無名剣を巡る攻防戦が自身の出生の秘密をも知る事に!東映京都「赤い影法師」大川橋蔵・小沢茂弘監督 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんばんは。

 

 

昼からの勤務に備え毎度お馴染みの調整日ですが、予報の割には暖かく感じ過ごし易い夜です。昼過ぎに起床しても今の俺には「12:00が07:00の感覚=五時間ずらして日々過ごす生活」ですので丁度いい上、朝が弱くて夜が強い為前職の夜勤に準じたこの生活体系は合っています。

 

 

 

さて本日は今月の東映ch「傑作時代劇スペシャル」の枠内で放映の一作品から…当作品を手掛けられた小沢茂弘監督はこの頃、黒澤明監督「椿三十郎」「用心棒」に於ける殺陣(黒澤監督と組んでいた殺陣師の久世竜が携わっています)に他の監督と同じく影響されたらしく「同じ巨匠でも渡辺邦夫監督は決して血を出さなかったが…黒澤監督の影響を受け当作品辺りから少しリアルに変えた」と自著内でお話をされていました(因みに監督としての総合力は小沢天皇の方が黒澤監督を足元にも寄せ付けぬ程遥かに高いと俺は確信をしています)。しかも「脚本担当の比佐芳武に褒められた」とも…因みに比佐先生は「褒める時は自宅・怒る時は愛人宅だった」そうですよ!

 

 

 

「赤い影法師」昭和36年12月24日公開・柴田錬三郎原作・比佐芳武脚本・小沢茂弘監督・東映京都制作。

 

 

VHS/DVD化作品ですが有料動画配信は行われていません。又、先述の通り東映chに於いて本日以降、11/12(木)11:00~13:00・11/27(金)11:00~13:00の二回放映されます(字幕付きHD放映)。

 

 

 

 

 

 

関が原合戦から15年…伏見城に入り豊臣秀頼との決戦に備えていた徳川家康の警備に就いていた伊賀三十六人衆の筆頭である服部半蔵こと近衛十四郎は忍び込んだ木曽谷の女忍者である小暮美千代を強姦します。そして時は流れて三代将軍徳川家光こと沢村訥升の時代へ…江戸の町に母子の香具師が現れましたがそれは「木曽谷の忍者集団の親子」で石田三成の一族であり仇討の機会を狙う為の仮の姿。女性は小暮さんであり男性は長男の大川橋蔵。そして橋蔵御大は旗本の平幹次郎の屋敷に招かれた際に沢村さんが御前試合を開き(主審は柳生宗矩こと大河内傳次郎)勝者には太閤倉から奪った無銘剣が進呈される事を聞かされます。

 

 

橋蔵御大からこの事を聞かされた小暮さんは「その刀の先三寸を奪う事」を命じ、更には委細は一切聞くなと釘を刺します。只々命じられるままに刀先三寸を奪い続ける橋蔵御大でしたが「これも違う!あれも違う!」と目的完遂には程遠い様相。しかし御前試合に臨み勝利した紅一点・大川恵子の剣を狙った際に橋蔵御大の心が揺れ動き、その場を意図不明な事案解決の絶好の機会と狙った近衛御大の心の迷いが物語を急転回させて行きます。それは「大川さんを勝利に導かせる為に対戦相手の東野英治郎を買収した春日局こと花柳小菊の策略」から「無銘剣に秘められた或る手掛り」そして「橋蔵御大の出生の秘密」に至る迄…ここに御前試合で里見浩太郎(現・里見浩太朗)との同門対決を制した柳生十兵衛こと大友柳太郎が絡みます。

 

 

 

 

 

 

東映の劇場公開作品群が時代劇主体から任侠・ヤクザ・ギャング映画等々に切り替わって以降も制作された「東映集団抗争時代劇群…その中でも人気が高かった忍者映画群の前哨戦とも言える内容」であり「血を見せる演出・化粧度合いの薄さ」等々解り易い側面からだけでも先述の通り小沢天皇が「少しリアルにした」のがよく解ります。又「歌舞伎の女形出身であった為に自分ではそれを捨て男らしい殺陣を遣ったつもりでいたが、ラッシュを見たら到底男らしくは見えず試行錯誤を重ねた」と何処かの媒体でお話をされていた橋蔵御大の立ち回りが(ポニーテール姿も自ら発案したものと仰られていた様な気もしますが、記憶違いの場合は何卒ご容赦下さい)それ迄と比較をしても迫力・重厚感が増し、この後に出演された「定番の「若さま作品群」等々の質感向上にも寄与したのではないのでは?」と思う程。

 

 

ここに「戦うべき敵と見るか?愛する男及び可愛い倅と見るかで迷い葛藤する小暮さん・近衛御大の複雑な胸の内…そのお二方に対する不信感が最高潮に達していた事で別な人生を歩もうと決心していた橋蔵御大に双方の気持ちを別に置き換えて伝える大友御大の奥深く慈悲深い締めの台詞」「御前試合での勝利は八百長で、実力で得た勲章ではなかった事を知った大川さんの落胆・絶望感が導き生んだ徳川家に対する反骨心」が絡み、特に後半戦は「刀先三寸の秘密」も明かされてはいるもののそれを遠く彼方に吹き飛ばす様な「親子・相思相愛等々を全面に押し出した、最後の決闘を最高潮に盛り上げる為の深い人間ドラマ」に自然と移行しているのも「比佐先生の脚本の出来の良さ・小沢天皇の演出巧者振り」を際立たせています。しかもこの後半で皆様が見せた情感の出し方が見事で、人間ドラマとしての重厚感・質感も相当な域に達しているのも美点!

 

 

又、里見御大を始め品川隆二・山城新伍・吉田義夫等々「東映作品でお馴染みの顔触れが御前試合に臨む者達」として多数登場しているのは我々の目を楽しませてくれますし、小暮さんが幼少期に掘られた刺青を橋蔵御大に見せる為に片肌を出すのですが…意図したのか剃り忘れなのかは見当も付きませんが脇毛を披露しています!現在ではポルノ女優の黒木香の様に「脇毛を大きな特徴・売り物」としない限り考えられない事ですが、昭和30~40年代は「女優の脇毛が見られた事」は決して珍しくはなく、新東宝作品では三原葉子が、日活ロマンポルノ作品では宮下順子が脇毛を見せた作品が存在していますし、その他にも知名度不問で数多くの女優が脇毛を見せています。大らかでいい時代でしたねぇ…