殺害された実父の言葉が形成を…大映東京「女賭博師尼寺開帳」江波杏子+「女の賭場」無料配信中 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

昨日22時に勤務を追え、月曜日11時の勤務開始時迄の休みです。雨模様で少々肌寒さを感じさせる秋田市内ですが、積雪ゼロであるだけでも有難いです。そして先週から物量が徐々に増え始め今週末は明日以降の在庫として残ってしまった為かなり多忙かつ時間外勤務も足し増しとなるでしょう、金になると思えば老体に鞭を打たずとも動き出しますからいいですが・・・

 

 

さて、昨日よりYouTube「角川シネマコレクション」内に於いて江波杏子主演「女賭博師シリーズ」第一弾である「女の賭場」(昭和41年大映東京制作・DVD化作品でAmazonプライムビデオ「KADOKAWAチャンネル」内で無料動画配信が行われています。尚、過去に日本映画専門chで放映された実績があります)が2/2(金)19:59迄無料動画配信されています。胴師の父親が他界した切欠を作り出した成り上がり者の渡辺文雄に立ち向かう為に愛娘で自らも女胴師だったものの二度と壺を手にしないと心に誓い堅気となった江波杏子が自らの幸せを断ち切ってでも実父の汚名を晴らそうと一度限りの勝負に命を賭ける姿が胸を打ちます。

 

 

 

 

 

そして本日は「賭博モノとしてはもっと評価の機会を得られてもいいのでは?」と思い何度か当方でも取り上げてはいるものの中々その機会を得られずにいるこの「女賭博師シリーズ」からです。俺は「女侠モノ」「賭博モノ」として対抗作品とされた東映京都制作の藤純子(現・富司純子)主演「緋牡丹博徒シリーズ」鶴田浩二主演「博奕打ちシリーズ」「博徒シリーズ」(「博徒シリーズ」の後半作品は東映東京制作)そして大映・東映よりも先に女賭博師モノを制作していた野川由美子主演の日活「賭場の牝猫シリーズ」と同等の質を誇っていると思っていますし同じ位好き!何せ東映・日活の作品群とは別次元での面白さを追求すると共に主演の江波杏子の良さや容姿に相応しい物語がしっかりと構築されていますし、観客との距離が非常に近い点で大映のシリーズ作品では一番二番とも思います。更に一世を風靡した「大映ドラマ」の基本骨格がこのシリーズではないかと感じる点もあり「もっと知られて観られて評価されてもいいシリーズ」だと感じます。

 

 

「女賭博師尼寺開帳」(「女賭博師シリーズ」第8弾)昭和43年7月27日公開・高岩肇脚本・田中重雄監督・大映東京制作。DVD化作品(通常版・廉価版)でAmazonプライムビデオ内(シネマコレクション by KADOKAWA対象作品)に於いて有料動画配信が行われています。余談ですが当シリーズは一部の作品が昨年閉鎖されたGYAO!の無料動画サービスで定期的に配信されていました。これは多くの方々に当シリーズの良さを気軽に知って楽しんで貰える絶好の場であっただけに残念です。

 

 

 

 

玩具工場に勤務する江波杏子は実父で露天商の大坂志郎と二人暮らし…江波さんには実兄が居たものの大坂さんと喧嘩別れしてから一度も顔を見せて居らず幼少期の記憶しかありません。その江波さんの悩みの種は露天商組合の組合長の志村喬に助けて貰い危機を脱しながらも「いかさまもバレなければ立派な技!」と一生を賭けて様々な手法を考え出しては賭場に繰り出し荒しで放り出される行為を繰り返す懲りない馬鹿の大坂さん…しかし「蛙の子は蛙」で数年後には江波さんも立派な女賭博師となり大坂さんは開帳先の親分との橋渡し役となっていたのです。ところが江波さんの名声が喉から欲しい或る親分は事故に見せかけた殺人未遂を実行し江波さんに重傷を負わせただけではなく(この際江波さんを囲っていた親分が事故死)大坂さんが入院費を工面しに訪れる様に工作し、これを「自らの腕の見せ所」と目論んだ大坂さんはその親分の申し出を受けるのです。しかも江波さんに対し「胴師としてのいかさま」を強要し、それを渋々承知し行使した所、客の一人であった川津祐介が賽改めを求めた上にこの騒動が切欠で大坂さんは刃傷沙汰を起こし刑務所へ…この時点で川津さんが大坂さんの長男であり江波さんの実兄である事が解ります。

