情を描かぬ奥深さ!日活「高校大パニック」山本茂/浅野温子/青木義朗・石井聰亙/澤田幸弘共同監督 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

昨日の21時に勤務を終え、月曜日11時の出勤時迄の休みに入りました。この時期にしては過し易いものの、霙混じりの降雨に見舞われる事もあり今日は起床の直後に自家用車の冬支度(冬用タイヤ及び冬用ワイパーブレード交換等々)を行い、その後に洗濯/掃除/買物/昼飯を済ませ落ち着いた所です。そしてオミクロン対応ワクチン接種を12/10(土)に予約し、2回目接種後には強め・3回目接種後には中程度の副作用に見舞われましたのでその際の事を考慮し、12/12(月)に有給休暇を取得しました。

 

 

さて本日は石井聰亙(現・石井岳龍)と先々月旅立たれた澤田幸弘が共同で監督を務められた、ロマンポルノ期の日活が制作した一般映画です。この場を借りて澤田監督のご冥福をお祈り致します。

 

 

「高校大パニック」昭和53年8月19日公開・石井聰亙原案・神波史男脚本・石井聰亙/澤田幸弘の共同監督・狂映舎制作協力・日活制作。

 

 

DVD化作品でU-NEXT内(見放題対象作品)に於いて有料動画配信が行われています。

 

 

 

 

尚、日活版の雛形となった昭和51年(昭和52年とする媒体も存在します)に狂映舎が制作した未公開作品「高校大パニック」もDVD化済みかつ、本日時点でYouTubeに動画が存在しています。

 

 

 

 

舞台は北九州…或る日、この地域では有数の進学校に通う男子生徒が数学の教科書を手にしたまま飛び降り自殺!翌日、当該生徒が通学していた高校の校長・内田稔は死の無意味を全校生徒に強調し、また在籍していた組では数学担当の久富惟晴は男子生徒の一人・山本茂の「ホームルームの時間なのだから…」と当該生徒の自殺について皆で話し合うべき(若しくは冥福を祈るべき)との申し出を無視し授業を開始しようとした所、山本さんは久冨さんの対応に激怒し殴打の上校舎を飛び出し、銃砲店で強奪した猟銃を持って再び教室に入り込み久冨さんを「数学が出来なくて何が悪い!」と言い放ち射殺します。そして学校からの通報を受けた警察から現場指揮を担当する刑事・青木義朗が到着し、特殊銃隊(当作公開当時は臨時編成部隊。現在は銃器対策部隊に名称を変更の上常設部隊となっています)が待機命令を下される程の息詰まる攻防戦となった上に説得が続けられたものの膠着状態のまま時間だけが過ぎます。しかし、山本さんに拉致監禁されていた複数の生徒が一人二人と脱出を図り成功する中、浅野温子だけが取り残され…

 

 

 

 

山本さんの両親役である赤座美代子・梅津栄の説得、浅野さんの母親役である宮下順子の娘と学校への思い、規律担当教員で山本さんを自宅に招き盃を酌み交わして悩みの相談に乗った経験のある河原崎長一郎(この高校の教員の中では唯一成績至上主義・進学率至上主義に異を唱えました。尚、高校生と酒盛りとは…と現代であれば鬼の首を捕った様に指摘する方も多いでしょうね。違法行為ではありますが未成年の心情を理解し合う手段として飲酒喫煙が有効に利用されていたのは現実ですし一定の効果があったのは事実ですから古き良き時代の産物かつ現代もこうあるべきと俺は思います)等々の台詞から生活環境等々の上辺は見えて来ますが「情を一切描かぬ手法=感情移入に誘導もしなければ求めもしない潔さ」が物語のダレを排除し、面白さと奥深さに寄与し、この事件の元凶は何なのかを各々で考えて貰いたいと云う主張が見えます。何せ浅野さんを除いて野次馬を含む全員が身勝手な台詞しか吐かぬのですから…そして「山本さんの台詞「数学が出来なくて何が悪い!」「来年受験なんだ!ラジオ講座を聴かなくちゃならないんだ!」の意図は?名門大学への進学率競争に躍起になり、学校の勉強さえ出来れば優秀かつそれ以外は個性も何も不要と画一的な人間を量産しようする学校の側の思考を数学に擬えただけなのか?それが結果として「来年受験…」の台詞=大それた犯行を実行しながらも最後には怖じ気付いて量産される側にしがみ付こうとしたのか?」とも考えてしまう。只、当作品に関する感想は相当多岐に渡るでしょうし是非共それを一つ一つ読んでみたいと思います。

 

 

又、娯楽性の視点で観た場合には適材適所若しくは意外性の多彩な出演者が魅力!見た目の可憐さだけでは終わらぬ浅野さんの雰囲気は後の大活躍を想像させるものを当時の観客達は感じたでしょうし箸休めの役割を果たした泉谷しげるも見事!そして日活版「嗚呼!!花の応援団シリーズ」で一貫して団長を演じられた沢田情児が刑事役・遠藤征慈が特殊銃隊の隊長、更には東映東京制作「トラック野郎シリーズ」で初代・松下幸之助に扮した梅地徳彦や子役時代から鈴木則文監督に重用されていた遠藤薫、他にも玉川伊佐男・奥村公延・高橋明・山西道広等々「悪役・脇役好きにはたまらぬ面々」が登場しますが、現場指揮担当刑事に青木さんを配し代名詞である「特別機動捜査隊」の際の雰囲気そのままの芝居を見せてくれたのは大当たりも大当たり!