前回に引き続き、創造論についての矛盾の検証と分析をしていこう。

 

では、ノアの大洪水より。

 

過去の地球は暖かかったという事実も水蒸気層を示すの項目で、

 

”また"過去の地球は緯度の高低にかかわらず温暖だった"というよく知られた事実も、上空の水蒸気層の存在を示しています。今は氷に閉ざされている南極大陸にも、「延々と続く石炭層」が発見されています。石炭は、植物の死骸でできたものです。ですから石炭層の存在は、今は極寒の両極地方もかつては植物が生い茂っていた温暖の地だったことを、雄弁に物語っているわけです。”

 

南極大陸に石炭層があったのは事実だが、これは太古の昔南極大陸がまだ一つの大陸(超大陸ゴンドワナ)から分離していないころ、まだ熱帯或いは温暖な地域であって植物が繁茂していた時代があったからこそだ。

 

当然南極大陸が分離し、極地方に移動してしまった現在では、氷に覆われたという結果があるにすぎない。

 

これは必ずしもノアが生きていた当時の地球全体が温暖だったという証拠にはならないはず

だ。

 

だがそれに対して創造論を信奉している人らは次のような反論を試みる。

 

”進化論者はしばしば、両極地方が昔暖かかった理由として、今は極地となっている地方も昔は大陸移動によって別の所にあったからではないか、等と言います。しかし、こうした考えだけでは、証拠の数々をよく説明できません。なぜなら、たとえば「古生代」とされている木には、ほとんど年輪がないのです。”

 

ではそれが本当かどうかを確かめてみよう。

 

次のワードで検索すれば良いだけだ。

 

⇒ 古生代の植物 年輪

 

結論としては当時の古生代の植物はシダ植物が大半であり、その特徴として今の時代の木とは違い年輪がないのである。

 

だがすべての古生代の植物がまったく年輪がないということではなさそうだ。

参照 ⇒ 古生代の樹木クラドキシロンは非常にユニークな成長をしていた

 

つまり、ノアの時代は全地球規模で温暖な時代であったという創造論者の主張する根拠はいとも簡単に崩れ去るのである。

 

”当時、夏と冬の気温の変化は少なかったのである。グリーンランドの北緯七〇度地帯でイチジクの木が発掘され、シベリヤでシュロの木が掘り出されている」(『生物界の進歩』一二~一三頁)。当時の地球は、冬と夏の寒暖の差があまりなかっただけでなく、緯度の高低にかかわらず一様に温暖で、湿潤な気候下にあったのです。”

 

これについても先と同様な理由で説明できてしまう・・。

 

”これらの事実は、単なる大陸移動の考えで説明できるものではありません。すなわち、かつて植物は全世界に繁茂していました。両極地方でさえ暖かく、植物が所狭しと生い茂っていたのです。進化論者は、これがなぜなのかを説明できません。”

 

いや、説明できないことはない、その大半は既存の知識(大陸移動説など)で説明できるということは明らかだ。

 

大陸移動説に関しての参照

⇒ シミュレーションで大陸移動の再現に成功!

 

次に、大洪水以前に虹はなかったの項目には以下のようにある。

 

”大洪水以前の大気圧は今日の二倍ほどあり、そのために当時、大気と水滴の密度の差は今日ほどは大きくありませんでした。したがって虹を生じさせるような光の屈折が起こらず、虹は見られなかったでしょう。”

 

これらが本当かどうかを検証してみよう。

 

なお、検証にあたってはこちらを参考にさせて頂いた。

⇒ 長さ標準:レーザー測長における真空および大気の影響

 

上記より引用

「大気の屈折率は,おおむね気圧1hPaで0.27ppm,温度1℃で-1ppm,湿度10%で-0.07 ppm,二酸化炭素濃度100ppmで0.015ppm変化する」

 

空気の屈折率と電磁波の伝搬特性

 

上記によれば空気の屈折率は気圧よりも温度による影響が大きく作用するとあった。

 

さて、ノアの大洪水が起きる前、虹の屈折は見られなかったというのが本当ならば、当時の地球環境では大気の屈折率と水の屈折率がほぼ等しかったというのが前提でなければなるまい。

 

さて、水の屈折率1.3334(20℃)であるから、当時の大気の屈折率はこれとほぼ同等だったということになるはずだ。

 

今現在の大気(空気)の屈折率は1.000292(0℃、1気圧)である。

 

これが創造論者が言う温暖な環境であったとすると、気温20℃で2気圧の時ではどれくらい変化があるのかを上記の資料にある計算式で確認してみた所、1.000547と、ほとんど変わらず、屈折率に目立った変化は見られないのだ。

 

ではもし屈折率が限りなく1.3334に近づいた場合の大気圧はどうなるかと言うと、およそ7,712気圧となり、これは今現在の大気圧とは雲泥の差である・・

 

これでは当然ながら人間は生きていられない。

 

ではさらに気圧は今のまま1気圧とした場合、屈折率が1.3334に近づくためには温度がどれくらい変化する必要があるかというと・・

 

なんと0℃以下(マイナス何百度の世界)という計算結果になってしまうのだ・・。

 

つまり、大気と水の屈折率は今も昔もほとんど同じであり、虹が見えない環境にはなかったと言える。

 

よってノアの大洪水以前でも虹は見えたはずなのだ。

 

さて次に好適な環境は生物の巨大化に貢献したの項目について。

 

