☆心中常感謝無忘☆ -22ページ目

背中越しの愛 ⑮

ある日…お父さんの友達がヤクザに捕まって、大変な事になってるから助けてくれって電話が入ってね。

お父さん、すっ飛んでいって…そのヤクザの集団を倒してしまったの。
そしたらその集団が皆、お父さんに着いていくって勝手に着いてくるようになってね…

少しはマージャンしたりして遊ぶ人だったけど、それから誘われるに誘われて…運の強いお父さんは
結構勝てるから、良く遊びに行くようになって…

負ける日はとことん負けて帰って来た。

そんな日が続いて…あの日みたいになってしまったの。

それでも、お父さんはちゃんとしてくれてたよ。

アンタには見せてない態度だけど、アンタを殴ったりしてたのも…卓を心から、挫けないように、負けても立ち直れるように育ててた事の一つだったと思う。

あの日ケンカして…お父さんが出ていっちゃったのは、
あんなにする気は無かったけれど、卓の腕を折ったりしちゃったからだと思う。
いろんな事でお父さん、ずっと追いやられてたんだと思う。


でもきっと…反抗しなかった卓が強くなってくれて嬉しいと思ってるはずだから…ね。


だから、卓。
お父さんを追い詰めないで。
苦しめないでやって。

それが…アタシからの最後のお願いだよ。

元気で居てね…。」

背中越しの愛 ⑭

そこで、俺の記憶は途切れた。


…ただ、これだけは覚えてる。
俺の前にはお袋が居て。

笑いながら、俺に言った。

「オマエにはもっと明るい未来が待ってるから…
決して、希望を捨てるんじゃないよ。

お母さんは…アンタを産んで良かった。
アンタがいてくれて良かったよ。

お母さんに、何も悔いは無いよ。

お父さんがあれだから、アンタには苦労もいっぱいさせてしまったし、好きな事もやらせてあげれなかったし、体に傷を追わせてしまったり…
本当にすまないと思ってる。

本当にごめんね。


…アンタが思ってるほど、お父さんは悪い人じゃないんだよ。

お父さんはアンタが産まれる前、本当に気をつかってくれて…家事も全部やってくれて。
やりたい事も何一つやらずにアンタを育ててくれた。

卓を、強くて優しい男に育てるんだ…って。

アンタが産まれてからも、ちゃんと家族の事は考えてくれてた。

鳶してて、ちゃんと働いててくれた。

だけど…お父さんの仲間が運悪く仕事で亡くなってね。
それから…元から強かったお父さんは、力で物事をおさめるようになってしまったの。

だけど…それも、お父さんが望んだ事じゃなかった。

背中越しの愛 ⑬

「君、こんな所で何してんの?
風邪引いちゃうよ?」

「…あ?」


腕が痛い。
目が開かない。
雨粒が冷たい。

食べる物も無くて。

もう限界だった。


声を発する事も…
もうしんどかった。



「…目。どうしたんだ?
風呂も入って無いのか?」


その人は俺に親の事をたずねなかった。


ただ俺が限界になっている事を、汚れた姿から想像ついたらしい。

うつろになった目で睨み付けると、その人は俺の腕を引っ張った。

同時にどうしようも無い激痛がはしる。


「っ…、離せ…!!」

腕を曲げる事は不可能で。
ただ言葉と足の抵抗。


「…オマエ…。

…来い」


その人は抵抗する俺にお構い無しに
俺の脇に手を入れて立ち上がらせ俺を背負った。


「やめろ…っ、降ろせよ…!!
俺は…、死にたいん、だ…よ……」


「……」



死にたかった。

生きてる意味もわからないし、生きてても何も変わらないし。


お袋と親父を裂いてしまった罪を…
そのせいでお袋が他界して、
お袋には辛い思いをさせてしまった罪を…

どうせなら、
この世から消えて…償いたいと思ってた。