韓国映画 豚の王 (2011年) | Asian Film Foundation 聖なる館で逢いましょう

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アジア映画に詳しくなかった私がアジア映画を観てます♪
ネタバレはできるだけ避けております…(ㆆᴗㆆ)*✲゚*。⋆

 

 

 

皆さま、5月もありがとうございました☆⌒(*^-゜)v

 

最近、皆さまのブログにいいね!ができていなかったり、いろいろすみませんあせる

 

私も毎日アメーバさんにアクセスしてずっと他の方々のブログを読んでいるわけにもいかず、いろいろとブログに関しては滞っております。

 

時間があればできるだけブログで交流させていただきますので、また6月もよろしくお願い致します…ヾ(*^^*)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5月25日には韓国のアニメ映画を観ました…カチンコ

 

観たあとですぐに何か、ブログで語りたいと思ったんですが、いざ書こうと思うと急に書く気がなくなって…そのあたり映画の凄みに圧倒されたんだと思いますし、それだけ好きになって感想とかが出なくなった映画なんだと思います。

 

やっぱり観てもらうのが一番なんだと思いますね…。

 

 

 

 

 

豚の王

 

 

『新 感染 ファイナル・エクスプレス』『新 感染半島 ファイナル・ステージ』のヨン・サンホ監督の原点!監督初の長編アニメーションであり、韓国長編アニメーションとして初のカンヌ映画祭への出品を果たし、釜山国際映画祭最優秀監督賞など三冠を獲得した記念碑的傑作!

『息もできない』『あゝ、荒野』のヤン・イクチュン、「サイコだけど大丈夫」「椿の花咲く頃」のオ・ジョンセ、『息もできない』のキム・コッピら豪華俳優陣の声にも注目!

永遠に終わらないスクールカースト、暴力の連鎖…韓国社会のヒエラルキーがもたらす悲劇的な人間模様をアニメーションで描いた衝撃作!

◇ 第16回釜山国際映画祭最優秀監督賞ほか3部門で戴冠!
◇ アヌシー国際アニメーション映画祭、カンヌ映画祭、メルボルン国際映画祭、ブリュッセル国際アニメーション映画祭、花開くコリア・アニメーション2013ほか多数の国際映画祭にて上映


ヨン・サンホ監督の作品を最初に観たのは実写ゾンビ列車映画、『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)でしたが、前評判も凄まじく、もちろん一瞬で大好きな作品になり、今もそうです。

同じ年ですが、アニメ作品の『ソウル・ステーション パンデミック』(2016年)も観て、そこそこガッカリしたんですが、しかしこれはただのアニメではないとも思っていた。

もしも『新感染』の関連作品でなければ、もっと素直に好きになったことでしょう。

 

そして次に『フェイク 我は神なり』(2013年)を観て、ようやく『ソウル・ステーション』の良さもわかったように覚えています。

それほど『フェイク』は凄かった。

イヤ~な感じのアニメだったんですが、傑作でしたね…。

 

その時から『豚の王』を観るのを楽しみにしてたんですが、同時に、観るのがもったいないとも思ってました。

『豚の王』はきっと私の好きな作品だと考えてましたから…。

 

アニメももっと観たいんですけど、思いのほか観れてないんですよね…。

でも、『豚の王』はやっぱりただのアニメではなかったですよね。

アニメってカテゴリーには収まりきれないというか…。


 

作家になることを目指しつつ、不本意ながら自伝のゴーストライターを勤めているチョン・ジョンソクは、出版社の社長から高圧的に罵倒され、怒りを溜め込んでいた。

彼はイライラから恋人に暴力を振るってしまう。

 

連絡を受けたジョンソクは、中学時代以来、久しく会っていなかったファン・ギョンミンと再会する。

15年前、ジョンソクとギョンミンは中学の同級生たちからいじめを受け逃れることのできない屈辱の日々を送っていた。

 

ジョンソクにとっては思い出したくもない過去だったが、ギョンミンはなぜかその頃の話を語り始める。

彼ら二人のあの頃のこと、そして二人にとって大きな存在だった彼、キム・チョルのことを…。

 