”大洪水以前の世界には、各種の恐竜たちも生息していたのです。恐竜には、草食恐竜と肉食恐竜がいます。草食恐竜は、体が大きくても性質が比較的おとなしいため、人間が危害を受けることはあまりありません。また肉食恐竜はどう猛ですが、大洪水以前の世界の人口はまだあまり多くはなかったので、人々は肉食恐竜たちの生息地を避けて住んでいたでしょう。”

 

さも当然であるかのように言うが、創造論者はそもそも創世記が一言一句事実に基づいていると言うのならば、この肉食恐竜がいたというのはおかしいとの主張になぜならないのか(そもそも恐竜と人間が一緒に存在していたとする考えが創造論の大前提であるからか?)が不思議である。

 

実は、創世記にはノアの大洪水に至るまでの間に肉食動物がいた或いは創造されたとは書かれておらず、その代わりすべての動物は草食であったと記されているのだ。

 

 

見よ、わたしは、お前たちの食べ物として、全地の種のあるすべての草と、種のある実を結ぶすべての木を与える。そして地のあらゆる獣、空の鳥、地を這うあらゆるもので、およそ命のあるものには、それぞれの食べ物として青草を与える(創世記1・29)

 

 

神によって創造された動物は草食動物しかいなかったにも関わらず、こういった部分はスルーしているのだろう。

 

だが、ここでもし肉食動物もノアの時代にはすでにいたのだという主張をするのなら、当然草食動物から肉食動物に進化したのだとする考えを取り入れる必要が出てくるだろう。

 

そうなると、創造論者の考えによれば陸上動物が創造されたのは天地創造の六日目であり、この時人間アダムが創造されたのであるが、ノアの大洪水までどれくらいの年数が経過したのかというと、それは実に1,656年となる(参照 ⇒ アダム暦による聖書人物の年齢について)。

 

この1,656年という期間で草食動物が肉食動物に進化していたというのは、常識からすれば現実的ではなく甚だ疑問なのであるが、創造論者なら信じてしまいそうな話かもしれない。

 

なお参考までに、この件に関して過去記事(なぜ人は肉食になったのか?ノアの大洪水を引き起こした原因は生きた人の肉を食べ堕落したことにある。)でも触れたとおり、草食動物が肉食動物になってしまったことが、神がノアの大洪水を引き起こした裁きの原因の一つにもなっていると聖書からは導ける、ということを示しておいた。

 

そういった意味でも、神が肉食動物を創造したというのは、どこか筋が通らなくなるのだ

 

なお神が草食にこだわる理由、それは人間や動物が草食で生きるよう定めたのは肉食では寿命を縮める、など理解していたからではないかということが過去の考察により見出され、また草食こそが永遠に生きる術だと考えている節があるようなのだ。

 

過去記事参照1 ⇒ 神は我々と同じ肉体を持った地球外知的生命体である可能性大。草食が温暖化問題を解決する。

過去記事参照2 ⇒ 善悪を知る木の実を食べるとなぜ必ず死ぬと神は言っているのか?その実と命の木の実は実在するのか?

 

またもし創造論者の考えにやや同調すれば、この短い期間で肉食動物へ進化したのではなく、実は遺伝子操作によって人間が草食動物の一部を肉食動物へと造り変えた(歴史的事実かどうかはともかく想像の域を出ない話だ)との考えを編み出すこともできるが・・。

 

それよりも可能性としては堕落しきった人間が動物に肉の味を覚えさせた、その結果動物も堕落したのだとするほうがむしろ自然な考えに思えるし、わざわざノアの時代にはすでに遺伝子工学が存在し、高度な文明であったなどと仮定する必要もなく、現実的に考えればありえなくもない話だろう。

 

そして肉食となった結果、人間も動物も暴虐性が増し、人間が人間を殺しあい、動物も見境なく動物や人間を殺し、その肉を貪り合う世界になり果てたのを見て、神は大洪水の裁きを下したのではないだろうか。

 

なお神が大洪水を起こした詳しい理由については過去記事の考察を参照。

⇒ なぜ人は肉食になったのか?ノアの大洪水を引き起こした原因は生きた人の肉を食べ堕落したことにある。

 

次に大洪水以前、人は長寿だったの項目では、以下のようにある。

 

”大洪水以前は、現在の大気の上にさらに水蒸気層が厚く存在していたので、当時地表に到達する放射線は、現在よりはるかに低いレベルにありました。放射線のない環境が、長寿への重大な役割を果たすことは、最近の医学的研究で実証されています。また上空の水蒸気層は、地球外からの宇宙線だけでなく、紫外線、エックス線などの有害光線の影響からも人々を守り、生命にとって極めて好適な環境をつくり出していました。そのため、当時の人々の寿命は、たいへん長かったのです。”

 

すでに創造論者の言うような大量の水蒸気層の存在を示す証拠は見当たらないと、前回と今回示した通りであるから、ノアの大洪水前後における放射線量は今現在とさして変わらない程度の量であったはずとなり、この放射線のない環境であったがために長寿であったとの考えも誤りの可能性が非常に高いとなる。

 

この件についても過去記事(「LIFESPAN(ライフスパン):老いなき世界」から得た気付き。旧約聖書時代の長寿の謎。)で触れているが、人が長寿だったのはノアの大洪水が起きるまでであるが、それは主に草食だったからであると示唆される根拠をあげておいた。

 

今回は以上である。