警視庁協力の「日活版・警視庁物語」…「アリバイ」二谷英明/小高雄二/渡辺美佐子・動画配信中 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

昨日は休日出勤かつ夕方から深夜迄の変則勤務となりました。当然なのですが休日は減っても帰宅すれば週末に遣るべき事は減らぬ為、仮眠程度で起床しそれ等を済ませ、後は早めの入浴/飲酒で明日11時の勤務開始時迄のんびり過ごそうかと考えています。

 

 

さて本日はAmazonプライム会員特典対象作品として動画配信中の作品から…

 

 

「アリバイ」昭和38年8月25日公開・熊井哲脚本・牛原陽一監督・警視庁制作協力・日活制作。

 

 

 

 

先述の通り有料動画配信中かつ、べストフィールドが発売元となっているDVD-BOX「二谷英明 銀幕の世界 Vol.3」に内包されています。

 

 

 

 

或る住宅街で発生した殺人事件から浮かび上がったのは「凶器は米軍キャンプから盗まれた拳銃の内の一丁」「小高雄二と協力者・渡辺美佐子は替え玉に過ぎないのではないかという憶測」「国際犯罪組織が暗躍していると思われる手形詐欺事件の存在」当初は殺人事件担当の警視庁捜査一課の二谷英明・所轄署刑事の宮口精二が中心となり捜査を進めて行きますが、先述の手形詐欺事件が絡んでいる可能性が出て来た事でこの類の事件を担当する警視庁捜査二課の鈴木瑞穂が新たに加わり、両方向からの挟み撃ちを目的とした捜査が展開されます。

 

 

 

 

内容としては既に東映で制作されていた劇場公開作品「警視庁物語シリーズ」の日活版と言えますが、そこに犯罪者側の描写にも時間が比較的割かれていた同じく東映制作の劇場公開作品版「特別機動捜査隊シリーズ」の味を加えた様な趣…更に「初動捜査・捜査会議・家族に何が起こっても事件解決迄は私情を挟めぬ現実・捜査協力依頼の苦悩」等々にも或る程度の時間が割り当てられていますが、それでも余計な描写は削ぎ落とされており、俺は90分の尺を超えてはいるもののスピーディーさは失われていないと感じました(但しこの点は鑑賞される方によって判断が大きく二分される事と思います)。石橋を叩きながら確実に実行犯を追い詰めていく姿も本物の捜査過程を踏襲した流れと思えばいいですし、本来重大な手掛かりとなる指紋が捜査を行き詰まらせる切欠となっているのも面白さや奥深さに寄与しています。考えてみればこの頃日活は「日本列島」「帝銀事件・死刑囚」等々「我国の暗部を引き出した様な作品群」が連続していましたから、当作品もその流れ・延長線上に在ると言えるのかなぁ…

 

 

そして役者陣の魅力も非常に大きい!「白黒何方とも言えぬ立ち位置が似合う上に絶妙な心の動揺を見事な芝居で見せた小高さん・渡辺さん」「退職直前の最後の事件に家庭を犠牲にしてでも尽力した宮口さん」「反権力志向の役柄を得意としているものの、それが市井の視点に立った体制側の実力者の役に生きたと思われる鈴木さん」「大都会シリーズの高品格・西部警察シリーズの庄司永健・悪役を得意としながらも今回は善人役の上野山功一・凶暴な郷鍈治」そして「見方を変えれば後の東映制作「特捜最前線」神代警視正の回想録にも見えてくる二谷さんの刑事役・後に二谷さんの右腕の一人の船村刑事として共演し、味のある名演を見せ代名詞ともなった大滝秀治が怪しい日本語を話す三国人の犯罪者として登場する」この辺りは刑事ドラマファン・東映ファンにはたまらぬ鑑賞欲を生み出すのではないかと思います。

 

 

「ダンプガイ」の愛称で日活ダイヤモンドラインの一員として活躍しながらも徐々に主演作品群の趣が変わり、更には助演級に軸足を移し「あらゆる日活作品には欠かせない役者の一人」として名声を高めた二谷さんですが、その切欠の一つとなったのはこの「アリバイ」ではないかと思う程…そしてこの路線変更に対する決断は「斜陽化の一方であった映画・飛躍を遂げていたテレビドラマを見据ていた=あえて助演級に廻る事で守備範囲を広げ、自身を強く印象付け、同時に仕事が絶えなかった点」を考えれば正解だったと言えます。更に「博識で人間性も良く、それ等と共にアナウンサー経験を生かした言語明瞭かつ語彙力の高さを思わせる台詞回し」「歩き方に人間性を感じる姿」等々、現在に至る迄石原裕次郎や小林旭・宍戸錠・渡哲也等々の蔭に隠れた存在ではあるもののもっと取り上げられ評価されてもいい役者の一人ですし、日活作品の主演経験者の中では抜きん出た芝居巧者であるとも思います。