悪童が担任の通信簿を…日活児童映画「先生のつうしんぼ」渡辺篤史/宮下順子/宇野重吉・武田一成監督 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、おはようございます。

 

 

本日より8/15(火)迄夏期休暇です。郷里の盛岡へは明日から三日間帰省の予定ですが、親父の話によると8/13(日)は盛岡市長選の投票日と…現職か?新人か?そして盆の初日である事が投票率に大きく影響するのか?将又不在者投票数が普段の選挙よりも多く底上げに貢献するのか/成人年齢引き下げ後初の市長選である為それだけで投票率が上がるのか等々、俺自身は秋田市民ですので傍観するのみですが興味津々です。そして今年の秋田市内は酷暑!猛暑日が2.3日/年は普通ですが一週間近く最高気温35度以上/最低気温27~30度の日が続くのは俺が居住し始めて約30年の間でも初めてですし、今月の電気代の請求額は過去最高となるのはもう確実です。燃料代節約の為に身体を動かしたり厚着をしたり布団に入れば暖を取れる冬の方が俺は楽ですし好きだなぁ、雪寄せさえ考えなければですが…

 

 

さて本日は、ロマンポルノ全盛期の日活が同時並行で制作していた児童映画から…VHS化作品ですが未DVD化で有料動画配信も行われていないのですが、今月より日活児童映画の傑作「ともだち」(澤田幸弘監督)がAmazonプライムビデオの見放題対象作品に加わりましたのでその勢いで本日紹介の作品や未見の「新・どぶ川学級」等々も配信されないかなぁと期待をしています。

 

 

「先生のつうしんぼ」昭和52年8月25日公開・宮川ひろ原作・加藤盟/吉原幸男の共同脚本・武田一成監督(ロマンポルノ転換前は「ネオン警察・ジャックの刺青」「盛り場流し唄・新宿の女」「極楽坊主」等々を、ロマンポルノ転換後は「おんなの細道・濡れた海峡」「闇に抱かれて」一般作品扱いの「サチコの幸」等々を、日活児童映画は当作品の他に俺は未見ですが「おかあさんのつうしんぼ」を手掛けられています)・日活児童映画制作。

 

 

 

 

舞台は東京・八王子…この地の一公立小学校の四年生の或る組の生徒達は保護者に通信簿を見せるのを極度に嫌う児童がずば抜けて多く、特にこの組の悪童(男児)は父親の玉川良一に兄姉が成績優秀な関係で激しくドヤされる羽目に…そんな時、この校に赴任して来た教員採用後数年の新米・渡辺篤史がこの悪童の組の担任となった為、仲間と相談して「渡辺さんの通信簿作り」を画策・実行します。その姿は両親が「勉強に目覚めた!」と勘違いをしてしまう程真摯なモノ!ここに「都心から転校して来た少女と従来の組員達の確執と友情の確立」「悪童が老婦から蚕を譲り受けた事を切欠に始まる、蚕を育てながらかつては養蚕の町であった我街・八王子の歴史を知る生きた勉強」(この様になった大きな切欠は、八王子育ちの女教師の助言や、渡辺さんが家庭訪問の際或る女子の母親から「幼少時に生死の境を彷徨っていた際、祖母が「胡麻粒の様に小さな蚕でも大きくなるのに、これだけになった赤ん坊が育たない訳が無い」と励ましてくれた」と云う話を聞いた為)を同時進行させながら結末へと向かいます。

 

 

 

 

渡辺さんが扮する教師のいい所は「生徒と一緒に馬鹿になれる・壁を取り去り素直に日常の出来事を話し(見合い写真の代わりに生徒達に似顔絵を描かせる場面があります)素直に謝罪する(好き嫌いをせず給食は完食と言いながら、自ら嫌いな人参を食しなかった事を告白し謝罪しますが…これに関しては悪童が「誰でも好き嫌いはあるのだから鼻を抓んで食えばいい!」と逆に励まします)生徒が大切に育てている蚕の為なら不眠不休でも自らが率先して動く(但しこの後急性肺炎で入院し、先述の見合いは実現せず…)量よりも質を重視した教育姿勢」等々ですし「この様な教師が忘れられない教師となるのだろう」と…恐らく渡辺さん扮した教師は学業時代は決して成績優秀ではなかったのだと思いますが、だからこそこの様な人間となったのでしょう。俺は「教員採用試験を受ける前に一定期間の民間企業経験を義務化する事」の他に、この古き良き時代の教員像を完全なる真似事でもいいから確実に意識させる必要性は絶対にあると思います。勿論この様な時代ですから壁をブチ壊し整地をするには相当な時間はかかるでしょうが人間の基本的な物事を積み重ねて行けば全ては無理でも一定の効果は得られる筈です。

 

 

「自らの居住する街の歴史を知る」これは俺が小学校当時は全国津々浦々何処でも行われていた事ですが、現在は果たしてどうなのか…餓鬼の居ない俺には知り様がありませんが希薄になっているとすれば元に戻すべき!好奇心を旺盛な方向に導く上に全員での共同作業となれば若年期から始める組織教育の一つとして将来確実に役立ちますし「机上の論理」「教科書を使用した一方通行の授業」等々よりも遙かに生きた勉強かつ教師と生徒の距離感短縮の絶大的な効果も見逃せない…特に近年は若年期から異常とも言える程の個人主義が横行していますから尚更です。

 

 

そして「或る女性との祖父で八王子の歴史に長けている宇野重吉」「8ミリカメラを回して子供達を撮影し学校で見せるのが好きな校長の今福将雄と用務員の小鹿番」「東映東京制作「トラック野郎シリーズ」第一弾~第四弾・第六弾で長女・松下美智子を演じた白鳥雅子と次女・松下華子を演じた菊地優子が渡辺さんの組員として出演」「日活ロマンポルノの看板女優の一人・宮下順子が女児の母親役として数十秒出演」等々、役者探しや名演も一緒に堪能出来ます。同時に松田監督や宮下さんを含め、ロマンポルノ関係者がそれに真摯な姿勢で向かい合い観客目線・娯楽徹底主義に迎合した高質な作品を成立させる力量が高いからこそ良質な作品でも真価を発揮する事実を認識させてくれます。