「おじいちゃんが壊れていく」は当時話題に!東映京都「花いちもんめ。」千秋実/十朱幸代/西郷輝彦 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

昨日20時に勤務を終え月曜日11時の始業時迄休みに入りました…が、月曜日は出勤前に特殊健康診断及び歯科検診(数々の薬剤を使用している関係で年一度の一般的な健康診断の他に特殊健康診断及び歯科検診が半年に一度設けられています)受診の為早く起きなければなりません。と云うのも俺の勤務時間帯は盛んに忙しい枠である為事前に決められている時間帯に行かれた試しが数える程しか無い為、今回は最初から夜勤帯の方々と同様午前中に受診する事となった為。しかも業務量は通常より少々多い程度ですが研修・出張等々に於ける欠員補充を目的とした勤務時間帯変更及び残業対応が前月より急増しており楽ではありません。

 

 

さて「認知症を取り扱った劇場公開作品」と云えば東宝「恍惚の人」が先駆と言われ、最近では森崎東監督が手掛けられた「ペコロスの母に会いに行く」が評価を得ましたが「呆け老人」「痴呆症」等々の言葉が彼方此方で見聞きする機会が増えた頃、東映で映像化された作品が此方…当時、当作品の惹句「おじいちゃんが壊れていく」は各種宣伝で盛んに謳われた為か流行語迄は行かなかったものの日常生活内に於いてこの惹句を揶揄して会話等々に利用されていた記憶があります。

 

 

「花いちもんめ。」昭和60年10月10日公開・松田寬夫脚本・伊藤俊也監督・東映京都制作。DVD化作品でdTV/DMM.com/ビデオマーケット/Hulu/U-NEXT/Amazonプライムビデオ内に於いて有料動画配信が行われています。

 

 

 

 

元・大学教授で島根県松江の歴史資料施設に勤務していた千秋実は史跡物を破損させてしまった事を理由に上層部から勇退を勧告されたのを切欠に物忘れ等々の症状が出始め、後に失踪事件を起こした為精密検査を受けた結果認知症と診断されます。この検査に付き添った千秋さんの実子・西郷輝彦の女房である十朱幸代は千秋さんの女房の加藤治子の体調不良が落ち着く迄大阪の自宅で千秋さんの介護を行う決断を下します。千秋さんの介護を切欠に単身赴任中であった西郷さんとの夫婦関係が少々ぎくしゃくし酒量が増加していた十朱さんの生活は西郷さんが自宅通勤を選択した事もありいい方向に進み始め、二人の実子も協力的と介護の良き副産物が生まれても来たのですが、加藤さんの体調が安定し西郷さんの実姉・野川由美子と共に松江から大阪へ訪ねた際に騒動が勃発し…

 

 

 

 

俺の親族・親類関係では「身体も動かざず趣味も無く認知症状に陥った者」の他「突如認知症状が出た者」も居り、後者に関しては「もしかしたら本人にとって生きる意欲を失わせる一言を誰かが放ってしまった可能性があるのでは?但し事実確認を行い責任を問う事は出来ないが…」との結論であったと聞かされたのですが、当作品の千秋さんの認知症発症の切欠と類似していた点で一気に引き込まれました。認知症状が本格進行する直前に「勇退と言われるより辞めろと言われる方がまし!俺を馬鹿にしやがって!」と云う意味合いの台詞を絶叫するのですが「第三者の視点では心遣い気遣いの難しさ・当人の視点では自尊心の抱き具合の難しさ…と云うより過去にしがみ付かないか適度がいいのか?」と思わせる…余談ですが名優・金子信雄は過去の写真等当は一切所持せず名声も実績も自ら発する事は無かったと見聞きした記憶がありますし同様の意向を持っている方々は無数に居られます。長い人生を自らの意志と行動で全うする上で当作品に於ける千秋さんの叫びとネコさんの生き方は単純ながらも大きな奏であると思います。

 

 

そして、認知症に関する情報量と世間の理解度は30数年前と現在とでは隔世の感がありますので単純比較は出来ぬものの「様々な誤解により血縁関係をも断絶させてしまう可能性を秘めている等々、心身共に疲弊させてしまうのが認知症介護」「運良く施設に入れられたとしても金銭負担より親族にとって辛いのは身体拘束された患者がただ生かされているだけの、まるで養豚場の様な当作公開当時の現実」を見せ付ける…しかしそんな描写も時には笑いを、時には凄味を交えて描かれているのは娯楽を知った東映流の良さ!千秋さん・十朱さんの芝居は「認知症患者とその家族を数ヶ月間観察し続けたのでは?」と感じさせる程見事でしたし、結婚式の会場で千秋さんが失禁した際ビール瓶を倒してそれを知られぬ様にした加藤さんの優しさや、或る騒動が切欠で十朱さんに血縁関係の断絶を申し出た野川さんが千秋さんを施設に入所させた後に労いの言葉を西郷さんを通じて伝えた際の詫びの心も光る…「女囚さそりシリーズ」で名声を得た伊藤監督ですが、限られた空間に於ける描写が大半を占める作品を手掛けさせれば非常に巧いだけに「花いちもんめ。」は伊藤監督で本当に良かったですし、当作の2.3年前にに手掛けられた「誘拐報道」「白蛇抄」もいい作品でしたから「伊藤監督の第二の黄金期を代表する一作」でもあります。

 

 

因みに「東映京都の三野郎」の一人・林彰太郎が野川さんの亭主役で出演していますが、完全に野川さんの尻に敷かれているのは東映ファン・ボンクラ野郎にはツボ!