☆心中常感謝無忘☆ -21ページ目

背中越しの愛 ⑱

退院した後、ここで働くようになって5年。手術費はとうに返せた。

もう一人でも暮らせるお金はあるだろうけど、剛士さんは俺をまだだって出ていかせなぃ。


…あの時俺は中学生、もちろん働く事なんて禁止だが
運良くバーだったし、元から持ってた落ち着いてる雰囲気と、大人びた顔のせいでばれる事は無かった。


剛士さんちに住んで、遠くまで来て行方をくらました俺は学校には行かなかったけど、ケンカはたくさんしてた。

殴られる事がなれてて強く育てられてきた俺。
親父と一緒で、ある人を助ければ俺が倒した奴らが皆ついてくる。

そのうち大きな集団となって集団と集団どうしがぶつかってたから、大騒動になったりした。

でももちろん俺は悪に走る事は無く、
頭に立っても一人一人を尊重して、人を助ける事以外のケンカはやらなかった。
あっちから殴り込んできた場合だけ。

ケガもして帰ってきたりしたけど、剛士さんはまたケンカしたのか、とだけ言って受け止めてくれてた。


俺も…何しても、親父みたいになっちまうんだ、って。
反抗してた親父に…申し訳ないと思った。



そして…今にあたる。

「おい、卓。
手が動いてねーぞ。
妄想も大概にしとけ」
「な、違うっつの!!」

「仕事では敬語。」

「…違います」


そんな言い合いをしてると、ドアの開く音がした。


「いらっしゃいませ」

背中越しの愛 ⑰

「お…お袋…っ!!!!

逝くなよ…、っ!!

母さあああんッッ!!!!」


俺はその場に崩れ落ちた…――――








「…おい?
大丈夫か?」

俺を揺するソイツの声で目が覚めた。


顔に涙が伝った後があって、俺はそれを急いで拭った。


「ここは…」

「病院。
オマエ、骨折してたろ。目も切れて開いてなかったし。
処置して貰ったから。しばらくは両手動かせないけど、我慢してくれ」


病院…?
誰も頼んでない。
だいち金は?


「…金は」

「金?もう払ってるよ。
オマエ、金無いから…家無いんだろ?
何も食ってねえみたいだし。」

払ってる…?
初対面の俺に手術費を?

「…いつか返す」

借りた金は返す。
親父を見て…決めた事。

「…じゃあ俺の店で働いて返してくれ」

そう、俺に向かって言った。
…働く…?


「だけど俺…」

家が無いし、これから生きていけるかわからない。
生きてる意味は…さっきお袋から教わったから、
もう生きたくないとは思わない。

お袋のぶんまで生きるんだ。


「俺の店でその金を返して貰う為に働く。
んで金を返して貰った後オマエが暮らせるような金がたまるまで俺の所で暮らす。

もう決定だから。よろしく!」

ソイツは笑顔で淡々と話を進めた。


俺を心配してくれてて…俺を思って、遠回しで助けてくれてる。

この人の事を…お袋は言ってたのかな…。

背中越しの愛 ⑯

溢れる涙は止まる事を知らなかった。


はじめて知った親父の事。
お袋の想い。


申し訳なさが込み上げる。

俺が引き離してしまったから。
気付いてれば良かった。


涙がどんどん溢れでる。
そんな俺を、お袋は優しく抱きしめてくれた。


「ごめん…俺のせいで…っ!!
俺…っ、何も解ってなくて…っ、二人…っ引き離して…っ」


「何言ってるの…お母さんは何もアンタをせめたりしてないわ…

むしろ、卓に嫌な思いばっかりさせて…謝るばかりよ…」


「んな事ねぇよ…っ!!俺、何も嫌じゃ、なかった…っ…。
お袋に…いつも大変な想い、させたくねえ…って、それだけだから…っ。」

俺より大きかったお袋が、もう俺より小さくなっている。


「ありがとうね…
本当に、卓を産んで良かった…。
良い子に育ってくれて良かった…。

ありがとう…。」


お袋の体が…少しずつ消えていく。

タイムリミットが近づいてる。


「逝くなよ…っ、俺どうしたらいいんだよ…っ」

「アンタには…まだまだ、たくさん助けてくれる人がいる。
一人じゃない事を忘れないで生きて。

助けてくれる人を大切にして。

…それじゃあね。
元気で、卓。」


お袋は俺から離れて…笑顔で消えてった――――…