※ネタバレを含みます※

※長文となりますのでご了承ください※


何かに成ろうとするあまり自分の足元を見失ったり身の丈を超えて頑張ってしまう事はよくあるのですが、この作品の中に流れている時間や自然描写や、登場人物の在り方やセリフが、未来の何処かにあると錯覚しているまだ見ぬ自分ではなく「いまこの瞬間」の自分を見つめる事の大切さと自分自身を縛り付けている思考や感情から自由に成り自在に変化する真に自由な自分でいる事の大切さを諭してくれているようでした。


冒頭の江口洋介扮する西濱湖峰のセリフはその伏線でしたが、最終的に巨匠 篠田湖山の生き様によって語らせるように持っていく演出は、作品を観終えたのち振り返って思い出してみると良く作り込まれていると感嘆します。


「人は何かになろうと思うのではなくて、何者かに変わっていくのかも知れない」


湖峰のこの哲学的なセリフを聞いて如何にも分かるようで分からないような曖昧な雰囲気に呑まれつつその真意を確かめるように物語を観ていく内に分かってきた事は、与えられた環境の中で自分の為せる100%を投じて必死に生きる事で初めて開かれる思い掛けない風景と言うものが現れる、その事を言っているのだという事でした。


それは必然性とも言い換えられるのかも知れませんが、様々な人との縁が織りなされて作り上げられる自分であり、成ろうと思って成れるものではなく、必要とされる事によって押し出される自分ではないかと思います。


僕自身を振り返ってみれば、今でこそ先生などと呼ばれたりはしますが、しかし初めから先生に成ろうと思って今の仕事を始めたのではなかった事を思い出しました。必然がこの道に誘い、そこに自分自身の興味が一致して、その興味に誘われるままに四苦八苦している内にいつの間にか今の場所に立っていたのです。


そして先生と呼ばれる自分自身を受け入れる事ができた時、自然に、と言うのか必然的にと言うのか、僕は先生になっていたのだと思います。


そして更に、先生である事を自覚するからこそそこに責任が生まれその道を更に極める為の選択をしていく様になる。それはこの映画のタイトルになっている「線は僕を描く」という事に通じているように思います。""とは人の縁や必然性を指していて、それによって僕という人物が描かれてきたという意味です。


しかしまた、湖山の孫である千瑛の境遇も自分には分かります。環境が与えられていても立ち往生してしまったり、別の道を探したり、道に迷ったり、道を見失ったりする事は何度もあったからです。それでも心の奥にある羅針盤はいつも同じ方向を示していたように思います。その羅針盤の事を人は恐らく魂と呼ぶのでしょう。


ただ、魂というものは方向性を示しはしても、深度を提示してくれる事はありません。もしも魂がここからここまでやれば良いという様に明確な範囲(深度)をも示してくれるのなら、人はそこまで迷わないのではないかと思います。そこに落とし穴があり、門の前に立つだけの場合、扉を開く場合、門をくぐる場合、その先に進む場合などのように深まりに差が出てくると思います。


この作品の中で道の途中で立ち止まった千瑛の背中を押したものは青山の存在でしたが、何が具体的に千瑛を揺り動かしたのかを振り返ってみると、震災の被害に遭った青山の実家で青山の帰宅を待っていた一輪の椿の花の姿に込められた家族(妹)の命ではなかったでしょうか。その命は青山だけでなく千瑛の内面深くに押し込められた命に対する感性をも呼び起こし共感を生んだのではないかと思います。


千瑛が絵を志すようになった切っ掛けは祖父の湖山であることは推測に容易いですし、千瑛の命に対する感性もまた湖山譲りだっただろうと思います。ですから千瑛にとって万物の生は絵を描くモチベーションであり絵を描く事に対する興味の源になっていたはずです。


然るに、千瑛の魂は今生において絵を描く事を望んでおり、青山との出逢いはその深度を深める為の大きな切っ掛けになったのだろうと思います。そして勿論、青山を弟子にした湖山には千瑛の迷いが分かっており、そこから彼女が変化して成長する為に青山が必要である事も分かっていたに違いありません。


