三姉妹惨殺犯は真犯人なのか?東映京都「江戸犯罪帳・黒い爪」松方弘樹/西村晃・山下耕作監督 | 東映バカの部屋

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皆様、こんばんは。休み二日目の夜中です。

 

 

昨日は記事の打ち込み後、10年程使用した加湿空気清浄機の調子が悪くなった為買い換えに出掛けました。前機がシャープ製でしたので今回もシャープで…フィルター交換等々が10年間不要の機種を3年間の有料長期保証を付けて約\20.500ーで購入ですからかなり得な買物が出来たと思いますが、来月は自家用車の車検を控えていますから突然の不調は使用年数を考えると仕方がないものの痛い出費です。

 

 

さて本日は此方の作品を…相互読者さんが数年前に記事として挙げられて以来「観たい!」と思っていた作品がU-NEXT内で配信されていましたので昨晩鑑賞しました。有料波での放映実績及び名画座等々での公開実績が有るのかどうかさえ解りませんし未VHS/DVD化です。有料動画配信も本日時点ではU-NEXT内のみです(見放題対象作品)。

 

 

「江戸犯罪帳・黒い爪」昭和39年4月18日公開・高田宏治/中島貞夫の共同脚本・山下耕作監督・東映京都制作。

 

 

 

新年早々発生した三姉妹惨殺事件の下手人達…これを自白に追い込んだのは西村晃が率いる本所深川の見回り役人で構成された番屋の面々(西村さんの他は加藤嘉・穂高稔・南廣・中村錦司・そして松方弘樹)。しかし拷問による自白の引出と云う方法論に疑問を持っていた松方さんは憧れかつ師としていた出世街道をひた歩み良家の娘との縁談が決まっていた奉行所同心の金子信雄に思いをぶつけます。丁度その頃、番屋には八百屋の女将が「昼間は面倒を見られないから…」と突然キチガイとなった亭主を連れて来て牢に入れて欲しいと懇願し「兄は人殺しではない!」と訴えて来た下手人の一人の実妹が証拠品を持参していました。実は「証拠品」が事の解決を急ぐネコさんの意見を覆し再吟味へ、そして「キチガイの亭主」は後に事の解決への大きな鍵となりますが序盤ではそんな事は微塵も感じぬ番屋の日常風景…当初はこの事案は無法地帯である霊厳島に一家を構える組織が何らかの事実を知っていると目論み穂高さんが住人になりすまして探りを入れ証人を発見したものの松方さんの独断専行により失敗しただけに留まらず穂高さん自身が惨殺されてしまいます。これが契機となり番屋の面々は何としてでも真相を暴くと再び褌を締直したのですが、解決の糸口は無法地帯ではなく奉行所内部にあるのではとなって行き…

 

 

この類の物語の展開は当作公開の数年後から現代に関しては基本骨格の一つとして立派に成立しているモノですが、当作公開当時は斬新な展開であったでしょう。何せ「捕物帖」の題目で勧善懲悪モノが各社で量産されていたのですから…東映では従来の時代劇路線をテレビドラマに移管し、劇場公開向けに制作された時代劇は「東映集団抗争時代劇」として新機軸を数々生み出していましたが当作品も「体制側の視点からの集団抗争」と云う構図を確立した一篇…と云うより劇場公開作品「警視庁物語シリーズ」テレビドラマ「特別機動捜査隊」等々で東映現代劇のドル箱分野となりつつあった「刑事モノ」の要素をそのまま時代劇に移行した感。

 

 

しかも、手腕には定評のある山下将軍・高田先生・中島村長の顔合わせですから安心感は折り紙付きと鑑賞前から確信はしていたものの改めて「巧いなぁ…」と思ったのは「ネコさんに憧れ師と慕う松方さんに対し、内勤主体で物事を上から見る出世街道がいいのか?薄給でも市井の視点に寄り添い事に臨む同心がいいのか?一切押し付ける事無く言い伝える西村さんの姿勢」「証拠品は事件解決の鍵であると即座に解るものの、キチガイの登場は日常風景と思わせながら終盤で松方さんの思いと加藤さんの失態により壁にぶつかった際重要な鍵となる展開」「事の重大性を理解していながらも生きる術を失う恐怖から貝になる貧民と、その現実を知る穂高さんの計画性及び現実無知の松方さんの直球勝負姿」等々、深層心理を深く掘り下げた人間ドラマが同時進行で描かれている事。加えて「日活制作「ある脅迫」に於けるネコさんに対する西村さんの鬱憤が社と作品を変えて果たされた様な気分となる要素」「東映京都制作「仁義なき戦いシリーズ・正篇五部作」で名夫婦役と称されたネコさん・木村俊恵がシリーズ開始から遡る事約10年前に当作品で親密な関係を演じられた事」も、数多くの旧作品を鑑賞された方々にとっては興味津々となるかと。