子連れ兇状旅の末に行き着いた地には…東映東京「出世子守唄」千葉真一/小畠絹子/丹波哲郎 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんばんは。

 

 

休み二日目の夜中ですが、一昨日が常時とは違う勤務時間帯であった為に睡眠調整が上手く行かず(これ迄何十回と経験しているのに中々これが出来ないんですよねぇ…)更に月曜日から元に戻る関係上調整が必要ですので少々遅く迄起きていようと思います。因みに暴風雪は止みましたが昨日の夜と比べると寒さは一段と厳しくなっています。

 

 

さて本日は、我国のアクション俳優としては未だ右に出る者は居ない千葉真一の若年期の主演作品から…この頃既に身体能力の高さは折紙付でしたが、それを強調した作品は然程多くはなく刑事役・教師役・遠藤実をモデルとした作曲家役等々多岐に渡り全身全霊で演じられていました。その一つに「着流しの侠客」も含まれており、一節太郎歌唱の「浪曲子守唄」を主題歌とし一節さんも登場する「子守唄シリーズ」は「初期の千葉ちゃんの代表的なシリーズ作品」と言ってもいいかと思います…と言いたいのですが、俺が鑑賞したのは残念ながら本日紹介する一作品のみで、これも中々日の目を見られぬシリーズです。

 

 

「出世子守唄」(「子守唄シリーズ」第三弾)昭和42年10月21日公開・池田雄一脚本・鷹森立一監督・東映東京制作。未DVD化作品でAmazonプライムビデオ内(東映オンデマンド対象作品)に於いて有料動画配信が行われています。

 

 

 

 

戦前の東京で渡世の義理から人を殺めた一匹狼の侠客・千葉真一は女房と別れた後男手一つで育てて来た一人息子・下沢広之(現・真田広之)と共に木曽に辿り着き、千葉ちゃんはこの地で木材業を営む石山健次郎・小川知子親子の元で定職に、下沢さんは当初千葉ちゃんに「そんなモノは男には不要」と反対をされたものの小川さん達の薦めもあり小学校に入学をします(担任教師は川津祐介)。木曽の地が心底気に入った上に将来は木樵になりたいと夢を抱き始めた下沢さんを千葉ちゃんは温かく見つめていたのですが、この地で千葉ちゃんは別離した女房で今は酒場で昼間から酒浸りの生活を送り身体も売る女に成り下がっていた小畠絹子と再会を果たし、その際「教育に良くない」との理由から千葉ちゃんは下沢さんと逢う事を厳禁します。しかし事情を何も知らぬ下沢さんとも偶然出会う結果になりましたが母親とは名乗り出られない、何故なら千葉ちゃんとの約束の他に下沢さんが酒の匂いに嫌悪感を示した事、小畠さんは石山さん・小川さん親子と対立するこの地の顔役・遠藤辰雄(後の遠藤太津朗)の妾であったから。そして千葉ちゃんには、小畠さんの客でもある丹波哲郎が東京での事件の仇を討ちに近付き始め…

 

 

 

 

「♪逃げた女房に未練は無いが…」でお馴染みの歌詞の通り、千葉ちゃんご本人に小畠さんに対する未練は微塵も無い事が伝わりますが「子供に母性は必要」と云う事も同時に熟慮しており、小畠さんに対して下沢さんと会う事を厳禁する一方でその役目を小川さんとこの飯場の世話役・三原葉子を信頼して任せているのはやはり「子を思う親」の証拠!そして「男に学問は不要」と言いながらも自らが文盲で「日本男児なるものは?」等々は行動で教えられてもその他は何も教えられない不甲斐無さを悔いる様に下沢さんの入学を認め(因みに下沢さんは入学後、算数の時間に足算の回答を「●●の半!」と言ってしまう一面を見せています)更には子供であるにも関わらず盃で本当の酒を一寸だけ酌み交わさせる辺りは「血筋の親子・義兄弟の双方で強い絆を持つ野郎の関係」として俺は非常に理想に感じました。この関係は後半で展開される下沢さんが肌身離さず身に付けていた成田山の御守に纏わる物語に通じていますし、千葉ちゃんと敵対関係に在る丹波の御大の心情にも大きな影響を与えます。「例え我子が巻き込まれた修羅場でも残忍な姿は一切目に触れさせぬ心情を貫き通す千葉ちゃんの優しさ」もいいですし「仇の実子の下沢さんに振り回される丹波の御大の、見方を変えれば…計算外の災難の面白可笑しさ」は他作品には無い魅力の一つ。

 

 

又、下沢さんを温かく見守る女優陣…新東宝出身の実母役の小畠さんと飯場の世話人役の三原さんが「片や淫靡でだらしなくも母性を失わずに、片や地味に徹し子が居らぬ分の愛情を全て注がんと」そして小川さんは「少し歳の離れた姉の役目を果たすかの様に」三者三様の優しさを見せています。この当時の東映は専属女優陣及び常連女優陣に恵まれずにいたかの様な書き方をされる事が多いですし女優不足に悩まされたとも言われています。確かに東映は「俳優最優先・男性志向路線最優先」に移行していましたし時代劇全盛期の東映及び他社との比較に於いては「知名度や華やかさ」では一歩二歩の弱さはあったかもしれません。しかし「存在が地味であったり知名度低かったり等々の弱点を十分に補う、生命力や生活力等々の強さがしっかりと観客に伝わり胸を打つ、役柄不問で見せる芝居が出来る実力を持つ顔触れと層の厚さ」では決して他社に引けを取りませんし「小役でも脳裏に残る女優」と云う点では他社以上のモノを感じます。その点で言うと、東映を主戦場としていた女優陣にもっと日の目が当たって欲しいと願っているのですが現実は中々…

 

 

最後に、本日時点で「東映オンデマンド対象作品」は劇場公開作品の他、Vシネマ・テレビドラマ・アニメーション・特撮を含めて1.065作品!毎月Amazonプライム会員費用\500-+東映オンデマンド会員費用\499-の負担が必要ですが、他のAmazonプライムビデオ内の個別チャンネルと比較をしても視聴可能作品数が圧倒的に多い上にジャンルが広く、更に毎月新規対象作品が加わるのは日本の映画会社が運営する個別契約チャンネルでは東映オンデマンドのみ。因みにAmazonプライム会員対象作品にはロマンポルノ転換前の日活作品が膨大ですからこの組み合わせは「東映・日活双方の作品が特に好きな映画ファン」にはお薦めです。