山本周五郎原作の傑作短編!松竹京都映画/東映教育映像部「泥棒と殿様」火野正平/橋爪淳/夏八木勲 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

春期休暇最終日ですが、昨日に引き続き不安定な天気ながらも日差しが無い分過快適です。今日もこのまま部屋でゆっくりしたいと思っています。尚、私事ながら私用の為来週は平日に有給休暇を取得する予定ですし恐らく5/15(月)でしょうから三連休となるかと…法律に従って計画的に年五日間の有給休暇を取得しなければうちの社は年度末に五月蠅く言われますので今年も巧く遣らなければなりません。

 

 

さて本日は現在日本映画専門chで放映中の作品から(過去にホームドラマchでの放映実績もあります)。劇場公開作品・テレビドラマ作品双方で調べても出て来ない為更に追いかけてみたら視聴覚教材として制作された作品でした。尚、テーマ別の振り分けに関しては松竹・東映双方が関わっている為に迷いましたが、教育映像作品の枠に入る為「東映教育映像部作品」として取り扱います。

 

 

「泥棒と殿様」平成12年制作・山本周五郎原作(作品名「泥棒と若殿」)・大津一郎脚本・津島勝監督・松竹京都映画制作・東映教育映像部販売(余談ですが、東映からは東映剣会の上野隆三が殺陣師として参加しています)。VHS化作品で他のソフト化及び動画配信状況は不明ですが、教育映像作品は著作権を含めた高額での販売となる上に個人鑑賞向けソフトの販売は極一部の作品以外行われていないものの、公的機関等々による無料公開及び視聴や貸出が可能となる為、各地の図書館等々での鑑賞が可能な場合があります。尚、当作品は日本映画専門ch内に於いて本日以降、5/29(月)23:50・6/11(日)15:50より放映されます(字幕付きHD放映)。

 

 

 

 

幼少時に両親と死に別れた上に養父はろくでなし、更には仕事にも女房にも恵まれず一人息子も病で亡くした火野正平…初めての泥棒稼業として選んだ家屋は過去は立派であっただろうあばら屋でした。しかしそこには遡る事一年前に権力争いに巻き込まれた上に実父・夏八木勲との面会をも拒絶され幽閉されていた若殿の橋爪淳が…食する事もままならぬ為に横になり続けている橋爪さんを放っておけなかった火野さんは食事を与えたのを切欠に、世間知らずではあるが純真無垢な「成人の身体を持つ子供」とも言える橋爪さんの人柄に惹かれ同居する様になり、また橋爪さんもその地に居住する平民達の領主に対する不平不満を耳にした上に自給自足の清貧な日々に人間らしさを感じ武士を捨てる決心に迄至りましたが…

 

 

立場は違えども夫々が過酷な運命を辿って来た二人が「無償の行為…例えば人を救う為に彼方此方を駆け回り支度した本当の意味でのご馳走を知る」「何があろうとも生き続けなければならぬ大切さ=与えられてばかりの殿様の日々と、自ら手に入れなければならぬ平民の日々との差異、更には火野さんが拾った子犬の姿からもそれを教えられる橋爪さんの心情の変化」等々を通じて一緒に旅に出ようともなるのですが「運命や立場は変えられない・一緒になりたくてもそれは許されぬ事が殆どである残酷な現実等々を穏やかな雰囲気の中で端的ながらも深く教える内容」ですので現代感覚で生きる方々にとっては昭和期の作品群よりも学び易い上に、視聴覚教育作品の枠に収めておくのが勿体ない短編の傑作と言えます。何とか関係を継続しようと考えながらも別れる結果となった二人ですしその後の事は描かれてもいなければ語られてもいませんが、橋爪さんは家督争いで数人の命が失われた重い事実を背負いながらも「泥鰌取りをした殿様なんかあんた一人だけだろうからきっといい殿様になるよ!」と火野さんが言い放った通りの結果となったのではと想像します。