月が満ちるまで ナツのハナ 16 | ふんわりシフォン

月が満ちるまで ナツのハナ 16

淡く夕闇がやってくる。ほの白い空にうっすら刷毛ではくように闇が深くなる。
駅から桜土手に人が流れていく。それぞれ連れだって歩きながら、話しながら。

ゆるい熱さ。
アスファルトはまだ熱をもっていて、放出している。夏は炎天下を避けて、夕方から歩くのもいい。

風が吹いても熱風で、じっとりと汗がうくよりは、ずっとよかった。

ハルくんはちはやと手をつないでいる。それだけで、嬉しいみたいでふにゃんとしている。

浴衣に慣れない下駄で、足さばきが悪く早く歩くことができない。

「橘さん、あひるみたいだ。ゆっくり行こう」

歩幅が狭まってちょこちょこ小走りでいたら、気づいた渡辺くんが歩くのをゆっくりにしてくれた。

「あひる…そんなに変かな」

「そうじゃなくてね、一生懸命歩いている気がしたから。歩くの大変なら言って。俺、気がきかない時あるから」

ちょっと困ったような、優しい顔をする。
その顔は、なんだかいいなと思えた。それで…いつもこんな顔をしたら、まわりの女の子はとろけてしまいそうで。

ゆっくり歩いてもらえてほっとする。歩きなれないと下駄の鼻緒がこすれて痛い。

「…あのね変じゃないよ。すごく綺麗だから、俺のほうが普段着みたいで悪いなぁって思ってた」

渡辺くんは、重ね着風のシャツに、ブラックデニムのジーパンだった。まだ、新しい物みたい。

「そんなことないよ、よく似合ってるよ」

渡辺くんと歩いていたら、結構人目をひくのがわかった。身長があって、華のある人なのだろう。
駅の人混みですれ違う人が見ていく。

わたしたちは、どんなふうに見えるんだろう。