 

どんな映画なのか、知らずに観ていたんですけど、30代になった主人公の二人、ジョンソクとギョンミンが再会し、一杯飲み屋で過去を語らっていく形の作品でした。

現在と過去が交互に描かれます。

 

二人は中学1年の時、いじめられ続けていたのです。

ジョンソクの家庭は貧しく、ギョンミンはおとなしい性格のため…。

二人はクラスの級長であるカンミンと副級長のチョンヒに目をつけられ、ことあるごとに馬鹿にされ、誇りを傷つけられ、暴力を振るわれ、そこから逃げられないでいた。

 

映画を観ていて思ったのですが、いじめがこうまで体系化、システム化されていることがちょっと不思議でした。

ネタバレになりますが、カンミンやチョンヒに対抗すると、カンミンよりも高い地位にある1年生の学年会長はてなマークにいじめられ、それでも抗うと3年生の学生会長に率いられた大勢によって暴力を振るわれるんです。

これでは中学の3年間、どうしようもないですね。

 

だからジョンソクとギョンミンは内心、腸が煮えくり返ることがあっても、どんなに辛くても我慢せざるをえなかったのです。

 

 

この映画では少年たちの親たちも登場します、物語に関わりもしますが、中学の教師たちの存在感は希薄です。

凄惨ないじめが行われいるのに、教師たちはそれがないかのように振舞っています。

生徒が顔に怪我をしていても深くは問いません。

 

問題は生徒たちの間だけであり続けて、それ以上には取り沙汰にされないんですね。

 

また、ちょっと物語に触れますが、後半、さらに酷い暴力が振るわれ、生徒がナイフによって怪我を負っても、教師たちはいじめ事件を深く解明しようとはせず、一人の生徒を学校から追い出すことで事態を収めようとしています。

 

そんな感じでいじめは何も解決せず、いじめも続くのだけれど、つまり映画としては子どもたちが自分たちがいる状況を変えられないことの絶望、悲観が描かれているんじゃないかと思います。

 

少年たちは自分の親たちにもいじめの事実を打ち明けられていません。

それは男の子の最終的なプライドなのかもしれないし、親たちが学校でのいじめに介入できないことへの見限りなのかもしれません。

 

観てて本当に怒りを感じたのですが、ジョンソクとギョンミンが通う中学は彼らが生きる世界である。

級長たちは金持ちの家の子で、勉強もでき、それが他者を虐げてもいいと考える慢心の元でもあるし、いじめる側には強固な連帯感すらあるようです。

 

この中学の生徒たちはこの関係のまま社会に放出され、中学は社会のひな形なんですよ。

いじめられた子は大人になってもそのままで、いじめた子の未来もそうなんでしょう。

やはりいじめられた子は悲観と自棄しか残らないのか。

 

『豚の王』を観ていて私は、抜け出せないいじめの恐怖を限界まで追体験して、強い怒りを禁じえませんでした。

映画を観て、こうまで憤り、怒りを感じたるのも久しぶりでしたよ。

 

これでこそ韓国映画 ―― そう思いましたね。

強い感情を生み出す、それが韓国映画の魅力です。

私はめっちゃマイナスの感情でしたが、そういった気持ちにさせられて嬉しかった。

 

そして、さすがはヨン・サンホですよ。

長編映画としては第1作となる『豚の王』ですが、その時、すでにここまでの作品を完成させていたんですね。

私はあらためて映画作家としてのヨン・サンホ監督に惚れ込みましたよね。

 

5月は『整形水』(2020年)から始まっていろんな映画を観せてもらいましたけど…劇場で観た『オールド・ボーイ4k』(2003年)は別にして…『豚の王』が一番だったんじゃないかと思います。

 

 

途中から登場してくるチョルに、私は強く惹かれましたね。

 

彼はいじめという暴力に、さらなる暴力で対抗しようとする少年。

かなり荒んでいて人生を否定的に達観してます。

ですので、彼は行動できるんですね。

 

