金で買える夢はあるのか?大映東京「裸でだっこ」渥美マリ/古今亭志ん朝・湯浅憲明監督 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

休み最終日の為ゆっくり起床しようと思っていたものの早々と目が覚めてしまいましたが、年齢を重ねると睡眠時間が短くなると言われていますので自然と言えば自然なのか…本日も9時の時点で既に32度を超えており厳しい暑さが続きますがこれも今週終盤迄の模様で、平年よりも残暑は厳しいとの話ですが猛暑からは解放されそうです。

 

 

さて本日は此方の作品を…VHS化作品ですがDVD化・有料動画配信化は行われておらず、7.8年前にchNECOで放映されて以来目にする事がありませんでしたが、来月スターチャンネル2で渥美マリ主演作の特集が予定されており、本日紹介の作品は9/4(月)23:00・9/26(火)00:45の二回放映されます(放映形式は不明。因みに俺は未契約ですので視聴出来ません)。

 

 

「裸でだっこ」昭和45年11月22日公開・安本莞二/白坂依志夫の共同脚本・湯浅憲明監督・大映東京制作・ダイニチ映配配給。

 

 

 

 

 

鳳啓介・京唄子夫妻の営む酒場の女給に従事しながら青山良彦・松原マモル・大谷直の野郎三人組と共謀して美人局にも勤しんでいた渥美マリは「勝利した者の夢の実現の為に皆が協力する事」と云うゴーカート勝負を制します。しかしマリさんの夢は「青山さんの目標であるヨット購入後それで世界一周を果たす事」であった為青山さんにも徳があるのですが…そして何時もの様に美人局に勤しんでいたものの、一連の国土改造計画により両親が土地成金となった大学生・平泉征(現・平泉成)がしつこく青姦を求めた為にたまらず逃げ出したマリさんを救ったのは、下戸・童貞ながらもマリさん見たさの酒場の常連であった外勤警官の三代目・古今亭志ん朝…しかし志ん朝師匠が惚れてはいても性格が正反対かつマリさんは青山さんのイロであり性経験も豊富で酒も仕事柄人並以上!しかしマリさんをモデルとして指名した怪しさを隠せぬ謎の男・梅津栄の自宅を訪問後数日間姿が見えぬ事に疑問を抱いた志ん朝師匠の行動が二人の距離を縮める事になろうとは…

 

 

 

 

俺自身マリさんの主演作・準主演作を全ては鑑賞していませんので果たしてこの先の文面が正しい判断となるかは未知数ですが(軟体動物シリーズ以外は放映・配信が然程積極的ではありませんしソフト化もVHS時代はそれなりにあった様ですがDVD化は軟体動物シリーズ以外は中々…)軟体動物シリーズは面白いものの序盤から結末迄悲壮感や周囲からは決して好意的には受け止めて貰えぬ勝利感が売り物であったのに対し「裸でだっこ」はそれが完全に廃された、カラッとして適度な掘り下げを巧く生かした艶笑作品!しかし物語を通じて「金で買える夢はあるのか?そして現実を突き付けられた際の喪失感はどれ程なのかを端的ながらも教えてくれる当時の若者の意識に対する警笛」も加えられているのが美点(この役目を志ん朝師匠が受け持っていると言ってもいいです)。

 

 

そして大映レモンセックスシリーズの中では東映ピンキーバイオレンス路線・日活集団抗争路線を或る程度意識した作品なのでしょう(但しパンチラを見せながら格闘を演じる等の場面は一切ありませんが…)それを感じるのは多彩な脇役陣の馬鹿に徹した姿!幾つか挙げると「啓介さんが唄子さんに血祭りにされる夫婦喧嘩」「美人局の被害者の一人が大泉滉」「平泉さんのズーズー弁丸出しの田舎っぺボンボン!しかも腕っ節が無い為応援団員を喧嘩に駆出す情けなさ!」「陰萎の梅津さんがマリさんをモデルにダッチワイフを制作…しかもその怪しげ変態そのものの芝居は一度観たら脳裏から離れぬ名演!」等々…更にアイキャッチで流れる音源は当時高視聴率を獲得していた大映テレビ室(現・大映テレビ)制作「おくさまは18歳」より流用されている為、これも軽快感と楽しさを一段上げる効果を発揮しています。もしかしたら「おくさまは18歳」の要素を劇場公開作品に転用したのか?いずれにせよ財務基盤が破産宣告へ一直線となっていた大映の現場の危機感が生み出した異色の面白い作品であるのは事実です。