過激派手配犯の匿いが姉妹間に壁を作り悲劇へ…日活ロマンポルノ「夜の禁猟区」梢ひとみ/市川亜矢子 | 東映バカの部屋

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皆様、こんばんは。

 

 

休み二日目の夜中です。冷え込みがかなり厳しいですが来週中は比較的過ごし易いとの予報ですので少しの辛抱…ここ1.2年の休日の過ごし方は昼寝が必須となっている為か早めの就寝が出来なくなっていますし、外で食事を取る事も滅多に無くなり惣菜は買っても弁当は買わず、大部分は自ら調理するのが普通になってしまいました。安価に量を食せますし美味い不味い云々不問で好みの味付けに出来ますから…

 

 

さて本日は我が郷里・岩手県が生み出した(北上市生まれ)日活ロマンポルノ最初期を支えた梢ひとみの主演作品です。昨日担当作品を紹介した東映出身の鈴木則文監督もファンで自著内に「梢ひとみ論」なるエッセイが存在しています。

 

 

「夜の禁猟区」昭和48年7月25日公開・蘇武道夫脚本・小沢啓一監督(小澤啓一の表記も存在します)・日活制作。DVD化作品でFANZA動画/U-NEXT(見放題対象作品)/Amazonプライムビデオ内に於いて有料動画配信が行われています。因みに助監督は長谷川和彦。

 

 

 

 

横浜・伊勢佐木町を縄張としながらも敵対組織の頭・丘奈保美と睨み合っていたずべ公集団の頭・梢ひとみは過激派アジト摘発を目的とした公安警察の急襲を逃れた際警官を射殺しながらも被弾し負傷したまま逃走していた過激派手配犯・松川勉を助け、絶対安全な潜りの宿に案内します。その松川さんを世話するのはひとみさんの実姉である市川亜矢子…実は市川さんは数週間前に交際相手と海外密航を実行しようとした直前に女を食い物にする「イチモツに真珠を三つ入れているヤクザ」の榎木兵衛に連れ戻された上に交際相手は行方不明となり、情交時以外は抜け殻と化していました。数日後、ひとみさんが松川さんに今後の計画を問うとレバノン・ベイルートに逃亡したいとの答えが…しかし、仲間の裏切りに遭い密航資金調達に失敗した松川さんを警察から助けたひとみさんは自分の貯金を提供した上に密航船を手配したものの、行方不明の交際相手が横浜港で水死体で発見されたのを知った市川さんが松川さんの身体を求めていたのを目の当たりにし、これが姉妹間に壁を作り更には悲劇の序章に…

 

 

制作意図や表現方法が一定の条件さえ満たせばほぼ自由と言えた日活ロマンポルノですから「過激派に感情移入させる様な方向に進むのか?」と初めは思いましたが、幾ら現代と比較して映像作品に於ける表現等々の許容範囲が広く市井の目も寛容であったとしてもそれは無理だったのでしょうね。過去の記憶が鮮明かつ当作品は偶然ではあるもののドバイ日航機ハイジャック事件で日本赤軍とパレスチナ解放人民戦線の混成部隊が当時最新鋭のボーイング747を爆破(余談ですが、この際無傷であった尾翼をKLMオランダ航空が買い同型機に装着したものの、その当該機は数年後にパンアメリカン航空のボーイング747と離陸滑走時地上衝突し双方で550人以上が犠牲になる事故を起こしています)した1.2日後の公開ですから「徹底的に懲らしめろ!」と手に汗を握りながら鑑賞したロマンポルノのファンも少なからず居られただろうと(反骨精神を持つファンも多かったでしょうがこれに関しては恐らく…)。その証拠に終盤の松川さんと警官隊が繰り広げた銃撃戦は相当な凄味に溢れていますし、潜伏時の描写や遣り取りも代償の大きさや一筋の光さえ差し込まぬ現実に傾倒しています。仮に光が差し込んだ様に見えてもそれは一時で終わる目の前の快楽や武器調達時の夢物語に代表される「絵に描いた餅」のみ!

 

 

寧ろ「自らを変えるべき惨劇を目の当たりにしたり機会を得ながらもそれを受け入れず、悲劇的な最期を迎える松川さんと市川さんに対し、同情し愛の有る情交に至ったと見えたものののあくまでも生命を救う行為に至ったに過ぎず、変わられない人間性に関しては冷めた目で突き放し自ずを見失わなかったひとみさん」の構図が鮮明!特にひとみさんに関しては榎木さんが身の危険から救ってくれた礼として身体を委ねたものの「これで貸し借りはゼロ!」と言い放ち立ち去った際一目置かれているかの如く引き留めもされなかったのですから相当な女傑である事が解ります。