そんな彼にジョンソクとギョンミンは憧れや崇拝、依存に近い形で強く惹かれていく…。

 

映画としては目を背けたくなるようないじめの連続ですが、次はどうなるのか、次は何が起こるのか、固唾を呑むがごとき集中力を掻き立てられますね。

この面白さ、ヨン・サンホです。

 

特にチョルが登場してからが凄かったなあ…。

 

ヨン・サンホ監督は現実にいじめを体験したのだろうか。

傍観者だったのかもしれないし、いじめを受けた側ではなかったのだろうか。

いじめた経験だけではこの作品は生まれないでしょう。

もしもいじめてきただけの人生なら、この哲学は絶対に生まれない。

この映画にはいじめの本質が描かれているとしか思えない。

それゆえに、非常に誠実な映画芸術です。

 

 

絵的には、全体的にイヤな感じのアニメですが、ただ可愛いとかキレイではない美しさを感じたように思います。

とにかく、観ててイヤな気分にはなりますが、アニメとしても映画としても凄く好きな作品になりました。

 

観る前にポスターとかで目にした主役の3人の少年たちも見ている間に愛おしくなってきましたしね。

 

また、声の出演で、有名な俳優さんが参加されていることも、とても嬉しいことでしたね。

 

 

ギョンミンを演じたオ・ジョンセと、ジョンソクを演じたヤン・イクチュン。

このお二人は『フェイク』でも主人公たちを演じられてましたね…。

 

そして、『フェイク』でも声の出演をされ、『新感染』の冒頭で「鹿を轢いた」キム・ジェロクさんも担任の先生を演じられたそうです。

 

 

子ども時代の主人公たちを演じたお三方。

左からチョル役のキム・ヘナ、ジョンソク役のキム・コッピ、そしてギョンミン役のパク・ヒボン。

少年の声を女性が演じるのもええもんですな。

 

皆さん、声優さんではないけど、やっぱり上手いですよね。

もう一役づつ声を担当されてたりする。

 

 

ジョンソクやギョンミンがいじめから逃げるには学校に行かない選択もあると思うのですが、やっぱりいじめられた側が学校に行けない理不尽がある。

親御さんに相談するのが第一だと思うけど、映画を観てるとそれもできない気持ちになるんですよ…。

 

映画を観て、ちょっとキレイごとは書けない気分です。

 

とにかくどうしようもないいじめに抗う気持ちも潰えているので、チョルが実現する暴力での戦いには、賛成の気持ちが強かったんです。

 

でもやっぱり凄く怖いんですね。

特に彼が決意を表明するために小動物をナイフで刺すのがね…当然、きつかったですね。

そこにも尽きせぬ暴力の連鎖なんですよね。

家庭などで暴力を振るわれた子が学校でいじめをやり、いじめられた子が小動物に暴力を振るうような…その連続が怖いですよね。

それは確実に現実のありようだと私も確信していますし。

 

ですけど、今、現実にいじめを受けている方は、やっぱり学校に行かなくっていいと思いますし、行かないことで意思表示していじめを明るみにするべきだと思います。

この映画を観ていて解決策はそれくらいしか思いつけなかったですね。

 

もちろん、大人たちが気づき、行動することが大きいと思いますが、もしも現実にそれがなされていたらこの世からいじめは消えていると思いますので…。

 

無責任だと思いますが私に書けるのもその程度なのです。

 

しかし、いじめをなくすのには大きな努力が要ると思います。

簡単ではないでしょう。

これまで気兼ねなしにやってきたこと、言ってきたことを、全力を尽くしてやめるのです。

全員がそうすれば、いじめはその日、消えるでしょう。

 

学校を卒業すればいじめに遭うことはない、そんなことも確実ではないと思います。

子どもたちにそんなふうに言いたくないけど、大人の世界にもいじめがあります。

長くやってきた分、大人たちのいじめの方がタチが悪いですよね…。

 

 

ジョンソクのお姉さんがウォークマンを万引きして心情を吐露する場面も悲しかったなあ…。

 

