきが悪く早く歩くことができない。

「橘さん、あひるみたいだ。ゆっくり行こう」

歩幅が狭まってちょこちょこ小走りでいたら、気づいた渡辺くんが歩くのをゆっくりにしてくれた。

「あひる…そんなに変かな」

「そうじゃなくてね、一生懸命歩いている気がしたから。歩くの大変なら言って。俺、気がきかない時あるから」

ちょっと困ったような、優しい顔をする。
その顔は、なんだかいいなと思えた。それで…いつもこんな顔をしたら、まわりの女の子はとろけてしまいそうで。

ゆっくり歩いてもらえてほっとする。歩きなれないと下駄の鼻緒がこすれて痛い。

「…あのね変じゃないよ。すごく綺麗だから、俺のほうが普段着みたいで悪いなぁって思ってた」

渡辺くんは、重ね着風のシャツに、ブラックデニムのジーパンだった。まだ、新しい物みたい。

「そんなことないよ、よく似合ってるよ」

渡辺くんと歩いていたら、結構人目をひくのがわかった。身長があって、華のある人なのだろう。
駅の人混みですれ違う人が見ていく。

わたしたちは、どんなふうに見えるんだろう。

風が唸り
電線が音をたてる

寒い寒い夜
山沿いは雪になるよ

風が強いとよく聞いた
山の向こうは雪国だ

トンネルを抜けたら
銀世界が広がる

あの人の生まれた所は
雪におおわれた街

音まで消しさる
雪が降りしきる街で

背中を探してしまう

足跡をたどったら
君にたどりつけるだろうか