一度は故郷(青森・中里町=平成17年に小泊村と合併し現在は中泊町)を捨て上京しながらも「或る得」を求めて帰郷した江波杏子と、騒動を起こして東京に居られなくなり江波さんにくっついて来た交際相手でチンピラの織田あきら…得が得られると信じながら女給勤めをする江波さんに対して毎日ブラブラとしている織田さんでした。しかし、盲目の少女である中川美穂子と出稼ぎにも出ずこの地で漁師をしながら生計を立てている西村晃との出逢いが織田さんを変える一方で、得が得られないと解った江波さんは織田さんを連れて故郷を捨てようとしたものの…
アウトローの世界で生きてきた故郷喪失者だからこそ心の拠所・安息の地を望んで都落ちした結果がいい方向に展開し(但し結末は…)故郷を損得勘定でしか見られなかった者は二度と戻らぬ決断を下した対比が中々!織田さんの姿を見ると、故郷喪失者である東映東京「トラック野郎シリーズ」で菅原文太が扮した星桃次郎の「故郷が欲しければ作ればいい。その気になれば石ころだっで故郷になる」の台詞を思い出させますし、故郷以外に目を向けてもこの感覚で安息や拠所を作り出す事が人間には不可欠ながらもその力量は若年層になる程衰えているなぁと…そして、当作公開時と比較をすると減少しているとは云え、現在でも出稼ぎ率が全国一と言われている青森(特に津軽地方)の現実を垣間見られる点も地域性を知る観点では評価をしてもいいかと思います。繰り返しになりますが、ひと摘まみの識者・評論家の歪んだ考え方がこの作品を瞬間的に頂点にさせたものの、その印象により冷めるのも早かっただけに留まらず未だに邪な印象を抱かれているのは不幸以外の何物でもない!盲目の者が全てに於いて豊かとは言えぬ地域で生きる術を得る難しさも同時に描かれたこの作品はもっと観られて評価されるべきと思います。