卒配巡査奮闘記!名和宏主演・日活「若いお巡りさん」宍戸錠/安部徹/天草四郎・森永健次郎監督 | 東映バカの部屋

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皆様、こんばんは。

 

 

休み二日目の夜ですが、昨日より平年以上の暖かさで市街地に関しては雪はほぼ消え一足早い春の陽気となっています。何せ昨年以上に光熱費負担が大きい今年ですから、衣服等々で調整すれば暖を取る事が可能なこの現状は寒冷地では非常に助かります。

 

 

さて本日は未DVD化作品ですが最近Amazonプライムビデオ内の見放題作品に加わった、御年93歳ながらも現役で歌手活動を続けている曽根史郎の大ヒット曲を映像化した作品で「名和センセイ」こと名和宏主演です(日活時代に幾つか主演を務められていますが中々目に出来る機会が少なく、Amazonプライムビデオ内でもこの他に鑑賞可能なのは確か1作品のみだったかと…)。勿論曽根さんも出演されています。

 

 

「若いお巡りさん」昭和31年11月14日公開・小鹿あい子原作・中久保信成/鷹取常武の共同脚本・森永健次郎監督・日活制作。本日時点で鑑賞可能なのは先述の通りAmazonプライムビデオ内のみとなっています。

 

 

 

 

上野公園近くの交番に卒配された名和宏は上司の天草四郎・先輩巡査の宍戸錠や安部徹に囲まれながら左右の区別が付かぬ程の忙しさと解らぬ事だらけの日々を過ごしていました。しかも、初手柄を挙げたその日に交番の自転車を盗まれてしまった責任を先輩の代わりに負わされてしまったり(但し初めてのミスとの理由から不問となりましたが…)家出娘を悪魔の手から救ったのはいいが帰郷したくないと泣きつかれ困った挙句に馴染みの中華食堂に住み込みで働ける様に世話をしたり…しかし名和センセイ、交番に弁当を届けに訪れる天草さんの愛娘・美多川光子に惚れておりそれが日々の業務の活力かつ、将来美多川さんと所帯を持つこ事が出来たらと考える様になるのですが…

 

 

 

 

外勤警官の日常をほのぼのとした笑いや家族関係・地域密着の姿勢・時折訪れる行商人や奇人(特に、自らを国会議員と称する狂気の高貴な婦人の山岡久乃は必見)等々を交えて描いた、気持ちが優しくなれる様な作品で、感情が荒れそうな時に鑑賞すれば心が落ち着くかと。警察となると余りいい印象を持たぬ方々が多いのが現実ですし可能な限り関わり合いたくないのは皆同じでしょう、俺もそうですから…しかしそれは市井の視点と関わる事の少ない上層部や限られた視点で従事する部署員・本部や本署の内勤者の話であって市井と触れ合う機会が多い交番勤務警官やそれを長年経験した方々を一緒にしてはいけません。実際俺自身助けて貰った事もあれば営業職時代にお世話になった事もあり、功績・階級至上主義の印象が強い警察組織に身を置きながらもそれ等を一切気にせぬ現場及び市井主義の方々が非常に多い事実を知りました。この作品で描かれている警官はそんな方々です。

 

 

そして「勤務中であるにも関わらず好意を抱いている煙草屋の看板娘にデートを申し込む好色家の宍戸さん」「結婚は人生の墓場と言い放ちながらも出産を心待ちに…しかし双子が生まれたと知るや家計の遣り繰りを心配し始める(当然でしょうが)山形弁丸出しの安部さん」も滑稽で楽しい芝居を見せてくれています。そんな先輩を目にしているからでしょうか、名和センセイも公園で夜這いに勤しむアベックを即興の恐怖話で脅してその場を立ち去らせ楽しみながら職務を果たす様になってしまったのだろうなぁ…しかし、故郷の母校の恩師と後輩が修学旅行で上京して来た際には案内役を買って出たり、鉄道自殺を試みた女性を間一髪の所で救助したりと警察官として着実に成長し、その実績が認められ恋も一緒に成熟するのか?此処が最大の見所です。

 

 

悪役・好色家・好敵手・曲者・大馬鹿者等々で名声を得られた名優達の善人芝居は素の人間性が醸し出された様な名演の宝庫であり、脱線をきちんと演じ切られるからこそ善や優が生きる事実をも証明しています。この様な作品はまだまだ埋もれっ放しになっているでしょうから是非積極的に世に送り出して欲しいですし同時に正当な再評価を得られる土俵に上げて行きたいものです。