男尊女卑の思考が強い時代の女系一家の日常と顛末は?東映教育映像部「六人姉妹」稲葉義男/不忍郷子 | 東映バカの部屋

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皆様、こんばんは。
 
 
勤務開始日の夜中です。今週は恐らく物量も少なければ土曜日朝迄の四日稼働ですし来週も月曜夜からの稼働開始ですので楽な週。体力を温存しながら励んで忙しくなり始めるであろう来週に備えながら熟したいと思います。そして本日は簡単に…かなり前に東映chで放映された教育映画です(その前にはchNECOで放映された実績もある模様)。ソフト化状況は不明で動画配信は無い…と云うより時々YouTubeに上げられている場合があります(本日時点では鑑賞可能)。尚、各自治体が視聴覚教育用として所持している可能性がありますが調べる手立てがありません。もしかすると館内限定で鑑賞を可能としている図書館が存在している可能性があるかも…
 
 
「六人姉妹」(「六人姉妹シリーズ」第一弾)昭和34年制作・瀬藤祝/堀内甲の共同脚本・堀内甲監督・東映教育映像部制作。主演である四女の視点で描かれています。因みに出演者で名前と顔が一致したのは父親役の稲葉義男・母親役の不忍郷子(=不忍鏡子)・長女役の大森暁美(一時休養後復帰し現役です)・三女役の本間千代子(東映出身女優の中では未だに清純派の最右翼となるでしょう、しかも岡田茂名誉会長に歯向い「エロは嫌い!」と言い放ち「生意気女優」の名を貰ったそうですので)でした。
 
 

 
 
舞台は栃木市…稲葉・不忍夫妻は子宝に恵まれ六人の女の子を授かりながらも望んでいた男児の誕生は叶いませんでした。それでも長女を筆頭に母親を助けなければとばかりに役割分担がしっかりと出来た理想の姉妹関係が出来上がっていましたが(これが母親が疲労困憊により休養した際に大いに役に立ち、一方では苦しい家計の現実を目の当たりとする結果に)「新品か?お下がりか?で争う四女と五女」「大学進学を望む長女と父親の思考の差が生み出す対立」「美容師を目指す次女・栄養士を目指す三女の家庭の現実を見据えたかの様な将来展望」「母親を含む女七人が束になってかかっても結論を翻せぬ程の権威を振りまく建設会社管理職の父親との微妙な関係」等々を描きながら、相互理解の賜と言える着地点を目指して物語は進んで行きます。
 
 
 

 
 
「若年層向けの作品」と云うより「親子で鑑賞して時代に会わなくなってきている(様々な弊害を生み出してきている)男尊女卑・家父長制等々を一人一人考え直してみませんかと提案しているかの様な内容」と感じた次第…恐らくこの時代「家庭を省みて男は家事にも携わり、女は少しは外に出て働くべき」との考え方が三大都市圏では急速に浸透していたでしょうが地方ではまだまだ程遠い状況どころか理解されぬ現実があったでしょう。そこで「夫婦間での争いとしてではなく、子供の視点と思考を中心とする手法に変えて男性群に考え直す切欠を与えられれば…」と制作側は意図したではないかなぁ、なんて…少々考え過ぎかもしれませんがね。しかし、教育映画は低予算ながらも営利や採算とは無関係で制作可能なのですから自由度はポルノ映画及びピンク映画並みであったとも言え、視点や思考を様々な位置に置いて企画されたのではないかと私感ながら思います。
 
 
そして、戦前からの既存他社が撤退する一方で東映が教育映像作品に力を入れたのは、戦前からの系譜でありながらも社としては戦後の新興勢力の為柵が無かった事、苦しい台所事情を打破するには全国の各自治体に対し著作権込みの高額取引を持ちかけられるこの事業は打って付けだった事(その代わり自治体は無料を条件に自由に公開が可能となります)、若年層に良質の映像作品を提供する大義名分があった事等々が考えられますが、結果としてこの経験は現在に至る迄東映の大黒柱の一つとなっていますし、この思考がテレビドラマ等々に生かされたり旺文社等々と組んで日本教育テレビジョン(現・テレビ朝日)の設立に繋がったりと効を奏しています(現在でもテレビ朝日と東映は兄弟会社かつ双方が双方の持分法適用会社です。因みに旺文社は東映と対立し現在は撤退)。しかも「娯楽が出来るから真面目な作品も出来る」を世に示したかの様な実績は東映の財産かつ金字塔と言ってもいいでしょう。