討幕阻止を祈る京の公家に御用金は届くのか?東映京都「百万両五十三次」大友柳太朗・小沢茂弘監督 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんばんは。

 

 

休み二日目の夜中です。昨日は日中20度を超えた影響と夕飯に麻婆豆腐を作って食した為か身体が火照り窓を開けた上で今季初の扇風機使用となりました。本日は雨模様で幾分過ごし易くはなりそうですが部屋でゴロゴロして終わるのだろうなぁ…

 

 

さて本日は今月及び来月の東映chで放映の作品です。

 

 

「百万両五十三次」昭和34年10月18日公開・野村胡堂原作・結束信二脚本・小沢茂弘監督・東映京都制作。未DVD化作品で有料動画配信も行われていません。尚、先述の通り東映chに於いて本日以降5/1(月)09:00~10:30・5/19(金)11:00~12:30・5/27(土)20:30~22:00の三回放映されます(字幕付HD放映)。

 

 

因みに野村先生の原作名称は「三万両五十三次」ですし劇中の設定も三万両ですが「題目は三万両より百万両と少しでも大金の方がいいだろう」と判断し改題したと、小沢天皇が自著内で述べられていました。観客目線及び観客心理に寄り添う事を原作に忠実になるよりも優先させる制作陣の姿勢、俺は両手を挙げて支持しますしこれぞ映像作品業界の在るべき姿と思っています。それで目を引き楽しく面白く為にもなれば良し、更に利益が上がれば尚良し!ついでに言うなら今の映像業界及び視聴者側・観客側に足りないのは「結果良ければ全て良し」の思考でしょう。

 

 

 

 

 

舞台は徳川幕府末期の江戸から京にかけての東海道…討幕の動きが絶えぬ現状に苛立ちを募らせていた公家達は討幕阻止及び天下太平の為に必要な御用金を幕府に無心し送り届けられる事となっていたものの道中で何者かの襲撃を受け実現していませんでした。そこで幕府は三万両の御用金運搬のお目付役に丘さとみが率いる一座の用心棒である大友柳太朗を抜擢し、大友の御大もそれを引き受けます。実は大友の御大は公儀隠し目付…そして幕府直轄の、大友の御大の願いを聞き入れた江戸の大店の愛娘の花嫁の、更にはさとみさん一座各々の行列が京を目指すのですが、果たして御用金は何の行列の手に在るのか?そして公家達の思いは結実するのか?

 

 

 

 

藤沢宿・掛川宿等々に於ける敵側との探り合いや長谷川裕見子・若山富三郎等々の盗賊及び白木みのる扮する講談師希望の子供の動き、本心が読めぬ京都所司代の柳永二郎、柳さんと裏で繋がる山形勲、更にはさとみさん一座が宿場町で即興の見世物を催しその際の騒動が危険分子の心情に変化を齎したりと、原作に対する忠実さだけでは単純な道中記として退屈になり兼ねない物語を、現代的な歌と見世物及び東映城のお姫様軍団の大挙で華やかさを盛り、大友・柳・山形の三御大に加え序盤には月形龍之介も登場して要所要所を重厚感で締りのあるものとし、若山先生や白木さん等々はコメディリリーフとして潤滑剤及び清涼剤としての役割も果たしている東映らしい娯楽時代劇ですし、鑑賞中に考える必要が一切無いのは娯楽映像作品の真骨頂でしょう。

 

 

この当時から「増長するな!」と諸先輩達から注意を受けながらも「携わった作品が当たっているのだから…」と考えや行動を改めなかった過去を晩年になり「俺は困った奴ちゃだった」と自省していた小沢天皇…その辺りがもしかしたら再評価の機会を奪っている可能性があるのですが自省されているのですし人間性と実績は切り離して考えるべきでしょうから俺は常々、再評価の土俵に上がって欲しいと願っています。そして時代設定及び作品趣向の硬軟さ等々不問で「自らの企画は一つも無い代わりに、予算と期日をきちんと守って完成させながら観客目線に寄り添った演出に精進し全うした姿勢」「評論家等々は評価しない荒削りさも様々な方向性から繰り返し同じ作品を鑑賞する者にとっては毎度発見があり楽しいしその機会を提供してくれている点」「小難しさとは皆無の解り易さと云う親切心」等々を是非一人でも多くの方々に感じて欲しいと思います。