愛欲の果ては復讐鬼!東映京都「怪談三味線堀」品川隆二/千原しのぶ/伏見扇太郎・内出好吉監督 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんばんは。

 

 

休み二日目の夜中です。昨日から数週間前に日本映画専門chで一挙放映された伊丹十三作品を録画していましたので集中鑑賞していますが、本日夕方辺り迄かかりそうです。東映の小沢茂弘監督は俳優時代の伊丹監督について「発案が面白い上にその場で即座に取り入れが可能なものばかりで事実使わせて貰った」と能力を絶賛していたのですが、その能力を裏付けするかの様…しかもこれ迄気付かなかった面白さや発見も有りいい機会となっています。因みに一番好きなのは「タンポポ」次いで「マルサの女2」「お葬式」となるかなぁ…しかし順位付けをしたとしても僅差です。

 

 

しかし本日紹介する作品は全く別…未DVD化作品で今月よりAmazonプライムビデオ内「東映オンデマンド」の見放題対象作品に加わりました(本日時点で他の有料動画配信媒体では未配信ですし、俺の記憶の範囲内ですが東映ch等々の有料波での放映実績も無いものと思われます)。

 

 

「怪談三味線堀」昭和37年8月4日公開・柳川真一脚本・内出好吉監督・東映京都制作。因みに他のブログ媒体で映画関連記事を書かれている方の記事を読むと、三遊亭円朝「真景累ケ淵」の流れを少々拝借した模様との事ですが俺は拝聴した事がありませんのでこの点に関しては割愛致します。

 

 

 

 

舞台は江戸…美貌の踊りの師匠ながらも身持ちが堅い男嫌いの千原しのぶはパトロンで大店の主である原健策の誘いを無視して自宅に戻った所、旅人姿の伏見扇太郎の金品を奪った上に刃傷沙汰を起こしたスリの品川隆二に押し込まれたものの庇った事が切欠で小間使いとして住み込ませる事となります。その現状を「千原さんには男性に対する免疫が無い」と家元の三浦充子(=三浦光子)や元々小間使いとして住み込んでいた赤木春恵は心配をするのですがその思いとは裏腹に千原さんは品川さんとの愛にズブズブと嵌って行き稽古を休む日も珍しくはなくなったのです。しかも品川さんは千原さんの自宅に稽古に通う原さんの愛娘・北沢典子とも或る切欠を通じて恋仲になっていたのですから…北沢さんの現状把握は出来ていなくても品川さんと千原さんの関係を腹立たしく思っていたパトロンの原さんは品川さんの兄貴分に当たる加賀邦男に「千原さんを醜い顔にしてしまえ!」と大金の支払いを約束して命じ、熱湯を浴びせられた千原さんの顔は醜いものとなった上に品川さんとの騒動の際に絶命してしまったのですが…

 

 

 

 

煮詰めに煮詰めて約70分の煮凝とし、泥沼の物語を端的に強調したかの様で纏まりが非常にいいですし、複雑怪奇かと思いきや意外にもスッキリと纏まる人間関係の束等々、解り易くて背筋を凍らせる演出は十二分かつ、怨念は亡霊と三途の川を引き返し命を拾った者の二重の力によって晴らされるのがいい!当作品で最も重要な鍵をに握っているのは伏見さんで最終盤の主役は品川さんから伏見さん・千原さんに移行したと言ってもいい程です。

 

 

この当時の東映の公開番組は徐々にギャング物等々も頭角を現しつつありましたがまだまだ正攻法の娯楽時代劇が看板で、同じ時代劇でも看板とは言えぬ当作品に関しては現代劇の併映作品となっています。同様の例は一番館向けの東映の番組の他に第二東映(=ニュー東映)でも見られますし決してヒットしてもいなければ未だに日の目を見られぬ作品も多い…しかしこの後に訪れるテレビドラマ全盛期や劇場公開作品群の斜陽化に伴う新規開拓合戦等々を思うと、前者には積極参画し後者には他社では思い付かぬ様な企画で現状打破を行って来た東映にとって「日の目を見られぬままにいる作品群」は実は非常に大きな経験と財産を生み出したのではないかと…今後も当作品の様な埋もれた作品を様々な媒体で気軽に鑑賞可能な環境を整える姿勢を末永く続けて欲しいと願いますし、それが過去の作品の面白さの再発見や余りに大人しく綺麗過ぎる現代の映像作品の表現法を一挙に過去の正しい手法に引き戻す起爆剤となると思っています。