怪談映画の名手・中川信夫監督のお気に入りは…新東宝「「粘土のお面」より・かあちゃん」伊藤雄之助 | 東映バカの部屋

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皆様、こんばんは。

 

 

休み二日目の夜ですが、連日冷え込みが厳しいです。昨日は記事更新後すぐに就寝してしまい目が覚めたら既に夕方でした。そして夕飯を食いながら約30年前の箱根駅伝ダイジェストを途中迄観ていたのですが、今回の放映は平成中期からの上位常連校である駒澤や東洋・順天堂は中位以下で青山学院は本戦出場すらしておらず、当時留学生旋風を巻き起こしていた山梨学院や中央・早稲田が上位争いを繰り広げそれを亜細亜や法政・中央・神奈川等々が追う展開でしたし、稀に起きる往路二区での10分繰上スタートも…しかし記録を見て思うのですが、今の速さは桁違いなのではと勘繰ってしまいましたし、あの頃は一位と最下位の差が非常に大きかったものの今は前年度優勝校が今年度はシード権落ちとなる可能性も孕んでいる程実力伯仲の時代になったのだなぁと実感します。

 

 

さて本日も簡単に此方の作品を…未DVD化作品でU-NEXT(見放題対象作品)/Apple TV+内に於いて有料動画配信が行われています。

 

 

「「粘土のお面」より・かあちゃん」昭和36年3月15日公開・豊田正子原作・館岡謙之助脚本・中川信夫監督・新東宝制作。余談ですが、昭和35年12月に大蔵貢・新東宝社長が退陣した後に制作された作品で、元々は大変な文学少年でありながらも怪談映画の名手と言われた中川監督が生前に「大好きな作品の一つ」とお話をしていたとの事(逆に「怪談映画の名手」の称号は不本意であった模様です)。

 

 

 

 

舞台は昭和20年代半ばの東京・下町…板金職人の伊藤雄之助は腕は良かったもののお人好しである上に自営業である為に収入も不安定で、困った時には女房で内職業の望月優子が親類や知人に借金をして実子の二木てるみ等々を食べさせている状況でした。因みに両隣に住む一家も似た様な状況で、片や病弱の女房を亡くした事を切欠に郷里に戻り、片や愛娘が富裕な紳士(丹波哲郎)と婚姻したかと思いきや騙され戻って来たりと散々な状況…その様な中も伊藤さんの一家は家賃滞納・電気供給停止・望月さんの自殺未遂騒動等々に見舞われながらも「てるみさんの憧れである小学校教員の北沢典子との公私を超えた姉妹の様な交流」「てるみさんが賞を貰った粘土のお面を巡る、後で考えれば懐かしい笑い話となりそうな騒動」等々、清貧の言葉が当て嵌る周囲よりも明るい日々を過ごしていました。しかし、空き部屋に越して来た景気の良さそうな自転車屋の様子を目の当たりにして伊藤さんは夜逃げを画策し…

 

 

「襤褸は着ていても心は錦」「現状を受け止めて背伸びをせず身の丈に合った日々を過ごす」「どんな困難に陥ろうとも前向きに明るく生きる」等々、周囲に染まる事や中流志向等々を意識する事を良しとしている現代の大多数の我国民が過去の貧困な時代から学ぶべき事をまざまざと見せているかの様な内容。しかも、家賃を踏み倒されてしまっても再出発の祝儀代わりと言わんばかりに陰から夜逃げの様子を見つめていた大家の姿も古き良き時代を感じさせます。又、時代劇の印象が強い北沢さんが爽やかな教員役を伸び伸びと演じられていますし「教員とは勉強を教えるのが仕事ではなく、分け隔て無く子供達を愛せるか?子供達と一緒に人形作りに耽ったり泥んこになって遊べるか?等々、それが出来てこそ一流の教員なのでは?」と言っているかの様な雰囲気。エログロ主体だった大蔵体制の新東宝から創立時の原点回帰とばかりに最初期の雰囲気に戻った様にも感じられますし、文芸思考ながらも押し付けが一切無い仕上がりは一流の徹底娯楽をきちんと成立させられる一人であった中川監督だから成し得たとも言えます。