そのことでヨン・サンホ監督は『豚の王』の世界が格差社会の実態でもあると諷喩していますよね。

大人になったジョンソクやギョンミンが過去から逃れられなかったのもそうですし。

 

チョルの言葉も悲しかったなあ…。

途中でシンナーを吸う場面のセリフもホントに悲しくなりましたし、そこまで友達にネガティブなことを言ったのに、彼がその後、学校に希望すら残していたのも悲しかったです。

 

結論については非常に悲観的なんですけど、それゆえに誠実だと思いましたし、同時に映画として完成していることにも驚きました。

 

あの、ジョンソクがチョルにしたこと…あの時の気持ちと同じものを、何かの映画で見たか、小説で読んだ気がするんです。

確かに、ジョンソクがああ考えることもありうるんでしょう。

私も時々、人に対してそんなふうに考えることもあります。

「らしくあってほしい」みたいなはてなマーク

 

ですけど、今の私はもっと、「全力で何としてでも生き抜く」ってことを美徳に考えているので…この映画の結論とはまた違う考えなのですけどね。

 

ですので、抽象的に「いじめに負けるな」だなんて言いたくないんですよ。

 

負けてもいいから、生きていいてほしい。

そう思いますね。

 

もう、いじめが原因で子どもたちが死ぬニュースは聞きたくはないですね。

 

だって亡くなったあとでいくら騒ぎになって可哀想だとか言っても亡くなった子は帰ってきませんよ。

その子の無念だって晴らせないし、やり直しは絶対に利かない。

死んだらその子は終いですよ。

 

だから、誰もが生き残れる道を全員で考えていたいんですよね。

それは必ず社会にとっていいことだと思いますよ。

 

弱肉強食の競争社会だなんて…21世紀の今日、どう考えてもおかしなものじゃありませんか。

 

 

ご存知かもしれませんが、『豚の王』はTVINGでドラマ化され、今年4月に韓国では放映されたようです。

あらすじを読むとだいぶん改変したリメイクだし、ヨン・サンホ監督も関わってないようですね。

私の予想では怖さや残酷さが薄まってる印象ですけど、その分、新しい面白さもありそうです。

あくまでも予想ですが…。

 

ヨン・サンホ監督の『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2020年)もこうして考えると、ゾンビもののエンターテイメントとポジティブな感動に方向性を定めた作品だったんですね。

最新作はネットフリックス配信のSF映画、『Jung-E』になるようですが、どんな映画なのだろうか…。

 

でも『豚の王』の残酷、怖さは素晴らしいと思いました。

劇的で、衝撃的で…。

観たあと、いじめについてずっと考えていましたもの。

 

この映画は中学校の授業で生徒さんたちに観てもらいたいですよね。

「これがいじめだ」って実感があるはずです。

中学生の頃に観ておいた方がいいと思うけどな。

そうしたら一生、いじめを否定できるし、他者への接し方も正しくあれるように思います。

私自身、大きなことを教わりました。

 

もしもまだ観ておられなかったら観てください。

 

今日もありがとうさんでした…アンニョン(^.^/)))

 



豚の王
原題:돼지의 왕
英語題:The King of Pigs

 

2011年製作/97分/韓国

監督・脚本:ヨン・サンホ

ヤン・イクチュン チョン・ジョンソク(大人)
キム・コッピ チョン・ジョンソク(子ども)
オ・ジョンセ ファン・ギョンミン(大人)
パク・ヒボン ファン・ギョンミン(子ども)
キム・ヘナ キム・チョル

チョ・ヨンビン カンミン
ハン・ヒョンミン チョンヒ
イ・ジェヒョン ソン・ソクウン

ハン・ユンソ ジョンソクの姉
イ・スヒョン パク・チャンヨン

イ・ドンヨン ファン・ギョンミンの父
チョン・インギ 出版社社長

キム・ジェロク 担任教師
キム・ソンヒョン 体育教師
チャン・ヒョジン レコード店のオーナー
ハ・ジウン 刑事1