土地成金でそれを資本にスーパーマーケット・ボウリング場・自動車教習所・給油所等々を営む伴淳三郎、祖母で農業を営む飯田蝶子と同居していたバンジュンの跡取息子の川崎敬三…「土地を売れば金は無尽蔵!」と言わんばかりのバンジュンに対し、川崎さんは「自家用車は持たず自動車を担保に金を貸し、その間タダで様々な車種に乗れる!」「外部への商務委託は経費がかかるから自らと社員で、出来る事なら業務時間外に行う!」「女は金がかかるから嫌い!」等々ドケチ!そんな川崎さんが或る騒動を切欠に経営破綻した花嫁学校の買収をバンジュンに提案して受け入れられます。川崎さんは収益増大を考えていたものの、バンジュンと飯田さんは川崎さんの女嫌いを改めさせながら嫁を探す目的が…そして法人登記を確認に向かうと、前理事長からの許しを得て住み込んでいるという秘書兼雑用係兼施設管理人の渥美マリが居り、この立場のまま業務に当たる事となるのです。バンジュンは「成績が最優秀の生徒に土地・家電付き新築家屋と世界一周旅行を贈ると宣言したのに対し(当時の紙幣価値ですが3.000万円相当との台詞が…)ドケチな川崎さんは「最優秀生徒と結婚すれば出費分が自らに戻る」と近い将来の結婚を心に決めたのですが…
「ドケチな川崎さんとしっかり者のマリさんが最終的に一緒になれるのか?」となりますが「コンピューター診断を頼り経営方針や女心を伺ったり(この場面での診断担当者が奥村チヨ。しかし歌唱時とは真逆の質素な衣装かつ極普通の髪型のチヨさんは可愛いの一言!)バンジュンの言葉を思出したり…しかもそれを素直に実行した事が騒動の発端となってしまう川崎さんの世間知らず振りと極度な損得勘定がバンジュンの十八番共に笑いを取っている点」「川崎さんの決断を余所に、マリさんに身辺調査をさせながら少しでもいい嫁を探そうとするバンジュンの親心…しかし失敗の連続であった上にそれにより結婚の夢が醒めてしまった川崎さんを本気にさせる為の苦肉の策は胸を熱くさせる場面」「あなた好みのの題目の意味は誰が握っているのか?」「当作品でのマリさんの役柄は軟体動物シリーズの対極に位置すると言ってもいい程、普通の若い女性らしさを感じさせてくれる上に衣装や化粧も素の可愛らしさを生かしたかの様相が魅力」「当時テレビ番組を切欠に大人気となった野球拳を取り入れる事で当作公開時の時代背景を窺い知る事が出来る」等々、文芸/娯楽双方共に傑作を数多く送り出して来た大映のきちんとした基本骨格を大笑いしながら感じ取る事の出来る中々の作品でした。
そして「悪女」の印象が強い(私感)長谷川待子とその父親役の浜村純は周囲に負けず劣らずの大馬鹿振りを発揮していますし、長谷川さん・浜村さんにその様な意識を持たせたのはバンジュン・大泉滉・若水ヤエ子・鳳啓助・京唄子等々各社で観客を大いに笑わせた喜劇役者の面々でしょう。又、フリーの女優ながら東映作品での活躍された印象の強い集三枝子は中盤で退場してしまうものの「不良娘ならあたしに任せて!」と言わんばかりの勢いを見せ付けています。この当時各社で競う様に制作された歌謡映画の中でも当作品は「大いに笑わせ綺麗事の恋愛模様に終始しなかった点」等々から、かなり優れた娯楽第一主義の作品であると感じました。