余命僅かな野郎二人組が金とスリルを求めて…松竹「犯罪のメロディー」寺島達夫/待田京介/吉田輝雄 | 東映バカの部屋

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皆様、こんばんは。

 

 

休み三日目の夜中ですが、この集中降雨に加えて不要不急の外出は帰宅困難となる可能性を孕んでいた為金曜日自宅に帰宅後一度も部屋を出ずに過ごしています。勿論この様な天候になる事は気象予報で知っていましたので三日分の食料・酒・煙草、更に非常時に備えて自家用車のガソリンを満タンにし即座に着替えられる様に洋服、懐中電灯、ラジオを手元に置きスマートフォンも満充電状態に…因みに昨日正午過ぎより小康状態となり、夕方以降は降雨量ゼロですが、本日夜中から木曜日にかけて雨の予報ですので増水と地盤の緩みによる土砂災害への警戒心は解く事が出来ません。そしてこの様な気象状況ではBS/CS波の電波受信状態も不安定である為撮り貯めたブルーレイディスクや動画配信で相当数の作品を鑑賞していますが本日はその中から…因みにこの作品で実質主役かつ俺の大好きな待田京介は俺と誕生日が同日です(余談ですがその翌日は此方も俺が大好きな南野陽子の誕生日)。

 

 

「犯罪のメロディー」昭和39年3月15日公開・高岩肇/井上梅次の共同脚本・井上梅次監督・松竹制作。未DVD化作品で有料動画配信も行われていません。

 

 

 

 

初の栄冠を手にする機会を敗戦で失った上に、その際の試合で起きた体調不良が脳腫瘍かつ余命数ヶ月との診断を受けたプロボクサーの待田京介は病を理由に世間から同情されるのは耐えられぬと考え、ボクシングジムのトレーナーの菅原文太等々の説得にも耳を貸さず八百長試合との非難を受け入れ引退します。そして自らのファイトマネーを自宅アパートの向かいに住み身体障害の実弟を持つ看護婦の鰐淵晴子に託し勤務先の病院が計画している障害児施設開設資金に役立てて貰おうと画策したのですがジム側は資金枯渇を理由に支払いを拒否。更に郷里から相思相愛の桑野みゆきが待田さんの元を訪ねて来て実母が他界した事を聞かされ、ファイトマネーの代わりに自らが加入していた生命保険の死亡時受取人を実母から鰐淵さんに変更しようと保険代理店を訪れると、待田さんの契約担当者が架空契約を行っていた為に約款自体が存在しない事が判明したのです。しかもそこで出逢った同じ被害者の寺島達夫と契約担当者を追ったものの殺害されていた事実が判明!どうしても金を残したい待田さんは酒場で暴漢に襲われた際、そこでトランペッターを務める此方は肺病で余命僅か、しかも「金よりもスリルを味わいたい」と云う吉田輝雄と出逢い、寺島さんも含めた三人で国際的な闇金融組織に挑戦する事を決意します。そこで浮かび上がって来たのは表向きは中華街のレストラン店主・安部徹及び鰐淵さんの病院に時々入院している慈善事業家としても名高い外国人実業家の焦臭さ…

 

 

余命をネタに似非感動作品を制作し「お涙頂戴」と遣る作品は大嫌いですが、目的は違えども余命を完全燃焼させる為に身体の事を考えず初心貫徹を目指す野郎臭い物語は大歓迎!しかも「同情されて死を迎えるよりも、全てを敵に回してでも僅かな人生を完全燃焼させようとする姿」は犯罪ドラマではあるものの「死の現実は受け入れざるを得ないものではあるが、生きた証を残す姿勢・生きがいを実感して悔いの無い逝き方を目指す姿勢・最期迄生を守ろうとする大切さ」をしっかりと教えてくれます。徹底的な娯楽思考を完遂しながらその中で日常生活で忘れそうになる当たり前の物事を思い起こさせる様に仕向けているのですからやはり井上監督の力量は只者では無い!新東宝時代の盟友・石井輝男監督も生前或る書籍内で「いやぁ、梅ちゃん(井上監督の愛称)には負けますよ…」と完敗宣言をしていた位ですから…

 

 

「待田京介と、高宮敬二を除く新東宝ハンサムタワー三人組に同じく新東宝の看板女優の一人であった久保菜穂子の共演」は、まるでこの後の東映作品を鑑賞しているかの様な錯覚さえ感じます、事実この五人全員が当作品公開から数年後には東映に籍を置くか主戦場としているかなのですから…待田さんに関してはこの時期はまだ独特の灰汁を醸し出す迄にはなっておらず、意を決して犯罪行為に手を染めてはいてもその目的は良心から来ていましたから好青年の雰囲気が幾分漂っている反面、吉田さんには迷いが無い上に覚悟を決めた芝居を洗練された都会的な芝居で見せるものだから格好良さは別格!そして寺島さんは登場時から不穏な雰囲気を醸し出しているのですが、最後に「やはりそうか…」と納得させられます。尚、文太さんは出番が少ない上に、善人なのか腹黒なのか、将又ジムのオーナーの風見鶏でしかないのかはっきりしないまま出演が途絶えてしまっていました…

 

松竹には「大船調」の流れと完全に一線を画す名画が相当数存在しているのですが、東映・日活・大映(現在は角川が権利を所持)・新東宝(現在は国際放映が権利を所持)に比べるとDVD化や有料動画配信化には消極的で、特に「大船調」を逸脱している作品に関しては子会社が運営する衛星劇場での放映以外の鑑賞手段が無い現状…この点に関しては姿勢を改めて欲しいと願ってはいるのですが実現は厳しそうです。