青年は家族の為に王者を目指す・・・新東宝「リングの王者・栄光の世界」宇津井健・石井輝男初監督作品 | 東映バカの部屋

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皆様、こんばんは。
 
 
本日20時勤務開始の為まだ起きています、今が正午の様なものですので・・・昨日は昼頃に起床後は部屋から出ず、昼寝ならぬ夕寝を挟み貯まりに貯まった録画済みや期間限定の無料動画配信作品を鑑賞しました。ですのでその中から一つ・・・DVD化作品(過去にDVDムックとして書籍扱いで販売されています)で有料動画配信も行われていませんが、YouTube内「新東宝【公式】チャンネル」内に於いて1/19(金)12:59迄無料動画配信が行われています。徹底娯楽路線をひた走った石井輝男の初監督作品です(因みに今年は石井監督の生誕100周年でこの配信もその一環。有料波では東映chで同様の志向の企画が行われています)。
 
 
「リングの王者・栄光の世界」昭和32年4月10日公開・内田弘三脚本・石井輝男監督・新東宝制作。
 
 

 

 

 

魚河岸の青年・宇津井健は新聞記者の伊沢一郎に見初められボクサーとしての道を歩まないかと再三に渡り誘われており本人も興味があったものの、交際相手で洋食屋の看板娘である池内淳子や実母の真山くみ子の反対に遭い決断出来ずにいました。しかし、足の不自由な実妹の福田則子の手術代の工面や生家の窮状を救う為に伊沢さんと共に元・ボクサーで今は酒場の小間使いとなっていた中山昭二を訪ねテストを受け合格し新たな人生が始まりました。元々素質があった上に根性が人並以上であった為それを恐れた現役王者の細川俊夫の理不尽なスパーリングを食らったり、将来を考えた伊沢さんが池内さんに交際の中断を申し出た上に宇津井さんの目の届かぬ地に職場の世話をしたり、強い男が好きなマダムの若杉嘉津子の誘惑に惑わされたり、練習一辺倒かつ禁欲塗れの生活に心労を露呈したりもしたもののデビュー戦から負け知らずの連戦連勝でしたが、遂に迎えた細川さんとのノンタイトル同門対決で初の負けを喫し・・・
 
 
 

 
 
当作品の前に数多く制作された性典映画の要素をスポーツの世界に置き換え構想し、この後多産される根性を主題とした青春映画及びテレビドラマの雛形となったのではないかと感じる趣の内容・・・周囲の反対を押し切ってでも己の意志を貫いたのは愛する家族の為ではあったものの、挫折の無い順調過ぎる成長期により慢心が生まれ初の挫折の場では敗因さえ考えようともしない。しかし「周囲の冷たい視線や衝撃の一言で己を知り、更には敗北は人生の幕が開いたばかりと言い放った自らの過去を猛省している中山さんの気持ちを知り、自らの行為を最善ではなかったと頭を下げる伊沢さんの姿で再奮起する宇津井さん」の心根は更に強くなり、初のタイトルマッチで見せた細川さんに対する闘争心は物凄い!そして「作品を破壊せずにはいられぬ石井センセイ」は既存手法に手を加えた脚本を手にしながらも、挫折の前後以降に力量を傾倒させる事で「原作や脚本に従順的な正統派・文芸的と言われる作品ばかりが評価される映像業界に初監督作品で牙を剥くと同時に、戦後の復興途上から中々抜け出せずに居られた方々が多かったであろう当時の現状に全ては己の意志次第と云う極当たり前の人間社会の構図を端的に力強く描く事で再認識させようとしたのではないか?」とも・・・この当時は成功者と言われる方々でも艱難辛苦を乗り越えた方々がほぼ全てでしょうし現状も熟知していたでしょうから芝居に生かすのは朝飯前であったと言っても過言ではないでしょう。その様に考えるといい時期にいい面々に恵まれ制作された隠れた名画ですし、些細な事で挫折する多くの現代人に是非鑑賞して貰いたい作品!