もしも千瑛が青山を拒んで前に進もうとしなかったら、そこには変化はなく、そして成長もなかったでしょうが、千瑛は素直な心で青山を認めて受け入れる事ができました。この部分は何となくスルーしてしまいそうですが、千瑛が墨絵教室で青山が描く線を見て微かに驚くシーンはこの作品の一つの重要なポイントだと思いました。千瑛に素直な心がなかったら彼女の成長はなかっただろうと思います。


千瑛の持つ素直な心と変化を受け入れる力は祖父譲りであり、更に身近な存在である先輩の湖峰の影響もあったと思います。彼らの生き方は作品冒頭の湖峰のセリフに示されていました。自然の中で逆らう事なく流れに身を任せる生き方こそ、人が何者かに変わっていくという言葉の真意ではないかと思いました。湖山の最後の作品がまさにその象徴だった訳です。


この作品全体の中を流れている自然観と時間の感覚は、どこか懐かしい感じがして、例えば以前に観た『SPIRIT』(ジェット・リー主演、ロニー・ユー監督)でも描かれていたものと似ていると思いました。『SPIRIT』では片田舎の美しい田園風景を美しい映像として収めていてそこで人々と交流する中で養われる力が武術の基礎になっているのだと感じたものですが、『線は、僕を描く』で描かれている自然観もまた武術に通じる世界観があり、作者は恐らくその事を伝えたかったのではないかと思います。


空手の技にもその人の在り様がそのまま出ると感じるようになったのは最近ですが、墨絵もまた同じなのだと思います。僕はこの作品を観ながら自分の空手の事や施術(技)の事を考えたのですが、僕自身の在り方がそのまま表現されるという事は否定できません。変化を恐れていては青山や千瑛の様に前に進む事はできないのだと改めて考えさせられました。



最後に作品の総評ですが、僕自身が役者としての立場から観ると脇役の役者さんの演技が少し臭く見えたり、演出の間の撮り方に違和感を覚える事が何度かあったものの、心にジーンと余韻が残る大変素晴らしい作品だったと思います。その余韻は翌日まで残っていました。


色々な意味で感動する映画はたくさんありますが、どうせ観るのなら心に響くような、余韻が後を引くような映画を観た方が後々になっても観て良かったと思えたりしますが、『線は、僕を描く』は間違いなくそういう映画だと思います。



☆『線は、僕を描く』公式サイト

https://senboku-movie.jp/sp/index.html



河辺林太郎

令和4年11月



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-劇団制作-

Short Drama『告白』

 
【解説】
創設14年目を迎えた劇団真怪魚は、公演活動以外にも映画制作を目標に掲げています。本編はその準備に向けて、試験的に撮影、編集された作品です。
 
 
劇団真怪魚 座長の真崎 明(総監督)が、稽古用として執筆したエチュードを、映像用にシナリオ化して、副座長のねこまたぐりんが演出、撮影編集は河辺林太郎が担当しました。
 
 
出演は赤井ちあき、竜宮いか です。
 
 
本編『告白』は連続ショートドラマになっています。予想を超える展開で綴られてゆくドラマに、きっと あなたも魅了されるに違いありません。
 
 
※撮影は、コロナウィルスによる緊急事態宣言より前の2020年3月25日までに終了しております。(尚、続編の撮影はコロナウィルスの影響により、6月以降を予定しております)
 
 
上映時間 5分50秒
 

 
 
 
 
〜【特番】〜
劇団真怪魚の座長 真崎明がJ:COMテレビ番組『調布人図鑑』(様々な分野で活躍する調布人の紹介)で石原プロモーション 金児憲史さんと対談しました。どうぞご覧ください。
 

 
 
〜劇団真怪魚 広報部〜
 

 

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『劇団真怪魚〜2022年度研究生募集』

 

《入会は随時募集しています》
ー 稽古日 ー
毎週月曜日夜7時〜9時半 
        金曜日夜6時半〜8時
【金曜は、だるま体操&達真空手の基礎稽古になります】
入会金10000円 月10000円 
(高校以上学生 入会金7000円 月謝7000円) 
空手道着代10000円~ スポーツ保険代1年分2000円

稽古場  だるま堂療術院

 

 