 

 

弁護士費用を工面する為に旅に出た江波さんは伊豆で、露天商組合長を勇退後同士と共に小売業を営んでいた志村さんと再会しますが、志村さんの社は当地の大物親分である早川雄三の妨害を受け青息吐息の真っ只中…大坂さんが受けた恩を愛娘として返したい気持ちはあってもそれを返せぬ江波さんは苛立ちます。更に追い打ちをかける様に江波さんの台頭で専属の胴師を解かれた上に負傷と辱めを受ける結果となった三条魔子がこの地の尼寺に住み込みながら江波さんに対する復讐心を燃やしていたのです。そんな中、大坂さんが仮釈放で娑婆に戻り久方振りの親子水入らずの時となるかと思いきや、服役中に考案したいかさまを江波さんの目の前で披露し呆れさせ、更にはいかさま仲間との釈放祝いの席の直後に大坂さんは何者かに殺害されるのですが、志村さんを救う為の早川さんとの勝負の場で大坂さんが遺した言葉が江波さんの脳裏に浮かび形成が…

 

 

 

 

 

 

「大坂さんの思考や行為等々に呆れ、自らは正々堂々とした勝負に臨みたくても血筋と肉親の情に流されてしまう江波さん」の苦悩は「実妹はいかさまを行使しなくても立派に遣って行ける胴師と目論む川津さん」の登場で好転するかと思いきや「馬鹿は死んでも直らないを具現化した生涯となった懲りない馬鹿の大坂さん」により更にどん底に落とされたものの「大坂さんの遺した言葉で形勢逆転に持ち込み、皮肉にも本物の親子の信頼関係が大坂さん亡き後に構築される結果に…しかし親子の危機を何度も救ってくれた志村さんへの恩返しが出来た事実の方が遙かに大きい結末」…あっ、結末迄明かしちゃった!これは俺の言い訳ですが、当作品は結果が解ってしまっても十二分に楽しんで貰えると思っていますし同様の作品は無限大に存在、更に「結末が解ってしまったならばそこに至る経緯を楽しむ」等々、視点や方向性を変える事で楽しみ方は広がります。尚、起死回生を目論みその為ならば手段を選ばぬ三条さんとその心根に付け込む悪党連中双方の腹黒さや、博学かつ好印象の強い川津さんの若かりし頃のアウトロー芝居の嵌り具合の良さも見所。

 

 

そして「女侠客は堅気衆を救えるか?亡き実父の遺した組を再興出来るか?女を捨てて男として生きる姿が女らしさを際立たせる現実」等々を主題としたのが「緋牡丹博徒シリーズ」ならば「最大の敵は自分自身=次々に降りかかる苦悩を自助努力で乗り越えられるか?その姿に見惚れた・認めた人々が自然と力を貸してはくれるもののあくまでも自身で乗り越える為の助言に留め江波さんの力量に任す適度な厳しさを残す物語」「女賭博師シリーズ」。そんな流れを通じて序盤に書いた「当たり前の事を当たり前に出来る様になる・する様になる=それが結果として自らを楽にする」日常の生きる術を教えている点も見逃せません。

 

 

因みに、当作品公開の大凡一ヶ月後に封切られた東映京都制作・鶴田浩二主演の「博奕打ちシリーズ」第6弾「いかさま博奕」と比較をして鑑賞するのもお薦めです。此方は「いかさまは堅気衆や薄幸な親子姉妹を救えるか?」が息の詰まる様な凄味で見せる「女賭博師尼寺開帳」とはまた別次元の傑作かつ、大坂さんの台詞「いかさまもバレなければ立派な技!」を鶴田のおやっさんが見事に具現化しています。「女賭博師尼寺開帳」を鑑賞した当時東映京都撮影所所長だった岡田茂・前東映名誉会長が「いかさまもバレなければ立派な技とあの作品は言い放った!この台詞を元にして物語を考えて撮れぃ!撮っちゃれい!」と広島弁丸出しで厳命したのではないかと感じた程…その様な檄を飛ばしそうな雰囲気が満点だからなぁ、岡田名誉会長は…「いかさま博奕」はDVD化作品でDMM.com/iTunes/ビデオマーケット/U-NEXT(見放題対象作品)/Amazonプライムビデオ/YouTubeムービー内に於いて有料動画配信が行われています。