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2009年の劇団真怪魚旗揚げ公演『小さな王子とよだかの星』の王子衣装を担当して以来、舞台衣装作りをはじめ美術、小道具制作や公演の受付を担当してきた川﨑スミ子さんが2022年3月9日に、肺がんによる8年間の闘病生活の末に永眠しました。

最期の時を迎えるまで、肺がんであることを親族や友人にも語ることなく、いつも明るく誰にでも優しく接していたスミ子さんは、身体が不調の時でも積極的に舞台公演の裏方スタッフとして劇団を支えてきました。

また劇団主催の『だるま体操』教室にも、やれば元気になるからと2021年の初夏くらいまで劇団員と一緒に稽古していました。

その後も体操(力禅)は、旅立つ半月前くらいまで一人稽古を自宅で行っていました。

スミ子さんは、子供の頃から写真館のモデルをやっていたり、学生時代は演劇部だったこともあり、「もう少し若かったら真怪魚の舞台にも立ちたかった」と周囲に話していたようです。

最後の最後までもう一度元気になるからと何事にも努力を惜しまず、起き上がれなくなってもさまざまな本を読み続けていました。

あっちへ行ったらすぐに、劇団を応援するからと明るく家族に話していたと言います。

きっと小さな星の光となって劇団真怪魚の発展をこれからも見守ってくれているでしょう。

川﨑スミ子 享年86歳












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創設14年目を迎えた劇団真怪魚は、公演活動以外にも映画制作を目標に掲げています。本編はその準備に向けて、試験的に撮影、編集された作品です。
 
 
劇団真怪魚 座長の真崎 明(総監督)が、稽古用として執筆したエチュードを、映像用にシナリオ化して、副座長のねこまたぐりんが演出、撮影編集は河辺林太郎が担当しました。
 
 
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劇団真怪魚の創設以来、縁の下の力持ちとして常に陰で劇団を支えてきた『だるま整体』創始者の川﨑久徳先生(通称 だるま先生)が脳梗塞のため10月20日に旅立った。


享年79歳だった。


京王線 柴崎駅北口にある劇団真怪魚の本部(稽古場)は、だるま先生の深い理解のもと、だるま堂療術院に併設して作られた。


当劇団座長の父親ということもあり劇団の掲げた目標や夢の実現に向けて支援すると同時に最も良き理解者でもあった。


だるま先生は、その昔鉃道員をやっており、若くして駅長に就任するなど国鉄時代に活躍した。


劇団真怪魚の舞台作品が、銀河鉃道シリーズがメインになっているのは、座長が鉃道員の息子として少年時代を送ったことが大きく影響しているという。


だるま先生は、劇団の舞台公演がある度に会場の外に立ち、まるで主催者であるかのように来場者を出迎え、そしてお礼を言いながら見送っていた。


劇団の14年の活動と歴史と共にあった人物である。


近年、難病を患っていた だるま先生は、自分に何かあったら直葬という形にして、患者や劇団員に迷惑がかからないように、だるま堂療術院や劇団の業務は休むことなく通常通りに運営する様に伝えていたため、今日まで何ひとつ変わることなく普段通りに劇団も稽古を続けている。


ただ、「しばらくしてから、明るく楽しい『お別れ会』をやってほしい」と、だるま先生は願ってもいたので、来る12月5日に調布クレストンホテルにて盛大に開催(会食を兼ねた)することになった。


実はこれが、劇団真怪魚の2021年最初で最後のイベントになりそうだ。(コロナ禍で公演が開催出来なかった)


だるま先生の生涯を描いたビデオ制作は、当劇団が全てを担当する。


また、司会には役者の河辺林太郎をはじめ、様々な企画に劇団員が登場する予定である。


まさしく、これは劇団に尽力して頂いた『だるま先生』を送る☆劇団葬☆とも言えるのではないだろうか。


いつもジョークを飛ばして、人を笑わせることが大好きだった だるま先生を送り出す最高のエンターテイメントにしたいと一同取り組んでいる。


きっと、だるま先生も思いっきり笑って楽しんでくれることだろう。


そして、銀河鉃道に乗って明るく旅立ってくれるに違いない。


〜劇団真怪魚 広報部〜












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創設14年目を迎えた劇団真怪魚は、公演活動以外にも映画制作を目標に掲げています。本編はその準備に向けて、試験的に撮影、編集された作品です。
 
 
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